(目的)
第一条 この法律は、サリン等の製造、所持等を禁止するとともに、これを発散させる行為についての罰則及びその発散による被害が発生した場合の措置等を定め、もってサリン等による人の生命及び身体の被害の防止並びに公共の安全の確保を図ることを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「サリン等」とは、サリン(メチルホスホノフルオリド酸イソプロピルをいう。以下同じ。)及び次の各号のいずれにも該当する物質で政令で定めるものをいう。
一 サリン以上の又はサリンに準ずる強い毒性を有すること。
二 その原材料、製法、発散させる方法、発散したときの性状その他その物質の特性を勘案して人を殺傷する目的に供されるおそれ並びに発散した場合の人の生命及び身体に対する危害の程度が大きいと認められること。
三 犯罪に係る社会状況その他の事情を勘案して人の生命及び身体の保護並びに公共の安全の確保を図るためにその物質についてこの法律の規定により規制等を行う必要性が高いと認められること。
(製造等の禁止)
第三条 何人も、次の各号のいずれかに該当する場合を除いては、サリン等を製造し、輸入し、所持し、譲り渡し、又は譲り受けてはならない。
一 国又は地方公共団体の職員で政令で定めるものが試験又は研究のため製造し、輸入し、所持し、譲り渡し、又は譲り受けるとき。
二 化学兵器の禁止及び特定物質の規制等に関する法律(平成七年法律第六十五号。以下「化学兵器禁止法」という。)又は外国為替及び外国貿易管理法(昭和二十四年法律第二百二十八号)の規定により化学兵器禁止法第二条第三項に規定する特定物質の製造、所持、譲渡し若しくは譲受け又は輸入をすることができる場合に該当して、製造し、所持し、譲り渡し、若しくは譲り受け、又は輸入するとき。
(被害発生時の措置等)
第四条 警察官、海上保安官又は消防吏員(以下「警察官等」という。)は、サリン等又はサリン等である疑いがある物質の発散により人の生命又は身体の被害が生じており、又は生じるおそれがあると認めるときは、警察法(昭和二十九年法律第百六十二号)、警察官職務執行法(昭和二十三年法律第百三十六号)、道路交通法(昭和三十五年法律第百五号)、海上保安庁法(昭和二十三年法律第二十八号)、消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)その他の法令の定めるところにより、直ちに、その被害に係る建物、車両、船舶その他の場所への立入りを禁止し、又はこれらの場所にいる者を退去させ、サリン等を含む物品その他のその被害に係る物品を回収し、又は廃棄し、その他その被害を防止するために必要な措置をとらなければならない。この場合において、警察官等は、相互に緊密な連携を保たなければならない。
2 警視総監若しくは道府県警察本部長又は管区海上保安本部長は前項の規定による措置又はこの法律に規定する犯罪の捜査に関し、消防長又は消防署長は同項の規定による措置に関し、それぞれ、関係行政機関又は関係のある公私の団体に対し、技術的知識の提供、装備資機材の貸与その他必要な協力を求めることができる。
3 国民は、サリン等若しくはサリン等である疑いがある物質若しくはこれらの物質を含む物品を発見し又はこれらが所在する場所を知ったときは速やかに警察官等にその旨を通報するとともに、第一項の規定による警察官等の措置の円滑な実施に協力するよう努めなければならない。
(罰則)
第五条 サリン等を発散させて公共の危険を生じさせた者は、無期又は二年以上の懲役に処する。
3 第一項の罪を犯す目的でその予備をした者は、五年以下の懲役に処する。ただし、同項の罪の実行の着手前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する。
第六条 第三条の規定に違反した者は、七年以下の懲役に処する。
2 前条第一項の犯罪の用に供する目的で前項の罪を犯した者は、十年以下の懲役に処する。ただし、同条第一項の罪の実行の着手前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する。
4 製造又は輸入に係る第一項又は第二項の罪を犯す目的でその予備をした者は、三年以下の懲役に処する。
第七条 情を知って、第五条第一項の罪又は製造若しくは輸入に係る前条第一項若しくは第二項の罪に当たる行為に要する資金、土地、建物、艦船、航空機、車両、設備、機械、器具又は原材料を提供した者は、三年以下の懲役に処する。