(フィリピンの特定の貨物に係る関税の緊急措置)
第七条の十一 経済上の連携に関する日本国とフィリピン共和国との間の協定(以下「フィリピン協定」という。)に基づく関税の譲許(以下この条において単に「譲許」という。)による特定の種類の貨物(フィリピン協定第十八条1の規定に基づき譲許の便益の適用を受けるものに限る。)の輸入の増加(本邦の国内総生産量に対する比率の増加を含む。)の事実(第九項及び第十一項において「フィリピン特定貨物の輸入増加の事実」という。)があり、当該貨物の輸入の増加が重要な原因となつて、これと同種の貨物その他用途が直接競合する貨物の生産に関する本邦の産業に重大な損害を与え、又は与えるおそれがある事実(第九項及び第十一項において「本邦の産業に与える重大な損害等の事実」という。)がある場合において、国民経済上緊急に必要があると認められるときは、フィリピン協定第二十二条1の規定に基づき、政令で定めるところにより、貨物及び期間(第十一項の規定により指定された期間と通算して三年以内に限る。)を指定し、次の措置をとることができる。
一 指定された貨物についてフィリピン協定附属書一の日本国の表に基づき更なる関税率の引下げを行うものとされている場合において、指定された期間内に輸入される当該指定された貨物の全部につき、又は当該貨物のうち一定の数量若しくは額を超えるものにつき、更なる関税率の引下げを行わないものとすること。
二 指定された期間内に輸入される指定された貨物の全部につき、又は当該貨物のうち一定の数量若しくは額を超えるものにつき、次のうちいずれか低い税率(フィリピン協定の効力発生の日から起算して六年を経過する日の属する年度の末日までは、イに掲げる税率)の範囲内において関税率を引き上げること。
ロ フィリピン協定の効力発生の日の前日における実行税率
2 前項の規定による措置をとる場合において、特別の理由により必要があると認められるときは、フィリピン協定第二十二条5(e)の規定に基づき、当該措置につき第十一項の規定により指定された期間と通算して三年を超え四年以内の期間を指定することができる。
3 第一項の規定による措置をとる場合において、前二項の規定により指定しようとする期間が第十一項の規定により指定された期間と通算して一年を超えるものであるときは、フィリピン協定第二十二条5(e)の規定に基づき、当該措置は、当該指定しようとする期間内において一定の期間ごとに段階的に緩和されたものでなければならない。
4 第一項の規定による措置がとられている場合において、特別の理由により必要があると認められるときは、フィリピン協定第二十二条5(e)の規定に基づき、政令で定めるところにより、同項の規定により指定された期間を第十一項の規定により指定された期間と通算して四年以内に限り延長することができる。
5 政府は、前項の規定に基づき、第一項の規定により指定された期間を第十一項の規定により指定された期間と通算して一年を超えて延長する場合には、フィリピン協定第二十二条5(e)の規定に基づき、当該措置を一定の期間ごとに段階的に緩和するものとする。
6 特定の貨物につき第一項の規定による措置をとる場合又はとつた場合には、フィリピン協定第二十二条5(d)に規定する協議により、政令で定めるところにより、当該貨物以外の貨物で譲許がされているものにつきその譲許を修正し、又は譲許がされていないものにつき新たに譲許をし、その修正又は譲許をした後の税率を適用することができる。
7 フィリピンにおいてフィリピン協定第二十二条1の規定による措置(以下この項及び次項において「フィリピンの緊急措置」という。)がとられた場合には、フィリピン協定第二十二条6(b)及び(c)の規定に基づき、政令で定めるところにより、譲許がされている貨物を指定し、その貨物の全部又は一部につき譲許の適用を停止し、実行税率の範囲内の税率による関税を課することができる。ただし、フィリピンの緊急措置がフィリピン協定第二十二条1の規定によりフィリピンにおける特定の貨物の輸入数量の増加の事実に基づきとられたものであつて、かつ、フィリピンの緊急措置がとられた日から一年を経過していない場合は、この限りでない。
8 前二項の規定による措置は、それぞれその効果が第一項の規定による措置の補償又はフィリピンの緊急措置に対する対抗措置として必要な限度を超えず、かつ、その国民経済に対する影響ができるだけ少ないものとするような配慮のもとに行わなければならない。
9 政府は、フィリピン特定貨物の輸入増加の事実及びこれによる本邦の産業に与える重大な損害等の事実についての十分な証拠がある場合において、必要があると認めるときは、これらの事実の有無につき調査を行うものとする。
10 前項の調査は、当該調査を開始した日から一年以内に終了するものとする。
11 政府は、第九項の調査が開始された場合において、その調査の完了前においても、十分な証拠により、フィリピン特定貨物の輸入増加の事実及びこれによる本邦の産業に与える重大な損害等の事実を推定することができ、国民経済上特に緊急に必要があると認められるときは、フィリピン協定第二十二条4(a)及び(d)の規定に基づき、政令で定めるところにより、貨物及び期間(二百日以内に限る。)を指定し、次の措置をとることができる。
一 指定された貨物についてフィリピン協定附属書一の日本国の表に基づき更なる関税率の引下げを行うものとされている場合において、指定された期間内に輸入される当該指定された貨物の全部につき、又は当該貨物のうち一定の数量若しくは額を超えるものにつき、更なる関税率の引下げを行わないものとすること。
二 指定された期間内に輸入される指定された貨物の全部につき、又は当該貨物のうち一定の数量若しくは額を超えるものにつき、次のうちいずれか低い税率(フィリピン協定の効力発生の日から起算して六年を経過する日の属する年度の末日までは、イに掲げる税率)の範囲内において関税率を引き上げること。
ロ フィリピン協定の効力発生の日の前日における実行税率
12 政府は、第九項の調査が終了したときは、第一項の規定による措置をとる場合を除き、前項の規定により課された関税を速やかに還付しなければならない。同項の規定により課された関税の額が、同項の規定による措置がとられていた期間内に輸入される同項の規定により指定された貨物につき、第一項の規定により関税が課されるものとした場合に課される関税の額を超える場合における当該超える部分の関税についても、同様とする。
13 第一項の規定による措置がとられていた貨物については、これらの措置が終了した日からこれらの措置がとられていた期間に相当する期間又は一年間のいずれか長い期間を経過した日以後でなければ、同項又は第十一項の規定による措置をとることができない。
14 政府は、フィリピン協定の効力発生の日から起算して十年を経過する日までの間に限り、第一項又は第十一項の規定による措置をとることができる。
15 第八条の九第一項に規定する譲許の便益の適用を受ける物品については、第一項又は第十一項の規定は、適用しない。
16 前各項に定めるもののほか、これらの規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。