第一條 此ノ法律ニ於テ害蟲ト稱スルハ農作物ヲ害スル各種ノ蟲類ヲ謂フ
第二條 驅除豫防スヘキ害蟲ノ種類及驅除豫防ノ方法ハ農商務大臣ノ認可ヲ經テ府縣知事之ヲ定ム
認可ヲ經タル種類以外ノ害蟲發生シ急速ノ處分ヲ要スルトキハ府縣知事ハ臨時驅除豫防ノ方法ヲ定メ之ヲ施行スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ直ニ其ノ旨ヲ農商務大臣ニ具申スヘシ
第三條 害蟲田畑ニ發生シタルトキ又ハ發生ノ虞アルトキハ府縣知事ハ豫メ期限ヲ定メ該田畑ノ作人ヲシテ驅除豫防ヲ行ハシムヘシ
前項ノ場合ニ於テ作人驅除豫防ヲ行ハサルトキハ府縣知事ハ市町村費ヲ以テ之ヲ行ヒ市町村ヲシテ該作人ヨリ其ノ費用ヲ徵收セシムルコトヲ得其ノ費用ノ徵收ニ關シテハ市制第百二條及町村制第百二條ヲ適用ス
第四條 害蟲蔓延シタルトキ又ハ蔓延ノ兆アルトキ若ハ害蟲田畑以外ノ地ニ發生シタルトキ又ハ發生ノ虞アルトキハ府縣知事ハ市町村費ヲ以テ驅除豫防ヲ行フコトヲ得
第五條 府縣知事ハ前條ノ驅除豫防ノ爲ニ市町村ニ命シテ夫役ヲ市町村全部又ハ一部ノ田畑ノ作人及所有者ニ賦課セシムルコトヲ得
夫役ハ害蟲ノ種類ニ依リテ田又ハ畑ニ區別シテ賦課スルコトヲ得
夫役ハ各別ノ率ニ據リ小作人、自作人及地主ニ賦課スルコトヲ得
本條ノ場合ニ於テハ市制第百二十三條及町村制第百二十七條ヲ適用セス
第六條 府縣知事ハ驅除豫防ノ爲必要アルトキハ市町村費ヲ以テ溝渠ヲ設ケ又ハ農作物、藁稈、刈株、雜草ヲ拔棄若ハ燒棄スルコトヲ得
第七條 驅除豫防ノ必要ヨリ生シタル損害ニ對シ被害者ハ賠償ヲ要求スルコトヲ得ス
第八條 土地所有者、管理者又ハ使用者ハ官吏及其ノ指揮ヲ承クル者ノ其ノ地ニ入リ驅除豫防ニ從事スルヲ拒ムコトヲ得ス
第九條 府縣知事又ハ郡長ハ必要ナル場合ニ於テハ府縣稅(地方稅)又ハ郡費ヲ以テ第三條、第四條、第六條ノ費用ヲ補助シ若ハ驅除豫防ニ必要ナル器具ヲ給與シ又ハ貸與スルコトヲ得
第十條 蟲類以外ノ動物ト雖農作物ヲ害スルトキ又ハ害スルノ虞アルトキハ府縣知事ハ農商務大臣ノ認可ヲ經テ此ノ法律ヲ適用スルコトヲ得
第十一條 第三條ノ場合ニ於テ府縣知事ノ命令ニ從ハサル者ハ五錢以上一圓九十五錢以下ノ科料又ハ一日以上十日以下ノ拘留ニ處ス
第十二條 第六條及第八條ニ依レル官吏若ハ其ノ指揮ヲ承クル者ノ行爲ヲ妨害スル者ハ二圓以上二十圓以下ノ罰金又ハ十一日以上二十日以下ノ重禁錮ニ處ス
第十三條 此ノ法律ハ北海道、沖繩縣其ノ他市制、町村制ヲ施行セサル島嶼ニ之ヲ施行セス別ニ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十四條 此ノ法律ハ明治二十九年四月一日ヨリ施行ス