税関規則
法令番号: 勅令第二百三號
公布年月日: 明治23年9月8日
法令の形式: 勅令
朕稅關規則ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム本規則ハ明治二十三年十一月一日ヨリ施行スヘキコトヲ命ス
御名御璽
明治二十三年九月六日
大藏大臣 伯爵 松方正義
勅令第二百三號
稅關規則
第一章 外國通航船及輸出入貨物
第一條 外國通航船入港シタルトキハ其船長ハ入港ノ時ヨリ四十八時內ニ入港屆書及積荷目錄ヲ稅關ニ差出ト同時ニ船籍證書船舶登記證書船鑑札及仕出港ノ出港免狀若ハ之ニ代ルヘキ證憑書類ヲ稅關ニ預ケ入港手數料十五圓ヲ納ムヘシ但貨物ヲ積卸セスシテ入港ノ時ヨリ四十八時內ニ出港スル者ハ此手數ヲ爲スニ及ハス
第二條 積荷目錄ニ遺漏若ハ相違ノ事項アルトキハ入港手數ヲ了リタル時ヨリ二十四時內ハ稅關ノ認許ヲ得之ヲ訂正スルコトヲ得
前項ノ時限ヲ經過シタル後積荷目錄ヲ訂正セントスルトキハ手數料十五圓ヲ納ムヘシ
第三條 外國通航船出港セントスルトキハ其船長ハ出港ノ時ヨリ二十四時前ニ出港屆書ヲ稅關ニ差出シ出港手數料七圓ヲ納メ第一條ニ依リ稅關ニ預ケタル船籍證書船舶登記證書船鑑札及證憑書類ヲ受戾シ出港免狀ヲ受クヘシ
第四條 外國通航船出港手數ヲ了リタル後尙ホ貨物ヲ船積シ若ハ陸揚セントスルトキハ更ニ第一條ノ手數ヲ爲シ其手數料ヲ納メ其出港ノ時モ亦第三條ノ手數ヲ爲シ其手數料ヲ納ムヘシ但稅關手數既濟ノ貨物ヲ船積シ若ハ陸揚スル者ハ此ノ限ニアラス
第五條 郵船ハ同時ニ入港及出港ノ手數ヲ爲スコトヲ得
第六條 郵船ハ其港ニ陸揚スル貨物ノ外ハ積荷目錄ニ記載スルコトヲ要セス
第七條 郵船ハ出港手數ヲ了リタル後ト雖第四條ノ手數ヲ爲サスシテ貨物ヲ船積シ若ハ陸揚スルコトヲ得
第八條 外國通航船航海中避難ノ爲メ已ムヲ得スシテ入港シタルトキハ入港ノ時ヨリ四十八時內ニ其事由ヲ稅關ニ申出認許ヲ受クヘシ
前項ノ船舶修繕其他已ムヲ得サル事故ニ由リ假ニ其積荷ヲ陸揚シ又ハ損傷ノ貨物ヲ賣拂ヒ若ハ船中必需ノ物品ヲ積入ル場合ニ於テハ入出港手數ヲ爲スヲ要セス其他ノ貨物ヲ陸揚シ船積シ船移シ若ハ假ニ陸揚シタル貨物ヲ賣拂ハントスルトキハ第一條ノ手數ヲ爲シ其手數料ヲ納メ其出港ノ時モ亦第三條ノ手數ヲ爲シ其手數料ヲ納ムヘシ
第九條 外國通航船ハ日沒ヨリ日出マテノ間及稅關ノ休日ニハ稅關長ノ特許ヲ受クルニ非サレハ貨物ヲ陸揚シ船積シ若ハ船移スルコトヲ得ス
前項ノ日時間ハ艙口其他貨物ヲ納ルヘキ場所ハ稅關監吏之ヲ封鎖スヘシ
第十條 外國通航船避難ノ爲メ已ムヲ得スシテ不開港ニ入港シタルトキハ船長ハ其事由ヲ記シタル書面ヲ其地ノ町村役場若ハ浦役場ニ差出スヘシ若シ船中需用品ヲ積入ルヽトキハ別ニ其目錄ヲ差出シ各其證明ヲ受ケ他日開港ニ入港シタルトキ之ヲ稅關ニ差出スヘシ
第十一條 船舶ヲ外國通航船ト爲シ及外國通航船ヲ沿海通航船ト爲サントスルトキハ船主ヨリ稅關ニ申出船中ノ檢査ヲ經免狀ヲ受クヘシ
第十二條 輸出貨物ヲ船積セントスル者ハ其申吿書ヲ稅關ニ差出シ現品ノ檢査ヲ經輸出稅目ニ從ヒ納稅シ船積免狀ヲ受クヘシ
第十三條 輸入手數既濟ノ外國產貨物ヲ外國ニ積戾サントスル者ハ輸出稅ヲ納ムルニ及ハス但書面ヲ以テ其旨ヲ稅關ニ申出檢査ヲ經船積免狀ヲ受クヘシ
第十四條 船中ノ需用品ニ付キテハ輸出稅ヲ納ムルニ及ハス但船長ハ前條ノ手數ヲ爲スヘシ
第十五條 輸入貨物ヲ陸揚セントスル者ハ其申吿書ニ仕入書ヲ添ヘ之ヲ稅關ニ差出シ陸揚免狀ヲ受ケ其貨物ヲ陸揚シ現品ノ檢査ヲ經輸入稅目ニ從ヒ納稅シ輸入免狀ヲ受ケテ之ヲ引取ヘシ
前項ノ仕入書ハ貨物ノ輸入手數濟ノ上其貨主ニ返付スヘシ
第十六條 內國產ノ貨物ヲ外國ヨリ積戾リ左ノ事項ヲ具備スルトキハ輸入稅ヲ納ムルニ及ハス但前條ノ手數ヲ爲スヘシ
一 輸出ノ時ノ性質若ハ形狀ヲ變セサルコト
二 輸出ノ日ヨリ滿五箇年ヲ經過セサルコト
三 輸出免狀ヲ付スルコト
第十七條 無稅品ヲ除クノ外仕入書ヲ付セサル貨物ハ輸入ヲ許サス但稅關長其仕入書ヲ差出シ能ハサル理由アリト認メ該貨主稅關官吏ノ査定セル數量、尺度若ハ價額ニ從ヒ納税スルモノハ此ノ限ニアラス
第十八條 價ニ從ヒ徵稅スヘキ貨物ニシテ其原價ヲ稅關ニ於テ不相當ト認ムルトキハ稅關鑑定官吏ヲシテ其價ヲ査定セシメ其査定額ニ從ヒ納稅セシムヘシ
若シ貨主前項ノ査定額ニ從ヒ納稅スルコトヲ欲セサルトキハ該査定額ヲ以テ稅關ニ其貨物ノ買上ヲ請フコトヲ得但第十七條ノ場合ニ於テハ此ノ限ニアラス
第十九條 外國通航船貨物ヲ他ノ船舶ニ若ハ他ノ船舶ヨリ積移サントスルトキハ書面ヲ以テ其旨ヲ稅關ニ申出船移免狀ヲ受クヘシ但郵船ニ積載シタル貨物ヲ其會社所屬ノ庫船若ハ艀舟ニ積移スニハ免狀ヲ受クルニ及ハス
第二十條 有稅ノ貨物損傷シタルカ爲メニ減稅ヲ請ハントスル者ハ現品ノ檢査ヲ受クル前其旨ヲ稅關長ニ申出ヘシ稅關長ハ稅關鑑定官吏ヲシテ現品損傷ノ程度ヲ査定セシメ相當ノ減稅ヲ爲スヘシ
第二十一條 外國軍艦ノ備用品ヲ買受クルトキハ賣主ノ證明書ヲ受ケ書面ヲ以テ其旨ヲ稅關ニ申出相當ノ輸入稅ヲ納ムヘシ
第二十二條 內國產金銀地金ハ政府ニ於テ公賣シタルモノヲ除クノ外ハ輸出スルコトヲ得ス
第二十三條 船客ノ旅具ハ陸揚船積共書面ヲ以テ其旨ヲ申出ルニ及ハス但通關前ニ稅關監吏ノ檢査ヲ受クヘシ
稅關ニ於テ旅具ト認メサルモノハ相當ノ稅金ヲ納メシムヘシ
第二十四條 第八條ノ船舶修繕其他已ムヲ得サル事故ニ由リ一時貨物ヲ陸揚スルトキハ之ヲ稅關ニ預クヘシ
前項ノ貨物ヲ陸揚シ及之ヲ本船ニ積戾スニハ輸入出ノ手數ヲ爲スニ及ハス但其貸物ノ保管ニ要スル諸費ハ船長ヨリ之ヲ稅關ニ納ムヘシ
第一項ノ貨物ヲ賣拂ハントスルトキハ第十五條ノ手數ヲ爲シ其稅金ヲ納ムヘシ
第二十五條 外國通航船若ハ外國船ヲ以テ貨物ヲ開港間ニ囘漕セントスル者ハ書面ヲ以テ其旨ヲ稅關ニ申出現品ノ檢査ヲ經囘漕免狀ヲ受ケテ之ヲ船積スヘシ
第二十六條 前條ノ貨物若シ有稅內國產ナルトキハ相當ノ稅金ヲ假納スルカ若ハ稅關長ノ滿足スヘキ證書ヲ差入レ置キ囘漕免狀付與ノ日ヨリ滿六箇月以內ニ仕向港稅關ノ陸揚證書ヲ差出シ其假納稅金若ハ前ニ差入レ置キタル證書ヲ受戾スヘシ
前項ノ期限內ニ仕向港稅關ノ陸揚證書ヲ差出サヽルニ於テハ輸出シタルモノト看做シ其稅金ヲ納メシムヘシ
第二十七條 第二十五條ノ貨物若シ輸出禁制品ナルトキハ囘漕免狀付與ノ日ヨリ滿六箇月以內ニ仕向港稅關ノ陸揚證書ヲ差出スヘシ
第二十八條 第二十六條及第二十七條ノ貨物ヲ積載シタル船舶航海中破船其他ノ事故ニ由リ貨物ヲ仕向港ニ囘漕シ能ハサルトキハ其事由ヲ仕出港稅關ニ屆出該船出港ノ日ヨリ滿一箇年以內ニ其證據ヲ擧示シ假納稅若ハ前ニ差入レ置キタル證書ヲ受戾スコトヲ得
第二十九條 第二十五條ノ囘漕貨物ヲ仕向港ニ於テ陸揚セントスル者ハ書面ヲ以テ其仕向港ノ稅關ニ申出仕出港稅關ヨリ受ケタル囘漕免狀ニ陸揚ノ證明ヲ受ケ現品ノ檢査ヲ經テ之ヲ引取ヘシ
前項囘漕免狀ノ紛失若ハ遺忘ニ因リ之ヲ仕向港稅關ニ差出シ難キトキハ稅關長ノ滿足スヘキ證書ヲ差入レ置キ其證書ノ日附ヨリ滿四箇月以內ニ囘漕免狀若ハ之ニ代ルヘキ仕出港稅關ノ證明書ヲ差出シ前ニ差入レ置キタル證書ヲ受戾スヘシ
第三十條 外國通航船修繕ノ爲メ開港ヨリ不開港ニ囘船セントスルトキ又ハ重量ノ貨物ニシテ開港ニ於テ積卸ヲ爲シ難ク不開港ニ囘船セントスルトキハ書面ヲ以テ其旨ヲ申出稅關長ノ特許ヲ受クヘシ
第二章 沿海通航船及輸入手數未濟貨物囘漕
第三十一條 沿海通航船入港シタルトキハ船長ハ入港ノ時ヨリ二十四時內ニ入港屆書ヲ稅關ニ差出シ同時ニ船籍證書、船舶登記證書及船鑑札ヲ預クヘシ
第三十二條 沿海通航船出港セントスルトキハ其船長ハ出港ノ時ヨリ四時前ニ出港屆書ヲ稅關ニ差出シ船籍證書、船舶登記證書及船鑑札ヲ受戾スヘシ
第三十三條 船籍證書、船舶登記證書ノ受有ヲ要セサル諸船及一定ノ港津間ニ往復スル積量百噸以下ノ西洋形船舶ハ船主ヨリ豫テ稅關ニ屆出認許ヲ受クルニ於テハ第三十一條及第三十二條ノ手數ヲ爲スニ及ハス
第三十四條 沿海通航船輸入手數未濟ノ貨物ヲ積載シテ出港セントスルトキハ其船長ハ第三十二條ノ手數ヲ爲スト同時ニ出港積荷目錄二通ヲ稅關ニ差出スヘシ
第三十五條 前條ノ船舶仕向港ニ入港シタルトキハ其船長ハ第三十一條ノ手數ヲ爲スト同時ニ入港積荷目錄ヲ稅關ニ差出スヘシ
第三十六條 沿海通航船ヲ以テ輸入手數未濟ノ貨物ヲ開港間ニ囘漕セントスル者ハ書面ヲ以テ其旨ヲ稅關ニ申出船積免狀ヲ受クヘシ
前項ノ貨物ヲ陸揚セントスル者ハ第十五條ニ又船移セントスル者ハ第十九條ニ據ルヘシ
第三章 罰則
第三十七條 外國通航船第一條ノ時限內ニ入港手數ヲ爲サヽルトキハ船長ヲ六十圓ノ罰金ニ處シ尙ホ其手數ヲ爲サヽルニ於テハ初犯ノ時ヨリ二十四時ヲ過ル每ニ更ニ同額ノ罰金ニ處ス
第三十八條 第九條第二項ニ揭クル稅關監吏ノ爲シタル封鎖ヲ破却シ若ハ之ヲ取除キタルトキハ船長ヲ六十圓ノ罰金ニ處ス
第三十九條 第十九條及第三十六條第二項ノ船移免狀ヲ受ケスシテ船移シタル者ハ前條同額ノ罰金ニ處ス
第四十條 外國通航船第八條第一項ノ場合ニ於テ規定ノ時限內ニ入港ノ事由ヲ申出サルトキハ船長ヲ十五圓ノ罰金ニ處ス
第四十一條 外國通航船第十條ノ場合ニ於テ町村役場若ハ浦役場ノ證明ヲ受ケス又ハ證明ヲ受クルト雖之ヲ稅關ニ差出サヽルトキハ船長ヲ十五圓ノ罰金ニ處ス
第四十二條 沿海通航船第三十一條ノ時限內ニ入港ノ手數ヲ爲サス又ハ第三十二條ノ時限前ニ出港ノ手數ヲ爲サヽルトキハ船長ヲ五圓ノ罰金ニ處ス
第四章 雜則
第四十三條 輸出入貨物ノ類別ニ就キ稅關鑑定官吏ノ査定ニ不服アル者ハ其査定ノ日ヨリ十日以內ニ稅關長ニ申吿シ判定ヲ請フコトヲ得
稅關長ノ判定ニ不服アル者ハ判定ノ日ヨリ三十日以內ニ判定書ヲ添ヘ大藏大臣ニ裁定ヲ請フコトヲ得
第四十四條 稅關官吏ハ必要ノ場合ニハ輸出入貨物ノ小部分ヲ見本トシテ稅關ニ留置クコトヲ得
第四十五條 此ノ規則ニ依リ稅關ニ差出スヘキ書面ハ總テ稅關一定ノ書式ヲ用ヒ船主、船長若ハ貨主之ニ署名捺印スヘシ
第四十六條 稅關ヨリ交付スル諸免狀ノ謄本其他別段ノ證書ヲ請フ者ハ一通每ニ一圓五十錢ノ手數料ヲ納ムヘシ
第四十七條 此ノ規則ニ於テ日時ヲ以テ期限ヲ設ケタルモノハ其期限中ニ稅關ノ休日ヲ算入セス又年月ヲ以テ期限ヲ設ケタルモノハ休日ヲ算入ス
第四十八條 稅關ノ執務時間ハ休日ヲ除キ午前十時ヨリ午後四時マテトス但臨時開廳ヲ請フ者ハ稅關長ノ特許ヲ受クヘシ
第四十九條 第九條第一項及第四十八條但書ノ場合ニ於テ特許ヲ請フ者ハ定規ノ手數料ヲ納ムヘシ但其手數料ハ大藏大臣之ヲ定ム
第五十條 此ノ規則ニ於テ船主ト稱スルハ其船ノ所有主若ハ現ニ其船ノ使用權ヲ有スル者ヲ云ヒ船長ト稱スルハ現ニ其船ヲ管理シ若ハ指揮スル者ヲ云ヒ貨主ト稱スルハ貨物ノ所有主若ハ其受託人ヲ云フ
第五十一條 此ノ規則ニ於テ輸出ト稱スルハ貨物ヲ外國ヘ輸出スルヲ云ヒ輸入ト稱スルハ貨物ヲ外國ヨリ輸入スルヲ云ヒ貨物ト稱スルハ旅具及船用品ヲ除クノ外一切ノ物件ヲ云フ
第五十二條 此ノ規則ニ於テ入港ノ時ト稱スルハ船舶ノ投錨若ハ繫留セシトキヲ云ヒ出港ノ時ト稱スルハ拔錨若ハ解纜ノトキヲ云フ
第五十三條 密輸出入ヲ稅關ニ申吿スル者ニハ其沒收セシ貨物代價ノ半額ヲ給ス
附 則
第五十四條 露西亞國樺太島貿易ニ從事スル船舶ニ限リ當分ノ內出入港手數料及該船ニ搭載スル貨物ノ輸出入稅ヲ免除ス但船舶ノ出入港手數ニ限リ第三十一條第三十二條ヲ適用ス
朕税関規則ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム本規則ハ明治二十三年十一月一日ヨリ施行スヘキコトヲ命ス
御名御璽
明治二十三年九月六日
大蔵大臣 伯爵 松方正義
勅令第二百三号
税関規則
第一章 外国通航船及輸出入貨物
第一条 外国通航船入港シタルトキハ其船長ハ入港ノ時ヨリ四十八時内ニ入港届書及積荷目録ヲ税関ニ差出ト同時ニ船籍証書船舶登記証書船鑑札及仕出港ノ出港免状若ハ之ニ代ルヘキ証憑書類ヲ税関ニ預ケ入港手数料十五円ヲ納ムヘシ但貨物ヲ積卸セスシテ入港ノ時ヨリ四十八時内ニ出港スル者ハ此手数ヲ為スニ及ハス
第二条 積荷目録ニ遺漏若ハ相違ノ事項アルトキハ入港手数ヲ了リタル時ヨリ二十四時内ハ税関ノ認許ヲ得之ヲ訂正スルコトヲ得
前項ノ時限ヲ経過シタル後積荷目録ヲ訂正セントスルトキハ手数料十五円ヲ納ムヘシ
第三条 外国通航船出港セントスルトキハ其船長ハ出港ノ時ヨリ二十四時前ニ出港届書ヲ税関ニ差出シ出港手数料七円ヲ納メ第一条ニ依リ税関ニ預ケタル船籍証書船舶登記証書船鑑札及証憑書類ヲ受戻シ出港免状ヲ受クヘシ
第四条 外国通航船出港手数ヲ了リタル後尚ホ貨物ヲ船積シ若ハ陸揚セントスルトキハ更ニ第一条ノ手数ヲ為シ其手数料ヲ納メ其出港ノ時モ亦第三条ノ手数ヲ為シ其手数料ヲ納ムヘシ但税関手数既済ノ貨物ヲ船積シ若ハ陸揚スル者ハ此ノ限ニアラス
第五条 郵船ハ同時ニ入港及出港ノ手数ヲ為スコトヲ得
第六条 郵船ハ其港ニ陸揚スル貨物ノ外ハ積荷目録ニ記載スルコトヲ要セス
第七条 郵船ハ出港手数ヲ了リタル後ト雖第四条ノ手数ヲ為サスシテ貨物ヲ船積シ若ハ陸揚スルコトヲ得
第八条 外国通航船航海中避難ノ為メ已ムヲ得スシテ入港シタルトキハ入港ノ時ヨリ四十八時内ニ其事由ヲ税関ニ申出認許ヲ受クヘシ
前項ノ船舶修繕其他已ムヲ得サル事故ニ由リ仮ニ其積荷ヲ陸揚シ又ハ損傷ノ貨物ヲ売払ヒ若ハ船中必需ノ物品ヲ積入ル場合ニ於テハ入出港手数ヲ為スヲ要セス其他ノ貨物ヲ陸揚シ船積シ船移シ若ハ仮ニ陸揚シタル貨物ヲ売払ハントスルトキハ第一条ノ手数ヲ為シ其手数料ヲ納メ其出港ノ時モ亦第三条ノ手数ヲ為シ其手数料ヲ納ムヘシ
第九条 外国通航船ハ日没ヨリ日出マテノ間及税関ノ休日ニハ税関長ノ特許ヲ受クルニ非サレハ貨物ヲ陸揚シ船積シ若ハ船移スルコトヲ得ス
前項ノ日時間ハ艙口其他貨物ヲ納ルヘキ場所ハ税関監吏之ヲ封鎖スヘシ
第十条 外国通航船避難ノ為メ已ムヲ得スシテ不開港ニ入港シタルトキハ船長ハ其事由ヲ記シタル書面ヲ其地ノ町村役場若ハ浦役場ニ差出スヘシ若シ船中需用品ヲ積入ルヽトキハ別ニ其目録ヲ差出シ各其証明ヲ受ケ他日開港ニ入港シタルトキ之ヲ税関ニ差出スヘシ
第十一条 船舶ヲ外国通航船ト為シ及外国通航船ヲ沿海通航船ト為サントスルトキハ船主ヨリ税関ニ申出船中ノ検査ヲ経免状ヲ受クヘシ
第十二条 輸出貨物ヲ船積セントスル者ハ其申告書ヲ税関ニ差出シ現品ノ検査ヲ経輸出税目ニ従ヒ納税シ船積免状ヲ受クヘシ
第十三条 輸入手数既済ノ外国産貨物ヲ外国ニ積戻サントスル者ハ輸出税ヲ納ムルニ及ハス但書面ヲ以テ其旨ヲ税関ニ申出検査ヲ経船積免状ヲ受クヘシ
第十四条 船中ノ需用品ニ付キテハ輸出税ヲ納ムルニ及ハス但船長ハ前条ノ手数ヲ為スヘシ
第十五条 輸入貨物ヲ陸揚セントスル者ハ其申告書ニ仕入書ヲ添ヘ之ヲ税関ニ差出シ陸揚免状ヲ受ケ其貨物ヲ陸揚シ現品ノ検査ヲ経輸入税目ニ従ヒ納税シ輸入免状ヲ受ケテ之ヲ引取ヘシ
前項ノ仕入書ハ貨物ノ輸入手数済ノ上其貨主ニ返付スヘシ
第十六条 内国産ノ貨物ヲ外国ヨリ積戻リ左ノ事項ヲ具備スルトキハ輸入税ヲ納ムルニ及ハス但前条ノ手数ヲ為スヘシ
一 輸出ノ時ノ性質若ハ形状ヲ変セサルコト
二 輸出ノ日ヨリ満五箇年ヲ経過セサルコト
三 輸出免状ヲ付スルコト
第十七条 無税品ヲ除クノ外仕入書ヲ付セサル貨物ハ輸入ヲ許サス但税関長其仕入書ヲ差出シ能ハサル理由アリト認メ該貨主税関官吏ノ査定セル数量、尺度若ハ価額ニ従ヒ納税スルモノハ此ノ限ニアラス
第十八条 価ニ従ヒ徴税スヘキ貨物ニシテ其原価ヲ税関ニ於テ不相当ト認ムルトキハ税関鑑定官吏ヲシテ其価ヲ査定セシメ其査定額ニ従ヒ納税セシムヘシ
若シ貨主前項ノ査定額ニ従ヒ納税スルコトヲ欲セサルトキハ該査定額ヲ以テ税関ニ其貨物ノ買上ヲ請フコトヲ得但第十七条ノ場合ニ於テハ此ノ限ニアラス
第十九条 外国通航船貨物ヲ他ノ船舶ニ若ハ他ノ船舶ヨリ積移サントスルトキハ書面ヲ以テ其旨ヲ税関ニ申出船移免状ヲ受クヘシ但郵船ニ積載シタル貨物ヲ其会社所属ノ庫船若ハ艀舟ニ積移スニハ免状ヲ受クルニ及ハス
第二十条 有税ノ貨物損傷シタルカ為メニ減税ヲ請ハントスル者ハ現品ノ検査ヲ受クル前其旨ヲ税関長ニ申出ヘシ税関長ハ税関鑑定官吏ヲシテ現品損傷ノ程度ヲ査定セシメ相当ノ減税ヲ為スヘシ
第二十一条 外国軍艦ノ備用品ヲ買受クルトキハ売主ノ証明書ヲ受ケ書面ヲ以テ其旨ヲ税関ニ申出相当ノ輸入税ヲ納ムヘシ
第二十二条 内国産金銀地金ハ政府ニ於テ公売シタルモノヲ除クノ外ハ輸出スルコトヲ得ス
第二十三条 船客ノ旅具ハ陸揚船積共書面ヲ以テ其旨ヲ申出ルニ及ハス但通関前ニ税関監吏ノ検査ヲ受クヘシ
税関ニ於テ旅具ト認メサルモノハ相当ノ税金ヲ納メシムヘシ
第二十四条 第八条ノ船舶修繕其他已ムヲ得サル事故ニ由リ一時貨物ヲ陸揚スルトキハ之ヲ税関ニ預クヘシ
前項ノ貨物ヲ陸揚シ及之ヲ本船ニ積戻スニハ輸入出ノ手数ヲ為スニ及ハス但其貸物ノ保管ニ要スル諸費ハ船長ヨリ之ヲ税関ニ納ムヘシ
第一項ノ貨物ヲ売払ハントスルトキハ第十五条ノ手数ヲ為シ其税金ヲ納ムヘシ
第二十五条 外国通航船若ハ外国船ヲ以テ貨物ヲ開港間ニ回漕セントスル者ハ書面ヲ以テ其旨ヲ税関ニ申出現品ノ検査ヲ経回漕免状ヲ受ケテ之ヲ船積スヘシ
第二十六条 前条ノ貨物若シ有税内国産ナルトキハ相当ノ税金ヲ仮納スルカ若ハ税関長ノ満足スヘキ証書ヲ差入レ置キ回漕免状付与ノ日ヨリ満六箇月以内ニ仕向港税関ノ陸揚証書ヲ差出シ其仮納税金若ハ前ニ差入レ置キタル証書ヲ受戻スヘシ
前項ノ期限内ニ仕向港税関ノ陸揚証書ヲ差出サヽルニ於テハ輸出シタルモノト看做シ其税金ヲ納メシムヘシ
第二十七条 第二十五条ノ貨物若シ輸出禁制品ナルトキハ回漕免状付与ノ日ヨリ満六箇月以内ニ仕向港税関ノ陸揚証書ヲ差出スヘシ
第二十八条 第二十六条及第二十七条ノ貨物ヲ積載シタル船舶航海中破船其他ノ事故ニ由リ貨物ヲ仕向港ニ回漕シ能ハサルトキハ其事由ヲ仕出港税関ニ届出該船出港ノ日ヨリ満一箇年以内ニ其証拠ヲ挙示シ仮納税若ハ前ニ差入レ置キタル証書ヲ受戻スコトヲ得
第二十九条 第二十五条ノ回漕貨物ヲ仕向港ニ於テ陸揚セントスル者ハ書面ヲ以テ其仕向港ノ税関ニ申出仕出港税関ヨリ受ケタル回漕免状ニ陸揚ノ証明ヲ受ケ現品ノ検査ヲ経テ之ヲ引取ヘシ
前項回漕免状ノ紛失若ハ遺忘ニ因リ之ヲ仕向港税関ニ差出シ難キトキハ税関長ノ満足スヘキ証書ヲ差入レ置キ其証書ノ日附ヨリ満四箇月以内ニ回漕免状若ハ之ニ代ルヘキ仕出港税関ノ証明書ヲ差出シ前ニ差入レ置キタル証書ヲ受戻スヘシ
第三十条 外国通航船修繕ノ為メ開港ヨリ不開港ニ回船セントスルトキ又ハ重量ノ貨物ニシテ開港ニ於テ積卸ヲ為シ難ク不開港ニ回船セントスルトキハ書面ヲ以テ其旨ヲ申出税関長ノ特許ヲ受クヘシ
第二章 沿海通航船及輸入手数未済貨物回漕
第三十一条 沿海通航船入港シタルトキハ船長ハ入港ノ時ヨリ二十四時内ニ入港届書ヲ税関ニ差出シ同時ニ船籍証書、船舶登記証書及船鑑札ヲ預クヘシ
第三十二条 沿海通航船出港セントスルトキハ其船長ハ出港ノ時ヨリ四時前ニ出港届書ヲ税関ニ差出シ船籍証書、船舶登記証書及船鑑札ヲ受戻スヘシ
第三十三条 船籍証書、船舶登記証書ノ受有ヲ要セサル諸船及一定ノ港津間ニ往復スル積量百噸以下ノ西洋形船舶ハ船主ヨリ予テ税関ニ届出認許ヲ受クルニ於テハ第三十一条及第三十二条ノ手数ヲ為スニ及ハス
第三十四条 沿海通航船輸入手数未済ノ貨物ヲ積載シテ出港セントスルトキハ其船長ハ第三十二条ノ手数ヲ為スト同時ニ出港積荷目録二通ヲ税関ニ差出スヘシ
第三十五条 前条ノ船舶仕向港ニ入港シタルトキハ其船長ハ第三十一条ノ手数ヲ為スト同時ニ入港積荷目録ヲ税関ニ差出スヘシ
第三十六条 沿海通航船ヲ以テ輸入手数未済ノ貨物ヲ開港間ニ回漕セントスル者ハ書面ヲ以テ其旨ヲ税関ニ申出船積免状ヲ受クヘシ
前項ノ貨物ヲ陸揚セントスル者ハ第十五条ニ又船移セントスル者ハ第十九条ニ拠ルヘシ
第三章 罰則
第三十七条 外国通航船第一条ノ時限内ニ入港手数ヲ為サヽルトキハ船長ヲ六十円ノ罰金ニ処シ尚ホ其手数ヲ為サヽルニ於テハ初犯ノ時ヨリ二十四時ヲ過ル毎ニ更ニ同額ノ罰金ニ処ス
第三十八条 第九条第二項ニ掲クル税関監吏ノ為シタル封鎖ヲ破却シ若ハ之ヲ取除キタルトキハ船長ヲ六十円ノ罰金ニ処ス
第三十九条 第十九条及第三十六条第二項ノ船移免状ヲ受ケスシテ船移シタル者ハ前条同額ノ罰金ニ処ス
第四十条 外国通航船第八条第一項ノ場合ニ於テ規定ノ時限内ニ入港ノ事由ヲ申出サルトキハ船長ヲ十五円ノ罰金ニ処ス
第四十一条 外国通航船第十条ノ場合ニ於テ町村役場若ハ浦役場ノ証明ヲ受ケス又ハ証明ヲ受クルト雖之ヲ税関ニ差出サヽルトキハ船長ヲ十五円ノ罰金ニ処ス
第四十二条 沿海通航船第三十一条ノ時限内ニ入港ノ手数ヲ為サス又ハ第三十二条ノ時限前ニ出港ノ手数ヲ為サヽルトキハ船長ヲ五円ノ罰金ニ処ス
第四章 雑則
第四十三条 輸出入貨物ノ類別ニ就キ税関鑑定官吏ノ査定ニ不服アル者ハ其査定ノ日ヨリ十日以内ニ税関長ニ申告シ判定ヲ請フコトヲ得
税関長ノ判定ニ不服アル者ハ判定ノ日ヨリ三十日以内ニ判定書ヲ添ヘ大蔵大臣ニ裁定ヲ請フコトヲ得
第四十四条 税関官吏ハ必要ノ場合ニハ輸出入貨物ノ小部分ヲ見本トシテ税関ニ留置クコトヲ得
第四十五条 此ノ規則ニ依リ税関ニ差出スヘキ書面ハ総テ税関一定ノ書式ヲ用ヒ船主、船長若ハ貨主之ニ署名捺印スヘシ
第四十六条 税関ヨリ交付スル諸免状ノ謄本其他別段ノ証書ヲ請フ者ハ一通毎ニ一円五十銭ノ手数料ヲ納ムヘシ
第四十七条 此ノ規則ニ於テ日時ヲ以テ期限ヲ設ケタルモノハ其期限中ニ税関ノ休日ヲ算入セス又年月ヲ以テ期限ヲ設ケタルモノハ休日ヲ算入ス
第四十八条 税関ノ執務時間ハ休日ヲ除キ午前十時ヨリ午後四時マテトス但臨時開庁ヲ請フ者ハ税関長ノ特許ヲ受クヘシ
第四十九条 第九条第一項及第四十八条但書ノ場合ニ於テ特許ヲ請フ者ハ定規ノ手数料ヲ納ムヘシ但其手数料ハ大蔵大臣之ヲ定ム
第五十条 此ノ規則ニ於テ船主ト称スルハ其船ノ所有主若ハ現ニ其船ノ使用権ヲ有スル者ヲ云ヒ船長ト称スルハ現ニ其船ヲ管理シ若ハ指揮スル者ヲ云ヒ貨主ト称スルハ貨物ノ所有主若ハ其受託人ヲ云フ
第五十一条 此ノ規則ニ於テ輸出ト称スルハ貨物ヲ外国ヘ輸出スルヲ云ヒ輸入ト称スルハ貨物ヲ外国ヨリ輸入スルヲ云ヒ貨物ト称スルハ旅具及船用品ヲ除クノ外一切ノ物件ヲ云フ
第五十二条 此ノ規則ニ於テ入港ノ時ト称スルハ船舶ノ投錨若ハ繋留セシトキヲ云ヒ出港ノ時ト称スルハ抜錨若ハ解纜ノトキヲ云フ
第五十三条 密輸出入ヲ税関ニ申告スル者ニハ其没収セシ貨物代価ノ半額ヲ給ス
附 則
第五十四条 露西亜国樺太島貿易ニ従事スル船舶ニ限リ当分ノ内出入港手数料及該船ニ搭載スル貨物ノ輸出入税ヲ免除ス但船舶ノ出入港手数ニ限リ第三十一条第三十二条ヲ適用ス