船員法の一部を改正する法律
法令番号: 法律第三十九号
公布年月日: 昭和63年5月17日
法令の形式: 法律
船員法の一部を改正する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和六十三年五月十七日
内閣総理大臣 竹下登
法律第三十九号
船員法の一部を改正する法律
船員法(昭和二十二年法律第百号)の一部を次のように改正する。
第十四条の三第二項中「端艇操練」を「救命艇操練」に改める。
第二十一条中「左の」を「次の」に改め、同条第五号中「端艇」を「救命艇」に改め、同条第十号中「みだす」を「乱す」に改める。
第五十三条第一項中「、法令又は労働協約に特別の定のある場合を除いて」を削り、「通貨で」の下に「、第五十六条の規定による場合を除き」を加え、同項に次のただし書を加える。
ただし、法令又は労働協約に別段の定めがある場合においては給料その他の報酬の一部を控除して支払い、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は給料その他の報酬で命令で定めるものについて確実な支払の方法で命令で定めるものによる場合においては通貨以外のもので支払うことができる。
第六十条から第六十七条までを次のように改める。
(労働時間)
第六十条 海員の一日当たりの労働時間は、八時間以内とする。
海員の一週間当たりの労働時間は、基準労働期間について平均四十時間以内とする。
前項の基準労働期間とは、船舶の航行区域、航路その他の航海の期間及び態様に係る事項を勘案して命令で定める船舶の区分に応じて一年以下の範囲内において命令で定める期間(船舶所有者が就業規則その他これに準ずるものにより当該期間の範囲内においてこれと異なる期間を定めた場合又は労働協約により一年以下の範囲内においてこれらと異なる期間が定められた場合には、それぞれその定められた期間)をいう。
主務大臣は、前項の命令の制定又は改正の立案をしようとするときは、あらかじめ、船員中央労働委員会の議を経なければならない。
(休日)
第六十一条 船舶所有者が海員に与えるべき休日は、前条第二項の基準労働時間について一週間当たり平均一日以上とする。
(補償休日)
第六十二条 船舶所有者は、海員の労働時間(第六十六条(第八十八条の二の二第三項及び第八十八条の三第四項において準用する場合を含む。)の規定の適用を受ける時間を除く。)が一週間において四十時間を超える場合又は海員に一週間において少なくとも一日の休日を与えることができない場合には、その超える時間(当該一週間において少なくとも一日の休日が与えられない場合にあつては、その超える時間が八時間を超える時間。次項において「超過時間」という。)において作業に従事すること又はその休日を与えられないことに対する補償としての休日(以下「補償休日」という。)を、当該一週間に係る第六十条第二項の基準労働期間以内にその者に与えなければならない。ただし、船舶が航海の途中にあるときその他の命令で定めるやむを得ない事由のあるときは、その事由の存する期間、補償休日を与えることを延期することができる。
前項の規定により与えるべき補償休日の日数は、超過時間の合計八時間当たり又は少なくとも一日の休日が与えられない一週間当たり一日を基準として、第六十条第二項及び前条の規定を遵守するために必要な日数として命令で定めるところにより算定される日数とし、その付与の単位は、一日(命令で定める場合は、命令で定める一日未満の単位)とする。
第一項の規定により与えられた補償休日を含む一週間に係る同項の規定の適用については、当該補償休日はそれを与えられた海員が作業に従事した日であつて休日以外のものとみなし、その労働時間は八時間(当該補償休日が前項の命令の規定による一日未満の単位で与えられたものである場合には、命令で定める時間)とみなす。
前三項に定めるもののほか、補償休日の付与に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
第六十三条 船舶所有者は、前条第一項の規定により補償休日を与えるべき船員が当該補償休日を与えられる前に解雇され、又は退職したときは、その者に与えるべき補償休日の日数に応じ、命令で定める補償休日手当を支払わなければならない。
(時間外及び補償休日の労働)
第六十四条 船長は、臨時の必要があるときは、第六十条第一項の規定若しくは第七十二条の二の命令の規定による労働時間の制限を超えて海員を作業に従事させ、又は第六十二条第一項の規定にかかわらず、補償休日において海員を作業に従事させることができる。
船長は、前項に規定する場合のほか、船舶が狭い水路を通過するときにおいて航海当直の員数を増加する場合その他の命令で定める特別の必要がある場合においては、命令で定める時間を限度として、第六十条第一項の規定又は第七十二条の二の命令の規定による労働時間の制限を超えて海員を作業に従事させることができる。
第六十五条 船舶所有者は、命令で定めるところにより、その使用する船員の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、船員の過半数で組織する労働組合がないときは船員の過半数を代表する者との書面による協定をし、これを行政官庁に届け出た場合においては、第六十二条第一項の規定にかかわらず、その協定で定めるところにより、かつ、命令で定める補償休日の日数を限度として、補償休日において海員を作業に従事させることができる。
(割増手当)
第六十六条 船舶所有者は、前二条の規定により、海員が、労働時間の制限を超えて又は補償休日において作業に従事したときは、命令で定める割増手当を支払わなければならない。
(記録簿の備置)
第六十七条 船長は、命令で定めるところにより、船内に帳簿を備え置いて、補償休日及び前条の割増手当に関する事項を記載しなければならない。
船舶所有者は、命令で定めるところにより、休日付与簿を備え置いて、船員に対する休日の付与に関する事項を記載しなければならない。
第六十八条中「及び第六十二条及至前条の規定並びに」を「から前条までの規定及び」に改め、「規定により発する」を削り、「左の」を「次の」に改め、同条第二号中「端艇操練」を「救命艇操練」に改め、同条中第三号を次のように改め、第四号及び第五号を削る。
三 航海当直の通常の交代のために必要な作業
第六十九条第一項中「第六十条乃至第六十六条」を「第六十条第一項」に改め、「規定により発する」を削る。
第七十一条中「乃至前条」を「から前条まで」に、「左の」を「次の」に改め、同条第一号中「(行政官庁が労働組合法による労働委員会(以下船員労働委員会という。)の議を経て指定する船舶を除く。)」を削る。
第七十二条中「乃至第七十条」を「から第七十条まで」に、「左の」を「次の」に改め、同条第一号中「航海当直をしない者」の下に「その他これらに準ずる者で命令で定めるもの」を加え、同条第二号中「調剤又は」を削る。
第七十二条の二を次のように改める。
第七十二条の二 定期的に短距離の航路に就航するため入出港が頻繁である船舶その他のその航海の態様が特殊であるため海員が第六十条第一項の規定によることが著しく不適当な職務に従事することとなると認められる船舶で主務大臣の指定するものに関しては、当該船舶の航海の態様及び当該海員の職務に応じ、命令で定める一定の期間を平均し一日当たりの労働時間が八時間を超えない範囲内において、海員の一日当たりの労働時間について命令で別段の定めをすることができる。
第七十三条中「船員労働委員会」を「船員中央労働委員会」に、「乃至第七十条」を「から第七十条まで」に改める。
第七十四条第一項中「同一の」の下に「事業に属する」を、「船員に」の下に「次条の規定による日数の」を加え、「但し」を「ただし」に改め、同条第二項を次のように改める。
船員が前項に規定する船舶における勤務に準ずる勤務として命令で定めるものに従事した期間並びに船員が職務上負傷し、又は疾病にかかり療養のため勤務に従事しない期間及び女子の船員が第八十七条第一項又は第二項の規定によつて勤務に従事しない期間は、前項の一年間連続して勤務に従事した期間の計算については、同一の事業に属する船舶において勤務に従事した期間とみなす。
第七十四条第三項中「因る」を「よる」に、「且つその中断」を「かつ、その中断」に、「その中断の前後の勤務は、連続して従事されたもの」を「その中断の期間は、船員が当該期間の前後の勤務と連続して勤務に従事した期間」に改める。
第七十五条第二項中「十二日」を「十五日」に、「二日」を「三日」に、「前項但書」を「前項ただし書」に改める。
第七十七条第一項中「港」を「場所」に改める。
第八十六条第二項中「又は第三号」を削る。
第八十八条の二の見出しを削り、同条第一項を次のように改める。
妊産婦の船員の一日当たりの労働時間は、八時間以内とする。
第八十八条の二第二項中「申し出た場合」の下に「(妊産婦の海員にあつては、第六十四条に規定する場合に限る。)」を加え、同条第三項を次のように改める。
第六十六条及び第六十七条第一項の規定は、前項ただし書の規定により妊産婦の海員(第七十二条各号に掲げる者を除く。)が労働時間の制限を超えて作業に従事した場合について準用する。この場合において、第六十七条第一項中「補償休日及び前条の割増手当」とあるのは、「第八十八条の二の二第三項において準用する前条の割増手当」と読み替えるものとする。
第八十八条の二を第八十八条の二の二とし、第八十八条の次に次の見出し及び一条を加える。
(妊産婦の労働時間及び休日の特例)
第八十八条の二 第六章(第六十条第二項及び第三項、第六十二条並びに第六十三条の規定を除く。)の規定は、妊産婦の海員の労働時間及び休日については、これを適用しない。
第八十八条の三の見出しを削り、同条第一項中「休日」の下に「(第六十二条第一項の規定により与えられる補償休日を除く。)」を加え、同条第二項中「申し出た場合」の下に「(妊産婦の海員にあつては、第六十四条第一項又は第六十五条に規定する場合に限る。)」を加え、「前項」を「第一項及び前項の規定により読み替えて適用する第六十二条第一項」に改め、ただし書を削り、同条第三項を次のように改める。
第六十六条の規定は前項の規定により妊産婦の海員(第七十二条各号に掲げる者を除く。)が休日において作業に従事した場合について、第六十七条の規定は妊産婦の船員が乗り組む船舶の船長及び船舶所有者について準用する。この場合において、同条第一項中「前条の割増手当」とあるのは「第八十八条の三第四項において準用する前条の割増手当」と読み替えるものとする。
第八十八条の三第一項の次に次の一項を加える。
妊産婦の海員に係る第六十二条の規定の適用については、同条第一項中「一週間において四十時間を超える場合又は海員に一週間において少なくとも一日の休日を与えることができない場合」とあるのは「一週間において四十時間を超える場合」と、「作業に従事すること又はその休日を与えられないこと」とあるのは「作業に従事すること」と、同条第二項中「超過時間の合計八時間当たり又は少なくとも一日の休日が与えられない一週間当たり一日を基準として、第六十条第二項及び前条」とあるのは「超過時間の合計八時間当たり一日を基準として、第六十条第二項」とする。
第八十八条の五中「前三条」を「第六十条第二項及び第三項、第六十二条、第六十三条並びに前三条」に改め、「又は第三号」を削る。
第九十九条第二項中「船員労働委員会」の下に「(船員中央労働委員会又は船員地方労働委員会をいう。以下同じ。)」を加える。
第百十三条中「基いて」を「基づいて」に、「及び船員の貯蓄金の管理に関する協定」を「並びに第三十四条第二項の協定及び第六十五条の協定」に改める。
第百十六条の見出し中「附加金」を「付加金」に改め、同条第一項中「乃至第四十七条」を「から第四十七条まで」に、「第六十七条第二項」を「第六十三条、第六十六条(第八十八条の二の二第三項及び第八十八条の三第四項において準用する場合を含む。)」に、「第二項の」を「次項の」に、「附加金」を「付加金」に改め、同条第二項中「訴」を「訴え」に、「附加金」を「付加金」に、「但し」を「ただし」に改める。
第百十七条中「二年間」を「、二年間(退職手当の債権にあつては、五年間)」に改める。
第百二十六条第七号中「第六十七条第三項(第八十八条の二第三項」を「第六十七条第一項(第八十八条の二の二第三項及び第八十八条の三第四項」に改める。
第百三十条中「第六十三条第二項、第六十七条第二項(第八十八条の二第三項」を「第六十二条、第六十三条、第六十六条(第八十八条の二の二第三項及び第八十八条の三第四項」に、「第八十八条の二第二項」を「第八十八条の二の二第二項」に改める。
第百三十一条第一号中「、第五十八条の二」を削り、同条中第三号を第四号とし、第二号の次に次の一号を加える。
三 第五十八条の二又は第六十七条第二項(第八十八条の三第四項において準用する場合を含む。)の規定による帳簿を備え置かず、又は帳簿に記載すべき事項を記載せず、若しくは虚偽の記載をしたとき。
第百四十六条及び第百四十七条を次のように改める。
第百四十六条 第六十条第二項及び第六十二条第一項(第八十八条の三第二項の規定により読み替えて適用する場合を含む。以下同じ。)の規定の適用については、当分の間、これらの規定中「四十時間」とあるのは、「四十時間を超え四十八時間以下の範囲内において政令で定める時間」とする。
前項の規定により読み替えて適用する第六十条第二項及び第六十二条第一項の政令は、週平均四十時間労働制に可及的速やかに移行するため、船員労働の特殊性、船員の福祉、船員の労働時間の動向その他の事情を考慮し、当該政令で定める時間が段階的に短縮されるように制定され、及び改正されるものとする。
第六十条第四項の規定は、第一項の規定により読み替えて適用する同条第二項及び第六十二条第一項の政令について準用する。
第百四十七条 第七十五条第二項の規定の適用については、昭和六十七年三月三十一日までの間は同項中「十五日」とあるのは「十二日」と、「三日」とあるのは「二日」と、同年四月一日から昭和六十八年三月三十一日までの間は同項中「十五日」とあるのは「十三日」と、同年四月一日から昭和六十九年三月三十一日までの間は同項中「十五日」とあるのは「十四日」とする。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、昭和六十四年四月一日から施行する。
(労働時間、休日及び定員に関する経過措置)
第二条 この法律の施行の際現に航海中である船舶に乗り組む船員の労働時間、休日及び定員については、当該航海が終了する日まで(専ら国外各港間の航海に従事する船舶にあつては、この法律の施行の日(以下「施行日」という。)から起算して三月を経過する日又は施行日以後最初にいずれかの港に入港した日のいずれか遅い日まで)は、この法律による改正後の船員法(以下「新法」という。)第六章、第八十六条、第八十八条の二から第八十八条の三まで及び第八十八条の五の規定にかかわらず、なお従前の例による。
(時効に関する経過措置)
第三条 この法律の施行前に生じた退職手当の債権の消滅時効については、なお従前の例による。
(罰則に関する経過措置)
第四条 この法律の施行前にした行為及び附則第二条の規定によりなお従前の例によることとされる場合におけるこの法律の施行後にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
(政令への委任)
第五条 前三条に定めるもののほか、この法律の施行に関して必要となる経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)は、政令で定めることができる。
(検討)
第六条 政府は、この法律の施行後三年を経過した場合において、新法の規定の施行の状況を勘案し、必要があると認めるときは、新法の規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
(国立及び公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法の一部改正)
第七条 国立及び公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(昭和四十六年法律第七十七号)の一部を次のように改正する。
第十条中「、第六十七条第二項」を「、第六十六条(船員法第八十八条の二の二第三項及び第八十八条の三第四項において準用する場合を含む。)」に、「同法第六十七条第二項」を「同法第六十六条」に改める。
文部大臣 中島源太郎
運輸大臣 石原慎太郎
内閣総理大臣 竹下登