刑事訴訟法の一部を改正する法律
法令番号: 法律第23号
公布年月日: 昭和51年5月21日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

無罪判決を受けた者への救済制度として、現行の刑事補償法や国家賠償法だけでは不十分である。被告人は公判廷への出頭義務や弁護人選任による多額の費用負担を強いられるため、無罪判決が確定した場合には、応訴を余儀なくされたことによる財産上の損害を国が補償すべきである。また、検察官の上訴が棄却された場合の費用補償は認められているのに対し、公訴提起が不当であった場合の補償を認めないのは法制度として均衡を欠く。そこで、無罪確定判決を受けた者に対し、公訴提起から判決確定までに要した防御費用を補償する制度を新設するため、本法改正を提案する。

参照した発言:
第77回国会 衆議院 法務委員会 第2号

審議経過

第77回国会

衆議院
(昭和51年3月2日)
参議院
(昭和51年3月4日)
衆議院
(昭和51年5月7日)
(昭和51年5月11日)
(昭和51年5月11日)
参議院
(昭和51年5月13日)
(昭和51年5月14日)
(昭和51年6月11日)
刑事訴訟法の一部を改正する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和五十一年五月二十一日
内閣総理大臣 三木武夫
法律第二十三号
刑事訴訟法の一部を改正する法律
刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)の一部を次のように改正する。
目次第一編中「第十五章 訴訟費用」を
第十五章
訴訟費用
第十六章
費用の補償
に改める。
第百八十一条第三項中「取下」を「取下げ」に改め、同項に次のただし書を加える。
ただし、被告人の責めに帰すべき事由によつて生じた費用については、この限りでない。
第一編中第十五章の次に次の一章を加える。
第十六章 費用の補償
第百八十八条の二 無罪の判決が確定したときは、国は、当該事件の被告人であつた者に対し、その裁判に要した費用の補償をする。ただし、被告人であつた者の責めに帰すべき事由によつて生じた費用については、補償をしないことができる。
被告人であつた者が、捜査又は審判を誤らせる目的で、虚偽の自白をし、又は他の有罪の証拠を作ることにより、公訴の提起を受けるに至つたものと認められるときは、前項の補償の全部又は一部をしないことができる。
第百八十八条の五第一項の規定による補償の請求がされている場合には、第百八十八条の四の規定により補償される費用については、第一項の補償をしない。
第百八十八条の三 前条第一項の補償は、被告人であつた者の請求により、無罪の判決をした裁判所が、決定をもつてこれを行う。
前項の請求は、無罪の判決が確定した後六箇月以内にこれをしなければならない。
補償に関する決定に対しては、即時抗告をすることができる。
第百八十八条の四 検察官のみが上訴をした場合において、上訴が棄却され又は取り下げられて当該上訴に係る原裁判が確定したときは、これによつて無罪の判決が確定した場合を除き、国は、当該事件の被告人又は被告人であつた者に対し、上訴によりその審級において生じた費用の補償をする。ただし、被告人又は被告人であつた者の責めに帰すべき事由によつて生じた費用については、補償をしないことができる。
第百八十八条の五 前条の補償は、被告人又は被告人であつた者の請求により、当該上訴裁判所であつた最高裁判所又は高等裁判所が、決定をもつてこれを行う。
前項の請求は、当該上訴に係る原裁判が確定した後二箇月以内にこれをしなければならない。
補償に関する決定で高等裁判所がしたものに対しては、第四百二十八条第二項の異議の申立てをすることができる。この場合には、即時抗告に関する規定をも準用する。
第百八十八条の六 第百八十八条の二第一項又は第百八十八条の四の規定により補償される費用の範囲は、被告人若しくは被告人であつた者又はそれらの者の弁護人であつた者が公判準備及び公判期日に出頭するに要した旅費、日当及び宿泊料並びに弁護人であつた者に対する報酬に限るものとし、その額に関しては、刑事訴訟費用に関する法律の規定中、被告人又は被告人であつた者については証人、弁護人であつた者については弁護人に関する規定を準用する。
裁判所は、公判準備又は公判期日に出頭した弁護人が二人以上あつたときは、事件の性質、審理の状況その他の事情を考慮して、前項の弁護人であつた者の旅費、日当及び宿泊料を主任弁護人その他一部の弁護人に係るものに限ることができる。
第百八十八条の七 補償の請求その他補償に関する手続、補償と他の法律による損害賠償との関係、補償を受ける権利の譲渡又は差押え及び被告人又は被告人であつた者の相続人に対する補償については、この法律に特別の定めがある場合のほか、刑事補償法(昭和二十五年法律第一号)第一条に規定する補償の例による。
第三百六十八条から第三百七十一条までを次のように改める。
第三百六十八条から第三百七十一条まで 削除
附 則
1 この法律は、公布の日から起算して九十日を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
2 この法律の施行前に生じた訴訟費用については、この法律による改正後の刑事訴訟法第百八十一条第三項ただし書の規定は、適用しない。
3 この法律による改正後の刑事訴訟法第百八十八条の二の規定は、この法律の施行後に無罪の判決が確定した事件につきこの法律の施行前に生じた費用についても適用する。
4 検察官のみが上訴をした場合において、その上訴がこの法律の施行前に棄却され又は取り下げられたときは、上訴によりその審級において生じた費用の補償については、なお従前の例による。
5 この法律による改正前の刑事訴訟法第三百七十条第一項の規定による補償の請求及び前項の規定により従前の例によることとされる補償の請求がされている場合には、改正前の同法第三百六十八条の規定及び同条の規定の例により補償される費用については、改正後の同法第百八十八条の二第一項の補償をしない。
法務大臣 稻葉修
内閣総理大臣 三木武夫
刑事訴訟法の一部を改正する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和五十一年五月二十一日
内閣総理大臣 三木武夫
法律第二十三号
刑事訴訟法の一部を改正する法律
刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)の一部を次のように改正する。
目次第一編中「第十五章 訴訟費用」を
第十五章
訴訟費用
第十六章
費用の補償
に改める。
第百八十一条第三項中「取下」を「取下げ」に改め、同項に次のただし書を加える。
ただし、被告人の責めに帰すべき事由によつて生じた費用については、この限りでない。
第一編中第十五章の次に次の一章を加える。
第十六章 費用の補償
第百八十八条の二 無罪の判決が確定したときは、国は、当該事件の被告人であつた者に対し、その裁判に要した費用の補償をする。ただし、被告人であつた者の責めに帰すべき事由によつて生じた費用については、補償をしないことができる。
被告人であつた者が、捜査又は審判を誤らせる目的で、虚偽の自白をし、又は他の有罪の証拠を作ることにより、公訴の提起を受けるに至つたものと認められるときは、前項の補償の全部又は一部をしないことができる。
第百八十八条の五第一項の規定による補償の請求がされている場合には、第百八十八条の四の規定により補償される費用については、第一項の補償をしない。
第百八十八条の三 前条第一項の補償は、被告人であつた者の請求により、無罪の判決をした裁判所が、決定をもつてこれを行う。
前項の請求は、無罪の判決が確定した後六箇月以内にこれをしなければならない。
補償に関する決定に対しては、即時抗告をすることができる。
第百八十八条の四 検察官のみが上訴をした場合において、上訴が棄却され又は取り下げられて当該上訴に係る原裁判が確定したときは、これによつて無罪の判決が確定した場合を除き、国は、当該事件の被告人又は被告人であつた者に対し、上訴によりその審級において生じた費用の補償をする。ただし、被告人又は被告人であつた者の責めに帰すべき事由によつて生じた費用については、補償をしないことができる。
第百八十八条の五 前条の補償は、被告人又は被告人であつた者の請求により、当該上訴裁判所であつた最高裁判所又は高等裁判所が、決定をもつてこれを行う。
前項の請求は、当該上訴に係る原裁判が確定した後二箇月以内にこれをしなければならない。
補償に関する決定で高等裁判所がしたものに対しては、第四百二十八条第二項の異議の申立てをすることができる。この場合には、即時抗告に関する規定をも準用する。
第百八十八条の六 第百八十八条の二第一項又は第百八十八条の四の規定により補償される費用の範囲は、被告人若しくは被告人であつた者又はそれらの者の弁護人であつた者が公判準備及び公判期日に出頭するに要した旅費、日当及び宿泊料並びに弁護人であつた者に対する報酬に限るものとし、その額に関しては、刑事訴訟費用に関する法律の規定中、被告人又は被告人であつた者については証人、弁護人であつた者については弁護人に関する規定を準用する。
裁判所は、公判準備又は公判期日に出頭した弁護人が二人以上あつたときは、事件の性質、審理の状況その他の事情を考慮して、前項の弁護人であつた者の旅費、日当及び宿泊料を主任弁護人その他一部の弁護人に係るものに限ることができる。
第百八十八条の七 補償の請求その他補償に関する手続、補償と他の法律による損害賠償との関係、補償を受ける権利の譲渡又は差押え及び被告人又は被告人であつた者の相続人に対する補償については、この法律に特別の定めがある場合のほか、刑事補償法(昭和二十五年法律第一号)第一条に規定する補償の例による。
第三百六十八条から第三百七十一条までを次のように改める。
第三百六十八条から第三百七十一条まで 削除
附 則
1 この法律は、公布の日から起算して九十日を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
2 この法律の施行前に生じた訴訟費用については、この法律による改正後の刑事訴訟法第百八十一条第三項ただし書の規定は、適用しない。
3 この法律による改正後の刑事訴訟法第百八十八条の二の規定は、この法律の施行後に無罪の判決が確定した事件につきこの法律の施行前に生じた費用についても適用する。
4 検察官のみが上訴をした場合において、その上訴がこの法律の施行前に棄却され又は取り下げられたときは、上訴によりその審級において生じた費用の補償については、なお従前の例による。
5 この法律による改正前の刑事訴訟法第三百七十条第一項の規定による補償の請求及び前項の規定により従前の例によることとされる補償の請求がされている場合には、改正前の同法第三百六十八条の規定及び同条の規定の例により補償される費用については、改正後の同法第百八十八条の二第一項の補償をしない。
法務大臣 稲葉修
内閣総理大臣 三木武夫