文官試験試補及見習規則
法令番号: 勅令第三十七號
公布年月日: 明治20年7月25日
法令の形式: 勅令
朕文官試驗試補及見習規則ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十年七月二十三日
內閣總理大臣 伯爵 伊藤博文
勅令第三十七號
文官試驗試補及見習規則
第一 通則
第一條 本令ニ於テ文官ト稱スルハ奏任判任ノ文官ヲ總稱シ試補ト稱スルハ勅令第十三號學位令ニ依リ法學博士文學博士ノ學位ヲ受ケ又ハ法科大學文科大學及舊東京大學法學部文學部ヲ卒業シ又ハ高等試驗ヲ經當選シテ高等官ノ實務ヲ練習スル者ヲ云ヒ見習トハ官立府縣立中學校又ハ之ト同等ナル官立府縣立學校及帝國大學ノ監督ヲ受クル私立法學校及司法省舊法學校ノ卒業證書ヲ有シ及普通試驗ヲ經當選シテ判任官ノ事務ヲ練習スル者ヲ云フ
本令ニ於テ司法官ト稱スルハ裁判官及檢察官ヲ總稱ス
第二條 第三條第四條ニ揭クルモノヲ除クノ外本令ニ依リ定規ノ試驗ヲ經當選シタル者ニアラサレハ試補及見習ニ任命スルコトヲ得ス又實務練習ヲ終リタル者ニアラサレハ本官ニ任スルコトヲ得ス
第三條 三年以上分科大學ノ敎授ニ任シタル者ハ高等試驗及實務練習ヲ要セス直ニ本官ニ任シ法學博士文學博士ノ學位ヲ受ケタル者又ハ法科大學文科大學及舊東京大學法學部文學部ノ卒業生ハ高等試驗ヲ要セス試補ニ任スルコトヲ得
司法官タルノ資格ヲ有スル者ニシテ他官ヨリ司法官ニ轉スルトキ又ハ司法官タルノ資格ヲ有シ三年以上代言人タル者ハ實務練習ヲ要セス直ニ本官ニ任スルコトヲ得
第四條 官立府縣立中學校又ハ之ト同等ナル官立府縣立學校及帝國大學ノ監督ヲ受クル私立法學校及司法省舊法學校ノ卒業證書ヲ有スル者ハ普通試驗ヲ要セス判任官見習ヲ命スルコトヲ得
第五條 試驗ヲ分テ高等試驗普通試驗ノ二種トス
高等試驗ハ試補ニ任用セラレンコトヲ望ム者ノ爲ニシ普通試驗ハ判任官見習ニ任用セラレンコトヲ望ム者ノ爲ニス
第六條 試驗ハ筆記口述ノ二樣トス筆記試驗ニ落第シタル者ハ口述試驗ヲ受クルコトヲ得ス
第七條 試驗ハ筆記口述ノ二樣ニ就キ各科目ノ㸃數ヲ合算シタル一定ノ平均㸃數ヲ以テ合格ヲ定メ時々官廳ノ需要ニ應シ人員ヲ限リ內閣ニ於テ合格者中ヨリ選拔シテ當選者ヲ定ム但一科目ニ付一モ㸃數ナキ者ハ合格者トスルコトヲ得ス
第八條 前條ノ選拔ニ當ラサル者ハ合格者ト雖モ再ヒ文官ノ任用ヲ望ムトキハ更ニ本令ニ依リ試驗ヲ受クヘシ
第九條 試驗ニ必要ノ參考書類及紙墨ハ試驗室ニ備ヘ置キ受驗人之ヲ携帶スルコトヲ許サス
第十條 試驗當選者ノ姓名ハ官報ヲ以テ之ヲ公吿ス
第十一條 第九條ヲ犯シ若クハ不正ノ方法ヲ以テ當選シ他日其事ノ發覺シタルトキハ當選ノ効ナキモノトス
第十二條 第九條ヲ犯シタル者及第十一條ノ處分ヲ受ケ又ハ不正ノ方法ヲ以テ當選セント企テタル者ハ再ヒ試驗ヲ受クルコトヲ得ス
第十三條 第十八條第二十三條第三十三條第三十六條ノ履歷書中事實ヲ隱匿シ又ハ之ヲ僞リタル者ハ試驗ヲ受クルコトヲ得ス
第十四條 試驗ニ關スル細則ハ閣令ヲ以テ之ヲ定ム
第十五條 本令施行ノ後五箇年間ハ事務練習中ト雖モ本官ノ缺アルトキハ其練習ノ滿期ヲ待スシテ本官ニ任スルコトアルヘシ
五箇年以上奏任官ヲ勤メタル者ニシテ高等試驗ヲ經當選シタル者ハ事務練習ヲ要セス直ニ本官ニ任スルコトヲ得
第二 高等試驗
第十六條 高等試驗ハ各官廳ノ須要ニ從ヒ時々東京ニ於テ試驗委員之ヲ行フ其期日及場所ハ官報ヲ以テ之ヲ公吿ス
第十七條 高等試驗ヲ受クルコトヲ得ル者左ノ如シ
一 丁年以上ノ男子
一 外國ニ於テ大學校又ハ之ト同等ナル學校ノ卒業證書ヲ有シ又ハ三年以上其學科ヲ修學シタル旨ヲ證明スル證書ヲ有スル者
一 文部大臣ノ認可ヲ經タル學則ニ依リ法律學政治學又ハ理財學ヲ敎授スル私立學校ノ卒業證書ヲ有スル者
一 高等中學校及東京商業學校ノ卒業證書ヲ有スル者
一 五箇年以上奏任官ヲ勤メタル者
第十八條 試驗願書ハ其時々官報ヲ以テ公吿スル期日前ニ左ノ證書ヲ取添之ヲ試驗委員長ニ差出スヘシ
一 出願者ノ履歷書
一 第十七條ニ揭クル卒業證書及修學證書ノ寫
一 身分職業年齡及兵役ニ關スル區戶長ノ證書
第十九條 高等試驗ノ科目ハ試驗ヲ行フ年每ニ司法官又ハ行政官ノ別ニ依リ各官廳所掌ノ事務ヲ斟酌シテ文官試驗局長官之ヲ選定シ試驗ノ期日三箇月前ニ官報ヲ以テ之ヲ公吿ス
第二十條 第三條第四條ノ資格ヲ具スル者ヲ除クノ外敎官技術官其他特別ノ學術技藝ヲ要スルモノハ別段ノ試驗法ヲ定ムルマテ各官廳ノ需要ニ從ヒ試驗ヲ經スシテ之ヲ任用スルコトヲ得
第三 試補
第二十一條 試補ハ所屬大臣ノ指命スル所ニ就キ定限ヨリ短カラサル期限間事務ヲ練習スヘシ
第二十二條 各官廳試補ノ定員ハ別ニ定ムル所ニ依ル
第二十三條 法學博士文學博士ノ學位ヲ受ケタル者又ハ法科大學文科大學及舊東京大學法學部文學部ノ卒業生ニシテ行政官又ハ司法官ノ試補タランコトヲ望ム者ハ左ノ書類ヲ取添高等試驗期日三十日前ニ其旨ヲ文官試驗局長官ニ出願スヘシ
一 出願者ノ履歷書
一 學位又ハ卒業證書ノ寫
一 身分年齡
第二十四條 行政官ノ試補ハ便宜ニ從ヒ少クモ一箇年半ハ地方官廳一箇年半ハ中央官廳ニ於テ其事務ヲ練習スヘシ
第二十五條 司法官ノ試補ハ便宜ニ從ヒ少クモ一箇年半ハ治安裁判所一箇年半ハ始審裁判所ニ於テ其事務ヲ練習スヘシ
第二十六條 試補ハ所屬大臣ノ指命スル所ニ就キ事務ヲ練習スルニ付テハ其主務長官ノ指揮監督ヲ受クヘシ
第二十七條 主務長官ハ事務練習ノ終ニ於テ試補練習ノ功程ヲ所屬大臣ニ具狀シ其意見ヲ提出スヘシ
第二十八條 所屬大臣ハ練習期限中ト雖モ試補官吏ニ必要ナル品位ヲ失ヒタルモノト認ムルトキハ試補ヲ免スヘシ
第二十九條 在職ノ判任官ニシテ高等試驗ヲ經當選シタル者ハ事務練習ヲ要セス缺員アル場合ニ於テハ直ニ本官ニ任スルコトヲ得
第三十條 試補ノ命ヲ承ケ所屬大臣ノ指命スル所ニ就キ事務ヲ練習セサル者ハ試補ヲ免スヘシ
第四 普通試驗
第三十一條 中央官廳ニ於テ要スル判任官ノ普通試驗ハ各官廳ノ普通試驗委員之ヲ行フ其期日場所ハ時々其官廳ヨリ官報ヲ以テ之ヲ公吿ス
第三十二條 地方官廳ニ於テ要スル判任官ノ普通試驗ハ又官廳ノ需ニ應シ府縣ノ普通試驗委員之ヲ行フ其期日場所ハ時々普通試驗委員長ヨリ新聞紙又ハ其他ノ方法ヲ以テ之ヲ公吿ス
第三十三條 試驗願書ハ本人自ラ之ヲ認メ其時々公吿スル期日前ニ左ノ證書ヲ取添之ヲ普通試驗委員長ニ差出スヘシ
一 出願者ノ履歷書
一 身分職業年齡及兵役ニ關スル區戶長ノ證書
第三十四條 普通試驗ノ科目ハ各官廳所掌ノ事務ヲ斟酌シテ普通試驗委員之ヲ選定シ文官試驗局長官ノ認可ヲ經テ試驗ノ期日一箇月前ニ官報又ハ其他ノ方法ヲ以テ之ヲ公吿スヘシ
第五 判任官見習
第三十五條 各官廳ハ其需要ニ從ヒ官立府縣立中學校又ハ之ト同等ナル官立府縣立學校及帝國大學ノ監督ヲ受クル私立法學校又ハ司法省舊法學校ノ卒業證書ヲ有シ及普通試驗ニ及第シタル者ニ判任官見習ヲ命スヘシ
判任官見習ヲ命セラレタル者ハ所屬長官ノ指命スル所ニ就キ二箇年ヨリ短カラサル期限間事務ヲ練習シ判任官ノ缺員ヲ待テ本官ニ任セラルヘシ
第三十六條 官立府縣立中學校又ハ之ト同等ナル官立府縣立學校及帝國大學ノ監督ヲ受クル私立法學校又ハ司法省舊法學校ノ卒業證書ヲ有シ判任官見習タランコトヲ望ム者ハ普通試驗期日三十日前ニ左ノ書類ヲ添ヘ主務官廳ニ出願スヘシ
一 出願者ノ履歷書
一 卒業證書ノ寫
一 身分職業年齡及兵役ニ關スル區戶長ノ證書
第三十七條 所屬長官ハ判任官見習官吏ニ必要ナル品位ヲ失ヒタル者ト認ムルトキハ判任官見習ヲ免スルコトヲ得
第三十八條 本令施行ノ前二箇年以上各官廳ニ於テ雇員トナリタル者ニシテ事務ニ熟練シタル者ト本屬長官ニ於テ認ムルトキハ試驗ヲ要セス直ニ判任官ニ任スルコトヲ得
第三十九條 本令ハ明治二十一年一月ヨリ施行ス
朕文官試験試補及見習規則ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十年七月二十三日
内閣総理大臣 伯爵 伊藤博文
勅令第三十七号
文官試験試補及見習規則
第一 通則
第一条 本令ニ於テ文官ト称スルハ奏任判任ノ文官ヲ総称シ試補ト称スルハ勅令第十三号学位令ニ依リ法学博士文学博士ノ学位ヲ受ケ又ハ法科大学文科大学及旧東京大学法学部文学部ヲ卒業シ又ハ高等試験ヲ経当選シテ高等官ノ実務ヲ練習スル者ヲ云ヒ見習トハ官立府県立中学校又ハ之ト同等ナル官立府県立学校及帝国大学ノ監督ヲ受クル私立法学校及司法省旧法学校ノ卒業証書ヲ有シ及普通試験ヲ経当選シテ判任官ノ事務ヲ練習スル者ヲ云フ
本令ニ於テ司法官ト称スルハ裁判官及検察官ヲ総称ス
第二条 第三条第四条ニ掲クルモノヲ除クノ外本令ニ依リ定規ノ試験ヲ経当選シタル者ニアラサレハ試補及見習ニ任命スルコトヲ得ス又実務練習ヲ終リタル者ニアラサレハ本官ニ任スルコトヲ得ス
第三条 三年以上分科大学ノ教授ニ任シタル者ハ高等試験及実務練習ヲ要セス直ニ本官ニ任シ法学博士文学博士ノ学位ヲ受ケタル者又ハ法科大学文科大学及旧東京大学法学部文学部ノ卒業生ハ高等試験ヲ要セス試補ニ任スルコトヲ得
司法官タルノ資格ヲ有スル者ニシテ他官ヨリ司法官ニ転スルトキ又ハ司法官タルノ資格ヲ有シ三年以上代言人タル者ハ実務練習ヲ要セス直ニ本官ニ任スルコトヲ得
第四条 官立府県立中学校又ハ之ト同等ナル官立府県立学校及帝国大学ノ監督ヲ受クル私立法学校及司法省旧法学校ノ卒業証書ヲ有スル者ハ普通試験ヲ要セス判任官見習ヲ命スルコトヲ得
第五条 試験ヲ分テ高等試験普通試験ノ二種トス
高等試験ハ試補ニ任用セラレンコトヲ望ム者ノ為ニシ普通試験ハ判任官見習ニ任用セラレンコトヲ望ム者ノ為ニス
第六条 試験ハ筆記口述ノ二様トス筆記試験ニ落第シタル者ハ口述試験ヲ受クルコトヲ得ス
第七条 試験ハ筆記口述ノ二様ニ就キ各科目ノ点数ヲ合算シタル一定ノ平均点数ヲ以テ合格ヲ定メ時々官庁ノ需要ニ応シ人員ヲ限リ内閣ニ於テ合格者中ヨリ選抜シテ当選者ヲ定ム但一科目ニ付一モ点数ナキ者ハ合格者トスルコトヲ得ス
第八条 前条ノ選抜ニ当ラサル者ハ合格者ト雖モ再ヒ文官ノ任用ヲ望ムトキハ更ニ本令ニ依リ試験ヲ受クヘシ
第九条 試験ニ必要ノ参考書類及紙墨ハ試験室ニ備ヘ置キ受験人之ヲ携帯スルコトヲ許サス
第十条 試験当選者ノ姓名ハ官報ヲ以テ之ヲ公告ス
第十一条 第九条ヲ犯シ若クハ不正ノ方法ヲ以テ当選シ他日其事ノ発覚シタルトキハ当選ノ効ナキモノトス
第十二条 第九条ヲ犯シタル者及第十一条ノ処分ヲ受ケ又ハ不正ノ方法ヲ以テ当選セント企テタル者ハ再ヒ試験ヲ受クルコトヲ得ス
第十三条 第十八条第二十三条第三十三条第三十六条ノ履歴書中事実ヲ隠匿シ又ハ之ヲ偽リタル者ハ試験ヲ受クルコトヲ得ス
第十四条 試験ニ関スル細則ハ閣令ヲ以テ之ヲ定ム
第十五条 本令施行ノ後五箇年間ハ事務練習中ト雖モ本官ノ欠アルトキハ其練習ノ満期ヲ待スシテ本官ニ任スルコトアルヘシ
五箇年以上奏任官ヲ勤メタル者ニシテ高等試験ヲ経当選シタル者ハ事務練習ヲ要セス直ニ本官ニ任スルコトヲ得
第二 高等試験
第十六条 高等試験ハ各官庁ノ須要ニ従ヒ時々東京ニ於テ試験委員之ヲ行フ其期日及場所ハ官報ヲ以テ之ヲ公告ス
第十七条 高等試験ヲ受クルコトヲ得ル者左ノ如シ
一 丁年以上ノ男子
一 外国ニ於テ大学校又ハ之ト同等ナル学校ノ卒業証書ヲ有シ又ハ三年以上其学科ヲ修学シタル旨ヲ証明スル証書ヲ有スル者
一 文部大臣ノ認可ヲ経タル学則ニ依リ法律学政治学又ハ理財学ヲ教授スル私立学校ノ卒業証書ヲ有スル者
一 高等中学校及東京商業学校ノ卒業証書ヲ有スル者
一 五箇年以上奏任官ヲ勤メタル者
第十八条 試験願書ハ其時々官報ヲ以テ公告スル期日前ニ左ノ証書ヲ取添之ヲ試験委員長ニ差出スヘシ
一 出願者ノ履歴書
一 第十七条ニ掲クル卒業証書及修学証書ノ写
一 身分職業年齢及兵役ニ関スル区戸長ノ証書
第十九条 高等試験ノ科目ハ試験ヲ行フ年毎ニ司法官又ハ行政官ノ別ニ依リ各官庁所掌ノ事務ヲ斟酌シテ文官試験局長官之ヲ選定シ試験ノ期日三箇月前ニ官報ヲ以テ之ヲ公告ス
第二十条 第三条第四条ノ資格ヲ具スル者ヲ除クノ外教官技術官其他特別ノ学術技芸ヲ要スルモノハ別段ノ試験法ヲ定ムルマテ各官庁ノ需要ニ従ヒ試験ヲ経スシテ之ヲ任用スルコトヲ得
第三 試補
第二十一条 試補ハ所属大臣ノ指命スル所ニ就キ定限ヨリ短カラサル期限間事務ヲ練習スヘシ
第二十二条 各官庁試補ノ定員ハ別ニ定ムル所ニ依ル
第二十三条 法学博士文学博士ノ学位ヲ受ケタル者又ハ法科大学文科大学及旧東京大学法学部文学部ノ卒業生ニシテ行政官又ハ司法官ノ試補タランコトヲ望ム者ハ左ノ書類ヲ取添高等試験期日三十日前ニ其旨ヲ文官試験局長官ニ出願スヘシ
一 出願者ノ履歴書
一 学位又ハ卒業証書ノ写
一 身分年齢
第二十四条 行政官ノ試補ハ便宜ニ従ヒ少クモ一箇年半ハ地方官庁一箇年半ハ中央官庁ニ於テ其事務ヲ練習スヘシ
第二十五条 司法官ノ試補ハ便宜ニ従ヒ少クモ一箇年半ハ治安裁判所一箇年半ハ始審裁判所ニ於テ其事務ヲ練習スヘシ
第二十六条 試補ハ所属大臣ノ指命スル所ニ就キ事務ヲ練習スルニ付テハ其主務長官ノ指揮監督ヲ受クヘシ
第二十七条 主務長官ハ事務練習ノ終ニ於テ試補練習ノ功程ヲ所属大臣ニ具状シ其意見ヲ提出スヘシ
第二十八条 所属大臣ハ練習期限中ト雖モ試補官吏ニ必要ナル品位ヲ失ヒタルモノト認ムルトキハ試補ヲ免スヘシ
第二十九条 在職ノ判任官ニシテ高等試験ヲ経当選シタル者ハ事務練習ヲ要セス欠員アル場合ニ於テハ直ニ本官ニ任スルコトヲ得
第三十条 試補ノ命ヲ承ケ所属大臣ノ指命スル所ニ就キ事務ヲ練習セサル者ハ試補ヲ免スヘシ
第四 普通試験
第三十一条 中央官庁ニ於テ要スル判任官ノ普通試験ハ各官庁ノ普通試験委員之ヲ行フ其期日場所ハ時々其官庁ヨリ官報ヲ以テ之ヲ公告ス
第三十二条 地方官庁ニ於テ要スル判任官ノ普通試験ハ又官庁ノ需ニ応シ府県ノ普通試験委員之ヲ行フ其期日場所ハ時々普通試験委員長ヨリ新聞紙又ハ其他ノ方法ヲ以テ之ヲ公告ス
第三十三条 試験願書ハ本人自ラ之ヲ認メ其時々公告スル期日前ニ左ノ証書ヲ取添之ヲ普通試験委員長ニ差出スヘシ
一 出願者ノ履歴書
一 身分職業年齢及兵役ニ関スル区戸長ノ証書
第三十四条 普通試験ノ科目ハ各官庁所掌ノ事務ヲ斟酌シテ普通試験委員之ヲ選定シ文官試験局長官ノ認可ヲ経テ試験ノ期日一箇月前ニ官報又ハ其他ノ方法ヲ以テ之ヲ公告スヘシ
第五 判任官見習
第三十五条 各官庁ハ其需要ニ従ヒ官立府県立中学校又ハ之ト同等ナル官立府県立学校及帝国大学ノ監督ヲ受クル私立法学校又ハ司法省旧法学校ノ卒業証書ヲ有シ及普通試験ニ及第シタル者ニ判任官見習ヲ命スヘシ
判任官見習ヲ命セラレタル者ハ所属長官ノ指命スル所ニ就キ二箇年ヨリ短カラサル期限間事務ヲ練習シ判任官ノ欠員ヲ待テ本官ニ任セラルヘシ
第三十六条 官立府県立中学校又ハ之ト同等ナル官立府県立学校及帝国大学ノ監督ヲ受クル私立法学校又ハ司法省旧法学校ノ卒業証書ヲ有シ判任官見習タランコトヲ望ム者ハ普通試験期日三十日前ニ左ノ書類ヲ添ヘ主務官庁ニ出願スヘシ
一 出願者ノ履歴書
一 卒業証書ノ写
一 身分職業年齢及兵役ニ関スル区戸長ノ証書
第三十七条 所属長官ハ判任官見習官吏ニ必要ナル品位ヲ失ヒタル者ト認ムルトキハ判任官見習ヲ免スルコトヲ得
第三十八条 本令施行ノ前二箇年以上各官庁ニ於テ雇員トナリタル者ニシテ事務ニ熟練シタル者ト本属長官ニ於テ認ムルトキハ試験ヲ要セス直ニ判任官ニ任スルコトヲ得
第三十九条 本令ハ明治二十一年一月ヨリ施行ス