北海道水産税則
法令番号: 勅令第六號
公布年月日: 明治20年3月31日
法令の形式: 勅令
朕北海道水產稅則ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十年三月二十八日
內閣總理大臣 伯爵 伊藤博文
大藏大臣 伯爵 松方正義
勅令第六號
北海道水產稅則
第一條 北海道水產物營業人ハ此稅則ニ從ヒ水產稅ヲ納ムヘシ
第二條 北海道廳長官ハ水產稅ヲ徵收スル爲メ水產物營業人ノ組合ヲ定ムヘシ
第三條 水產稅ハ各組合水產物產出高價額百分ノ五ヲ以テ其組合一箇年ノ稅額ト爲シ之ヲ各營業人ニ賦課スルモノトス
第四條 此稅則ニ於テ水產物トハ左ノ種類ヲ云フ
第一類
生鰊ナマニシン
生鮭ナマサケ
生鱒ナママス
生鰤ナマブリ
生鮪ナマシビ
生鱈ナマタラ
生鮊ナマカスベ
生𩸽ナマホッケ
海馬トド
第二類
魚粕ウヲカス
乾身缺鰊ホシミガキニシン
乾胴鰊ホシドウニシン
乾脊割鰊ホシセワリニシン
乾外割鰊ホシホカワリニシン
乾二ツ割鰊ホシフタツワリニシン
鰊鯑粕カズノコカス
鹽鮭シホサケ
鹽鱒シホマス
鹽鰤シホブリ
鹽鮪シホシビ
鹽鱈シホタラ
乾鱈ホシタラ
乾鮊ホシカスベ
乾𩸽ホシホッケ
鹽𩸽シホホッケ
乾鮑ホシアハビ
乾河豚ホシフグ
煎海鼠イリコ
スルメ
海扇殼ホタテガヒ
乾海扇ホシホタテ
乾牡蠣ホシカキ
昆布コンブ
細布ホソメ
布海苔フノリ
若布ワカメ
銀杏草ギンナンサウ
第五條 此稅則ニ於テ水產物營業人トハ第四條第一類ノ水產物ヲ採取スル者又ハ原品ニ勞力ヲ加ヘテ第四條第二類ノ水產物ト爲ス者ヲ云フ
第六條 水產稅ハ明治十五年ヨリ同十七年マテ三箇年間ノ水產物產出高ヲ平均シ其三箇年間北海道ニ於テ該稅品拂下ヲ爲シタル代價ヲ平均シテ價額ヲ定メ其組合ノ稅額ヲ算出スルモノトス但明治二十年以後三箇年以上ヲ經過シ大藏大臣ニ於テ北海道ノ全部又ハ其幾分ニ就キ水產物既定ノ價額不相當ナリト認ムルトキハ更ニ既往三箇年間ノ產出高幷其賣買相場ヲ平均シテ之ヲ改正スヘシ
第七條 第四條第一類ノ水產物ヲ以テ第二類ノ水產物ト爲ストキハ第二類ノ水產物ニ就キ課稅ス
第八條 水產物營業人トナラントスル者ハ水產物營業人ノ組合ニ加入スヘシ
第九條 北海道廳長官ハ水產物營業人各組合中ニ收稅委員ヲ置キ其組合ニ係ル收稅ノ事ヲ擔理セシム但收稅委員ニ關スル費用ハ其組合ノ負擔トス
第十條 收稅委員ハ水產物營業人組合會ヲ開キ組合ノ稅額ニ對シ各自ノ負擔スヘキ稅金ヲ評決セシメ郡區長ノ認可ヲ經テ之ヲ定ム但營業人ノ組合會期其他本條ニ關スル手續ハ北海道廳長官之ヲ定ム
第十一條 水產物營業人ハ納期ニ從ヒ其稅金ヲ組合收稅委員ニ納ムヘシ
收稅委員ハ各營業人ノ稅金ヲ徵收シ之ヲ國庫金出納所ニ納ムヘシ怠納者アリタルトキハ之ヲ郡區長ニ屆出ヘシ
第十二條 郡區長ハ前條ノ屆出アリタルトキハ其怠納者ノ營業ヲ停止シ先ツ其水產物ヲ公賣シ仍ホ營業ニ使用スル器具、船舶、建物及海產乾場ヲ公賣スルコトヲ得但公賣ニ關シテハ明治十年第七十九號布吿ヲ適用ス
第十三條 第八條ノ組合ニ加入セスシテ水產物ノ營業ヲ爲シタル者ハ貳圓以上貳拾圓以下ノ罰金ニ處シ其水產物ヲ沒收ス既ニ賣捌キタルモノハ其代金ヲ追徵ス
第十四條 此稅則ヲ犯シタル者ニハ刑法ノ不論罪及減輕再犯加重數罪倶發ノ例ヲ用ヒス
第十五條 水產稅ノ納期及此稅則施行ニ關スル細則ハ大藏大臣之ヲ定ム
附 則
第十六條 從前現品定稅ヲ徵收シ又ハ現品稅ヲ徵收セス若クハ無稅ニシテ明治十五年ヨリ同十七年マテ三箇年間ノ產出高詳カナラサルモノハ當分其營業人各自ノ現產出高ニ就キ第六條ノ稅品拂下平均代價ヲ以テ價額ヲ定メ其百分ノ五ヲ稅金トシテ徵收スヘシ但明治二十年以後三箇年ヲ經過シタル上ハ大藏大臣ニ於テ本稅則ニ據リ改正スヘシ
第十七條 前條ノ營業人ニ關シ特ニ明文ヲ揭ケサルモノハ第十條ノ稅金ニ係ル事項ヲ除クノ外總テ此稅則ニ從フヘシ
第十八條 第十六條ノ營業人ニシテ其水產物ノ產出高ヲ僞リ逋稅シタル者ハ其逋稅高三倍ノ罰金又ハ科料ニ處シ其水產物ヲ沒收ス既ニ賣捌キタルモノハ其代金ヲ追徵ス但自首スル者ハ其稅金ヲ追徵シ其罪ヲ問ハス
第十九條 明治十年第五十六號布吿同十七年第四號布吿同年第十二號布吿及從前北海道物產稅ニ關スル命令規則ハ此稅則施行ノ日ヨリ廢止ス
朕北海道水産税則ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十年三月二十八日
内閣総理大臣 伯爵 伊藤博文
大蔵大臣 伯爵 松方正義
勅令第六号
北海道水産税則
第一条 北海道水産物営業人ハ此税則ニ従ヒ水産税ヲ納ムヘシ
第二条 北海道庁長官ハ水産税ヲ徴収スル為メ水産物営業人ノ組合ヲ定ムヘシ
第三条 水産税ハ各組合水産物産出高価額百分ノ五ヲ以テ其組合一箇年ノ税額ト為シ之ヲ各営業人ニ賦課スルモノトス
第四条 此税則ニ於テ水産物トハ左ノ種類ヲ云フ
第一類
生鰊ナマニシン
生鮭ナマサケ
生鱒ナママス
生鰤ナマブリ
生鮪ナマシビ
生鱈ナマタラ
生鮊ナマカスベ
生𩸽ナマホッケ
海馬トド
第二類
魚粕ウヲカス
乾身欠鰊ホシミガキニシン
乾胴鰊ホシドウニシン
乾脊割鰊ホシセワリニシン
乾外割鰊ホシホカワリニシン
乾二ツ割鰊ホシフタツワリニシン
鰊鯑粕カズノコカス
塩鮭シホサケ
塩鱒シホマス
塩鰤シホブリ
塩鮪シホシビ
塩鱈シホタラ
乾鱈ホシタラ
乾鮊ホシカスベ
乾𩸽ホシホッケ
塩𩸽シホホッケ
乾鮑ホシアハビ
乾河豚ホシフグ
煎海鼠イリコ
スルメ
海扇殻ホタテガヒ
乾海扇ホシホタテ
乾牡蠣ホシカキ
昆布コンブ
細布ホソメ
布海苔フノリ
若布ワカメ
銀杏草ギンナンサウ
第五条 此税則ニ於テ水産物営業人トハ第四条第一類ノ水産物ヲ採取スル者又ハ原品ニ労力ヲ加ヘテ第四条第二類ノ水産物ト為ス者ヲ云フ
第六条 水産税ハ明治十五年ヨリ同十七年マテ三箇年間ノ水産物産出高ヲ平均シ其三箇年間北海道ニ於テ該税品払下ヲ為シタル代価ヲ平均シテ価額ヲ定メ其組合ノ税額ヲ算出スルモノトス但明治二十年以後三箇年以上ヲ経過シ大蔵大臣ニ於テ北海道ノ全部又ハ其幾分ニ就キ水産物既定ノ価額不相当ナリト認ムルトキハ更ニ既往三箇年間ノ産出高並其売買相場ヲ平均シテ之ヲ改正スヘシ
第七条 第四条第一類ノ水産物ヲ以テ第二類ノ水産物ト為ストキハ第二類ノ水産物ニ就キ課税ス
第八条 水産物営業人トナラントスル者ハ水産物営業人ノ組合ニ加入スヘシ
第九条 北海道庁長官ハ水産物営業人各組合中ニ収税委員ヲ置キ其組合ニ係ル収税ノ事ヲ担理セシム但収税委員ニ関スル費用ハ其組合ノ負担トス
第十条 収税委員ハ水産物営業人組合会ヲ開キ組合ノ税額ニ対シ各自ノ負担スヘキ税金ヲ評決セシメ郡区長ノ認可ヲ経テ之ヲ定ム但営業人ノ組合会期其他本条ニ関スル手続ハ北海道庁長官之ヲ定ム
第十一条 水産物営業人ハ納期ニ従ヒ其税金ヲ組合収税委員ニ納ムヘシ
収税委員ハ各営業人ノ税金ヲ徴収シ之ヲ国庫金出納所ニ納ムヘシ怠納者アリタルトキハ之ヲ郡区長ニ届出ヘシ
第十二条 郡区長ハ前条ノ届出アリタルトキハ其怠納者ノ営業ヲ停止シ先ツ其水産物ヲ公売シ仍ホ営業ニ使用スル器具、船舶、建物及海産乾場ヲ公売スルコトヲ得但公売ニ関シテハ明治十年第七十九号布告ヲ適用ス
第十三条 第八条ノ組合ニ加入セスシテ水産物ノ営業ヲ為シタル者ハ弐円以上弐拾円以下ノ罰金ニ処シ其水産物ヲ没収ス既ニ売捌キタルモノハ其代金ヲ追徴ス
第十四条 此税則ヲ犯シタル者ニハ刑法ノ不論罪及減軽再犯加重数罪倶発ノ例ヲ用ヒス
第十五条 水産税ノ納期及此税則施行ニ関スル細則ハ大蔵大臣之ヲ定ム
附 則
第十六条 従前現品定税ヲ徴収シ又ハ現品税ヲ徴収セス若クハ無税ニシテ明治十五年ヨリ同十七年マテ三箇年間ノ産出高詳カナラサルモノハ当分其営業人各自ノ現産出高ニ就キ第六条ノ税品払下平均代価ヲ以テ価額ヲ定メ其百分ノ五ヲ税金トシテ徴収スヘシ但明治二十年以後三箇年ヲ経過シタル上ハ大蔵大臣ニ於テ本税則ニ拠リ改正スヘシ
第十七条 前条ノ営業人ニ関シ特ニ明文ヲ掲ケサルモノハ第十条ノ税金ニ係ル事項ヲ除クノ外総テ此税則ニ従フヘシ
第十八条 第十六条ノ営業人ニシテ其水産物ノ産出高ヲ偽リ逋税シタル者ハ其逋税高三倍ノ罰金又ハ科料ニ処シ其水産物ヲ没収ス既ニ売捌キタルモノハ其代金ヲ追徴ス但自首スル者ハ其税金ヲ追徴シ其罪ヲ問ハス
第十九条 明治十年第五十六号布告同十七年第四号布告同年第十二号布告及従前北海道物産税ニ関スル命令規則ハ此税則施行ノ日ヨリ廃止ス