逃亡犯罪人引渡条例
法令番号: 勅令第四十二號
公布年月日: 明治20年8月10日
法令の形式: 勅令
朕逃亡犯罪人引渡條例ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十年八月三日
內閣總理大臣 伯爵 伊藤博文
外務大臣 伯爵 井上馨
司法大臣 伯爵 山田顯義
勅令第四十二號
逃亡犯罪人引渡條例
第一條 本條例ニ於テ締約國ト稱スルハ既ニ帝國ト犯罪人引渡條約ヲ締結シ若クハ今後締結スル外國ヲ謂フ
引渡犯罪ト稱スルハ外國ト締結シタル犯罪人引渡條約ニ揭クル犯罪ヲ謂フ
逃亡犯罪人ト稱スルハ締約國ノ管轄內ニ於テ犯シタル引渡犯罪ニ付吿訴吿發ヲ受ケ若クハ有罪ノ宣吿ヲ受ケタル帝國臣民外ノ人ニシテ帝國ノ管轄內ニ逃避シタル者又ハ逃避シタルノ嫌疑若クハ逃避セントスルノ嫌疑アル者ヲ謂フ但左ノ場合ニ於テハ帝國臣民ヲ包含ス
一 帝國ト請求國トノ犯罪人引渡條約ニ交互其臣民ノ引渡ヲ爲スヘキ條欵アルトキ
二 犯罪人引渡條約ニ交互ノ任意ヲ以テ其臣民ノ引渡請求ニ應スルコトアルヘキ旨ノ條欵アリ且請求國ニ於テ同樣ノ場合ニハ自國ノ臣民ヲ引渡スヘキ旨ヲ申出テタルトキ
第二條 締約國ヨリ逃亡犯罪人ノ引渡請求アリ之カ引渡ノ目的ヲ以テ其手續ヲ爲ストキハ本條例ニ定ムル所ノ條欵ニ據ルヘキモノトス
第三條 左ノ場合ニ於テハ逃亡犯罪人ヲ引渡スコトヲ得ス
一 引渡ノ請求ニ係ル者ノ所犯政事上ノ犯罪ナルトキ
二 引渡ノ請求ハ實際政事上ノ犯罪ニ付審問シ若クハ處刑セントスルノ目的ニ出テタル旨ヲ本人ニ於テ證明シタルトキ
第四條 逃亡犯罪人其引渡請求ニ係ル犯罪外ノ事件ニ付帝國內ニ於テ吿訴吿發ヲ受ケ又ハ處刑中ナルトキハ無罪又ハ刑期滿限若クハ其他ノ事由ニ因リ釋放セラレタル後ニアラサレハ之ヲ引渡スコトヲ得ス
第五條 帝國ト外國ト犯罪人引渡條約ヲ締結シタルトキハ逃亡犯罪人ノ犯時其締約以前ニ係ルト雖モ該締約國ノ請求ニ應シ其引渡ヲ爲スコトアルヘシ
第六條 引渡犯罪ニ付帝國裁判所ニ於テ締約國裁判所ト均シク裁判權ヲ有スト雖モ若シ司法大臣ノ意見ニ於テ其審判ヲ便ナラシメンカ爲メ逃亡犯罪人ノ引渡ヲ可トスルトキハ之ヲ引渡スコトアルヘシ
第七條 本條例ニ據リ發シタル總テノ逮捕狀ハ帝國內何レノ地ニ於テモ効力アルモノトス
第八條 一逃亡犯罪人ヲ二國以上ノ締約國ヨリ各其國ニ於テ犯シタル罪ノ爲メ引渡請求ヲ爲シタルトキハ最初請求ヲ爲シタル國ニ之ヲ引渡スヘシ但其請求ヲ爲シタル締約國間ニ特別ノ約束若クハ協議アル場合ハ此限ニ在ラス
第九條 司法大臣ハ外務大臣ノ請求ニ依リ一名若クハ二名以上ノ上席檢事ニ命シ逃亡犯罪人ヲ假ニ逮捕スル爲メ附錄第一號書式ニ依リ假逮捕狀ヲ發セシムルコトヲ得
外務大臣ハ締約國ヨリ相當ノ順序ヲ經由シ書面又ハ電信ヲ以テ逃亡犯罪人ヲ逮捕スル爲メ既ニ逮捕狀ヲ發シタルコトノ通知ト其引渡ハ正式ニ依リ請求スヘキ旨ノ保證トニ接シタル後ニ限リ本條ノ請求ヲ爲スヘシ
第十條 假逮捕狀ニ據リ逃亡犯罪人ヲ逮捕シタル場合ニ於テ二月ヲ過キサル相當ノ期限內ニ其引渡ノ請求ナキトキハ之ヲ釋放スヘシ但此場合ニ於テ逮捕シタル者ヲ釋放スルモ再ヒ之ヲ捕逮シ及引渡スコトヲ妨ケサルモノトス
假逮捕狀ニ據リ逮捕シタル者ノ引渡請求アリタルトキハ更ニ附錄第二號書式ノ逮捕狀ヲ發シ假逮捕狀ト交換スヘシ
第十一條 第九條ニ定メタル例外ノ場合ヲ除クノ外ハ引渡請求ヲ爲シタル國トノ條約ニ定メタル相當ノ順序ヲ經由シ左ノ書類ヲ添ヘ引渡ノ請求アリタル後ニアラサレハ何人ヲモ引渡ノ目的ヲ以テ逮捕スルコトヲ得ス
一 吿訴吿發ヲ受ケタル者ノ場合ニ於テハ其所犯ニ付訴アリタル國ノ相當官吏ニ於テ發シタリト認メ得ヘキ逮捕狀ノ公寫及該逮捕狀ヲ發スルノ根據ト爲リタル口供書若クハ陳述書ノ公寫
二 有罪ノ宣吿ヲ受ケタル者ノ場合ニ於テハ其宣吿ヲ爲シタル裁判所ノ證印アル宣吿書ノ寫
第十二條 外務大臣引渡請求書ニ接シ犯罪人引渡條約ノ條欵ニ適合シタリト思量スルトキハ該請求書ニ其關係書類ヲ添ヘ之ヲ司法大臣ニ送付スヘシ
司法大臣本條ノ請求ニ接シ妥當ノ事由アル請求ト思量スルトキハ逃亡犯罪人ノ所在又ハ其到着スヘシト認ムル地ノ上席檢事ニ命シ逮捕狀ヲ發セシムヘシ
第十三條 上席檢事前條ニ揭ケタル司法大臣ノ命令ニ接シタルトキハ附錄第二號書式ニ依リ逮捕狀ヲ發スヘシ
第十四條 請求ニ係ル逃亡犯罪人フ逮捕シ若クハ假逮捕シタルトキハ其逮捕狀ヲ發シタル上席檢事又ハ之ヲ逮捕シタル地ノ上席檢事ニ引渡スヘシ
上席檢事ハ逃亡犯罪人逮捕ノ顚末ヲ直ニ司法大臣ニ具申スヘシ
司法大臣上席檢事ノ具申ニ接シタルトキ引渡請求書アレハ其寫及附屬書類ヲ速ニ該檢事ニ送付スヘシ但被吿人ヲ釋放スヘキノ命令ヲ發スルトキハ此手續ヲ爲スニ及ハス
第十五條 吿訴吿發ヲ受ケタル者ノ場合ニ於テハ上席檢事ハ速ニ之ヲ訊問シ其人違ナキコト及引渡請求書ニ附屬セル書類ノ確實公正ナルコトヲ認定スヘシ但上席檢事該書類ノミニテハ證據不充分ナリト認ムルトキハ仍ホ被吿人ノ犯罪ニ對スル證據ヲ取ルコトヲ得
有罪ノ宣吿ヲ受ケタル者ノ場合ニ於テハ上席檢事ハ速ニ之ヲ訊問シ其人違ナキコト及其引渡ヲ請求シタル締約國ノ相當裁判所ニ於テ宣吿ヲ爲シタルノ確實ナルコトヲ認定スヘシ
第十六條 上席檢事被吿人ノ訊問ヲ結了シタルトキハ訊問書ニ其處分方ニ關スル意見書ヲ添ヘ之ヲ司法大臣ニ具申スヘシ但上席檢事ハ之ト共ニ引渡請求書寫及附屬書類ヲ返却スヘシ
司法大臣該檢事ノ具申ニ接シタルトキハ附錄第三號書式ニ依リ引渡狀ヲ發スルカ又ハ逮捕シタル者ヲ釋放スヘシ
第十七條 逃亡犯罪人ハ逮捕狀ニ據リ逮捕セラレタル後二月以上留置セラルヽコトナカルヘシ
第十八條 司法大臣ハ左ノ場合ニ限リ引渡狀ヲ發スルコトヲ得
一 引渡犯罪ニ付吿訴吿發ヲ受ケタル者ノ場合ニ於テハ若シ其吿訴吿發ヲ受ケタル罪ヲ帝國內ニ於テ犯シタルモノトセハ帝國ノ法律ニ據リ被吿人ヲ審判ニ付スルニ充分ナル犯罪ノ證據アリト認メタルトキ
二 有罪ノ宣吿ヲ受ケタル者ノ場合ニ於テハ相當裁判所ニ於テ其宣吿ヲ爲シタルコトヲ認メタルトキ
第十九條 闕席裁判ニ由リ有罪ノ宣吿ヲ受ケタル者ハ其引渡ヲ請求シタル締約國トノ間ニ特別ノ約欵アルニ非サレハ本條例ニ於テハ之ヲ吿訴吿發ヲ受ケタル者ト爲シ有罪ノ宣吿ヲ受ケタル者ト認メス
第二十條 逮捕シタル者ヲ釋放シ又ハ其引渡ノ爲メ引渡狀ヲ發シタルトキハ司法大臣ハ引渡請求書及附屬書類ニ其執行シタル手續及其理由ノ略記ヲ添ヘ之ヲ外務大臣ニ返付スヘシ
第二十一條 引渡狀ヲ發シタル後何人ヲモ一月以上留置スルコトヲ得ス但此期限內ニ之ヲ帝國外ニ引取ラサルトキハ請求國相當官吏ニ於テ正當ノ事由ヲ示スニアラサレハ釋放スヘシ
第二十二條 逃亡犯罪人ヲ引渡ストキハ其逮捕ノ際差押ヘタル本人ノ携帶品ハ正當ノ理由アルニアラサレハ其引渡ノ節本人ト共ニ悉ク之ヲ交付スヘシ
第二十三條 司法大臣ハ外務大臣ノ請求ニ依リ一外國ヨリ他ノ外國ニ引渡シタル者ノ帝國內海陸ノ通行ヲ認可スルコトヲ得
本條ノ請求ハ引渡ヲ受クヘキ國ノ政府ヨリ引渡狀ノ公寫ヲ添ヘ相當ノ順序ヲ經由シタル照會書ヲ外務大臣ニ於テ受領シタルトキニ限ル但帝國ト請求國トノ間ニ特別ノ約欵ナキトキハ該照會書ノ外仍ホ請求國ノ政府ニ於テ之ト同一ノ場合即チ第三國ヨリ帝國ニ逃亡犯罪人ヲ引渡シタル場合ニ該請求國內海陸ノ通行ヲ均シク認可スヘキノ保證ヲ爲シタルトキニ限ル
朕逃亡犯罪人引渡条例ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十年八月三日
内閣総理大臣 伯爵 伊藤博文
外務大臣 伯爵 井上馨
司法大臣 伯爵 山田顕義
勅令第四十二号
逃亡犯罪人引渡条例
第一条 本条例ニ於テ締約国ト称スルハ既ニ帝国ト犯罪人引渡条約ヲ締結シ若クハ今後締結スル外国ヲ謂フ
引渡犯罪ト称スルハ外国ト締結シタル犯罪人引渡条約ニ掲クル犯罪ヲ謂フ
逃亡犯罪人ト称スルハ締約国ノ管轄内ニ於テ犯シタル引渡犯罪ニ付告訴告発ヲ受ケ若クハ有罪ノ宣告ヲ受ケタル帝国臣民外ノ人ニシテ帝国ノ管轄内ニ逃避シタル者又ハ逃避シタルノ嫌疑若クハ逃避セントスルノ嫌疑アル者ヲ謂フ但左ノ場合ニ於テハ帝国臣民ヲ包含ス
一 帝国ト請求国トノ犯罪人引渡条約ニ交互其臣民ノ引渡ヲ為スヘキ条款アルトキ
二 犯罪人引渡条約ニ交互ノ任意ヲ以テ其臣民ノ引渡請求ニ応スルコトアルヘキ旨ノ条款アリ且請求国ニ於テ同様ノ場合ニハ自国ノ臣民ヲ引渡スヘキ旨ヲ申出テタルトキ
第二条 締約国ヨリ逃亡犯罪人ノ引渡請求アリ之カ引渡ノ目的ヲ以テ其手続ヲ為ストキハ本条例ニ定ムル所ノ条款ニ拠ルヘキモノトス
第三条 左ノ場合ニ於テハ逃亡犯罪人ヲ引渡スコトヲ得ス
一 引渡ノ請求ニ係ル者ノ所犯政事上ノ犯罪ナルトキ
二 引渡ノ請求ハ実際政事上ノ犯罪ニ付審問シ若クハ処刑セントスルノ目的ニ出テタル旨ヲ本人ニ於テ証明シタルトキ
第四条 逃亡犯罪人其引渡請求ニ係ル犯罪外ノ事件ニ付帝国内ニ於テ告訴告発ヲ受ケ又ハ処刑中ナルトキハ無罪又ハ刑期満限若クハ其他ノ事由ニ因リ釈放セラレタル後ニアラサレハ之ヲ引渡スコトヲ得ス
第五条 帝国ト外国ト犯罪人引渡条約ヲ締結シタルトキハ逃亡犯罪人ノ犯時其締約以前ニ係ルト雖モ該締約国ノ請求ニ応シ其引渡ヲ為スコトアルヘシ
第六条 引渡犯罪ニ付帝国裁判所ニ於テ締約国裁判所ト均シク裁判権ヲ有スト雖モ若シ司法大臣ノ意見ニ於テ其審判ヲ便ナラシメンカ為メ逃亡犯罪人ノ引渡ヲ可トスルトキハ之ヲ引渡スコトアルヘシ
第七条 本条例ニ拠リ発シタル総テノ逮捕状ハ帝国内何レノ地ニ於テモ効力アルモノトス
第八条 一逃亡犯罪人ヲ二国以上ノ締約国ヨリ各其国ニ於テ犯シタル罪ノ為メ引渡請求ヲ為シタルトキハ最初請求ヲ為シタル国ニ之ヲ引渡スヘシ但其請求ヲ為シタル締約国間ニ特別ノ約束若クハ協議アル場合ハ此限ニ在ラス
第九条 司法大臣ハ外務大臣ノ請求ニ依リ一名若クハ二名以上ノ上席検事ニ命シ逃亡犯罪人ヲ仮ニ逮捕スル為メ附録第一号書式ニ依リ仮逮捕状ヲ発セシムルコトヲ得
外務大臣ハ締約国ヨリ相当ノ順序ヲ経由シ書面又ハ電信ヲ以テ逃亡犯罪人ヲ逮捕スル為メ既ニ逮捕状ヲ発シタルコトノ通知ト其引渡ハ正式ニ依リ請求スヘキ旨ノ保証トニ接シタル後ニ限リ本条ノ請求ヲ為スヘシ
第十条 仮逮捕状ニ拠リ逃亡犯罪人ヲ逮捕シタル場合ニ於テ二月ヲ過キサル相当ノ期限内ニ其引渡ノ請求ナキトキハ之ヲ釈放スヘシ但此場合ニ於テ逮捕シタル者ヲ釈放スルモ再ヒ之ヲ捕逮シ及引渡スコトヲ妨ケサルモノトス
仮逮捕状ニ拠リ逮捕シタル者ノ引渡請求アリタルトキハ更ニ附録第二号書式ノ逮捕状ヲ発シ仮逮捕状ト交換スヘシ
第十一条 第九条ニ定メタル例外ノ場合ヲ除クノ外ハ引渡請求ヲ為シタル国トノ条約ニ定メタル相当ノ順序ヲ経由シ左ノ書類ヲ添ヘ引渡ノ請求アリタル後ニアラサレハ何人ヲモ引渡ノ目的ヲ以テ逮捕スルコトヲ得ス
一 告訴告発ヲ受ケタル者ノ場合ニ於テハ其所犯ニ付訴アリタル国ノ相当官吏ニ於テ発シタリト認メ得ヘキ逮捕状ノ公写及該逮捕状ヲ発スルノ根拠ト為リタル口供書若クハ陳述書ノ公写
二 有罪ノ宣告ヲ受ケタル者ノ場合ニ於テハ其宣告ヲ為シタル裁判所ノ証印アル宣告書ノ写
第十二条 外務大臣引渡請求書ニ接シ犯罪人引渡条約ノ条款ニ適合シタリト思量スルトキハ該請求書ニ其関係書類ヲ添ヘ之ヲ司法大臣ニ送付スヘシ
司法大臣本条ノ請求ニ接シ妥当ノ事由アル請求ト思量スルトキハ逃亡犯罪人ノ所在又ハ其到着スヘシト認ムル地ノ上席検事ニ命シ逮捕状ヲ発セシムヘシ
第十三条 上席検事前条ニ掲ケタル司法大臣ノ命令ニ接シタルトキハ附録第二号書式ニ依リ逮捕状ヲ発スヘシ
第十四条 請求ニ係ル逃亡犯罪人フ逮捕シ若クハ仮逮捕シタルトキハ其逮捕状ヲ発シタル上席検事又ハ之ヲ逮捕シタル地ノ上席検事ニ引渡スヘシ
上席検事ハ逃亡犯罪人逮捕ノ顛末ヲ直ニ司法大臣ニ具申スヘシ
司法大臣上席検事ノ具申ニ接シタルトキ引渡請求書アレハ其写及附属書類ヲ速ニ該検事ニ送付スヘシ但被告人ヲ釈放スヘキノ命令ヲ発スルトキハ此手続ヲ為スニ及ハス
第十五条 告訴告発ヲ受ケタル者ノ場合ニ於テハ上席検事ハ速ニ之ヲ訊問シ其人違ナキコト及引渡請求書ニ附属セル書類ノ確実公正ナルコトヲ認定スヘシ但上席検事該書類ノミニテハ証拠不充分ナリト認ムルトキハ仍ホ被告人ノ犯罪ニ対スル証拠ヲ取ルコトヲ得
有罪ノ宣告ヲ受ケタル者ノ場合ニ於テハ上席検事ハ速ニ之ヲ訊問シ其人違ナキコト及其引渡ヲ請求シタル締約国ノ相当裁判所ニ於テ宣告ヲ為シタルノ確実ナルコトヲ認定スヘシ
第十六条 上席検事被告人ノ訊問ヲ結了シタルトキハ訊問書ニ其処分方ニ関スル意見書ヲ添ヘ之ヲ司法大臣ニ具申スヘシ但上席検事ハ之ト共ニ引渡請求書写及附属書類ヲ返却スヘシ
司法大臣該検事ノ具申ニ接シタルトキハ附録第三号書式ニ依リ引渡状ヲ発スルカ又ハ逮捕シタル者ヲ釈放スヘシ
第十七条 逃亡犯罪人ハ逮捕状ニ拠リ逮捕セラレタル後二月以上留置セラルヽコトナカルヘシ
第十八条 司法大臣ハ左ノ場合ニ限リ引渡状ヲ発スルコトヲ得
一 引渡犯罪ニ付告訴告発ヲ受ケタル者ノ場合ニ於テハ若シ其告訴告発ヲ受ケタル罪ヲ帝国内ニ於テ犯シタルモノトセハ帝国ノ法律ニ拠リ被告人ヲ審判ニ付スルニ充分ナル犯罪ノ証拠アリト認メタルトキ
二 有罪ノ宣告ヲ受ケタル者ノ場合ニ於テハ相当裁判所ニ於テ其宣告ヲ為シタルコトヲ認メタルトキ
第十九条 闕席裁判ニ由リ有罪ノ宣告ヲ受ケタル者ハ其引渡ヲ請求シタル締約国トノ間ニ特別ノ約款アルニ非サレハ本条例ニ於テハ之ヲ告訴告発ヲ受ケタル者ト為シ有罪ノ宣告ヲ受ケタル者ト認メス
第二十条 逮捕シタル者ヲ釈放シ又ハ其引渡ノ為メ引渡状ヲ発シタルトキハ司法大臣ハ引渡請求書及附属書類ニ其執行シタル手続及其理由ノ略記ヲ添ヘ之ヲ外務大臣ニ返付スヘシ
第二十一条 引渡状ヲ発シタル後何人ヲモ一月以上留置スルコトヲ得ス但此期限内ニ之ヲ帝国外ニ引取ラサルトキハ請求国相当官吏ニ於テ正当ノ事由ヲ示スニアラサレハ釈放スヘシ
第二十二条 逃亡犯罪人ヲ引渡ストキハ其逮捕ノ際差押ヘタル本人ノ携帯品ハ正当ノ理由アルニアラサレハ其引渡ノ節本人ト共ニ悉ク之ヲ交付スヘシ
第二十三条 司法大臣ハ外務大臣ノ請求ニ依リ一外国ヨリ他ノ外国ニ引渡シタル者ノ帝国内海陸ノ通行ヲ認可スルコトヲ得
本条ノ請求ハ引渡ヲ受クヘキ国ノ政府ヨリ引渡状ノ公写ヲ添ヘ相当ノ順序ヲ経由シタル照会書ヲ外務大臣ニ於テ受領シタルトキニ限ル但帝国ト請求国トノ間ニ特別ノ約款ナキトキハ該照会書ノ外仍ホ請求国ノ政府ニ於テ之ト同一ノ場合即チ第三国ヨリ帝国ニ逃亡犯罪人ヲ引渡シタル場合ニ該請求国内海陸ノ通行ヲ均シク認可スヘキノ保証ヲ為シタルトキニ限ル