愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律
法令番号: 法律第83号
公布年月日: 平成20年6月18日
法令の形式: 法律

提案理由 (AIによる要約)

近年のペット飼育数の増加とペットフード市場の拡大に伴い、米国ではメラミン混入ペットフードによる犬猫の死亡事故が発生し、日本でも同様の混入製品が発見され自主回収される事態が生じた。このような状況を受け、ペットの健康保護と動物愛護への寄与を目的として、ペットフードの安全性確保のための規制を行うため本法律を提案する。

参照した発言:
第169回国会 参議院 環境委員会 第6号

審議経過

第169回国会

参議院
(平成20年5月20日)
(平成20年5月22日)
(平成20年5月23日)
衆議院
(平成20年6月3日)
(平成20年6月6日)
(平成20年6月10日)
参議院
(平成20年6月11日)
愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律をここに公布する。
御名御璽
平成二十年六月十八日
内閣総理大臣 福田康夫
法律第八十三号
愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律
目次
第一章
総則(第一条―第四条)
第二章
愛がん動物用飼料の製造等に関する規制(第五条―第十条)
第三章
雑則(第十一条―第十七条)
第四章
罰則(第十八条―第二十三条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、愛がん動物用飼料の製造等に関する規制を行うことにより、愛がん動物用飼料の安全性の確保を図り、もって愛がん動物の健康を保護し、動物の愛護に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「愛がん動物」とは、愛がんすることを目的として飼養される動物であって政令で定めるものをいう。
2 この法律において「愛がん動物用飼料」とは、愛がん動物の栄養に供することを目的として使用される物をいう。
3 この法律において「製造業者」とは、愛がん動物用飼料の製造(配合及び加工を含む。以下同じ。)を業とする者をいい、「輸入業者」とは、愛がん動物用飼料の輸入を業とする者をいい、「販売業者」とは、愛がん動物用飼料の販売を業とする者で製造業者及び輸入業者以外のものをいう。
(事業者の責務)
第三条 製造業者、輸入業者又は販売業者は、その事業活動を行うに当たって、自らが愛がん動物用飼料の安全性の確保について第一義的責任を有していることを認識して、愛がん動物用飼料の安全性の確保に係る知識及び技術の習得、愛がん動物用飼料の原材料の安全性の確保、愛がん動物の健康が害されることを防止するための愛がん動物用飼料の回収その他の必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
(国の責務)
第四条 国は、愛がん動物用飼料の安全性に関する情報の収集、整理、分析及び提供を図るよう努めなければならない。
第二章 愛がん動物用飼料の製造等に関する規制
(基準及び規格)
第五条 農林水産大臣及び環境大臣は、愛がん動物用飼料の使用が原因となって、愛がん動物の健康が害されることを防止する見地から、農林水産省令・環境省令で、愛がん動物用飼料の製造の方法若しくは表示につき基準を定め、又は愛がん動物用飼料の成分につき規格を定めることができる。
2 農林水産大臣及び環境大臣は、前項の規定により基準又は規格を設定し、改正し、又は廃止しようとするときは、農業資材審議会及び中央環境審議会の意見を聴かなければならない。
(製造等の禁止)
第六条 前条第一項の規定により基準又は規格が定められたときは、何人も、次に掲げる行為をしてはならない。
一 当該基準に合わない方法により、愛がん動物用飼料を販売(不特定又は多数の者に対する販売以外の授与及びこれに準ずるものとして農林水産省令・環境省令で定める授与を含む。以下同じ。)の用に供するために製造すること。
二 当該基準に合わない方法により製造された愛がん動物用飼料を販売し、又は販売の用に供するために輸入すること。
三 当該基準に合う表示がない愛がん動物用飼料を販売すること。
四 当該規格に合わない愛がん動物用飼料を販売し、又は販売の用に供するために製造し、若しくは輸入すること。
(有害な物質を含む愛がん動物用飼料の製造等の禁止)
第七条 農林水産大臣及び環境大臣は、次に掲げる愛がん動物用飼料の使用が原因となって、愛がん動物の健康が害されることを防止するため必要があると認めるときは、農業資材審議会及び中央環境審議会の意見を聴いて、製造業者、輸入業者又は販売業者に対し、当該愛がん動物用飼料の製造、輸入又は販売を禁止することができる。
一 有害な物質を含み、又はその疑いがある愛がん動物用飼料
二 病原微生物により汚染され、又はその疑いがある愛がん動物用飼料
2 農林水産大臣及び環境大臣は、前項の規定による禁止をしたときは、その旨を官報に公示しなければならない。
(廃棄等の命令)
第八条 製造業者、輸入業者又は販売業者が次に掲げる愛がん動物用飼料を販売した場合又は販売の用に供するために保管している場合において、当該愛がん動物用飼料の使用が原因となって、愛がん動物の健康が害されることを防止するため特に必要があると認めるときは、必要な限度において、農林水産大臣及び環境大臣は、当該製造業者、輸入業者又は販売業者に対し、当該愛がん動物用飼料の廃棄又は回収を図ることその他必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
一 第六条第二号から第四号までに規定する愛がん動物用飼料
二 前条第一項の規定による禁止に係る愛がん動物用飼料
(製造業者等の届出)
第九条 第五条第一項の規定により基準又は規格が定められた愛がん動物用飼料の製造業者又は輸入業者(農林水産省令・環境省令で定める者を除く。)は、農林水産省令・環境省令で定めるところにより、その事業の開始前に、次に掲げる事項を農林水産大臣及び環境大臣に届け出なければならない。
一 氏名及び住所(法人にあっては、その名称、代表者の氏名及び主たる事務所の所在地)
二 製造業者にあっては、当該愛がん動物用飼料を製造する事業場の名称及び所在地
三 販売業務を行う事業場及び当該愛がん動物用飼料を保管する施設の所在地
四 その他農林水産省令・環境省令で定める事項
2 新たに第五条第一項の規定により基準又は規格が定められたため前項に規定する製造業者又は輸入業者となった者は、農林水産省令・環境省令で定めるところにより、その基準又は規格が定められた日から三十日以内に、同項各号に掲げる事項を農林水産大臣及び環境大臣に届け出なければならない。
3 前二項の規定による届出をした者(次項及び第五項において「届出事業者」という。)は、その届出事項に変更を生じたときは、農林水産省令・環境省令で定めるところにより、その変更の日から三十日以内に、その旨を農林水産大臣及び環境大臣に届け出なければならない。その事業を廃止したときも、同様とする。
4 届出事業者が第一項又は第二項の規定による届出に係る事業の全部を譲り渡し、又は届出事業者について相続、合併若しくは分割(当該届出に係る事業の全部を承継させるものに限る。)があったときは、その事業の全部を譲り受けた者又は相続人(相続人が二人以上ある場合において、その全員の同意により事業を承継すべき相続人を選定したときは、その者)、合併後存続する法人若しくは合併により設立した法人若しくは分割によりその事業の全部を承継した法人は、その届出事業者の地位を承継する。
5 前項の規定により届出事業者の地位を承継した者は、農林水産省令・環境省令で定めるところにより、その承継の日から三十日以内に、その事実を証する書面を添えて、その旨を農林水産大臣及び環境大臣に届け出なければならない。
(帳簿の備付け)
第十条 第五条第一項の規定により基準又は規格が定められた愛がん動物用飼料の製造業者又は輸入業者は、帳簿を備え、当該愛がん動物用飼料を製造し、又は輸入したときは、農林水産省令・環境省令で定めるところにより、その名称、数量その他農林水産省令・環境省令で定める事項を記載し、これを保存しなければならない。
2 第五条第一項の規定により基準又は規格が定められた愛がん動物用飼料の製造業者、輸入業者又は販売業者は、帳簿を備え、当該愛がん動物用飼料を製造業者、輸入業者又は販売業者に譲り渡したときは、農林水産省令・環境省令で定めるところにより、その名称、数量、相手方の氏名又は名称その他農林水産省令・環境省令で定める事項を記載し、これを保存しなければならない。
第三章 雑則
(報告の徴収)
第十一条 農林水産大臣又は環境大臣は、この法律の施行に必要な限度において、製造業者、輸入業者若しくは販売業者又は愛がん動物用飼料の運送業者若しくは倉庫業者に対し、その業務に関し必要な報告を求めることができる。
2 次の各号に掲げる大臣は、前項の規定による権限を単独で行使したときは、速やかに、その結果をそれぞれ当該各号に定める大臣に通知するものとする。
一 農林水産大臣 環境大臣
二 環境大臣 農林水産大臣
(立入検査等)
第十二条 農林水産大臣又は環境大臣は、この法律の施行に必要な限度において、その職員に、製造業者、輸入業者若しくは販売業者又は愛がん動物用飼料の運送業者若しくは倉庫業者の事業場、倉庫、船舶、車両その他愛がん動物用飼料の製造、輸入、販売、輸送又は保管の業務に関係がある場所に立ち入り、愛がん動物用飼料、その原材料若しくは業務に関する帳簿、書類その他の物件を検査させ、関係者に質問させ、又は検査に必要な限度において愛がん動物用飼料若しくはその原材料を集取させることができる。ただし、愛がん動物用飼料又はその原材料を集取させるときは、時価によってその対価を支払わなければならない。
2 前項の規定により立入検査、質問又は集取(以下「立入検査等」という。)をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。
3 第一項の規定による立入検査等の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
4 次の各号に掲げる大臣は、第一項の規定による権限を単独で行使したときは、速やかに、その結果をそれぞれ当該各号に定める大臣に通知するものとする。
一 農林水産大臣 環境大臣
二 環境大臣 農林水産大臣
5 農林水産大臣又は環境大臣は、第一項の規定により愛がん動物用飼料又はその原材料を集取させたときは、当該愛がん動物用飼料又はその原材料の検査の結果の概要を公表しなければならない。
(センターによる立入検査等)
第十三条 農林水産大臣は、前条第一項の場合において必要があると認めるときは、独立行政法人農林水産消費安全技術センター(以下「センター」という。)に、同項に規定する者の事業場、倉庫、船舶、車両その他愛がん動物用飼料の製造、輸入、販売、輸送又は保管の業務に関係がある場所に立ち入り、愛がん動物用飼料、その原材料若しくは業務に関する帳簿、書類その他の物件を検査させ、関係者に質問させ、又は検査に必要な限度において愛がん動物用飼料若しくはその原材料を集取させることができる。ただし、愛がん動物用飼料又はその原材料を集取させるときは、時価によってその対価を支払わなければならない。
2 農林水産大臣は、前項の規定によりセンターに立入検査等を行わせる場合には、センターに対し、立入検査等を行う期日、場所その他必要な事項を示してこれを実施すべきことを指示するものとする。
3 センターは、前項の規定による指示に従って第一項の規定による立入検査等を行ったときは、農林水産省令で定めるところにより、その結果を農林水産大臣に報告しなければならない。
4 農林水産大臣は、前項の規定による報告を受けたときは、速やかに、その内容を環境大臣に通知するものとする。
5 前条第二項及び第三項の規定は第一項の規定による立入検査等について、同条第五項の規定は第一項の規定による集取について、それぞれ準用する。
(センターに対する命令)
第十四条 農林水産大臣は、前条第一項の規定による立入検査等の業務の適正な実施を確保するため必要があると認めるときは、センターに対し、当該業務に関し必要な命令をすることができる。
(輸出用愛がん動物用飼料に関する特例)
第十五条 輸出用の愛がん動物用飼料については、政令で、この法律の一部の適用を除外し、その他必要な特例を定めることができる。
(権限の委任)
第十六条 この法律に規定する農林水産大臣の権限は、農林水産省令で定めるところにより、地方農政局長に委任することができる。
2 この法律に規定する環境大臣の権限は、環境省令で定めるところにより、地方環境事務所長に委任することができる。
(経過措置)
第十七条 この法律の規定に基づき命令を制定し、又は改廃する場合においては、その命令で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)を定めることができる。
第四章 罰則
第十八条 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第六条の規定に違反した者
二 第七条第一項の規定による禁止に違反した者
三 第八条の規定による命令に違反した者
第十九条 次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
一 第九条第一項又は第二項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者
二 第十一条第一項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
三 第十二条第一項又は第十三条第一項の規定による検査若しくは集取を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又はこれらの規定による質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をした者
第二十条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。
一 第十八条 一億円以下の罰金刑
二 前条 同条の罰金刑
第二十一条 第九条第三項又は第五項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、二十万円以下の過料に処する。
第二十二条 第十四条の規定による命令に違反した場合には、その違反行為をしたセンターの役員は、二十万円以下の過料に処する。
第二十三条 第十条第一項又は第二項の規定に違反して、帳簿を備えず、帳簿に記載せず、若しくは虚偽の記載をし、又は帳簿を保存しなかった者は、十万円以下の過料に処する。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、次条及び附則第三条の規定は、公布の日から施行する。
(施行のために必要な準備)
第二条 第五条第一項の規定による基準又は規格の設定については、農林水産大臣及び環境大臣は、この法律の施行前においても、農業資材審議会及び中央環境審議会の意見を聴くことができる。
(政令への委任)
第三条 前条に規定するもののほか、この法律の施行に関して必要な経過措置は、政令で定める。
(検討)
第四条 政府は、この法律の施行後五年を経過した場合において、この法律の施行の状況を勘案し、必要があると認めるときは、この法律の規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
(環境基本法の一部改正)
第五条 環境基本法(平成五年法律第九十一号)の一部を次のように改正する。
第四十一条第二項第三号中「及び生物多様性基本法(平成二十年法律第五十八号)」を「、生物多様性基本法(平成二十年法律第五十八号)及び愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(平成二十年法律第八十三号)」に改める。
(独立行政法人農林水産消費安全技術センター法の一部改正)
第六条 独立行政法人農林水産消費安全技術センター法(平成十一年法律第百八十三号)の一部を次のように改正する。
第十条第二項中第六号を第七号とし、第五号を第六号とし、第四号の次に次の一号を加える。
五 愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(平成二十年法律第八十三号)第十三条第一項の規定による立入検査、質問及び集取
(農林水産省設置法の一部改正)
第七条 農林水産省設置法(平成十一年法律第九十八号)の一部を次のように改正する。
第七条第一項中「及び種苗法(平成十年法律第八十三号)」を「、種苗法(平成十年法律第八十三号)及び愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(平成二十年法律第八十三号)」に改める。
農林水産大臣 若林正俊
環境大臣 鴨下一郎
内閣総理大臣 福田康夫