蚕種検査法
法令番号: 法律第十號
公布年月日: 明治30年3月24日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル蠶種檢査法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十年三月十九日
內閣總理大臣 伯爵 松方正義
農商務大臣 子爵 榎本武揚
法律第十號
蠶種檢査法
第一條 此ノ法律ニ於テ蠶種ト稱スルハ原種及製絲用種ノ越年スルモノヲ謂フ
第二條 原種ハ框製ニスヘシ
第三條 蠶種ハ左ニ揭クル繭ヲ以テ之ヲ製造スルコトヲ得ス
一 二蠶以上合同シテ作リタル繭
二 繭層片薄ナル繭若ハ形狀ヲ失スルコト著シキ繭
三 繭層薄弱ニシテ繭ノ全量百ニ對シ繭層ノ量春蠶ニ在リテハ八、夏秋蠶ニ在リテハ六ニ達セサルモノ
第四條 蠶種ハ原種ヨリ產生シタル繭ヲ用井ルニ非サレハ之ヲ製造スルコトヲ得ス
第五條 蠶種製造者ハ收繭後及產卵後ノ二期ニ於テ原種ニ在リテハ繭蛾卵、製絲用種ニ在リテハ繭、卵ノ檢査ヲ受クヘシ
第六條 第三條ニ揭ケタル繭ハ收繭後ノ檢査ヲ經ルマテ之ヲ保存スヘシ
原種ノ掃殼蠶種ノ製造ニ供用シタル繭及原種ノ製造ニ供用シタル母蛾ハ產卵後ノ檢査ヲ經ルマテ之ヲ保存スヘシ
第七條 此ノ法律施行ノ地方ニ於テハ檢査合格ノ證印ナキ蠶種ヲ賣渡シ又ハ讓渡スコトヲ得ス
第八條 此ノ法律施行ノ地方ニ於テ必要アリト認メタルトキハ地方長官ハ農商務大臣ノ認可ヲ經テ此ノ法律施行地以外ニ於テ製造シタル製絲用種ノ買受又ハ讓受ヲ認許スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ卵ノ檢査ヲ受ケシムヘシ
第九條 地方長官ハ蠶種檢査員ヲシテ養蠶期中蠶種製造者ニ就キ掃立蟻量ノ多寡生育ノ狀況及病蠶ノ有無ヲ視察セシムルコトヲ得
蠶種製造者ハ前項ノ視察ヲ拒ムコトヲ得ス
第十條 蠶種檢査員其ノ職務ヲ行フトキハ證票ヲ携帶スヘシ
第十一條 蠶種檢査員ハ自己若ハ家族ノ製造スル蠶種ノ檢査ヲナスコトヲ得ス
第十二條 蠶種檢査ニ關スル費用ハ府縣ノ負擔トス但シ國庫ハ其ノ半額以內ヲ補助スルコトヲ得
北海道廳及沖繩縣ニ於テハ國庫ノ負擔トス
第十三條 地方長官ハ土地ノ情況ニ依リ農商務大臣ノ認可ヲ經テ此ノ法律ヲ施行セサルコトヲ得
第十四條 第三條第四條第五條第七條及第八條第二項ニ違背シタル者ハ五圓以上五十圓以下ノ罰金ニ處ス
第十五條 第六條ニ違背シタル者ハ二圓以上二十圓以下ノ罰金ニ處ス
第十六條 第九條第二項ニ違背シタル者ハ五十錢以上一圓九十五錢以下ノ科料ニ處ス
第十七條 此ノ法律中蠶種ノ製造及檢査ニ關スル規定ハ自家用ノ蠶種ノミヲ製造スル者ニ適用セス
第十八條 學術硏究ノ爲農商務大臣又ハ地方長官ノ承認ヲ得蠶種ヲ製造スル者及其ノ製造シタル蠶種ニハ本法ヲ適用セス但シ賣渡スコトヲ得ス
第十九條 檢査方法及此ノ法律施行ニ關スル細則ハ農商務大臣之ヲ定ム
附 則
第二十條 此ノ法律ハ明治三十一年四月一日ヨリ施行ス但シ第二條ノ規定ハ此ノ法律施行後一箇年間之ヲ適用セス
第二十一條 明治十九年農商務省令第九號蠶種檢査規則ハ本法施行ノ日ヨリ廢止ス
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル蚕種検査法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十年三月十九日
内閣総理大臣 伯爵 松方正義
農商務大臣 子爵 榎本武揚
法律第十号
蚕種検査法
第一条 此ノ法律ニ於テ蚕種ト称スルハ原種及製糸用種ノ越年スルモノヲ謂フ
第二条 原種ハ框製ニスヘシ
第三条 蚕種ハ左ニ掲クル繭ヲ以テ之ヲ製造スルコトヲ得ス
一 二蚕以上合同シテ作リタル繭
二 繭層片薄ナル繭若ハ形状ヲ失スルコト著シキ繭
三 繭層薄弱ニシテ繭ノ全量百ニ対シ繭層ノ量春蚕ニ在リテハ八、夏秋蚕ニ在リテハ六ニ達セサルモノ
第四条 蚕種ハ原種ヨリ産生シタル繭ヲ用井ルニ非サレハ之ヲ製造スルコトヲ得ス
第五条 蚕種製造者ハ収繭後及産卵後ノ二期ニ於テ原種ニ在リテハ繭蛾卵、製糸用種ニ在リテハ繭、卵ノ検査ヲ受クヘシ
第六条 第三条ニ掲ケタル繭ハ収繭後ノ検査ヲ経ルマテ之ヲ保存スヘシ
原種ノ掃殻蚕種ノ製造ニ供用シタル繭及原種ノ製造ニ供用シタル母蛾ハ産卵後ノ検査ヲ経ルマテ之ヲ保存スヘシ
第七条 此ノ法律施行ノ地方ニ於テハ検査合格ノ証印ナキ蚕種ヲ売渡シ又ハ譲渡スコトヲ得ス
第八条 此ノ法律施行ノ地方ニ於テ必要アリト認メタルトキハ地方長官ハ農商務大臣ノ認可ヲ経テ此ノ法律施行地以外ニ於テ製造シタル製糸用種ノ買受又ハ譲受ヲ認許スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ卵ノ検査ヲ受ケシムヘシ
第九条 地方長官ハ蚕種検査員ヲシテ養蚕期中蚕種製造者ニ就キ掃立蟻量ノ多寡生育ノ状況及病蚕ノ有無ヲ視察セシムルコトヲ得
蚕種製造者ハ前項ノ視察ヲ拒ムコトヲ得ス
第十条 蚕種検査員其ノ職務ヲ行フトキハ証票ヲ携帯スヘシ
第十一条 蚕種検査員ハ自己若ハ家族ノ製造スル蚕種ノ検査ヲナスコトヲ得ス
第十二条 蚕種検査ニ関スル費用ハ府県ノ負担トス但シ国庫ハ其ノ半額以内ヲ補助スルコトヲ得
北海道庁及沖縄県ニ於テハ国庫ノ負担トス
第十三条 地方長官ハ土地ノ情況ニ依リ農商務大臣ノ認可ヲ経テ此ノ法律ヲ施行セサルコトヲ得
第十四条 第三条第四条第五条第七条及第八条第二項ニ違背シタル者ハ五円以上五十円以下ノ罰金ニ処ス
第十五条 第六条ニ違背シタル者ハ二円以上二十円以下ノ罰金ニ処ス
第十六条 第九条第二項ニ違背シタル者ハ五十銭以上一円九十五銭以下ノ科料ニ処ス
第十七条 此ノ法律中蚕種ノ製造及検査ニ関スル規定ハ自家用ノ蚕種ノミヲ製造スル者ニ適用セス
第十八条 学術研究ノ為農商務大臣又ハ地方長官ノ承認ヲ得蚕種ヲ製造スル者及其ノ製造シタル蚕種ニハ本法ヲ適用セス但シ売渡スコトヲ得ス
第十九条 検査方法及此ノ法律施行ニ関スル細則ハ農商務大臣之ヲ定ム
附 則
第二十条 此ノ法律ハ明治三十一年四月一日ヨリ施行ス但シ第二条ノ規定ハ此ノ法律施行後一箇年間之ヲ適用セス
第二十一条 明治十九年農商務省令第九号蚕種検査規則ハ本法施行ノ日ヨリ廃止ス