緑の募金による森林整備等の推進に関する法律
法令番号: 法律第88号
公布年月日: 平成7年5月8日
法令の形式: 法律

提案理由 (AIによる要約)

森林及び樹木は人間の健康で文化的な生活に不可欠な財産であり、緑化推進のための国民運動として緑の羽根募金運動が行われてきた。しかし、募金組織等の基盤が十分整備されておらず、募金額や緑化推進の普及啓発は満足できる状況にない。一方で、森林の公益的機能への期待や地球環境保全における国際貢献の要請が高まっている今日、緑の羽根募金運動の意義は一層重要性を増している。そこで、国民の森林整備等への理解を広め、国民全体による取り組みを推進するため、緑の羽根募金を緑の募金として、その基盤強化と取り組みの多様化を図ることを目的として本法案を提出する。

参照した発言:
第132回国会 参議院 農林水産委員会 第9号

審議経過

第132回国会

参議院
(平成7年4月25日)
(平成7年4月26日)
衆議院
(平成7年4月27日)
(平成7年4月27日)
緑の募金による森林整備等の推進に関する法律をここに公布する。
御名御璽
平成七年五月八日
内閣総理大臣 村山富市
法律第八十八号
緑の募金による森林整備等の推進に関する法律
目次
第一章
総則(第一条―第四条)
第二章
都道府県緑化推進委員会(第五条―第十二条)
第三章
国土緑化推進機構(第十三条―第十五条)
第四章
緑の募金(第十六条―第二十三条)
第五章
雑則(第二十四条―第二十六条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、緑の募金の健全な発展を図るために必要な措置を定めること等により、国民、事業者及びこれらの者の組織する民間の団体(以下「国民」と総称する。)が行う森林整備等に係る自発的な活動等の円滑化を図り、もって我が国における森林の整備及び緑化の推進並びにこれらに係る国際協力の推進に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「森林整備等」とは、次の各号に掲げる活動をいう。
一 森林の整備
二 緑化の推進
三 森林の整備又は緑化の推進に係る国際協力
2 この法律において「緑の募金」とは、毎年、農林水産大臣の定める期間内に限って緑の募金という名称を用いて行う寄附金の募集であって、その寄附金を森林整備等の推進に用いることを目的とするものをいう。
(基本理念)
第三条 森林整備等は、森林及び樹木が水源のかん養、環境の保全等人間の健康で文化的な生活を確保する上で欠くことのできない役割を果たしていることにかんがみ、現在及び将来の世代にわたって人間が豊かな緑と水に恵まれた生活を維持することができるよう、国民の自発的な活動を生かして、積極的に推進されなければならない。
(啓発活動)
第四条 国及び地方公共団体は、森林及び樹木の果たしている役割の重要性についての国民の理解と関心を深めるため、必要な啓発活動を行うよう努めるものとする。
第二章 都道府県緑化推進委員会
(指定等)
第五条 都道府県知事は、森林整備等の推進を図ることを目的として設立された民法(明治二十九年法律第八十九号)第三十四条の法人であって、次条に規定する業務を適正かつ確実に行うことができると認められるものを、その申出により、当該都道府県に一を限って、同条に規定する業務を行う者として指定することができる。
2 都道府県知事は、前項の指定をしたときは、同項の指定を受けた者(以下「都道府県緑化推進委員会」という。)の名称、住所及び事務所の所在地を公示しなければならない。
3 都道府県緑化推進委員会は、その名称、住所又は事務所の所在地を変更しようとするときは、あらかじめ、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。
4 都道府県知事は、前項の届出があったときは、その旨を公示しなければならない。
(業務)
第六条 都道府県緑化推進委員会は、当該都道府県の区域において、緑の募金による寄附金を用いて、次の各号に掲げる業務を行うものとする。
一 緑の募金及び緑の募金による寄附金の管理を行うこと。
二 森林整備等を行う者又は森林整備等を行う者に対して助成をする者に対して交付金の交付を行うこと。
三 森林整備等の事業を行うこと。
四 森林整備等に関する情報又は資料を収集し、及び提供すること。
五 前各号の業務に附帯する業務を行うこと。
(運営協議会)
第七条 都道府県緑化推進委員会は、運営協議会を置くものとする。
2 運営協議会は、都道府県緑化推進委員会の諮問に応じ、都道府県緑化推進委員会の業務の運営に関する重要事項を調査審議する。
3 運営協議会の委員は、森林整備等に関する学識経験を有する者のうちから、都道府県知事の認可を受けて、都道府県緑化推進委員会の代表者が任命する。
(事業計画書等)
第八条 都道府県緑化推進委員会は、毎事業年度、農林水産省令で定めるところにより、事業計画書及び収支予算書を作成し、都道府県知事に提出しなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 都道府県緑化推進委員会は、農林水産省令で定めるところにより、毎事業年度終了後、事業報告書及び収支決算書を作成し、都道府県知事に提出しなければならない。
(区分経理)
第九条 都道府県緑化推進委員会は、緑の募金による寄附金に係る経理については、その他の経理と区分して整理しなければならない。
(改善命令)
第十条 都道府県知事は、第六条に規定する業務の運営に関し改善が必要であると認めるときは、都道府県緑化推進委員会に対し、その改善に必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
(指定の取消し)
第十一条 都道府県知事は、都道府県緑化推進委員会が次の各号のいずれかに該当するときは、第五条第一項の指定(以下この条において「指定」という。)を取り消すことができる。
一 第六条に規定する業務を適正かつ確実に行うことができないと認められるとき。
二 指定に関し不正の行為があったとき。
三 この法律又はこの法律に基づく命令若しくは処分に違反したとき。
2 都道府県知事は、前項の規定により指定を取り消したときは、その旨を公示しなければならない。
(聴聞の方法の特例)
第十二条 前条第一項の規定による指定の取消しに係る聴聞の期日における審理は、公開により行わなければならない。
第三章 国土緑化推進機構
(指定)
第十三条 農林水産大臣は、森林整備等の推進を図ることを目的として設立された民法第三十四条の法人であって、次条に規定する業務を適正かつ確実に行うことができると認められるものを、その申出により、全国に一を限って、同条に規定する業務を行う者として指定することができる。
(業務)
第十四条 前条の指定を受けた者(以下「国土緑化推進機構」という。)は、緑の募金による寄附金及び第十八条第一項の規定により交付される寄附金を用いて、次の各号に掲げる業務を行うものとする。
一 緑の募金並びに緑の募金による寄附金及び第十八条第一項の規定により交付される寄附金の管理を行うこと。
二 森林整備等を行う者又は森林整備等を行う者に対して助成をする者のうち国土緑化推進機構による助成を受けることが適当なものとして農林水産省令で定める要件に該当するものに対して交付金の交付を行うこと。
三 森林整備等の事業のうち国土緑化推進機構が行うことが適当なものとして農林水産省令で定める要件に該当するものを行うこと。
四 都道府県緑化推進委員会相互の連絡及び業務の調整を行うこと。
五 都道府県緑化推進委員会に対する指導及び助言を行うこと。
六 都道府県緑化推進委員会の業務に関する情報又は資料を収集し、及び提供すること。
七 森林整備等に関する調査及び研究を行うこと。
八 前各号の業務に附帯する業務を行うこと。
(準用)
第十五条 第五条第二項から第四項まで及び第七条から第十二条までの規定は、国土緑化推進機構について準用する。この場合において、第五条第二項中「都道府県知事」とあるのは「農林水産大臣」と、「前項」とあるのは「第十三条」と、同条第三項及び第四項、第七条第三項並びに第八条中「都道府県知事」とあるのは「農林水産大臣」と、第九条中「寄附金」とあるのは「寄附金及び第十八条第一項の規定により交付される寄附金」と、第十条中「都道府県知事」とあるのは「農林水産大臣」と、「第六条」とあるのは「第十四条」と、第十一条第一項中「都道府県知事」とあるのは「農林水産大臣」と、「第五条第一項」とあるのは「第十三条」と、同項第一号中「第六条」とあるのは「第十四条」と、同条第二項中「都道府県知事」とあるのは「農林水産大臣」と読み替えるものとする。
第四章 緑の募金
(緑の募金の性格)
第十六条 緑の募金は、寄附者の自発的な協力を基礎とするものでなければならない。
(意見の聴取)
第十七条 国土緑化推進機構は、緑の募金を行うときは、あらかじめ、当該緑の募金を行おうとする地域の属する都道府県の都道府県緑化推進委員会の意見を聴かなければならない。
(寄附金の使途)
第十八条 都道府県緑化推進委員会は、農林水産省令で定めるところにより、緑の募金による寄附金の一部を国土緑化推進機構に交付するものとする。
2 都道府県緑化推進委員会は、前項に定めるところによるほか、緑の募金による寄附金を、第六条に規定する業務の実施に要する経費に充てること以外の使途に用いてはならない。ただし、当該都道府県の区域外における森林整備等の推進のために農林水産省令で定める使途に用いる場合は、この限りでない。
3 国土緑化推進機構は、緑の募金による寄附金及び第一項の規定により交付された寄附金を、第十四条に規定する業務の実施に要する経費に充てること以外の使途に用いてはならない。
(計画の公告及び届出)
第十九条 都道府県緑化推進委員会は、緑の募金を行うときは、あらかじめ、第七条第一項の運営協議会の意見を聴いて、当該緑の募金の目標額及び当該緑の募金による寄附金の使途についての計画を定め、これを公告するとともに、都道府県知事に届け出なければならない。
(交付金の交付等の決定)
第二十条 都道府県緑化推進委員会は、緑の募金による寄附金に係る第六条第二号の交付金の交付先及び交付する額並びに同条各号(同条第二号を除く。)に掲げる業務ごとのその業務の実施に要する経費に充てる当該寄附金の額及び第十八条第二項ただし書の農林水産省令で定める使途ごとのその使途に充てる当該寄附金の額を決定しようとするときは、あらかじめ、第七条第一項の運営協議会の意見を聴かなければならない。
(結果の公告及び届出)
第二十一条 都道府県緑化推進委員会は、毎事業年度終了後三月以内に、当該事業年度に行った緑の募金による寄附金の総額、当該寄附金に係る第六条第二号の交付金の交付を受けた者の氏名又は名称及び交付した額並びに同条各号(同条第二号を除く。)に掲げる業務ごとのその業務の実施に要する経費に充てた当該寄附金の額及び第十八条第二項ただし書の農林水産省令で定める使途ごとのその使途に充てた当該寄附金の額を公告するとともに、都道府県知事に届け出なければならない。
(準用)
第二十二条 前三条の規定は、国土緑化推進機構について準用する。この場合において、第十九条中「第七条第一項」とあるのは「第十五条において準用する第七条第一項」と、「都道府県知事」とあるのは「農林水産大臣」と、第二十条中「緑の募金による寄附金に係る第六条第二号」とあるのは「緑の募金による寄附金又は第十八条第一項の規定により交付された寄附金に係る第十四条第二号」と、「当該寄附金の額及び第十八条第二項ただし書の農林水産省令で定める使途ごとのその使途に充てる当該寄附金の額」とあるのは「これらの寄附金の額」と、「第七条第一項」とあるのは「第十五条において準用する第七条第一項」と、第二十一条中「緑の募金による寄附金の総額、当該寄附金に係る第六条第二号」とあるのは「緑の募金による寄附金及び第十八条第一項の規定により交付された寄附金のそれぞれの総額、これらの寄附金に係る第十四条第二号」と、「当該寄附金の額及び第十八条第二項ただし書の農林水産省令で定める使途ごとのその使途に充てた当該寄附金の額」とあるのは「これらの寄附金の額」と、「都道府県知事」とあるのは「農林水産大臣」と読み替えるものとする。
(情報の提供)
第二十三条 都道府県緑化推進委員会及び国土緑化推進機構は、緑の募金についての国民の理解を深めるため、緑の募金による寄附金を用いて行われた森林整備等の成果に関する情報が提供されるように努めなければならない。
第五章 雑則
(報告及び検査)
第二十四条 都道府県知事は都道府県緑化推進委員会に対して、農林水産大臣は国土緑化推進機構に対して、これらの団体の業務の適正な運営を確保するため必要な限度において、その業務に関し報告をさせ、又はその職員にこれらの団体の事務所に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。
2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人にこれを提示しなければならない。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
(省令への委任)
第二十五条 この法律に規定するもののほか、この法律の施行に関し必要な事項は、農林水産省令で定める。
(罰則)
第二十六条 次の各号の一に該当する者は、二十万円以下の罰金に処する。
一 第十九条(第二十二条において準用する場合を含む。)の規定による公告又は届出をしなかった者
二 第二十一条(第二十二条において準用する場合を含む。)の規定による公告若しくは届出をせず、又は虚偽の公告若しくは届出をした者
三 第二十四条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者
2 都道府県緑化推進委員会又は国土緑化推進機構の代表者又は代理人、使用人その他の従業者が、その都道府県緑化推進委員会又は国土緑化推進機構の業務に関し、前項の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その都道府県緑化推進委員会又は国土緑化推進機構に対して同項の刑を科する。
附 則
この法律は、平成七年六月一日から施行する。
農林水産大臣 大河原太一郎
内閣総理大臣 村山富市