砲兵方面条例
法令番号: 勅令第百七十一號
公布年月日: 明治23年8月15日
法令の形式: 勅令
朕砲兵方面條例ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十三年八月十四日
陸軍大臣 伯爵 大山巖
勅令第百七十一號
砲兵方面條例
第一條 砲兵方面ハ要塞ノ備砲及陸軍所要兵器彈藥ノ購買貯藏保存修理及支給分配ノ事ヲ掌ル所トス
第二條 砲兵方面ハ第一方面第二方面第三方面トス第一方面ハ本署ヲ東京ニ置キ第一第二師管及北海道ヲ管轄シ第二方面ハ本署ヲ大阪ニ置キ第三第四師管ヲ管轄シ第三方面ハ本署ヲ下ノ關ニ置キ第五第六師管ヲ管轄ス
第三條 師團司令部要塞司令部所在ノ地ニ砲兵方面支署ヲ置キ支署ノ附近ニアラサル旅團司令部所在ノ地ニ武庫ヲ置ク武庫ハ支署ノ管轄トス
前項ノ外樞要ナル衞戍地ニハ支署又ハ武庫ヲ置クコトアルヘシ其設置ハ陸軍大臣之ヲ定ム
第四條 砲兵方面ニ左ノ職員ヲ置ク
本署
提理 砲兵大中佐 一人
副提理 砲兵少佐 一人
署員 砲兵大中尉 二人
二三等軍吏 一人
支署
支署長 砲兵少佐或ハ砲兵大尉 一人
署員 砲兵大中尉 一人
第五條 前條ノ外本署支署ニ砲兵上等監護砲兵科下士及軍吏部下士若干ヲ置キ武庫ニ砲兵科下士若干ヲ置ク其人員ノ區分配置ハ陸軍大臣之ヲ定ム
第六條 第三條第二項ニ揭ル支署ニ在テハ衞戍地ノ位置ニ依リ署長ハ大中尉ヲ以テ之ニ充テ署員ハ置カサルコトアルヘシ又支署及武庫附下士ニ在テハ該地衞戍隊附下士ヲシテ其業務ヲ兼ネシムルコトヲ得
第七條 提理ハ陸軍大臣ニ隸シ方面ノ事務ヲ總理シ管掌ノ事務ニ於テハ其責ニ任シ且管內要塞ノ防務ニ參與ス
提理ハ每年一囘管內ヲ巡囘シ要塞ノ備砲竝ニ諸隊ノ兵器彈藥ヲ檢査シ修理保存ノ良否及其存廢ノ景況ヲ陸軍大臣ニ具申スヘシ
第八條 副提理ハ提理ヲ補佐シ方面ノ事務ヲ整理ス
第九條 支署長ハ提理ニ屬シ砲兵方面ノ事務ヲ分擔シ兵器彈藥ノ受授修理交換ノ事ヲ掌リ兼テ所在地ノ砲兵工廠派出所ノ事業ヲ管掌ス
要塞所在地ニ在テハ要塞司令官ノ命ヲ受ケ其防務ニ參與シ砲兵諸般ノ勤務ニ服ス
本署所在地ノ支署長ハ方面副提理之ヲ兼ヌルモノトス
第十條 支署長ハ兵器彈藥ノ支給修理交換ニ就テハ近衞都督師團長要塞司令官及所在地衞戍司令官ノ命ヲ受ケ之ヲ行フヘシ
但兵器ノ修理ニ止ルモノハ直ニ各隊長ノ請求ニ應シテ之ヲ行フコトヲ得
第十一條 本署署員軍吏以下ハ提理ノ命ヲ受ケ支署署員以下ハ支署長ノ命ヲ受ケ各事務ヲ分掌ス
第十二條 武庫附下士ハ支署長ノ統轄ニ屬スト雖トモ其職務ニ就テハ尙ホ所在地衞戍司令官ノ監督ヲ受ルモノトス
第十三條 砲兵方面所管ノ兵器彈藥ハ陸軍大臣所定ノ數量ニ基キ之ヲ分テ本須及第一第二支須トス
第十四條 本須ハ本署ニ直轄シテ方面ノ庫內ニ貯藏シ第一支須ハ支署ニ貯藏シテ第二支須ノ補充ニ備ヘ第二支須ハ支署ニ配備シテ出師準備及演習用ニ供スルモノトス
第十五條 武庫ハ第二支須內ニ於テ專ラ後備諸隊所用ノ兵器彈藥ヲ保管スル所トス
前項ノ外特ニ武庫ノ保管ヲ要スルモノハ陸軍大臣之ヲ定ム
第十六條 凡テ兵器彈藥ハ陸軍大臣ノ許可ヲ經ルニアラサレハ本須ヨリ支須ニ移シ又ハ各方面相互交換スルコトヲ得ス
第十七條 所在兵器彈藥庫ニハ砲兵監護又ハ定番人ヲ置キ尙ホ交番守兵ヲ置クヘシ其守兵ヲ置クト否トハ場地ノ便宜ヲ圖リ提理ノ上申ニ依リ陸軍大臣之ヲ定ム但交番守兵ヲ置クトキハ監護又ハ定番人ヲ置カサルコトヲ得
第十八條 各堡壘及砲臺內ノ兵器彈藥ハ砲臺監守ヲシテ之ヲ監守セシム
第十九條 兵器彈藥庫附近ノ地ニ騷擾警戒ノ事アレハ提理又ハ支署長ヨリ該地衞戍若クハ要塞ノ司令官ニ牒吿シ守衞ヲ嚴ニスヘシ
附 則
第二十條 第三方面本署ハ追テ設置スルモノトス但之ヲ設置スルトキハ陸軍大臣之ヲ吿示スヘシ
第二十一條 第三方面本署設置ニ至ルマテ第一第二第三師管及北海道ヲ第一方面ノ管轄トシ第四第五第六師管ヲ第二方面ノ管轄トス
第二十二條 明治二十一年勅令第三十號衞戍條例ニ揭クル衞戍武庫及職官表ハ本令施行ノ日ヨリ廢止ス
朕砲兵方面条例ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十三年八月十四日
陸軍大臣 伯爵 大山巌
勅令第百七十一号
砲兵方面条例
第一条 砲兵方面ハ要塞ノ備砲及陸軍所要兵器弾薬ノ購買貯蔵保存修理及支給分配ノ事ヲ掌ル所トス
第二条 砲兵方面ハ第一方面第二方面第三方面トス第一方面ハ本署ヲ東京ニ置キ第一第二師管及北海道ヲ管轄シ第二方面ハ本署ヲ大阪ニ置キ第三第四師管ヲ管轄シ第三方面ハ本署ヲ下ノ関ニ置キ第五第六師管ヲ管轄ス
第三条 師団司令部要塞司令部所在ノ地ニ砲兵方面支署ヲ置キ支署ノ附近ニアラサル旅団司令部所在ノ地ニ武庫ヲ置ク武庫ハ支署ノ管轄トス
前項ノ外枢要ナル衛戍地ニハ支署又ハ武庫ヲ置クコトアルヘシ其設置ハ陸軍大臣之ヲ定ム
第四条 砲兵方面ニ左ノ職員ヲ置ク
本署
提理 砲兵大中佐 一人
副提理 砲兵少佐 一人
署員 砲兵大中尉 二人
二三等軍吏 一人
支署
支署長 砲兵少佐或ハ砲兵大尉 一人
署員 砲兵大中尉 一人
第五条 前条ノ外本署支署ニ砲兵上等監護砲兵科下士及軍吏部下士若干ヲ置キ武庫ニ砲兵科下士若干ヲ置ク其人員ノ区分配置ハ陸軍大臣之ヲ定ム
第六条 第三条第二項ニ掲ル支署ニ在テハ衛戍地ノ位置ニ依リ署長ハ大中尉ヲ以テ之ニ充テ署員ハ置カサルコトアルヘシ又支署及武庫附下士ニ在テハ該地衛戍隊附下士ヲシテ其業務ヲ兼ネシムルコトヲ得
第七条 提理ハ陸軍大臣ニ隷シ方面ノ事務ヲ総理シ管掌ノ事務ニ於テハ其責ニ任シ且管内要塞ノ防務ニ参与ス
提理ハ毎年一回管内ヲ巡回シ要塞ノ備砲並ニ諸隊ノ兵器弾薬ヲ検査シ修理保存ノ良否及其存廃ノ景況ヲ陸軍大臣ニ具申スヘシ
第八条 副提理ハ提理ヲ補佐シ方面ノ事務ヲ整理ス
第九条 支署長ハ提理ニ属シ砲兵方面ノ事務ヲ分担シ兵器弾薬ノ受授修理交換ノ事ヲ掌リ兼テ所在地ノ砲兵工廠派出所ノ事業ヲ管掌ス
要塞所在地ニ在テハ要塞司令官ノ命ヲ受ケ其防務ニ参与シ砲兵諸般ノ勤務ニ服ス
本署所在地ノ支署長ハ方面副提理之ヲ兼ヌルモノトス
第十条 支署長ハ兵器弾薬ノ支給修理交換ニ就テハ近衛都督師団長要塞司令官及所在地衛戍司令官ノ命ヲ受ケ之ヲ行フヘシ
但兵器ノ修理ニ止ルモノハ直ニ各隊長ノ請求ニ応シテ之ヲ行フコトヲ得
第十一条 本署署員軍吏以下ハ提理ノ命ヲ受ケ支署署員以下ハ支署長ノ命ヲ受ケ各事務ヲ分掌ス
第十二条 武庫附下士ハ支署長ノ統轄ニ属スト雖トモ其職務ニ就テハ尚ホ所在地衛戍司令官ノ監督ヲ受ルモノトス
第十三条 砲兵方面所管ノ兵器弾薬ハ陸軍大臣所定ノ数量ニ基キ之ヲ分テ本須及第一第二支須トス
第十四条 本須ハ本署ニ直轄シテ方面ノ庫内ニ貯蔵シ第一支須ハ支署ニ貯蔵シテ第二支須ノ補充ニ備ヘ第二支須ハ支署ニ配備シテ出師準備及演習用ニ供スルモノトス
第十五条 武庫ハ第二支須内ニ於テ専ラ後備諸隊所用ノ兵器弾薬ヲ保管スル所トス
前項ノ外特ニ武庫ノ保管ヲ要スルモノハ陸軍大臣之ヲ定ム
第十六条 凡テ兵器弾薬ハ陸軍大臣ノ許可ヲ経ルニアラサレハ本須ヨリ支須ニ移シ又ハ各方面相互交換スルコトヲ得ス
第十七条 所在兵器弾薬庫ニハ砲兵監護又ハ定番人ヲ置キ尚ホ交番守兵ヲ置クヘシ其守兵ヲ置クト否トハ場地ノ便宜ヲ図リ提理ノ上申ニ依リ陸軍大臣之ヲ定ム但交番守兵ヲ置クトキハ監護又ハ定番人ヲ置カサルコトヲ得
第十八条 各堡塁及砲台内ノ兵器弾薬ハ砲台監守ヲシテ之ヲ監守セシム
第十九条 兵器弾薬庫附近ノ地ニ騒擾警戒ノ事アレハ提理又ハ支署長ヨリ該地衛戍若クハ要塞ノ司令官ニ牒告シ守衛ヲ厳ニスヘシ
附 則
第二十条 第三方面本署ハ追テ設置スルモノトス但之ヲ設置スルトキハ陸軍大臣之ヲ告示スヘシ
第二十一条 第三方面本署設置ニ至ルマテ第一第二第三師管及北海道ヲ第一方面ノ管轄トシ第四第五第六師管ヲ第二方面ノ管轄トス
第二十二条 明治二十一年勅令第三十号衛戍条例ニ掲クル衛戍武庫及職官表ハ本令施行ノ日ヨリ廃止ス