医学及び歯学の教育のための献体に関する法律
法令番号: 法律第56号
公布年月日: 昭和58年5月25日
法令の形式: 法律

提案理由 (AIによる要約)

医学・歯学教育における人体解剖学実習は、医の倫理を学ぶ上で不可欠である。現行の死体解剖保存法では遺族の承諾が必要だが、医の新増設により解剖用遺体の確保が困難になっている。このような状況下で、献体運動が進められ、現在では解剖実習用遺体の約34%が献体によるものとなっている。しかし、献体に関する法的規定がなく、生前の献体意思が死後に生かされないケースもある。そこで、献体の意義を法令上明確にし、本人の意思を尊重しつつ遺族感情にも配慮した解剖要件の緩和、献体団体への指導助言、国民への啓発普及などを定めた法整備を行い、医学・歯学教育の向上を図る必要がある。

参照した発言:
第98回国会 衆議院 文教委員会 第7号

審議経過

第98回国会

衆議院
(昭和58年5月11日)
(昭和58年5月12日)
参議院
(昭和58年5月12日)
(昭和58年5月17日)
(昭和58年5月18日)
医学及び歯学の教育のための献体に関する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和五十八年五月二十五日
内閣総理大臣 中曽根康弘
法律第五十六号
医学及び歯学の教育のための献体に関する法律
(目的)
第一条 この法律は、献体に関して必要な事項を定めることにより、医学及び歯学の教育の向上に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「献体の意思」とは、自己の身体を死後医学又は歯学の教育として行われる身体の正常な構造を明らかにするための解剖(以下「正常解剖」という。)の解剖体として提供することを希望することをいう。
(献体の意思の尊重)
第三条 献体の意思は、尊重されなければならない。
(献体に係る死体の解剖)
第四条 死亡した者が献体の意思を書面により表示しており、かつ、次の各号のいずれかに該当する場合においては、その死体の正常解剖を行おうとする者は、死体解剖保存法(昭和二十四年法律第二百四号)第七条本文の規定にかかわらず、遺族の承諾を受けることを要しない。
一 当該正常解剖を行おうとする者の属する医学又は歯学に関する大学(大学の学部を含む。)の長(以下「学校長」という。)が、死亡した者が献体の意思を書面により表示している旨を遺族に告知し、遺族がその解剖を拒まない場合
二 死亡した者に遺族がない場合
(引取者による死体の引渡し)
第五条 死亡した者が献体の意思を書面により表示しており、かつ、当該死亡した者に遺族がない場合においては、その死体の引取者は、学校長から医学又は歯学の教育のため引渡しの要求があつたときは、当該死体を引き渡すことができる。
(記録の作成及び保存等)
第六条 学校長は、正常解剖の解剖体として死体を受領したときは、文部省令で定めるところにより、当該死体に関する記録を作成し、これを保存しなければならない。
2 文部大臣は、学校長に対し、前項の死体に関し必要な報告を求めることができる。
(指導及び助言)
第七条 文部大臣は、献体の意思を有する者が組織する団体に対し、その求めに応じ、その活勤に関し指導又は助言をすることができる。
(国民の理解を深めるための措置)
第八条 国は、献体の意義について国民の理解を深めるため必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
附 則
この法律は、公布の日から起算して六月を経過した日から施行する。
文部大臣 瀬戸山三男
厚生大臣 林義郎
内閣総理大臣 中曽根康弘