憲兵条例
法令番号: 勅令第九十五號
公布年月日: 明治28年7月4日
法令の形式: 勅令
朕憲兵條例ノ改正ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十八年七月三日
內閣總理大臣 伯爵 伊藤博文
海軍大臣 伯爵 西鄕從道
陸軍大臣 伯爵 大山巖
司法大臣 芳川顯正
內務大臣 子爵 野村靖
勅令第九十五號
憲兵條例
第一章 總則
第一條 憲兵ハ陸軍兵ノ一ニシテ陸軍大臣ノ管轄ニ屬シ軍事警察、行政警察、司法警察ヲ掌ル其ノ戰時若クハ事變ニ際シ特ニ要スル服務ハ別ニ之ヲ定ム
第二條 憲兵ノ職掌軍事警察ニ係ルモノハ陸軍大臣及海軍大臣ニ隸シ行政警察ニ係ルモノハ內務大臣ニ隸シ司法警察ニ係ルモノハ司法大臣ニ隸ス
第三條 憲兵ハ行政警察、司法警察ニ係ル事件ニ付警視總監北海道廳長官府縣知事東京府ヲ除ク及檢事ノ指示ヲ承ク
第四條 憲兵ハ其ノ職務上ニ關シ正當ノ職權ヲ有スル者ヨリ要求アルトキハ直ニ之ニ應スヘシ
第五條 憲兵ハ左ニ記載スル場合ニアラサレハ兵器ヲ用ウルコトヲ得ス
第一 暴行ヲ受クルトキ
第二 其ノ占守スル所ノ土地若クハ委託セラレタル場所又ハ人ヲ防衞スルニ兵力ヲ用ウルノ外他ニ手段ナキトキ又ハ兵力ヲ以テセサレハ抗抵ニ勝ツ能ハサルトキ
第六條 必要ノ場合ニ際シ內務大臣陸軍大臣協議シテ憲兵ヲ一時其ノ師管外ニ分派スルコトヲ得
第二章 配置編制
第七條 東京ニ憲兵司令部ヲ置キ各師管ニ憲兵隊ヲ配置ス其ノ管轄區域ハ師管ノ區域ニ依ル但一府縣ニシテ兩師管ニ跨ルモノハ其ノ府縣廳所在地ヲ管轄スル憲兵隊ノ管轄ニ屬ス
第八條 各師管ノ衞戍地、要塞地、鎭守府、北海道廳、各府縣廳所在地及其ノ他ノ要地ニ漸次憲兵分隊ヲ置キ其ノ管轄區域ヲ憲兵管區トス
第九條 各管區ヲ數箇ノ憲兵巡察區ニ分畫シ各巡察區ニ憲兵一伍若クハ數伍ヲ配置ス
第十條 憲兵管區ノ區域ハ內務大臣陸軍大臣協議シテ之ヲ定メ憲兵巡察區ハ憲兵隊長ヨリ警視總監北海道廳長官府縣知事東京府ヲ除クニ協議シテ之ヲ定ム
第十一條 憲兵司令部ノ職員左ノ如シ
憲兵司令官 憲兵大佐
副官 憲兵大中尉
軍吏
書記 憲兵下士軍吏部下士若クハ屬
第十二條 憲兵隊ノ職員左ノ如シ
本部
隊長 憲兵中少佐
副官 憲兵大中尉
軍吏
下副官(准士官) 憲兵曹長
書記 憲兵下士若クハ軍吏部下士
分隊
分隊長 憲兵大中尉
書記 憲兵下士
上等伍長(准士官)
伍長
憲兵曹長
但上等伍長ヲ置カサルコトヲ得
憲兵上等兵
第十三條 憲兵上等兵五名乃至十二名ヲ以テ一伍トシ數伍ヲ以テ一分隊トシ數分隊ヲ以テ一隊ト爲ス
時宜ニ依リ一伍中ノ若干名ヲ乘馬兵トナス
第十四條 憲兵隊ハ師管ノ番號ヲ附シ憲兵分隊ハ府縣名ヲ冠ス但一府縣ニ分隊二箇以上ヲ置クトキハ番號ヲ附ス
第三章 職務
第十五條 憲兵司令官ハ全國ノ憲兵隊ヲ統轄シ司令部ノ事務ヲ總理ス
第十六條 憲兵司令官非常若クハ緊要ノ事件アルヲ知リタルトキハ速ニ內務大臣陸軍大臣海軍大臣司法大臣ニ申報スヘシ
第十七條 憲兵司令官ハ軍紀、風紀、訓練、敎育及職務服行ノ程度ヲ檢閱スル爲メ必要ト認ムル時機ニ於テ各憲兵隊ヲ巡視シ其ノ景況ヲ陸軍大臣ニ申報スヘシ
第十八條 憲兵隊長ハ部下ヲ董督シ其ノ勤務方法ヲ指定シ隊中ノ事務ヲ總理ス
第十九條 憲兵隊長ハ地方ノ情勢ヲ審ニシ非常若クハ緊要ノ事件ヲ知リタルトキハ速ニ警視總監北海道廳長官府縣知事東京府ヲ除ク及其ノ地所在ノ檢事長檢事正及憲兵司令官ニ申報スヘシ
第二十條 憲兵分隊長ハ管區內ノ情勢ヲ審ニシ部下ヲ指揮シ分隊ノ事務ヲ處理ス又管區內ノ事情ハ常ニ地方警察官ト相互諜報スヘシ
第二十一條 憲兵上等伍長及伍長ハ憲兵上等兵ノ勤務ヲ指示監督シ且巡察區內ヲ巡視シ其ノ事情ヲ審ニスヘシ
第二十二條 憲兵上等兵ハ常ニ巡察區內ヲ畫シテ巡察シ其ノ事情ヲ審ニスヘシ但特ニ上官又ハ檢事ノ命アルトキハ自他ヲ區畫スルノ限ニアラス
第二十三條 憲兵ノ勤務諸報吿等ニ係ル細則ハ各主管大臣之ヲ定ム
第四章 補充
第二十四條 憲兵士官下士ノ補充ハ陸軍武官進級條例ニ依ルノ外各兵科士官下士ノ內ヨリ選任ス但二等軍曹ハ憲兵上等兵中一箇年以上其ノ職務ニ服シタル者ヨリ選任スルコトヲ得
第二十五條 憲兵上等兵ハ現役豫備役及後備役ニ在ル兵卒中志願ノ者ニシテ檢査合格ノ者ヨリ選用ス
第二十六條 憲兵下士上等兵ノ選任ニ係ル細則ハ陸軍大臣之ヲ定ム
第五章 服役
第二十七條 憲兵下士上等兵ハ任命ノ日ヨリ更ニ七箇年間現役ニ服セシム
現役滿期ノ時前兵科ノ服役年月ヲ通算シ十二箇年ニ滿タサル者ハ通シテ十二箇年ニ滿ツル迄後備役ニ服セシム其ノ十二箇年ヲ過クル者ハ之ヲ免除ス
第二十八條 憲兵下士上等兵ハ服役滿期ノ後再服役ヲ請願スルコトヲ得再服役ハ三年ヲ以テ一期トシ年齡定限ニ至ル迄ハ數次請願スルコトヲ得但一期間ニ於テ定限年齡ニ達スル者ハ其ノ定限年齡迄トス
其ノ再服役滿期ノトキハ前條第二項ノ例ニ依ル
第二十九條 再服役ヲ請願スル者ハ現ニ所屬ノ部隊ニ於テ服役スルモノトス其ノ分隊ニ在テハ分隊長ト誓約シ憲兵隊本部ニ在テハ隊長ト誓約シ憲兵司令部ニ在テハ憲兵司令官ト誓約ス但本文ノ場合ニ於テ分隊長及隊長ハ憲兵司令官ノ認可ヲ請フヘシ
第三十條 再服役中轉隊若クハ轉職セシムルコトアリト雖從前ノ誓約ハ新ニ屬スル所ノ部隊ノ長ニ移ルモノトス
第三十一條 服役期限旣ニ滿ツルト雖戰時若クハ事變ニ際シテハ期限ヲ延スコトアルヘシ
第三十二條 再服役滿期ニ至リタル者其ノ服役十二箇年ヲ過クルモ仍其ノ年數ヲ定メ後備役ニ服センコトヲ志願スルトキハ隊長憲兵司令官ノ認可ヲ得テ之ヲ許可スルコトヲ得但憲兵司令部附ノ者ハ憲兵司令官ニ於テ許可スヘシ
憲兵司令官又ハ隊長前項ノ服役ヲ許可シタルトキハ本人所轄ノ大隊區司令官ニ通報スヘシ
第三十三條 憲兵下士上等兵現役中ハ左ニ揭クル者ニ限リ特ニ之ヲ免除ス
第一 本人ヲ要スルニアラサレハ一家ノ生計ヲ營ミ難キ事實ヲ證明シ願出ル者
第二 疾病若クハ傷痍ニ因リ現役ニ堪ヘ難キ者
第三 素行不修又ハ職務不適當ノ者
第四 疾病若クハ傷痍ニ因リ常備後備ノ役ニ堪ヘ難キ者
第五 疾病若クハ傷痍ニ因リ永久服役ニ堪ヘ難キ者
第三十四條 前條第一第二第三ニ當ル者ニシテ前兵科ノ服役年月ヲ通算シ七箇年ニ滿タサル者ハ通シテ七箇年ニ滿ツル迄豫備役ニ十二箇年ニ滿タサル者ハ通シテ十二箇年ニ滿ツル迄後備役ニ服セシム其ノ服役十二箇年ヲ過キタル者及前條第四ニ當ル者ハ常備後備ノ役ヲ免除シ其ノ第五ニ當ル者ハ兵役ヲ免ス
第三十五條 憲兵下士上等兵其ノ職務ヲ辱シムルニ因リ懲罰ノ處分ヲ受クルトキハ陸軍懲罰令ノ規定ニ拘ラス官職ヲ免スルコトヲ得
第三十六條 前條ニ依リ官職ヲ免セラレタル者及刑法又ハ陸軍懲罰令ニ依リ官職ヲ失ヒ若クハ免セラレタル者ハ前兵科ニ服シ兵卒トナシ憲兵科服役年月ヲ通算シ十二箇年ニ滿タサル者ハ其ノ年數ニ從ヒ現役豫備役又ハ後備役ニ服セシム其ノ十二箇年ヲ過キタル者ハ之ヲ免除ス
第三十七條 第三十三條乃至第三十六條ニ當ル者アルトキハ憲兵司令官ハ陸軍大臣ノ認可ヲ請ヒ現役又ハ兵役ヲ免ス
第六章 附則
第三十八條 當分ノ內憲兵少尉ヲ以テ分隊長ノ職ニ充ルコトヲ得
朕憲兵条例ノ改正ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十八年七月三日
内閣総理大臣 伯爵 伊藤博文
海軍大臣 伯爵 西郷従道
陸軍大臣 伯爵 大山巌
司法大臣 芳川顕正
内務大臣 子爵 野村靖
勅令第九十五号
憲兵条例
第一章 総則
第一条 憲兵ハ陸軍兵ノ一ニシテ陸軍大臣ノ管轄ニ属シ軍事警察、行政警察、司法警察ヲ掌ル其ノ戦時若クハ事変ニ際シ特ニ要スル服務ハ別ニ之ヲ定ム
第二条 憲兵ノ職掌軍事警察ニ係ルモノハ陸軍大臣及海軍大臣ニ隷シ行政警察ニ係ルモノハ内務大臣ニ隷シ司法警察ニ係ルモノハ司法大臣ニ隷ス
第三条 憲兵ハ行政警察、司法警察ニ係ル事件ニ付警視総監北海道庁長官府県知事東京府ヲ除ク及検事ノ指示ヲ承ク
第四条 憲兵ハ其ノ職務上ニ関シ正当ノ職権ヲ有スル者ヨリ要求アルトキハ直ニ之ニ応スヘシ
第五条 憲兵ハ左ニ記載スル場合ニアラサレハ兵器ヲ用ウルコトヲ得ス
第一 暴行ヲ受クルトキ
第二 其ノ占守スル所ノ土地若クハ委託セラレタル場所又ハ人ヲ防衛スルニ兵力ヲ用ウルノ外他ニ手段ナキトキ又ハ兵力ヲ以テセサレハ抗抵ニ勝ツ能ハサルトキ
第六条 必要ノ場合ニ際シ内務大臣陸軍大臣協議シテ憲兵ヲ一時其ノ師管外ニ分派スルコトヲ得
第二章 配置編制
第七条 東京ニ憲兵司令部ヲ置キ各師管ニ憲兵隊ヲ配置ス其ノ管轄区域ハ師管ノ区域ニ依ル但一府県ニシテ両師管ニ跨ルモノハ其ノ府県庁所在地ヲ管轄スル憲兵隊ノ管轄ニ属ス
第八条 各師管ノ衛戍地、要塞地、鎮守府、北海道庁、各府県庁所在地及其ノ他ノ要地ニ漸次憲兵分隊ヲ置キ其ノ管轄区域ヲ憲兵管区トス
第九条 各管区ヲ数箇ノ憲兵巡察区ニ分画シ各巡察区ニ憲兵一伍若クハ数伍ヲ配置ス
第十条 憲兵管区ノ区域ハ内務大臣陸軍大臣協議シテ之ヲ定メ憲兵巡察区ハ憲兵隊長ヨリ警視総監北海道庁長官府県知事東京府ヲ除クニ協議シテ之ヲ定ム
第十一条 憲兵司令部ノ職員左ノ如シ
憲兵司令官 憲兵大佐
副官 憲兵大中尉
軍吏
書記 憲兵下士軍吏部下士若クハ属
第十二条 憲兵隊ノ職員左ノ如シ
本部
隊長 憲兵中少佐
副官 憲兵大中尉
軍吏
下副官(准士官) 憲兵曹長
書記 憲兵下士若クハ軍吏部下士
分隊
分隊長 憲兵大中尉
書記 憲兵下士
上等伍長(准士官)
伍長
憲兵曹長
但上等伍長ヲ置カサルコトヲ得
憲兵上等兵
第十三条 憲兵上等兵五名乃至十二名ヲ以テ一伍トシ数伍ヲ以テ一分隊トシ数分隊ヲ以テ一隊ト為ス
時宜ニ依リ一伍中ノ若干名ヲ乗馬兵トナス
第十四条 憲兵隊ハ師管ノ番号ヲ附シ憲兵分隊ハ府県名ヲ冠ス但一府県ニ分隊二箇以上ヲ置クトキハ番号ヲ附ス
第三章 職務
第十五条 憲兵司令官ハ全国ノ憲兵隊ヲ統轄シ司令部ノ事務ヲ総理ス
第十六条 憲兵司令官非常若クハ緊要ノ事件アルヲ知リタルトキハ速ニ内務大臣陸軍大臣海軍大臣司法大臣ニ申報スヘシ
第十七条 憲兵司令官ハ軍紀、風紀、訓練、教育及職務服行ノ程度ヲ検閲スル為メ必要ト認ムル時機ニ於テ各憲兵隊ヲ巡視シ其ノ景況ヲ陸軍大臣ニ申報スヘシ
第十八条 憲兵隊長ハ部下ヲ董督シ其ノ勤務方法ヲ指定シ隊中ノ事務ヲ総理ス
第十九条 憲兵隊長ハ地方ノ情勢ヲ審ニシ非常若クハ緊要ノ事件ヲ知リタルトキハ速ニ警視総監北海道庁長官府県知事東京府ヲ除ク及其ノ地所在ノ検事長検事正及憲兵司令官ニ申報スヘシ
第二十条 憲兵分隊長ハ管区内ノ情勢ヲ審ニシ部下ヲ指揮シ分隊ノ事務ヲ処理ス又管区内ノ事情ハ常ニ地方警察官ト相互諜報スヘシ
第二十一条 憲兵上等伍長及伍長ハ憲兵上等兵ノ勤務ヲ指示監督シ且巡察区内ヲ巡視シ其ノ事情ヲ審ニスヘシ
第二十二条 憲兵上等兵ハ常ニ巡察区内ヲ画シテ巡察シ其ノ事情ヲ審ニスヘシ但特ニ上官又ハ検事ノ命アルトキハ自他ヲ区画スルノ限ニアラス
第二十三条 憲兵ノ勤務諸報告等ニ係ル細則ハ各主管大臣之ヲ定ム
第四章 補充
第二十四条 憲兵士官下士ノ補充ハ陸軍武官進級条例ニ依ルノ外各兵科士官下士ノ内ヨリ選任ス但二等軍曹ハ憲兵上等兵中一箇年以上其ノ職務ニ服シタル者ヨリ選任スルコトヲ得
第二十五条 憲兵上等兵ハ現役予備役及後備役ニ在ル兵卒中志願ノ者ニシテ検査合格ノ者ヨリ選用ス
第二十六条 憲兵下士上等兵ノ選任ニ係ル細則ハ陸軍大臣之ヲ定ム
第五章 服役
第二十七条 憲兵下士上等兵ハ任命ノ日ヨリ更ニ七箇年間現役ニ服セシム
現役満期ノ時前兵科ノ服役年月ヲ通算シ十二箇年ニ満タサル者ハ通シテ十二箇年ニ満ツル迄後備役ニ服セシム其ノ十二箇年ヲ過クル者ハ之ヲ免除ス
第二十八条 憲兵下士上等兵ハ服役満期ノ後再服役ヲ請願スルコトヲ得再服役ハ三年ヲ以テ一期トシ年齢定限ニ至ル迄ハ数次請願スルコトヲ得但一期間ニ於テ定限年齢ニ達スル者ハ其ノ定限年齢迄トス
其ノ再服役満期ノトキハ前条第二項ノ例ニ依ル
第二十九条 再服役ヲ請願スル者ハ現ニ所属ノ部隊ニ於テ服役スルモノトス其ノ分隊ニ在テハ分隊長ト誓約シ憲兵隊本部ニ在テハ隊長ト誓約シ憲兵司令部ニ在テハ憲兵司令官ト誓約ス但本文ノ場合ニ於テ分隊長及隊長ハ憲兵司令官ノ認可ヲ請フヘシ
第三十条 再服役中転隊若クハ転職セシムルコトアリト雖従前ノ誓約ハ新ニ属スル所ノ部隊ノ長ニ移ルモノトス
第三十一条 服役期限既ニ満ツルト雖戦時若クハ事変ニ際シテハ期限ヲ延スコトアルヘシ
第三十二条 再服役満期ニ至リタル者其ノ服役十二箇年ヲ過クルモ仍其ノ年数ヲ定メ後備役ニ服センコトヲ志願スルトキハ隊長憲兵司令官ノ認可ヲ得テ之ヲ許可スルコトヲ得但憲兵司令部附ノ者ハ憲兵司令官ニ於テ許可スヘシ
憲兵司令官又ハ隊長前項ノ服役ヲ許可シタルトキハ本人所轄ノ大隊区司令官ニ通報スヘシ
第三十三条 憲兵下士上等兵現役中ハ左ニ掲クル者ニ限リ特ニ之ヲ免除ス
第一 本人ヲ要スルニアラサレハ一家ノ生計ヲ営ミ難キ事実ヲ証明シ願出ル者
第二 疾病若クハ傷痍ニ因リ現役ニ堪ヘ難キ者
第三 素行不修又ハ職務不適当ノ者
第四 疾病若クハ傷痍ニ因リ常備後備ノ役ニ堪ヘ難キ者
第五 疾病若クハ傷痍ニ因リ永久服役ニ堪ヘ難キ者
第三十四条 前条第一第二第三ニ当ル者ニシテ前兵科ノ服役年月ヲ通算シ七箇年ニ満タサル者ハ通シテ七箇年ニ満ツル迄予備役ニ十二箇年ニ満タサル者ハ通シテ十二箇年ニ満ツル迄後備役ニ服セシム其ノ服役十二箇年ヲ過キタル者及前条第四ニ当ル者ハ常備後備ノ役ヲ免除シ其ノ第五ニ当ル者ハ兵役ヲ免ス
第三十五条 憲兵下士上等兵其ノ職務ヲ辱シムルニ因リ懲罰ノ処分ヲ受クルトキハ陸軍懲罰令ノ規定ニ拘ラス官職ヲ免スルコトヲ得
第三十六条 前条ニ依リ官職ヲ免セラレタル者及刑法又ハ陸軍懲罰令ニ依リ官職ヲ失ヒ若クハ免セラレタル者ハ前兵科ニ服シ兵卒トナシ憲兵科服役年月ヲ通算シ十二箇年ニ満タサル者ハ其ノ年数ニ従ヒ現役予備役又ハ後備役ニ服セシム其ノ十二箇年ヲ過キタル者ハ之ヲ免除ス
第三十七条 第三十三条乃至第三十六条ニ当ル者アルトキハ憲兵司令官ハ陸軍大臣ノ認可ヲ請ヒ現役又ハ兵役ヲ免ス
第六章 附則
第三十八条 当分ノ内憲兵少尉ヲ以テ分隊長ノ職ニ充ルコトヲ得