海軍召集条例
法令番号: 勅令第二百四十七號
公布年月日: 明治31年10月7日
法令の形式: 勅令
朕樞密顧問ノ諮詢ヲ經テ海軍召集條例ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十一年十月六日
海軍大臣 侯爵 西鄕從道
勅令第二百四十七號
海軍召集條例
第一章 總則
第一條 本條例ハ豫備役後備役ニ在ル海軍軍人ノ召集ニ關スルコトヲ規定ス
第二條 准士官以上ノ召集ハ海軍大臣之ヲ行ヒ下士卒ノ召集ハ鎭守府司令長官之ヲ行フ
第三條 戒嚴ヲ宣吿シ得ルノ權アル諸官時機切迫シ命ヲ請フノ暇ナキトキハ獨斷ニテ豫備役後備役下士卒ノ召集ヲ行フコトヲ得
第四條 鎭守府司令長官ハ部下將校ヲシテ定期若ハ臨時ニ諸官衙及公署ニ於ケル召集事務ノ整否ヲ檢査セシムヘシ
地方長官警視總監憲兵司令官憲兵隊長ハ其ノ所部召集事務ノ整否ヲ檢査シ又ハ部下官吏ヲシテ之ヲ檢査セシムヘシ
第五條 召集ニ關スル細則及旅費支給ノ方法ハ海軍大臣之ヲ定ム
第六條 召集ハ充員召集演習召集及簡閱㸃呼ノ三種トス
第七條 充員召集トハ戰時若ハ事變ニ際シ充員ヲ行フ爲豫備役後備役軍人ノ一部又ハ全部ヲ召集スルヲ謂フ
充員召集事務ニ關シ責任ヲ有スル者ハ豫メ之ニ關スル諸行務ヲ整備シ置キ召集實施ニ際シ凝滯ナキヲ期スヘシ
充員召集發令ノ後ハ召集事務ニ關シ訓示命令等ヲ請フコトヲ得ス
第八條 演習召集トハ演習ヲ行フ爲平時ニ於テ豫備役後備役軍人ヲ召集スルヲ謂フ
第九條 演習召集ヲ大演習召集及小演習召集ノ二種ニ分ツ
大演習召集トハ大演習施行ノ際豫備役後備役軍人ノ全部若ハ一部ヲ召集スルヲ謂ヒ小演習召集トハ小演習施行ノ際豫備役後備役下士卒ノ全部若ハ一部ヲ召集スルヲ謂フ
第十條 簡閱㸃呼トハ豫備役後備役下士卒ヲ實査スル爲時期ヲ定メ其ノ全部若ハ一部ヲ召集スルヲ謂フ
第十一條 充員及演習召集ニ應シ到著スヘキ場所ハ豫備役後備役准士官以上ニ在テハ海軍大臣之ヲ定メ豫備役後備役下士卒ニ在テハ其ノ兵籍ヲ管スル海兵團トス
第十二條 簡閱㸃呼ヲ行フ場所ハ簡閱㸃呼執行官之ヲ定ム
第十三條 充員召集及演習召集ニハ召集令狀ヲ發シ簡閱㸃呼ニハ㸃呼令狀ヲ發ス
第十四條 召集令ハ迅速確實ナル方法ヲ以テ通達スヘシ
第十五條 豫備役後備役下士卒ノ一部ヲ召集スルトキハ鎭守府司令長官ハ何年何月以後ニ現役ヲ離レタル者ヲ召集スヘキコトヲ定ム
第十六條 豫備役後備役下士卒ノ召集區域ハ海軍志願兵徵募區ノ區域ニ依ル
第二章 召集準備
第十七條 召集ノ實施ヲ容易ナラシムル爲豫備役後備役准士官以上ノ召集名簿ハ海軍省ニ於テ下士卒ノ召集名簿ハ其ノ兵籍ヲ管スル海兵團ニ於テ整備シ置クヘシ
第十八條 准士官以上ノ召集令狀ハ海軍省ニ於テ調製保管シ下士卒ノ召集令狀ハ海兵團ニ於テ調製シ豫メ之ヲ郡市長ニ送付シ郡市長ハ召集ノ發令アルマテ之ヲ保管スヘシ但シ郡長ハ町村長ヲシテ召集令狀ヲ保管セシムルコトヲ得
第十九條 海兵團ニ於テハ旅費證票ヲ作リ召集令狀ト共ニ郡市長ニ送付シ置クヘシ但シ郡長ハ町村長ヲシテ之ヲ保管セシムルコトヲ得
第二十條 地方長官ハ市町村長ヲシテ召集ニ應スル者ノ休泊ニ充ツル爲豫メ市町村內ニ於テ海軍軍用旅舍ヲ選定セシメ之ヲ憲兵隊及警察署ニ通知シ置クヘシ
第二十一條 地方長官ハ前條ノ外召集ヲ容易ナラシムル爲相當ノ措置ヲ爲スヘキモノトス
第二十二條 豫備役後備役軍人ハ其ノ本籍地ニ於テ召集ニ應スルヲ例トス但シ本邦ニ在テハ寄留地ニ於テ、外國在留ノ者ニ在テハ其ノ所在地ニ於テ、海員タル者ニ在テハ本人ノ屬スル船舶ノ船籍港若ハ平常運航ノ一港ニ於テ召集ニ應スルコトヲ得
前項但書ニ依リ召集ニ應セントスル者ハ市町村長ヲ經テ准士官以上ニ在テハ海軍大臣ニ下士卒ニ在テハ其ノ兵籍ヲ管スル海兵團長ニ屆出ヘシ但シ外國在留ノ者ハ本文ノ手續ヲ爲スト同時ニ在留國ノ領事官貿易事務官ヲ經テ准士官以上ニ在テハ海軍大臣ニ下士卒ニ在テハ其ノ兵籍ヲ管スル海兵團長ニ屆出ヘシ
第二十三條 豫備役後備役軍人十四日以上旅行或ハ寄留セントスルトキハ召集通報人ヲ定メ市町村長ヲ經テ准士官以上ニ在テハ海軍大臣ニ下士卒ニ在テハ其ノ兵籍ヲ管スル海兵團長ニ屆出テ歸鄕シタルトキハ十四日以內ニ市町村長ヲ經テ准士官以上ニ在テハ海軍大臣ニ下士卒ニ在テハ海兵團長ニ屆出ヘシ但シ外國ヘ航海又ハ在留セントスルトキハ其ノ事由ヲ記シ市町村長ノ奧書證印ヲ受ケ准士官以上ニ在テハ海軍大臣ニ下士卒ニ在テハ海兵團長ニ屆出ヘシ其ノ歸朝シタルトキハ十四日以內ニ市町村長ヲ經テ准士官以上ニ在テハ海軍大臣ニ下士卒ニ在テハ海兵團長ニ屆出ヘシ
第三章 充員召集
第二十四條 海軍大臣及鎭守府司令長官ハ充員召集ノ令アリタルトキハ速ニ之ヲ其ノ部下ニ達シ鎭守府司令長官ハ同時ニ地方長官警視總監憲兵隊長東京府ニ在テハ憲兵司令官以下之ニ傚フニ通知シ必要アルトキハ關係アル領事官、貿易事務官ニ通知スヘシ
第二十五條 前條ノ通知アリタルトキハ地方長官ハ之ヲ郡市町村長竝召集事務ニ關係アル官吏ニ警視總監憲兵隊長ハ之ヲ其ノ部下ニ達スヘシ
第二十六條 召集令狀保管者充員召集ノ令ヲ受クルトキハ令狀ニ所要ノ記入ヲ爲シ直ニ豫定ノ方法ヲ以テ之ヲ被召集人又ハ召集通報人ニ交付シ受領證ヲ徵スヘシ下士卒ノ召集令狀ニ對スル受領證ハ取纒メ之ヲ海兵團長ニ送付スヘシ
召集通報人ナキ不在者ニ在テハ其ノ戶主本人戶主又ハ戶主不在ナレハ家族中家事ヲ擔當スル者ヨリ受領證ヲ出スヘシ
下士卒ノ召集令狀保管者ハ前二項ニ依リ召集令狀ヲ交付シタル者ノ人名竝事故アリテ之ヲ交付シ得サルトキハ其ノ人名其ノ事由ヲ記シヲ速ニ憲兵及警察官吏ニ通知スヘシ
第二十七條 充員召集令ノ達ヲ受ケタル官衙竝公署ハ直ニ軍事警報ヲ揭示スルモノトス但シ鎭守府司令長官ハ海軍大臣ノ命ニ依リ之ヲ揭示セシメサルコトヲ得
第二十八條 被召集人ニ代リ召集令狀ヲ受領シタル者ハ直ニ其ノ旨ヲ本人ニ通報シ其ノ令狀ヲ本人ニ交付スルノ手續ヲ爲スヘシ
第二十九條 准士官以上召集令狀ヲ受領シタルトキハ旅費ヲ受領シ速ニ指定ノ場所ニ到著スヘシ
前項准士官以上ノ官姓名ハ豫メ海軍省ヨリ到著地ノ長官ニ通知シ長官ハ其ノ到著ノ都度最モ迅速確實ナル方法ニ依リ之ヲ海軍大臣ニ報吿スヘシ
第三十條 下士卒召集令狀ヲ受領シタルトキハ旅費及旅費證票ヲ受領シ其ノ令狀ニ指定シタル期日ニ於テ海兵團ニ到著スヘシ
第三十一條 憲兵及警察官吏第二十六條第三項ノ通知ヲ受クルトキハ其ノ被召集人ヲシテ所命ノ期日ニ召集ニ應セシムルノ處置ヲ爲スヘシ
第三十二條 召集地ニ到ルノ途中ニ於テ已ムヲ得サル事故ノ爲到著ヲ遲延スル場合ニ在テハ其ノ事故傷痍疾病ナルトキハ醫師ノ診斷書ヲ、其ノ他ノ事故ナルトキハ其ノ事故ノ生シタル地ノ市町村長、警察官吏、船長若ハ驛長ニ就キ證明書ヲ受領シ到著ノ上准士官以上ニ在テハ到著地ノ長官ヲ經テ海軍大臣ニ下士卒ニ在テハ海兵團長ニ差出スヘシ
前項ノ事故ヲ生シタルトキ准士官以上ニ在テハ迅速ナル方法ニ依リ其ノ事故及豫定延滯日數ヲ到著地ノ長官ニ屆出テ該長官ハ之ヲ海軍大臣ニ報吿スヘシ但シ東京ニ到著スヘキトキハ直接ニ海軍大臣ニ屆出ヘシ
第三十三條 召集令狀ノ交付ヲ受クルモ已ムヲ得サル事故ノ爲速ニ出發シ難キカ或ハ豫定期日迄ニ指定ノ場所ニ到著スルコト能ハサル場合ニ在テハ其ノ事故傷痍疾病ナルトキハ醫師ノ診斷書ヲ添ヘ本人ヨリ、旅行犯罪失踪等ナルトキハ召集令狀ヲ受領シタル者ヨリ事由屆書准士官以上ニ在テハ海軍大臣ニ宛テ下士卒ニ在テハ海兵團長ニ宛テヲ二十四時間以內ニ市町村長ニ差出スヘシ
市町村長前項ノ屆書ヲ受領スルトキハ准士官以上ノモノニ付テハ本人ノ到著スヘキ地ノ長官ヲ經テ海軍大臣ニ下士卒ノモノニ付テハ海兵團長ニ進達スヘシ
第一項ニ依リ屆書ヲ差出シタル場合ニ於テ下士卒ノ召集令狀ハ之ヲ郡市長若ハ町村長ニ返付スヘシ
第三十四條 前條第一項ニ依リ事由屆書ヲ差出シタル場合ニ於テ其ノ事故止ミタルトキハ准士官以上ニ在テハ速ニ海軍省ニ屆出テ命ヲ待チ下士卒ニ在テハ速ニ郡市長若ハ町村長ヨリ召集令狀ヲ受取リ其ノ指示ニ從フヘシ
第三十五條 召集シタル下士卒ハ海兵團ニ於テ身體檢査ヲ行フ身體檢査ニ於テ服役ニ堪ヘスト認ムルトキハ召集ヲ解キ旅費ヲ給シテ歸鄕セシム
第三十六條 召集ノ期ニ後ルル者アルトキハ下士卒ニ在テハ海兵團長准士官以上ニ在テハ到著地ノ長官事實ヲ糺シ相當ノ措置ヲ爲スヘシ
第三十七條 下士卒ノ召集完結スルトキハ海兵團長ハ之ヲ鎭守府司令長官ニ報吿シ鎭守府司令長官ハ其ノ報吿ヲ海軍大臣ニ進達スヘシ
第三十八條 正當ノ事由ナクシテ第二十三條ノ規定ニ背ク者ハ五錢以上一圓九十五錢以下ノ科料ニ處ス
正當ノ事由ナクシテ第二十八條ノ規定ニ背ク者ハ一日以上十日以下ノ拘留ニ處ス
正當ノ事由ナクシテ第三十三條及第三十四條ノ規定ニ背ク者ハ五十錢以上一圓九十五錢以下ノ科料ニ處シ又ハ五日以上十日以下ノ拘留ニ處ス
第三十九條 召集解除ノ令アリタルトキハ海軍大臣及鎭守府司令長官ハ速ニ之ヲ其ノ部下ニ達シ鎭守府司令長官ハ同時ニ地方長官警視總監憲兵隊長ニ通知シ旅費ヲ給シ被召集人ヲ歸鄕セシム
第四十條 召集解除ノ行務完結スルトキハ海兵團長ハ之ヲ鎭守府司令長官ニ報吿シ鎭守府司令長官ハ其ノ報吿ヲ海軍大臣ニ進達スヘシ
第四十一條 召集ノ諸行務ニ關シ責任ヲ有スル諸員ハ召集解除後速ニ復タ召集ノ準備ヲ爲スヘシ
第四章 演習召集
第四十二條 海軍大臣及鎭守府司令長官ハ大演習召集ノ令アリタルトキハ之ヲ其ノ部下ニ達シ鎭守府司令長官ハ同時ニ地方長官警視總監憲兵隊長ニ通知スヘシ
第四十三條 鎭守府司令長官小演習召集ヲ行ハントスルトキハ海軍大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第四十四條 鎭守府司令長官小演習召集ヲ行フトキハ之ヲ其ノ部下ニ達シ同時ニ召集區域內地方長官警視總監憲兵隊長ニ通知スヘシ
第四十五條 大演習若ハ小演習召集ノ通知アリタルトキハ地方長官ハ之ヲ郡市町村長竝召集事務ニ關係アル官吏ニ警視總監憲兵隊長ハ之ヲ其ノ部下ニ達スヘシ
第四十六條 演習召集ニハ第二十六條第二十八條乃至第三十三條及第三十五條乃至第四十一條ヲ準用ス
第四十七條 第三十三條第一項ニ準シ事由屆書ヲ差出シタル場合ニ於テ其ノ事故止ミタルトキハ准士官以上ニ在テハ速ニ海軍省ニ屆出テ命ヲ待チ下士卒ニ在テハ速ニ郡市長若ハ町村長ヨリ召集令狀ヲ受取リ其ノ指示ニ從ヒ旅費及旅費證票ヲ受取リ直ニ海兵團ニ到著スヘシ但シ演習ノ前半期間ニ召集地ニ到著スル能ハサル者ト認ムルトキハ郡市長若ハ町村長ハ其ノ發程ヲ差留メ之ヲ海兵團長ニ通知スヘシ
第四十八條 演習召集令狀ノ交付ヲ受ケタル者其ノ父母重症ニ罹リ若ハ死亡シタルトキハ親戚又ハ近鄰戶主二人以上連署ノ願書ニ市町村長ノ奧書證印ヲ受ケ醫師ノ診斷書若ハ死亡證ヲ添ヘ准士官以上ニ在テハ到著スヘキ地ノ長官ヲ經テ海軍大臣ニ下士卒ニ在テハ海兵團長ニ十四日以內ノ延期ヲ願出ルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ海軍大臣、海兵團長ハ審査ノ上其ノ願ヲ許可スルコトヲ得
第四十九條 正當ノ事由ナクシテ第四十七條ノ規定ニ背ク者ハ五十錢以上一圓九十五錢以下ノ科料ニ處シ又ハ五日以上十日以下ノ拘留ニ處ス
第五章 簡閱㸃呼
第五十條 鎭守府司令長官ハ簡閱㸃呼ノ爲每年一囘豫備役後備役下士卒ヲ召集シ簡閱㸃呼執行官ヲ派出シ期日ヲ定メテ㸃呼ヲ行ハシム但シ他ノ召集ヲ行ヒタル年ハ之ヲ行ハサルコトヲ得
第五十一條 鎭守府司令長官ハ部下將校若干名ニ簡閱㸃呼執行官ヲ命シ之ニ必要ノ訓令ヲ授クヘシ又必要アルトキハ簡閱㸃呼執行官ニ部下主計官ヲ附スルコトヲ得
第五十二條 各簡閱㸃呼執行官ニハ下士若干名ヲ附屬セシム
第五十三條 鎭守府司令長官簡閱㸃呼ヲ行ハントスルトキハ簡閱㸃呼執行官ノ巡迴區及出發期日ヲ定メ之ヲ海兵團長ニ達シ同時ニ之ヲ海軍大臣ニ報吿スヘシ
第五十四條 海兵團長前條ノ達ヲ受ケタルトキハ簡閱㸃呼執行官ト協議シ豫定順路ヲ定メテ之ヲ關係地方長官ニ通知スヘシ
第五十五條 地方長官前條ノ通知ヲ受ケタルトキハ之ヲ郡市長ニ達シ郡長ハ之ヲ町村長ニ達シ市町村長ハ之ヲ豫備役後備役下士卒ニ豫吿スヘシ
第五十六條 簡閱㸃呼召集所ハ地方廳管轄區域ノ廣狹及被㸃呼者ノ多少ニ依リ簡閱㸃呼執行官之ヲ定ムルモノトス
㸃呼令狀ハ海兵團ニ於テ調製シ前項ニ依リ簡閱㸃呼召集所定マリタルトキハ海兵團長ヨリ之ヲ郡市長ニ送付スヘシ
第五十七條 簡閱㸃呼執行官ハ巡迴日割ヲ定メ郡市長ニ通知スヘシ
郡市長前項ノ通知ヲ受ケタルトキハ㸃呼令狀ニ所要ノ記入ヲ爲シ直ニ豫定ノ方法ヲ以テ之ヲ被㸃呼者又ハ召集通報人ニ交付シ受領證ヲ徵スヘシ
召集通報人ナキ不在者ニ在テハ戶主本人戶主又ハ戶主不在ナレハ家族中家事ヲ擔當スル者ヨリ受領證ヲ出スヘシ
郡市長ハ事故アリテ㸃呼令狀ヲ交付シ得サルトキハ其ノ人名其ノ事由ヲ記シヲ速ニ憲兵及警察官吏ニ通知スヘシ
第五十八條 被㸃呼者ニ代リ㸃呼令狀ヲ受領シタル者ハ直ニ其ノ旨ヲ本人ニ通報シ其ノ令狀ヲ本人ニ交付スルノ手續ヲ爲スヘシ
第五十九條 被㸃呼者ハ指定ノ日時迄ニ召集所ニ到著シ㸃呼ヲ受クヘシ
第六十條 被㸃呼者ノ往復旅費ハ解㪚ヲ命スルトキ簡閱㸃呼執行官若ハ簡閱㸃呼執行官附主計官ヨリ給スルモノトス
第六十一條 憲兵及警察官吏第五十七條第四項ノ通知ヲ受クルトキハ其ノ被㸃呼者ヲシテ所命ノ日時ニ參會セシムルノ處置ヲ爲スヘシ
第六十二條 郡市長竝町村長ハ簡閱㸃呼ニ參列スヘシ
第六十三條 被㸃呼者傷痍疾病其ノ他ノ事故ニ依リ簡閱㸃呼ニ參會スルコト能ハサルトキハ市町村長ヲ經テ事由屆書ヲ㸃呼執行日時ニ簡閱㸃呼執行官ニ差出スヘシ但シ傷痍疾病ノ者ニ在テハ醫師ノ診斷書ヲ添フヘシ
第六十四條 被㸃呼者集合スルトキハ簡閱㸃呼執行官ハ㸃呼名簿ノ順序ニ從ヒ㸃呼シ所要ノ調査ヲ行ヒ必要ノ訓示ヲ與ヘ解㪚ヲ命スヘシ
第六十五條 正當ノ事由ナクシテ簡閱㸃呼ニ參會セサル者及第六十三條ノ規定ニ背ク者ハ五十錢以上一圓九十五錢以下ノ科料ニ處シ又ハ五日以上十日以下ノ拘留ニ處ス
第六十六條 正當ノ事由ナクシテ第五十八條ノ規定ニ背ク者ハ一日以上十日以下ノ拘留ニ處ス被㸃呼者簡閱㸃呼場ニ於テ簡閱㸃呼執行官ノ命令ニ服セス又ハ其ノ職務ノ執行ヲ妨害スルトキ亦同シ
第六十七條 簡閱㸃呼執行官簡閱㸃呼ヲ終ルトキハ㸃呼實況報吿書及㸃呼人員表各二通ヲ鎭守府司令長官ニ差出スヘシ
第六十八條 鎭守府司令長官ハ前條ノ書類ヲ取纒メ一通ヲ海軍大臣ニ進達シ一通ヲ海兵團長ニ下付スヘシ
附 則
第六十九條 本條例中郡市長ノ職務ハ島司支廳長若ハ之ニ準スヘキ者竝東京市京都市大阪市及市制町村制ヲ施行セサル地方ノ區ニ在テハ區長之ヲ行ヒ町村長ノ職務ハ町村制ヲ施行セサル地方ニ在テハ戶長及之ニ準スヘキ者之ヲ行フ
朕枢密顧問ノ諮詢ヲ経テ海軍召集条例ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十一年十月六日
海軍大臣 侯爵 西郷従道
勅令第二百四十七号
海軍召集条例
第一章 総則
第一条 本条例ハ予備役後備役ニ在ル海軍軍人ノ召集ニ関スルコトヲ規定ス
第二条 准士官以上ノ召集ハ海軍大臣之ヲ行ヒ下士卒ノ召集ハ鎮守府司令長官之ヲ行フ
第三条 戒厳ヲ宣告シ得ルノ権アル諸官時機切迫シ命ヲ請フノ暇ナキトキハ独断ニテ予備役後備役下士卒ノ召集ヲ行フコトヲ得
第四条 鎮守府司令長官ハ部下将校ヲシテ定期若ハ臨時ニ諸官衙及公署ニ於ケル召集事務ノ整否ヲ検査セシムヘシ
地方長官警視総監憲兵司令官憲兵隊長ハ其ノ所部召集事務ノ整否ヲ検査シ又ハ部下官吏ヲシテ之ヲ検査セシムヘシ
第五条 召集ニ関スル細則及旅費支給ノ方法ハ海軍大臣之ヲ定ム
第六条 召集ハ充員召集演習召集及簡閲点呼ノ三種トス
第七条 充員召集トハ戦時若ハ事変ニ際シ充員ヲ行フ為予備役後備役軍人ノ一部又ハ全部ヲ召集スルヲ謂フ
充員召集事務ニ関シ責任ヲ有スル者ハ予メ之ニ関スル諸行務ヲ整備シ置キ召集実施ニ際シ凝滞ナキヲ期スヘシ
充員召集発令ノ後ハ召集事務ニ関シ訓示命令等ヲ請フコトヲ得ス
第八条 演習召集トハ演習ヲ行フ為平時ニ於テ予備役後備役軍人ヲ召集スルヲ謂フ
第九条 演習召集ヲ大演習召集及小演習召集ノ二種ニ分ツ
大演習召集トハ大演習施行ノ際予備役後備役軍人ノ全部若ハ一部ヲ召集スルヲ謂ヒ小演習召集トハ小演習施行ノ際予備役後備役下士卒ノ全部若ハ一部ヲ召集スルヲ謂フ
第十条 簡閲点呼トハ予備役後備役下士卒ヲ実査スル為時期ヲ定メ其ノ全部若ハ一部ヲ召集スルヲ謂フ
第十一条 充員及演習召集ニ応シ到著スヘキ場所ハ予備役後備役准士官以上ニ在テハ海軍大臣之ヲ定メ予備役後備役下士卒ニ在テハ其ノ兵籍ヲ管スル海兵団トス
第十二条 簡閲点呼ヲ行フ場所ハ簡閲点呼執行官之ヲ定ム
第十三条 充員召集及演習召集ニハ召集令状ヲ発シ簡閲点呼ニハ点呼令状ヲ発ス
第十四条 召集令ハ迅速確実ナル方法ヲ以テ通達スヘシ
第十五条 予備役後備役下士卒ノ一部ヲ召集スルトキハ鎮守府司令長官ハ何年何月以後ニ現役ヲ離レタル者ヲ召集スヘキコトヲ定ム
第十六条 予備役後備役下士卒ノ召集区域ハ海軍志願兵徴募区ノ区域ニ依ル
第二章 召集準備
第十七条 召集ノ実施ヲ容易ナラシムル為予備役後備役准士官以上ノ召集名簿ハ海軍省ニ於テ下士卒ノ召集名簿ハ其ノ兵籍ヲ管スル海兵団ニ於テ整備シ置クヘシ
第十八条 准士官以上ノ召集令状ハ海軍省ニ於テ調製保管シ下士卒ノ召集令状ハ海兵団ニ於テ調製シ予メ之ヲ郡市長ニ送付シ郡市長ハ召集ノ発令アルマテ之ヲ保管スヘシ但シ郡長ハ町村長ヲシテ召集令状ヲ保管セシムルコトヲ得
第十九条 海兵団ニ於テハ旅費証票ヲ作リ召集令状ト共ニ郡市長ニ送付シ置クヘシ但シ郡長ハ町村長ヲシテ之ヲ保管セシムルコトヲ得
第二十条 地方長官ハ市町村長ヲシテ召集ニ応スル者ノ休泊ニ充ツル為予メ市町村内ニ於テ海軍軍用旅舎ヲ選定セシメ之ヲ憲兵隊及警察署ニ通知シ置クヘシ
第二十一条 地方長官ハ前条ノ外召集ヲ容易ナラシムル為相当ノ措置ヲ為スヘキモノトス
第二十二条 予備役後備役軍人ハ其ノ本籍地ニ於テ召集ニ応スルヲ例トス但シ本邦ニ在テハ寄留地ニ於テ、外国在留ノ者ニ在テハ其ノ所在地ニ於テ、海員タル者ニ在テハ本人ノ属スル船舶ノ船籍港若ハ平常運航ノ一港ニ於テ召集ニ応スルコトヲ得
前項但書ニ依リ召集ニ応セントスル者ハ市町村長ヲ経テ准士官以上ニ在テハ海軍大臣ニ下士卒ニ在テハ其ノ兵籍ヲ管スル海兵団長ニ届出ヘシ但シ外国在留ノ者ハ本文ノ手続ヲ為スト同時ニ在留国ノ領事官貿易事務官ヲ経テ准士官以上ニ在テハ海軍大臣ニ下士卒ニ在テハ其ノ兵籍ヲ管スル海兵団長ニ届出ヘシ
第二十三条 予備役後備役軍人十四日以上旅行或ハ寄留セントスルトキハ召集通報人ヲ定メ市町村長ヲ経テ准士官以上ニ在テハ海軍大臣ニ下士卒ニ在テハ其ノ兵籍ヲ管スル海兵団長ニ届出テ帰郷シタルトキハ十四日以内ニ市町村長ヲ経テ准士官以上ニ在テハ海軍大臣ニ下士卒ニ在テハ海兵団長ニ届出ヘシ但シ外国ヘ航海又ハ在留セントスルトキハ其ノ事由ヲ記シ市町村長ノ奥書証印ヲ受ケ准士官以上ニ在テハ海軍大臣ニ下士卒ニ在テハ海兵団長ニ届出ヘシ其ノ帰朝シタルトキハ十四日以内ニ市町村長ヲ経テ准士官以上ニ在テハ海軍大臣ニ下士卒ニ在テハ海兵団長ニ届出ヘシ
第三章 充員召集
第二十四条 海軍大臣及鎮守府司令長官ハ充員召集ノ令アリタルトキハ速ニ之ヲ其ノ部下ニ達シ鎮守府司令長官ハ同時ニ地方長官警視総監憲兵隊長東京府ニ在テハ憲兵司令官以下之ニ倣フニ通知シ必要アルトキハ関係アル領事官、貿易事務官ニ通知スヘシ
第二十五条 前条ノ通知アリタルトキハ地方長官ハ之ヲ郡市町村長並召集事務ニ関係アル官吏ニ警視総監憲兵隊長ハ之ヲ其ノ部下ニ達スヘシ
第二十六条 召集令状保管者充員召集ノ令ヲ受クルトキハ令状ニ所要ノ記入ヲ為シ直ニ予定ノ方法ヲ以テ之ヲ被召集人又ハ召集通報人ニ交付シ受領証ヲ徴スヘシ下士卒ノ召集令状ニ対スル受領証ハ取纒メ之ヲ海兵団長ニ送付スヘシ
召集通報人ナキ不在者ニ在テハ其ノ戸主本人戸主又ハ戸主不在ナレハ家族中家事ヲ担当スル者ヨリ受領証ヲ出スヘシ
下士卒ノ召集令状保管者ハ前二項ニ依リ召集令状ヲ交付シタル者ノ人名並事故アリテ之ヲ交付シ得サルトキハ其ノ人名其ノ事由ヲ記シヲ速ニ憲兵及警察官吏ニ通知スヘシ
第二十七条 充員召集令ノ達ヲ受ケタル官衙並公署ハ直ニ軍事警報ヲ掲示スルモノトス但シ鎮守府司令長官ハ海軍大臣ノ命ニ依リ之ヲ掲示セシメサルコトヲ得
第二十八条 被召集人ニ代リ召集令状ヲ受領シタル者ハ直ニ其ノ旨ヲ本人ニ通報シ其ノ令状ヲ本人ニ交付スルノ手続ヲ為スヘシ
第二十九条 准士官以上召集令状ヲ受領シタルトキハ旅費ヲ受領シ速ニ指定ノ場所ニ到著スヘシ
前項准士官以上ノ官姓名ハ予メ海軍省ヨリ到著地ノ長官ニ通知シ長官ハ其ノ到著ノ都度最モ迅速確実ナル方法ニ依リ之ヲ海軍大臣ニ報告スヘシ
第三十条 下士卒召集令状ヲ受領シタルトキハ旅費及旅費証票ヲ受領シ其ノ令状ニ指定シタル期日ニ於テ海兵団ニ到著スヘシ
第三十一条 憲兵及警察官吏第二十六条第三項ノ通知ヲ受クルトキハ其ノ被召集人ヲシテ所命ノ期日ニ召集ニ応セシムルノ処置ヲ為スヘシ
第三十二条 召集地ニ到ルノ途中ニ於テ已ムヲ得サル事故ノ為到著ヲ遅延スル場合ニ在テハ其ノ事故傷痍疾病ナルトキハ医師ノ診断書ヲ、其ノ他ノ事故ナルトキハ其ノ事故ノ生シタル地ノ市町村長、警察官吏、船長若ハ駅長ニ就キ証明書ヲ受領シ到著ノ上准士官以上ニ在テハ到著地ノ長官ヲ経テ海軍大臣ニ下士卒ニ在テハ海兵団長ニ差出スヘシ
前項ノ事故ヲ生シタルトキ准士官以上ニ在テハ迅速ナル方法ニ依リ其ノ事故及予定延滞日数ヲ到著地ノ長官ニ届出テ該長官ハ之ヲ海軍大臣ニ報告スヘシ但シ東京ニ到著スヘキトキハ直接ニ海軍大臣ニ届出ヘシ
第三十三条 召集令状ノ交付ヲ受クルモ已ムヲ得サル事故ノ為速ニ出発シ難キカ或ハ予定期日迄ニ指定ノ場所ニ到著スルコト能ハサル場合ニ在テハ其ノ事故傷痍疾病ナルトキハ医師ノ診断書ヲ添ヘ本人ヨリ、旅行犯罪失踪等ナルトキハ召集令状ヲ受領シタル者ヨリ事由届書准士官以上ニ在テハ海軍大臣ニ宛テ下士卒ニ在テハ海兵団長ニ宛テヲ二十四時間以内ニ市町村長ニ差出スヘシ
市町村長前項ノ届書ヲ受領スルトキハ准士官以上ノモノニ付テハ本人ノ到著スヘキ地ノ長官ヲ経テ海軍大臣ニ下士卒ノモノニ付テハ海兵団長ニ進達スヘシ
第一項ニ依リ届書ヲ差出シタル場合ニ於テ下士卒ノ召集令状ハ之ヲ郡市長若ハ町村長ニ返付スヘシ
第三十四条 前条第一項ニ依リ事由届書ヲ差出シタル場合ニ於テ其ノ事故止ミタルトキハ准士官以上ニ在テハ速ニ海軍省ニ届出テ命ヲ待チ下士卒ニ在テハ速ニ郡市長若ハ町村長ヨリ召集令状ヲ受取リ其ノ指示ニ従フヘシ
第三十五条 召集シタル下士卒ハ海兵団ニ於テ身体検査ヲ行フ身体検査ニ於テ服役ニ堪ヘスト認ムルトキハ召集ヲ解キ旅費ヲ給シテ帰郷セシム
第三十六条 召集ノ期ニ後ルル者アルトキハ下士卒ニ在テハ海兵団長准士官以上ニ在テハ到著地ノ長官事実ヲ糺シ相当ノ措置ヲ為スヘシ
第三十七条 下士卒ノ召集完結スルトキハ海兵団長ハ之ヲ鎮守府司令長官ニ報告シ鎮守府司令長官ハ其ノ報告ヲ海軍大臣ニ進達スヘシ
第三十八条 正当ノ事由ナクシテ第二十三条ノ規定ニ背ク者ハ五銭以上一円九十五銭以下ノ科料ニ処ス
正当ノ事由ナクシテ第二十八条ノ規定ニ背ク者ハ一日以上十日以下ノ拘留ニ処ス
正当ノ事由ナクシテ第三十三条及第三十四条ノ規定ニ背ク者ハ五十銭以上一円九十五銭以下ノ科料ニ処シ又ハ五日以上十日以下ノ拘留ニ処ス
第三十九条 召集解除ノ令アリタルトキハ海軍大臣及鎮守府司令長官ハ速ニ之ヲ其ノ部下ニ達シ鎮守府司令長官ハ同時ニ地方長官警視総監憲兵隊長ニ通知シ旅費ヲ給シ被召集人ヲ帰郷セシム
第四十条 召集解除ノ行務完結スルトキハ海兵団長ハ之ヲ鎮守府司令長官ニ報告シ鎮守府司令長官ハ其ノ報告ヲ海軍大臣ニ進達スヘシ
第四十一条 召集ノ諸行務ニ関シ責任ヲ有スル諸員ハ召集解除後速ニ復タ召集ノ準備ヲ為スヘシ
第四章 演習召集
第四十二条 海軍大臣及鎮守府司令長官ハ大演習召集ノ令アリタルトキハ之ヲ其ノ部下ニ達シ鎮守府司令長官ハ同時ニ地方長官警視総監憲兵隊長ニ通知スヘシ
第四十三条 鎮守府司令長官小演習召集ヲ行ハントスルトキハ海軍大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第四十四条 鎮守府司令長官小演習召集ヲ行フトキハ之ヲ其ノ部下ニ達シ同時ニ召集区域内地方長官警視総監憲兵隊長ニ通知スヘシ
第四十五条 大演習若ハ小演習召集ノ通知アリタルトキハ地方長官ハ之ヲ郡市町村長並召集事務ニ関係アル官吏ニ警視総監憲兵隊長ハ之ヲ其ノ部下ニ達スヘシ
第四十六条 演習召集ニハ第二十六条第二十八条乃至第三十三条及第三十五条乃至第四十一条ヲ準用ス
第四十七条 第三十三条第一項ニ準シ事由届書ヲ差出シタル場合ニ於テ其ノ事故止ミタルトキハ准士官以上ニ在テハ速ニ海軍省ニ届出テ命ヲ待チ下士卒ニ在テハ速ニ郡市長若ハ町村長ヨリ召集令状ヲ受取リ其ノ指示ニ従ヒ旅費及旅費証票ヲ受取リ直ニ海兵団ニ到著スヘシ但シ演習ノ前半期間ニ召集地ニ到著スル能ハサル者ト認ムルトキハ郡市長若ハ町村長ハ其ノ発程ヲ差留メ之ヲ海兵団長ニ通知スヘシ
第四十八条 演習召集令状ノ交付ヲ受ケタル者其ノ父母重症ニ罹リ若ハ死亡シタルトキハ親戚又ハ近隣戸主二人以上連署ノ願書ニ市町村長ノ奥書証印ヲ受ケ医師ノ診断書若ハ死亡証ヲ添ヘ准士官以上ニ在テハ到著スヘキ地ノ長官ヲ経テ海軍大臣ニ下士卒ニ在テハ海兵団長ニ十四日以内ノ延期ヲ願出ルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ海軍大臣、海兵団長ハ審査ノ上其ノ願ヲ許可スルコトヲ得
第四十九条 正当ノ事由ナクシテ第四十七条ノ規定ニ背ク者ハ五十銭以上一円九十五銭以下ノ科料ニ処シ又ハ五日以上十日以下ノ拘留ニ処ス
第五章 簡閲点呼
第五十条 鎮守府司令長官ハ簡閲点呼ノ為毎年一回予備役後備役下士卒ヲ召集シ簡閲点呼執行官ヲ派出シ期日ヲ定メテ点呼ヲ行ハシム但シ他ノ召集ヲ行ヒタル年ハ之ヲ行ハサルコトヲ得
第五十一条 鎮守府司令長官ハ部下将校若干名ニ簡閲点呼執行官ヲ命シ之ニ必要ノ訓令ヲ授クヘシ又必要アルトキハ簡閲点呼執行官ニ部下主計官ヲ附スルコトヲ得
第五十二条 各簡閲点呼執行官ニハ下士若干名ヲ附属セシム
第五十三条 鎮守府司令長官簡閲点呼ヲ行ハントスルトキハ簡閲点呼執行官ノ巡迴区及出発期日ヲ定メ之ヲ海兵団長ニ達シ同時ニ之ヲ海軍大臣ニ報告スヘシ
第五十四条 海兵団長前条ノ達ヲ受ケタルトキハ簡閲点呼執行官ト協議シ予定順路ヲ定メテ之ヲ関係地方長官ニ通知スヘシ
第五十五条 地方長官前条ノ通知ヲ受ケタルトキハ之ヲ郡市長ニ達シ郡長ハ之ヲ町村長ニ達シ市町村長ハ之ヲ予備役後備役下士卒ニ予告スヘシ
第五十六条 簡閲点呼召集所ハ地方庁管轄区域ノ広狭及被点呼者ノ多少ニ依リ簡閲点呼執行官之ヲ定ムルモノトス
点呼令状ハ海兵団ニ於テ調製シ前項ニ依リ簡閲点呼召集所定マリタルトキハ海兵団長ヨリ之ヲ郡市長ニ送付スヘシ
第五十七条 簡閲点呼執行官ハ巡迴日割ヲ定メ郡市長ニ通知スヘシ
郡市長前項ノ通知ヲ受ケタルトキハ点呼令状ニ所要ノ記入ヲ為シ直ニ予定ノ方法ヲ以テ之ヲ被点呼者又ハ召集通報人ニ交付シ受領証ヲ徴スヘシ
召集通報人ナキ不在者ニ在テハ戸主本人戸主又ハ戸主不在ナレハ家族中家事ヲ担当スル者ヨリ受領証ヲ出スヘシ
郡市長ハ事故アリテ点呼令状ヲ交付シ得サルトキハ其ノ人名其ノ事由ヲ記シヲ速ニ憲兵及警察官吏ニ通知スヘシ
第五十八条 被点呼者ニ代リ点呼令状ヲ受領シタル者ハ直ニ其ノ旨ヲ本人ニ通報シ其ノ令状ヲ本人ニ交付スルノ手続ヲ為スヘシ
第五十九条 被点呼者ハ指定ノ日時迄ニ召集所ニ到著シ点呼ヲ受クヘシ
第六十条 被点呼者ノ往復旅費ハ解散ヲ命スルトキ簡閲点呼執行官若ハ簡閲点呼執行官附主計官ヨリ給スルモノトス
第六十一条 憲兵及警察官吏第五十七条第四項ノ通知ヲ受クルトキハ其ノ被点呼者ヲシテ所命ノ日時ニ参会セシムルノ処置ヲ為スヘシ
第六十二条 郡市長並町村長ハ簡閲点呼ニ参列スヘシ
第六十三条 被点呼者傷痍疾病其ノ他ノ事故ニ依リ簡閲点呼ニ参会スルコト能ハサルトキハ市町村長ヲ経テ事由届書ヲ点呼執行日時ニ簡閲点呼執行官ニ差出スヘシ但シ傷痍疾病ノ者ニ在テハ医師ノ診断書ヲ添フヘシ
第六十四条 被点呼者集合スルトキハ簡閲点呼執行官ハ点呼名簿ノ順序ニ従ヒ点呼シ所要ノ調査ヲ行ヒ必要ノ訓示ヲ与ヘ解散ヲ命スヘシ
第六十五条 正当ノ事由ナクシテ簡閲点呼ニ参会セサル者及第六十三条ノ規定ニ背ク者ハ五十銭以上一円九十五銭以下ノ科料ニ処シ又ハ五日以上十日以下ノ拘留ニ処ス
第六十六条 正当ノ事由ナクシテ第五十八条ノ規定ニ背ク者ハ一日以上十日以下ノ拘留ニ処ス被点呼者簡閲点呼場ニ於テ簡閲点呼執行官ノ命令ニ服セス又ハ其ノ職務ノ執行ヲ妨害スルトキ亦同シ
第六十七条 簡閲点呼執行官簡閲点呼ヲ終ルトキハ点呼実況報告書及点呼人員表各二通ヲ鎮守府司令長官ニ差出スヘシ
第六十八条 鎮守府司令長官ハ前条ノ書類ヲ取纒メ一通ヲ海軍大臣ニ進達シ一通ヲ海兵団長ニ下付スヘシ
附 則
第六十九条 本条例中郡市長ノ職務ハ島司支庁長若ハ之ニ準スヘキ者並東京市京都市大阪市及市制町村制ヲ施行セサル地方ノ区ニ在テハ区長之ヲ行ヒ町村長ノ職務ハ町村制ヲ施行セサル地方ニ在テハ戸長及之ニ準スヘキ者之ヲ行フ