私設鉄道条例
法令番号: 勅令第十二號
公布年月日: 明治20年5月18日
法令の形式: 勅令
朕私設鐵道條例ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十年五月十七日
內閣總理大臣 伯爵 伊藤博文
勅令第十二號
私設鐵道條例
第一條 旅客及荷物運輸營業ノ目的ヲ以テ鐵道ヲ布設セントスル者ハ發起人五人以上結合シ鐵道會社創立願書ニ起業目論見書ヲ添ヘ本社ヲ設置セントスル地ノ地方廳ヲ經由シテ政府ニ差出スヘシ
馬車鐵道ハ本條例定ムル所ノ限ニアラス
第二條 起業目論見書ニハ左ノ事項ヲ記載スヘシ
第一 社名及本社所在地
第二 線路ノ兩端及其經過スヘキ地名但略圖ヲ添フヘシ
第三 資本金ノ總額及總株數並一株ノ金額
第四 鐵道布設ノ費用及運輸營業上ノ收支槪算
第五 發起人ノ氏名住所及發起人各自ノ引受クヘキ株數但發起人總員ノ引受クヘキ株數ハ總株數十分ノ二以上タルヘシ
第三條 政府ニ於テ第一條ノ願書及目論見書ヲ査閱シ起業ノ大體ニ不都合ナキト認ムルトキハ假免狀ヲ下付シ本社ヲ設立セントスル地ノ地方廳ニ令シ發起人ヲシテ線路圖面工事方法書工費豫算書及會社ノ定款ヲ調製シ之ヲ差出サシムヘシ
既設ノ鐵道ニ妨害ヲ生スルノ虞アリ又ハ其地方ノ狀況鐵道ノ布設ヲ要セスト認ムルトキハ願書ヲ却下スヘシ
第四條 政府ニ於テ前條ノ圖面書類ヲ審査シ妥當ナリト認ムルトキハ裁可ヲ經テ會社設立及鐵道布設ノ免許狀ヲ下付スヘシ
第五條 發起人前條ノ免許狀ヲ下付セラレタル後ニアラサレハ社名ヲ以テ株金ヲ募集シ鐵道布設ノ工事ニ著手スルコトヲ得ス
第六條 會社ハ免許狀下付ノ日ヨリ三箇月以內ニ鐵道布設工事ニ著手シ免許狀ニ記載シタル豫定期限內ニ竣功スヘシ若シ其期限內ニ竣功シ難キ事由アルトキハ少クトモ二箇月以前本社所在ノ地方廳ヲ經由シテ政府ニ具申シ延期ヲ請フヘシ但其延期ハ豫定期限ノ半ヲ超ルコトヲ得ス
第七條 軌道ノ幅員ハ特許ヲ得タル者ヲ除クノ外總テ三呎六吋トス
第八條 左ニ記載スルモノヲ以テ鐵道用地トス
第一 線路ニ當ル敷地但其幅員ハ築堤切取架橋等工事ノ必要ニ應シテ定ムルモノトス
第二 停車場及之ニ附屬スル車庫貨物庫等ノ建築用ニ供スル土地
第三 前項ノ構內ニ常住ヲ要スル驛長車長及機關方等ノ家宅番人小屋等ノ建築用ニ供スル土地
第四 鐵道布設又ハ運輸ニ要スル車輛器具ヲ製作修繕スル器械場及同上ノ資材器具ヲ貯藏スル倉庫ノ建築用ニ供スル線路ニ沿ヒタル土地
第九條 鐵道布設ノ爲メ舊來ノ道路橋梁溝渠運河等ヲ變換シ又ハ一時之ヲ移設セントスルトキハ所管官廳ノ許可ヲ受クヘシ但其費用ハ會社ニ於テ之ヲ支辨スヘシ
第十條 線路ノ道路ヲ橫斷スル場所ニハ橋梁ヲ架設シ若クハ踏切道ヲ設クヘシ其他危險防止ノ爲メ必要ノ場所ニハ牆柵門戶堤防ヲ設ケ若クハ番人ヲ配付スル等充分ノ警備ヲナスヘシ
第十一條 線路ノ全部若クハ一部ノ工事竣功シ旅客及貨物ノ運輸ヲ開業セントスルトキハ鐵道局長官ニ屆出ヘシ
第十二條 鐵道局長官ハ前條ノ屆出ニ依リ監査員ヲ派遣シテ工事方法書ニ照シ軌道橋梁車輛建物等ヲ監査セシメ完全ナリト認ムルトキハ開業免許狀ヲ下付スヘシ若シ不完全ナリト認ムルトキハ其改築修理ヲ命スヘシ但此場合ニ於テハ監査員ノ復命書ヲ會社ニ示スヘシ
會社ハ前項ノ開業免許狀ヲ得スシテ運輸ノ業ヲ開クコトヲ得ス
第十三條 鐵道局長官ハ鐵道布設中臨時監査員ヲ派遣シテ工事ヲ監査セシメ又運輸開業ノ後ニ於テモ監査員ヲ派遣シテ軌道橋梁車輛建物等並運輸上ノ實況ヲ監査セシメ危險ナリト認ムルトキハ其改築修理ヲ命スヘシ但此場合ニ於テハ監査員ノ復命書ヲ會社ニ示スヘシ
第十四條 第十二條第十三條ノ改築修理ヲナシタルトキハ更ニ監査ヲ受クヘシ
第十五條 官有ノ土地ニシテ鐵道用地ニ必要ナルモノ及第九條ノ土地ハ相當代價ヲ以テ之ヲ拂下ケ其民有ニ係ルモノハ公用土地買上規則ニ據リ買上ケ會社ニ拂下クヘシ但其土地ニ建物アルトキハ本條ニ準シテ之ヲ處分スヘシ
第十六條 會社ニ於テ鐵道布設ヲ止メ又ハ線路ノ變更ニ依リ不用トナリタル鐵道用地ニシテ最初公用土地買上規則ニ據テ買上ラレタルモノハ原所有者ニ於テ原價ヲ以テ之ヲ買戾スコトヲ得
會社ハ前項ノ土地不用トナリタル旨ヲ原所有者ニ通知スヘシ若シ原所有者ニ於テ三箇月以內ニ之ヲ買戾サヽルトキハ其權利ヲ失フモノトス
第十七條 政府ハ鐵道用地內ニ於テ線路ニ沿ヒ電線ヲ架設スルコトヲ得又會社ハ其架柱ノ一部ヲ使用シ鐵道用ノ電線ヲ架スルコトヲ得但其一部ニ對スル費用ヲ支辨スヘシ
第十八條 會社ハ鐵道用地及停車場建物ノ一部ヲ無料ニテ郵便及ヒ電信ノ用ニ供スヘシ但政府ニ於テ建物ノ改造ヲ要シ又ハ用地ノ買上ヲナストキハ其實費ヲ支辨スヘシ
第十九條 明治十五年第五十九號布吿郵便條例ニ依リ郵便物ト稱スルモノ及其遞送ニ關スル人員ノ運賃ハ左ニ記載スル割合ヲ以テ遞信省ト會社ト豫メ之ヲ約定スヘシ
第一 下等旅客二十人ノ坐位ニ當ル積量
一哩ニ付金一錢五厘以內
第二 一車(四噸積)貸切
一哩ニ付金五錢以內
但車室ヲ構造シ又ハ之ヲ改造セシメタルトキハ遞信省ヨリ其實費ヲ支辨スヘシ
第二十條 鐵道事務ニ關シテ往復スル官吏ハ無料ニテ乘車セシムヘシ但其官吏ハ常乘切手ヲ帶ル者ニ限ル
第二十一條 公務ヲ以テ往復スル陸海軍軍人軍屬及警察官吏又ハ軍馬銃砲彈藥糧食被服陣具工鍬兵噐具天幕等ハ總テ半價ヲ以テ輸送スヘシ但其公務タルコトヲ證スヘキ通券ヲ帶ル者ニ限ル
第二十二條 囚徒及其護送官吏ハ半價ヲ以テ乘車セシムヘシ
第二十三條 戰時若クハ事變ニ際シテハ徵發令ノ定ムル所ニ從ヒ鐵道ヲ使用セシムヘシ
平時ト雖モ至急ニ兵隊ノ派遣ヲ要スル場合ニ於テハ當該官廳ノ命ニ從ヒ速ニ之ヲ輸送スヘシ但其運賃ハ第二十一條ノ例ニ依ル
第二十四條 陸海軍ニ於テ軍事上必要ノ爲メ車輛ニ改修ヲ加ヘ又ハ新裝置ヲ施シ或ハ載卸用噐具ノ製造ヲ命シ其實費ヲ支辨スルトキハ會社ハ之ヲ拒ムコトヲ得ス
第二十五條 鐵道局長官ハ公衆ノ安全ノ爲メ官有鐵道ニ實施スル事物ハ會社ニ命シ之ヲ施設セシムルコトヲ得
第二十六條 政府又ハ政府ノ許可ヲ得タル者ニ於テ會社ノ鐵道線路ニ接續シ若クハ之ヲ橫斷シテ鐵道ヲ布設シ又ハ會社ノ鐵道線路ニ接近シ若クハ之ヲ橫斷シテ道路橋梁溝渠運河ヲ設クルトキハ會社ハ之ヲ拒ムコトヲ得ス
第二十七條 官設鐵道ニ施行スル規則ハ私設鐵道ニモ亦之ヲ適用スヘシ
第二十八條 會社ニ於テ工事ノ方法又ハ會社ノ定欵ヲ變更セントスルトキハ本社所在ノ地方廳ヲ經由シテ政府ニ具申シ認可ヲ受クヘシ
第二十九條 旅客及貨物ノ運賃額又ハ運輸規程ヲ定メ若クハ之ヲ變更セントスルトキハ鐵道局長官ノ認可ヲ受クヘシ但下等旅客運賃額ハ一哩ニ付金一錢五厘ノ割合ヲ超過スルコトヲ得ス又其範圍內ニ於テ運賃額ヲ增加スル場合ニ於テハ少クトモ二週日前ニ之ヲ公示スヘシ
第三十條 列車發著時間及度數ヲ定メ又ハ之ヲ變更スルトキハ鐵道局長官ニ報吿スヘシ
第三十一條 會社ハ半年度每ニ營業ノ報吿書ヲ調製シ四十日以內ニ鐵道局長官ニ差出スヘシ
第三十二條 會社ハ其財產ノ全部若クハ一部ヲ抵當トシテ負債ヲナスコトヲ得但其額ハ株主ヨリ拂込タル資本金額十分ノ五ヲ超過スルコトヲ得ス
每勘定季中ニ支拂フヘキ負債ノ元利金ヲ完償シタル後ニアラサレハ株主ニ純益金ノ配當ヲナスコトヲ得ス
第三十三條 會社ノ勘定ヲ分ツテ左ノ二種トス
第一 資本勘定 軌道車輛噐械停車場土地建物等營業上收益アルヘキ物件ノ創設ニ係ル出納
第二 收益勘定 前項物件ノ維持保存ニ要スル費用及營業上ノ出納
第三十四條 私設鐵道ノ官設鐵道ニ接續スル場合ニ於テ交互運輸ノ手續及賃金ノ割合等ハ鐵道局長官之ヲ定ムヘシ
二箇以上ノ私設鐵道接續スル場合ニ於テ交互運輸ノ手續及賃金ノ割合等ニ係リ雙方ノ議協ハサルトキハ鐵道局長官ノ裁定ヲ請フヘシ
前項ノ場合ニ於テ鐵道局長官ノ裁定ハ終局トス
第三十五條 政府ハ免許狀下付ノ日ヨリ滿二十五箇年ノ後(特ニ營業期限ヲ定メタルモノハ其滿期後)ニ於テ鐵道及附屬物件ヲ買上ルノ權アルモノトス
第三十六條 前條ニ依リ鐵道及附屬物件ヲ買上ルトキハ前五箇年間ノ株券價格ヲ平均シ之ヲ以テ買上價格ト定ムヘシ
第三十七條 免許狀下付ノ日ヨリ三箇月以內ニ鐵道布設工事ニ著手セス又ハ豫定期限及延期內ニ竣功セサルトキハ免許狀ノ返納ヲ命スヘシ但事宜ニ由リ其既設ノ鐵道及附屬物件ヲ公賣ニ附シ其買受者ヲシテ之ヲ竣功セシムルコトアルヘシ
第三十八條 旅客及貨物輸送ノ際社員ノ疎虞懈怠又ハ故意ニ依リ損害ヲ生シタルトキハ會社其賠償ノ責ニ任スヘシ
第三十九條 第五條ノ免許狀ヲ受ケスシテ社名ヲ以テ株金ヲ募集シ及鐵道布設ノ工事ニ著手シタルトキハ第三條ノ假免狀ヲ沒收シ第十二條ノ免許狀ヲ受ケス又ハ第十二條第十三條ノ改築修理ヲナサスシテ營業ヲナシタルトキハ鐵道局長官ハ之ヲ停止スヘシ但其營業中ノ收入金ハ之ヲ沒收ス
第四十條 鐵道運輸開業後會社ニ於テ此條例及會社定欵ニ違背シ又ハ鐵道ノ正當ナル使用ヲ妨害シタルトキハ政府ハ役員ヲ改撰セシメ又ハ鐵道局ヲシテ運輸ノ業ヲ繼續セシムヘシ但鐵道局ヲシテ運輸ノ業ヲ繼續セシムル場合ニ於テモ其營業上ノ損益ハ仍ホ會社ニ屬スヘキモノトス
第四十一條 本條例ノ細則ハ閣令ヲ以テ之ヲ定ム
朕私設鉄道条例ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十年五月十七日
内閣総理大臣 伯爵 伊藤博文
勅令第十二号
私設鉄道条例
第一条 旅客及荷物運輸営業ノ目的ヲ以テ鉄道ヲ布設セントスル者ハ発起人五人以上結合シ鉄道会社創立願書ニ起業目論見書ヲ添ヘ本社ヲ設置セントスル地ノ地方庁ヲ経由シテ政府ニ差出スヘシ
馬車鉄道ハ本条例定ムル所ノ限ニアラス
第二条 起業目論見書ニハ左ノ事項ヲ記載スヘシ
第一 社名及本社所在地
第二 線路ノ両端及其経過スヘキ地名但略図ヲ添フヘシ
第三 資本金ノ総額及総株数並一株ノ金額
第四 鉄道布設ノ費用及運輸営業上ノ収支概算
第五 発起人ノ氏名住所及発起人各自ノ引受クヘキ株数但発起人総員ノ引受クヘキ株数ハ総株数十分ノ二以上タルヘシ
第三条 政府ニ於テ第一条ノ願書及目論見書ヲ査閲シ起業ノ大体ニ不都合ナキト認ムルトキハ仮免状ヲ下付シ本社ヲ設立セントスル地ノ地方庁ニ令シ発起人ヲシテ線路図面工事方法書工費予算書及会社ノ定款ヲ調製シ之ヲ差出サシムヘシ
既設ノ鉄道ニ妨害ヲ生スルノ虞アリ又ハ其地方ノ状況鉄道ノ布設ヲ要セスト認ムルトキハ願書ヲ却下スヘシ
第四条 政府ニ於テ前条ノ図面書類ヲ審査シ妥当ナリト認ムルトキハ裁可ヲ経テ会社設立及鉄道布設ノ免許状ヲ下付スヘシ
第五条 発起人前条ノ免許状ヲ下付セラレタル後ニアラサレハ社名ヲ以テ株金ヲ募集シ鉄道布設ノ工事ニ著手スルコトヲ得ス
第六条 会社ハ免許状下付ノ日ヨリ三箇月以内ニ鉄道布設工事ニ著手シ免許状ニ記載シタル予定期限内ニ竣功スヘシ若シ其期限内ニ竣功シ難キ事由アルトキハ少クトモ二箇月以前本社所在ノ地方庁ヲ経由シテ政府ニ具申シ延期ヲ請フヘシ但其延期ハ予定期限ノ半ヲ超ルコトヲ得ス
第七条 軌道ノ幅員ハ特許ヲ得タル者ヲ除クノ外総テ三呎六吋トス
第八条 左ニ記載スルモノヲ以テ鉄道用地トス
第一 線路ニ当ル敷地但其幅員ハ築堤切取架橋等工事ノ必要ニ応シテ定ムルモノトス
第二 停車場及之ニ附属スル車庫貨物庫等ノ建築用ニ供スル土地
第三 前項ノ構内ニ常住ヲ要スル駅長車長及機関方等ノ家宅番人小屋等ノ建築用ニ供スル土地
第四 鉄道布設又ハ運輸ニ要スル車輛器具ヲ製作修繕スル器械場及同上ノ資材器具ヲ貯蔵スル倉庫ノ建築用ニ供スル線路ニ沿ヒタル土地
第九条 鉄道布設ノ為メ旧来ノ道路橋梁溝渠運河等ヲ変換シ又ハ一時之ヲ移設セントスルトキハ所管官庁ノ許可ヲ受クヘシ但其費用ハ会社ニ於テ之ヲ支弁スヘシ
第十条 線路ノ道路ヲ横断スル場所ニハ橋梁ヲ架設シ若クハ踏切道ヲ設クヘシ其他危険防止ノ為メ必要ノ場所ニハ牆柵門戸堤防ヲ設ケ若クハ番人ヲ配付スル等充分ノ警備ヲナスヘシ
第十一条 線路ノ全部若クハ一部ノ工事竣功シ旅客及貨物ノ運輸ヲ開業セントスルトキハ鉄道局長官ニ届出ヘシ
第十二条 鉄道局長官ハ前条ノ届出ニ依リ監査員ヲ派遣シテ工事方法書ニ照シ軌道橋梁車輛建物等ヲ監査セシメ完全ナリト認ムルトキハ開業免許状ヲ下付スヘシ若シ不完全ナリト認ムルトキハ其改築修理ヲ命スヘシ但此場合ニ於テハ監査員ノ復命書ヲ会社ニ示スヘシ
会社ハ前項ノ開業免許状ヲ得スシテ運輸ノ業ヲ開クコトヲ得ス
第十三条 鉄道局長官ハ鉄道布設中臨時監査員ヲ派遣シテ工事ヲ監査セシメ又運輸開業ノ後ニ於テモ監査員ヲ派遣シテ軌道橋梁車輛建物等並運輸上ノ実況ヲ監査セシメ危険ナリト認ムルトキハ其改築修理ヲ命スヘシ但此場合ニ於テハ監査員ノ復命書ヲ会社ニ示スヘシ
第十四条 第十二条第十三条ノ改築修理ヲナシタルトキハ更ニ監査ヲ受クヘシ
第十五条 官有ノ土地ニシテ鉄道用地ニ必要ナルモノ及第九条ノ土地ハ相当代価ヲ以テ之ヲ払下ケ其民有ニ係ルモノハ公用土地買上規則ニ拠リ買上ケ会社ニ払下クヘシ但其土地ニ建物アルトキハ本条ニ準シテ之ヲ処分スヘシ
第十六条 会社ニ於テ鉄道布設ヲ止メ又ハ線路ノ変更ニ依リ不用トナリタル鉄道用地ニシテ最初公用土地買上規則ニ拠テ買上ラレタルモノハ原所有者ニ於テ原価ヲ以テ之ヲ買戻スコトヲ得
会社ハ前項ノ土地不用トナリタル旨ヲ原所有者ニ通知スヘシ若シ原所有者ニ於テ三箇月以内ニ之ヲ買戻サヽルトキハ其権利ヲ失フモノトス
第十七条 政府ハ鉄道用地内ニ於テ線路ニ沿ヒ電線ヲ架設スルコトヲ得又会社ハ其架柱ノ一部ヲ使用シ鉄道用ノ電線ヲ架スルコトヲ得但其一部ニ対スル費用ヲ支弁スヘシ
第十八条 会社ハ鉄道用地及停車場建物ノ一部ヲ無料ニテ郵便及ヒ電信ノ用ニ供スヘシ但政府ニ於テ建物ノ改造ヲ要シ又ハ用地ノ買上ヲナストキハ其実費ヲ支弁スヘシ
第十九条 明治十五年第五十九号布告郵便条例ニ依リ郵便物ト称スルモノ及其逓送ニ関スル人員ノ運賃ハ左ニ記載スル割合ヲ以テ逓信省ト会社ト予メ之ヲ約定スヘシ
第一 下等旅客二十人ノ坐位ニ当ル積量
一哩ニ付金一銭五厘以内
第二 一車(四噸積)貸切
一哩ニ付金五銭以内
但車室ヲ構造シ又ハ之ヲ改造セシメタルトキハ逓信省ヨリ其実費ヲ支弁スヘシ
第二十条 鉄道事務ニ関シテ往復スル官吏ハ無料ニテ乗車セシムヘシ但其官吏ハ常乗切手ヲ帯ル者ニ限ル
第二十一条 公務ヲ以テ往復スル陸海軍軍人軍属及警察官吏又ハ軍馬銃砲弾薬糧食被服陣具工鍬兵器具天幕等ハ総テ半価ヲ以テ輸送スヘシ但其公務タルコトヲ証スヘキ通券ヲ帯ル者ニ限ル
第二十二条 囚徒及其護送官吏ハ半価ヲ以テ乗車セシムヘシ
第二十三条 戦時若クハ事変ニ際シテハ徴発令ノ定ムル所ニ従ヒ鉄道ヲ使用セシムヘシ
平時ト雖モ至急ニ兵隊ノ派遣ヲ要スル場合ニ於テハ当該官庁ノ命ニ従ヒ速ニ之ヲ輸送スヘシ但其運賃ハ第二十一条ノ例ニ依ル
第二十四条 陸海軍ニ於テ軍事上必要ノ為メ車輛ニ改修ヲ加ヘ又ハ新装置ヲ施シ或ハ載卸用器具ノ製造ヲ命シ其実費ヲ支弁スルトキハ会社ハ之ヲ拒ムコトヲ得ス
第二十五条 鉄道局長官ハ公衆ノ安全ノ為メ官有鉄道ニ実施スル事物ハ会社ニ命シ之ヲ施設セシムルコトヲ得
第二十六条 政府又ハ政府ノ許可ヲ得タル者ニ於テ会社ノ鉄道線路ニ接続シ若クハ之ヲ横断シテ鉄道ヲ布設シ又ハ会社ノ鉄道線路ニ接近シ若クハ之ヲ横断シテ道路橋梁溝渠運河ヲ設クルトキハ会社ハ之ヲ拒ムコトヲ得ス
第二十七条 官設鉄道ニ施行スル規則ハ私設鉄道ニモ亦之ヲ適用スヘシ
第二十八条 会社ニ於テ工事ノ方法又ハ会社ノ定款ヲ変更セントスルトキハ本社所在ノ地方庁ヲ経由シテ政府ニ具申シ認可ヲ受クヘシ
第二十九条 旅客及貨物ノ運賃額又ハ運輸規程ヲ定メ若クハ之ヲ変更セントスルトキハ鉄道局長官ノ認可ヲ受クヘシ但下等旅客運賃額ハ一哩ニ付金一銭五厘ノ割合ヲ超過スルコトヲ得ス又其範囲内ニ於テ運賃額ヲ増加スル場合ニ於テハ少クトモ二週日前ニ之ヲ公示スヘシ
第三十条 列車発著時間及度数ヲ定メ又ハ之ヲ変更スルトキハ鉄道局長官ニ報告スヘシ
第三十一条 会社ハ半年度毎ニ営業ノ報告書ヲ調製シ四十日以内ニ鉄道局長官ニ差出スヘシ
第三十二条 会社ハ其財産ノ全部若クハ一部ヲ抵当トシテ負債ヲナスコトヲ得但其額ハ株主ヨリ払込タル資本金額十分ノ五ヲ超過スルコトヲ得ス
毎勘定季中ニ支払フヘキ負債ノ元利金ヲ完償シタル後ニアラサレハ株主ニ純益金ノ配当ヲナスコトヲ得ス
第三十三条 会社ノ勘定ヲ分ツテ左ノ二種トス
第一 資本勘定 軌道車輛器械停車場土地建物等営業上収益アルヘキ物件ノ創設ニ係ル出納
第二 収益勘定 前項物件ノ維持保存ニ要スル費用及営業上ノ出納
第三十四条 私設鉄道ノ官設鉄道ニ接続スル場合ニ於テ交互運輸ノ手続及賃金ノ割合等ハ鉄道局長官之ヲ定ムヘシ
二箇以上ノ私設鉄道接続スル場合ニ於テ交互運輸ノ手続及賃金ノ割合等ニ係リ双方ノ議協ハサルトキハ鉄道局長官ノ裁定ヲ請フヘシ
前項ノ場合ニ於テ鉄道局長官ノ裁定ハ終局トス
第三十五条 政府ハ免許状下付ノ日ヨリ満二十五箇年ノ後(特ニ営業期限ヲ定メタルモノハ其満期後)ニ於テ鉄道及附属物件ヲ買上ルノ権アルモノトス
第三十六条 前条ニ依リ鉄道及附属物件ヲ買上ルトキハ前五箇年間ノ株券価格ヲ平均シ之ヲ以テ買上価格ト定ムヘシ
第三十七条 免許状下付ノ日ヨリ三箇月以内ニ鉄道布設工事ニ著手セス又ハ予定期限及延期内ニ竣功セサルトキハ免許状ノ返納ヲ命スヘシ但事宜ニ由リ其既設ノ鉄道及附属物件ヲ公売ニ附シ其買受者ヲシテ之ヲ竣功セシムルコトアルヘシ
第三十八条 旅客及貨物輸送ノ際社員ノ疎虞懈怠又ハ故意ニ依リ損害ヲ生シタルトキハ会社其賠償ノ責ニ任スヘシ
第三十九条 第五条ノ免許状ヲ受ケスシテ社名ヲ以テ株金ヲ募集シ及鉄道布設ノ工事ニ著手シタルトキハ第三条ノ仮免状ヲ没収シ第十二条ノ免許状ヲ受ケス又ハ第十二条第十三条ノ改築修理ヲナサスシテ営業ヲナシタルトキハ鉄道局長官ハ之ヲ停止スヘシ但其営業中ノ収入金ハ之ヲ没収ス
第四十条 鉄道運輸開業後会社ニ於テ此条例及会社定款ニ違背シ又ハ鉄道ノ正当ナル使用ヲ妨害シタルトキハ政府ハ役員ヲ改撰セシメ又ハ鉄道局ヲシテ運輸ノ業ヲ継続セシムヘシ但鉄道局ヲシテ運輸ノ業ヲ継続セシムル場合ニ於テモ其営業上ノ損益ハ仍ホ会社ニ属スヘキモノトス
第四十一条 本条例ノ細則ハ閣令ヲ以テ之ヲ定ム