社会保険労務士法の一部を改正する法律
法令番号: 法律第六十二号
公布年月日: 平成17年6月17日
法令の形式: 法律
社会保険労務士法の一部を改正する法律をここに公布する。
御名御璽
平成十七年六月十七日
内閣総理大臣 小泉純一郎
法律第六十二号
社会保険労務士法の一部を改正する法律
社会保険労務士法(昭和四十三年法律第八十九号)の一部を次のように改正する。
目次中「社会保険労務士試験」を「社会保険労務士試験等」に、「第二十五条の四十九」を「第二十五条の五十」に改める。
第二条第一項第一号の四中「のあつせん」の下に「の手続及び雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和四十七年法律第百十三号)第十四条第一項の調停の手続」を加え、「(以下「あつせん代理」という。)」を削り、同号の次に次の二号を加える。
一の五 地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第百八十条の二の規定に基づく都道府県知事の委任を受けて都道府県労働委員会が行う個別労働関係紛争(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第一条に規定する個別労働関係紛争(労働関係調整法(昭和二十一年法律第二十五号)第六条に規定する労働争議に当たる紛争及び特定独立行政法人等の労働関係に関する法律(昭和二十三年法律第二百五十七号)第二十六条第一項に規定する紛争並びに労働者の募集及び採用に関する事項についての紛争を除く。)をいう。以下単に「個別労働関係紛争」という。)に関するあつせんの手続について、紛争の当事者を代理すること。
一の六 個別労働関係紛争(紛争の目的の価額が民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第三百六十八条第一項に定める額を超える場合には、弁護士が同一の依頼者から受任しているものに限る。)に関する民間紛争解決手続(裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(平成十六年法律第百五十一号)第二条第一号に規定する民間紛争解決手続をいう。以下この条において同じ。)であつて、個別労働関係紛争の民間紛争解決手続の業務を公正かつ適確に行うことができると認められる団体として厚生労働大臣が指定するものが行うものについて、紛争の当事者を代理すること。
第二条第一項第三号中「(労働争議に介入することとなるものを除く。)」を削り、同条第二項中「前項各号」を「第一項各号」に改め、同項を同条第四項とし、同条第一項の次に次の二項を加える。
2 前項第一号の四から第一号の六までに掲げる業務(以下「紛争解決手続代理業務」という。)は、紛争解決手続代理業務試験に合格し、かつ、第十四条の十一の三第一項の規定による付記を受けた社会保険労務士(以下「特定社会保険労務士」という。)に限り、行うことができる。
3 紛争解決手続代理業務には、次に掲げる事務が含まれる。
一 第一項第一号の四のあつせんの手続及び調停の手続、同項第一号の五のあつせんの手続並びに同項第一号の六の厚生労働大臣が指定する団体が行う民間紛争解決手続(以下この項において「紛争解決手続」という。)について相談に応ずること。
二 紛争解決手続の開始から終了に至るまでの間に和解の交渉を行うこと。
三 紛争解決手続により成立した和解における合意を内容とする契約を締結すること。
第五条第九号中「まつ消」を「抹消」に改める。
「第二章 社会保険労務士試験」を「第二章 社会保険労務士試験等」に改める。
第十三条の二の次に次の三条を加える。
(紛争解決手続代理業務試験)
第十三条の三 紛争解決手続代理業務試験は、紛争解決手続代理業務を行うのに必要な学識及び実務能力に関する研修であつて厚生労働省令で定めるものを修了した社会保険労務士に対し、当該学識及び実務能力を有するかどうかを判定するために、毎年一回以上、厚生労働大臣が行う。
2 厚生労働大臣は、紛争解決手続代理業務試験をつかさどらせるため、紛争解決手続代理業務に関し学識経験を有する者のうちから紛争解決手続代理業務試験委員を任命するものとする。ただし、次条の規定により連合会に同条に規定する代理業務試験事務を行わせることとした場合は、この限りでない。
第十三条の四 厚生労働大臣は、連合会に紛争解決手続代理業務試験の実施に関する事務(合格の決定に関する事務を除く。以下「代理業務試験事務」という。)を行わせることができる。
第十三条の五 第十条の二第二項及び第十二条から第十三条の二までの規定は、紛争解決手続代理業務試験及び代理業務試験事務について準用する。
第十四条中「及び第四章の三」を削り、「受験手続、社会保険労務士試験委員その他社会保険労務士試験」を「社会保険労務士試験及び紛争解決手続代理業務試験」に改める。
第十四条の十一の次に次の五条を加える。
(紛争解決手続代理業務の付記の申請)
第十四条の十一の二 社会保険労務士は、その登録に紛争解決手続代理業務試験に合格した旨の付記(以下「紛争解決手続代理業務の付記」という。)を受けようとするときは、氏名その他厚生労働省令で定める事項を記載した付記申請書を、紛争解決手続代理業務試験に合格したことを証する書類を添付の上、厚生労働省令で定める社会保険労務士会を経由して、連合会に提出しなければならない。
(紛争解決手続代理業務の付記)
第十四条の十一の三 連合会は、前条の規定による申請を受けたときは、遅滞なく、当該社会保険労務士の登録に紛争解決手続代理業務の付記をしなければならない。
2 連合会は、前項の規定により社会保険労務士名簿に付記をしたときは、当該申請者に、その者が特定社会保険労務士である旨の付記をした社会保険労務士証票(以下「特定社会保険労務士証票」という。)を交付しなければならない。
3 前項の規定により特定社会保険労務士証票の交付を受けた社会保険労務士は、遅滞なく、社会保険労務士証票を連合会に返還しなければならない。
(紛争解決手続代理業務の付記の抹消)
第十四条の十一の四 連合会は、紛争解決手続代理業務の付記を受けた者が、偽りその他不正の手段により当該付記を受けたことが判明したときは、当該付記を抹消しなければならない。
2 第十四条の九第二項の規定は、前項の規定による付記の抹消について準用する。
(紛争解決手続代理業務の付記の公告)
第十四条の十一の五 第十四条の十一の規定は、紛争解決手続代理業務の付記及びその付記の抹消について準用する。
(特定社会保険労務士証票の返還)
第十四条の十一の六 特定社会保険労務士の紛争解決手続代理業務の付記が抹消されたときは、その者は、遅滞なく、特定社会保険労務士証票を連合会に返還しなければならない。
2 連合会は、前項の規定により特定社会保険労務士証票が返還されたときは、遅滞なく、社会保険労務士証票を同項の者に再交付しなければならない。
第十四条の十二の見出しを「(社会保険労務士証票等の返還)」に改め、同条中「社会保険労務士証票」の下に「又は特定社会保険労務士証票」を加える。
第十四条の十三中「登録の手続、社会保険労務士名簿、登録のまつ消、社会保険労務士証票その他」を「社会保険労務士の」に改める。
第二十条中「あつせん代理」を「紛争解決手続代理業務」に改める。
第二十二条及び第二十三条を次のように改める。
(業務を行い得ない事件)
第二十二条 社会保険労務士は、国又は地方公共団体の公務員として職務上取り扱つた事件及び仲裁手続により仲裁人として取り扱つた事件については、その業務を行つてはならない。
2 特定社会保険労務士は、次に掲げる事件については、紛争解決手続代理業務を行つてはならない。ただし、第三号に掲げる事件については、受任している事件の依頼者が同意した場合は、この限りでない。
一 紛争解決手続代理業務に関するものとして、相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件
二 紛争解決手続代理業務に関するものとして相手方の協議を受けた事件で、その協議の程度及び方法が信頼関係に基づくと認められるもの
三 紛争解決手続代理業務に関するものとして受任している事件の相手方からの依頼による他の事件
四 開業社会保険労務士の使用人である社会保険労務士又は社会保険労務士法人の社員若しくは使用人である社会保険労務士としてその業務に従事していた期間内に、その開業社会保険労務士又は社会保険労務士法人が、紛争解決手続代理業務に関するものとして、相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件であつて、自らこれに関与したもの
五 開業社会保険労務士の使用人である社会保険労務士又は社会保険労務士法人の社員若しくは使用人である社会保険労務士としてその業務に従事していた期間内に、その開業社会保険労務士又は社会保険労務士法人が紛争解決手続代理業務に関するものとして相手方の協議を受けた事件で、その協議の程度及び方法が信頼関係に基づくと認められるものであつて、自らこれに関与したもの
第二十三条 削除
第二十五条の二第一項中「あつせん代理をした」を「紛争解決手続代理業務を行つた」に改める。
第二十五条の六中「第二条に規定する」を「第二条第一項第一号から第一号の三まで、第二号及び第三号に掲げる」に改める。
第二十五条の九を次のように改める。
(業務の範囲)
第二十五条の九 社会保険労務士法人は、第二条第一項第一号から第一号の三まで、第二号及び第三号に掲げる業務を行うほか、定款で定めるところにより、次に掲げる業務を行うことができる。
一 第二条に規定する業務に準ずるものとして厚生労働省令で定める業務の全部又は一部
二 紛争解決手続代理業務
2 紛争解決手続代理業務は、社員のうちに特定社会保険労務士がある社会保険労務士法人に限り、行うことができる。
第二十五条の十五に次の一項を加える。
2 紛争解決手続代理業務を行うことを目的とする社会保険労務士法人における紛争解決手続代理業務については、前項の規定にかかわらず、特定社会保険労務士である社員(以下「特定社員」という。)のみが業務を執行する権利を有し、業務を負う。
第二十五条の十五の次に次の二条を加える。
(法人の代表)
第二十五条の十五の二 社会保険労務士法人の社員は、各自社会保険労務士法人を代表する。ただし、定款又は総社員の同意によつて、社員のうち特に社会保険労務士法人を代表すべきものを定めることを妨げない。
2 紛争解決手続代理業務を行うことを目的とする社会保険労務士法人における紛争解決手続代理業務については、前項本文の規定にかかわらず、特定社員のみが、各自社会保険労務士法人を代表する。ただし、当該特定社員の全員の同意によつて、当該特定社員のうち特に紛争解決手続代理業務について社会保険労務士法人を代表すべきものを定めることを妨げない。
(社員の責任)
第二十五条の十五の三 社会保険労務士法人の財産をもつてその債務を完済することができないときは、各社員は、連帯して、その弁済の責任を負う。
2 社会保険労務士法人の財産に対する強制執行がその効を奏しなかつたときも、前項と同様とする。
3 前項の規定は、社員が社会保険労務士法人に資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、適用しない。
4 紛争解決手続代理業務を行うことを目的とする社会保険労務士法人が紛争解決手続代理業務に関し依頼者に対して負担することとなつた債務を当該社会保険労務士法人の財産をもつて完済することができないときは、第一項の規定にかかわらず、特定社員(当該社会保険労務士法人を脱退した特定社員を含む。以下この条において同じ。)が、連帯して、その弁済の責任を負う。ただし、当該社会保険労務士法人を脱退した特定社員については、当該債務が脱退後の事由により生じた債務であることを証明した場合は、この限りでない。
5 前項本文に規定する債務についての社会保険労務士法人の財産に対する強制執行がその効を奏しなかつたときは、第二項及び第三項の規定にかかわらず、特定社員が当該社会保険労務士法人に資力があり、かつ、執行が容易であることを証明した場合を除き、前項と同様とする。
6 商法第九十三条の規定は、社会保険労務士法人の社員の脱退について準用する。ただし、同条第一項及び第二項の規定は、第四項本文に規定する債務については、準用しない。
第二十五条の十六の次に次の一条を加える。
(紛争解決手続代理業務の取扱い)
第二十五条の十六の二 紛争解決手続代理業務を行うことを目的とする社会保険労務士法人は、特定社員が常駐していない事務所においては、紛争解決手続代理業務を取り扱うことができない。
第二十五条の十七を次のように改める。
(特定の事件についての業務の制限)
第二十五条の十七 紛争解決手続代理業務を行うことを目的とする社会保険労務士法人は、次に掲げる事件については、紛争解決手続代理業務を行つてはならない。ただし、第三号に掲げる事件については、受任している事件の依頼者が同意した場合は、この限りでない。
一 紛争解決手続代理業務に関するものとして、相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件
二 紛争解決手続代理業務に関するものとして相手方の協議を受けた事件で、その協議の程度及び方法が信頼関係に基づくと認められるもの
三 紛争解決手続代理業務に関するものとして受任している事件の相手方からの依頼による他の事件
四 第二十二条第一項に規定する事件又は同条第二項各号に掲げる事件として社員の半数以上の者がその業務又は紛争解決手続代理業務を行つてはならないこととされる事件
第二十五条の十九中「から第二号まで」を「から第一号の三まで及び第二号」に改め、同条に次の一項を加える。
2 紛争解決手続代理業務を行うことを目的とする社会保険労務士法人は、特定社会保険労務士でない者に紛争解決手続代理業務を行わせてはならない。
第二十五条の二十中「、第二十三条」を削る。
第二十五条の二十五第四項中「第七十六条」を「第七十七条から第七十九条まで及び第八十一条」に改め、同条第五項中「第九十三条」を「第九十二条」に改める。
第二十五条の三十四第二項中「試験事務」の下に「及び代理業務試験事務」を加える。
第二十五条の四十五の次に次の一条を加える。
(代理業務試験事務への試験事務に関する規定の準用)
第二十五条の四十五の二 第二十五条の四十から前条までの規定は、代理業務試験事務について準用する。この場合において、第二十五条の四十一第一項中「社会保険労務士試験の」とあるのは「紛争解決手続代理業務試験の」と、「社会保険労務士試験委員」とあるのは「紛争解決手続代理業務試験委員」と読み替えるものとする。
第二十五条の四十九第二項中「試験事務」の下に「又は代理業務試験事務」を加え、第四章の三中同条の次に次の一条を加える。
(社会保険労務士会及び連合会に関する省令への委任)
第二十五条の五十 この章に規定するもののほか、社会保険労務士会及び連合会に関し必要な事項は、厚生労働省令で定める。
第三十二条の二第一項第一号中「虚偽」を「偽り」に、「社会保険労務士の」を「第十四条の二第一項の規定による」に改め、同項第五号中「第二十五条の四十二第一項」の下に「(第二十五条の四十五の二において準用する場合を含む。)」を加える。
別表第一第二十号の十九中「(昭和四十七年法律第百十三号)」を削る。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して九月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、第二条第一項第一号の四の改正規定、同号の次に二号を加える改正規定、同条第一項の次に二項を加える改正規定(同条第三項に係る部分に限る。)、第二十条、第二十二条、第二十五条の二第一項、第二十五条の六及び第二十五条の九の改正規定、第二十五条の十五に一項を加える改正規定、同条の次に二条を加える改正規定、第二十五条の十六の次に一条を加える改正規定並びに第二十五条の十七、第二十五条の十九、第二十五条の二十五及び別表第一第二十号の十九の改正規定並びに次条第二項の規定は、裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(平成十六年法律第百五十一号)の施行の日から施行する。
(経過措置)
第二条 前条ただし書に規定する規定の施行の日前に開業社会保険労務士又は社会保険労務士法人が受任した改正前の社会保険労務士法(次項において「旧法」という。)第二条第一項第一号の四に規定するあっせん代理であって、同日前に個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律(平成十三年法律第百十二号)第五条第一項の規定により申請されたあっせんに係るものについては、改正後の社会保険労務士法(以下「新法」という。)第二条第二項の規定にかかわらず、なお従前の例による。
2 前条ただし書に規定する規定の施行の日前に社会保険労務士又は社会保険労務士法人がその業務を行った事件で、旧法第二十二条各号(第四号を除く。)又は第二十五条の十七各号に該当するものは、それぞれ新法第二十二条第二項各号又は第二十五条の十七各号に該当する事件とみなす。
(政令への委任)
第三条 前条に定めるもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。
(検討)
第四条 政府は、この法律の施行後五年を経過した場合において、この法律の施行の状況等を勘案し、新法第二条第二項に規定する紛争解決手続代理業務に係る制度について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。
(登録免許税法の一部改正)
第五条 登録免許税法(昭和四十二年法律第三十五号)の一部を次のように改正する。
別表第一第二十三号中
二十三 人の資格の登録若しくは認定又は技能証明
二十三 人の資格の登録若しくは認定又は技能証明
  (注)社会保険労務士法(昭和四十三年法律第八十九号)第十四条の十一の三第一項(紛争解決手続代理業務の付記)の規定により社会保険労務士の登録にする紛争解決手続代理業務試験に合格した旨の付記は、新たな当該登録とみなす。
に改め、同号(七の六)を次のように改める。
 (七の六) 社会保険労務士法による社会保険労務士名簿にする登録
  イ 社会保険労務士法第十四条の二第一項(登録)の社会保険労務士の登録
登録件数
一件につき三万円
  ロ 社会保険労務士法第二条第二項(社会保険労務士の業務)の紛争解決手続代理業務試験に合格した旨の付記
申請件数
一件につき五千円
(年金積立金管理運用独立行政法人法の一部改正)
第六条 年金積立金管理運用独立行政法人法(平成十六年法律第百五号)の一部を次のように改正する。
附則第二十五条のうち社会保険労務士法別表第一第二十七号の改正規定中「附則第五条の二」を「第十二条第一項第十二号及び第十三号並びに附則第五条の二」に改める。
財務大臣 谷垣禎一
厚生労働大臣 尾辻秀久
内閣総理大臣 小泉純一郎