輸出中小企業製品統一商標法
法令番号: 法律第85号
公布年月日: 昭和45年5月21日
法令の形式: 法律

提案理由 (AIによる要約)

繊維工業品や雑貨工業品等の中小企業製品の輸出が、国内の生産コスト上昇や発展途上国の追い上げにより伸び悩んでいる。この状況を打開するには、発展途上国の製品と差別化できる優良高級品を適正価格で輸出する体制の確立が必要である。しかし従来、輸入業者主導の輸出が多く、日本製品独自の商標による市場開拓が不十分だった。そこで、品質の優れた中小企業製品に統一商標を定め、海外に普及させることで、優良高級品としての評価を確立し、輸出と中小企業の振興を図ることを目的として本法案を提案する。

参照した発言:
第63回国会 参議院 商工委員会 第3号

審議経過

第63回国会

参議院
(昭和45年3月5日)
(昭和45年3月12日)
(昭和45年3月17日)
(昭和45年3月19日)
(昭和45年3月24日)
(昭和45年3月26日)
(昭和45年3月27日)
衆議院
(昭和45年4月7日)
参議院
(昭和45年4月8日)
衆議院
(昭和45年5月8日)
(昭和45年5月12日)
(昭和45年5月12日)
輸出中小企業製品統一商標法をここに公布する。
御名御璽
昭和四十五年五月二十一日
内閣総理大臣 佐藤栄作
法律第八十五号
輸出中小企業製品統一商標法
目次
第一章
総則(第一条・第二条)
第二章
統一商標規程の認定(第三条―第十二条)
第三章
検査等(第十三条―第十六条)
第四章
雑則(第十七条―第二十一条)
第五章
罰則(第二十二条―第二十六条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、輸出向けに出荷される中小企業製品のうち品質がすぐれたものについて、海外市場における声価の向上のため、統一商標の使用の保護に関する措置を講ずることにより、その適切な使用を促進してこれらの製品の輸出の振興を図り、あわせて中小企業の振興に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「特定貨物」とは、その生産を行なう事業者の大部分が中小企業者(中小企業団体の組織に関する法律(昭和三十二年法律第百八十五号)第五条第一号又は第三号に該当する者をいう。)である貨物のうち、海外市場における声価の向上を図るには、品質の向上と商標の適切な使用とが特に必要である貨物として政令で定めるものをいう。
2 この法律において「団体」とは、商工組合、商工組合連合会その他これらに準ずる団体であつて政令で定めるもののうち、特定貨物の生産の事業を、その直接又は間接の構成員(以下単に「構成員」という。)の資格として定款で定められる事業とするものをいう。
3 この法律において「統一商標」とは、団体及びその構成員の統一的な使用に供される商標であつて、輸出向けに出荷される特定貨物について使用されるものをいう。
第二章 統一商標規程の認定
(認定)
第三条 団体であつて、その構成員が輸出向けに出荷する特定貨物の出荷額の当該特定貨物の総輸出額に対する比率が政令で定める率をこえているものは、統一商標に関し、統一商標規程を作成し、これを主務大臣に提出して、その統一商標規程が適当である旨の認定を受けることができる。
2 統一商標規程には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 統一商標
二 統一商標を附する特定貨物の品質の基準
三 特定貨物の品質が前号に規定する基準に適合するかどうかについての検査(以下単に「検査」という。)を行なう機関の名称並びにその検査の能力及び方法
四 統一商標の使用及び管理の方法
3 統一商標規程には、団体の定款その他主務省令で定める書類を添附しなければならない。
(欠格条項)
第四条 次の各号の一に該当する者は、前条第一項の認定(以下単に「認定」という。)を受けることができない。
一 この法律又はこの法律に基づく命令の規定に違反し、罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から二年を経過しない者
二 第十一条第四号から第七号までの規定により認定を取り消され、その取消しの日から二年を経過しない者
三 その業務を行なう役員のうちに第一号に該当する者がある者
(認定の基準)
第五条 主務大臣は、認定の申請があつた場合において、その申請に係る統一商標規程が次の各号に該当するものであると認めるときは、認定をするものとする。
一 統一商標が通商産業省令で定める基準に適合するものであること。
二 特定貨物の品質の基準が主務省令で定める基準に適合するものであること。
三 検査を行なう機関並びにその検査の能力及び方法が主務省令で定める基準に適合するものであること。
四 統一商標の使用及び管理の方法が特定貨物の輸出の振興を図るため適切なものであること。
(認定に関する公示)
第六条 主務大臣は、認定をしたときは、その認定に係る統一商標規程の要旨を官報で公示しなければならない。
(認定の有効期間)
第七条 認定の有効期間は、その認定をした日から五年とする。
2 前項の有効期間は、申請により更新することができる。
3 第一項の有効期間の更新に関し必要な事項は、主務省令で定める。
(変更認定)
第八条 認定を受けた団体(以下「認定団体」という。)は、第三条第二項各号に掲げる事項について統一商標規程を変更しようとするときは、主務大臣の変更認定を受けなければならない。
2 第三条第三項の規定は前項の変更認定の申請について、第五条及び第六条の規定は同項の変更認定について準用する。
(廃止の届出)
第九条 認定団体は、認定に係る統一商標規程(前条第一項の変更認定があつたときは、その変更後のものとし、以下「認定規程」という。)に定める統一商標(以下「認定商標」という。)に関する業務を廃止したときは、遅滞なく、その旨を主務大臣に届け出なければならない。
(認定の失効)
第十条 認定団体が認定商標に関する業務を廃止したときは、認定は、その効力を失う。
(認定の取消し)
第十一条 主務大臣は、次の各号の一に該当する場合には、当該認定を取り消すことができる。
一 認定団体の構成員が輸出向けに出荷する特定貨物の出荷額の当該特定貨物の総輸出額に対する比率が第三条第一項の政令で定める率以下となつたとき。
二 認定商標が第五条第一号の通商産業省令で定める基準に適合しないものとなつたとき。
三 認定規程に定める検査を行なう機関(以下「検査機関」という。)並びにその検査の能力及び方法が第五条第三号の主務省令で定める基準に適合しないものとなつたとき。
四 認定商標の使用及び管理が認定規程に定める方法に従つて実施されていないと認められるとき。
五 認定団体が第四条第三号に該当するに至つたとき。
六 認定団体がこの法律又はこの法律に基づく命令の規定に違反したとき。
七 認定団体が不正の手段により認定又は第八条第一項の変更認定を受けたとき。
(失効の公示)
第十二条 主務大臣は、認定がその効力を失つたことを確認したとき、又は前条の規定により認定を取り消したときは、その旨を官報で公示しなければならない。
第三章 検査等
(検査及び表示)
第十三条 認定団体又は認定団体から認定商標の使用の許諾を受けた者(以下「使用者」という。)は、認定商標を附した特定貨物について検査機関が行なう検査を受け、これに合格したときは、当該検査機関に対し、当該特定貨物又はその包装に主務省令で定める方式による表示を附することを求めることができる。
2 検査機関は、認定商標が附された特定貨物について当該認定規程に定める検査の方法により検査を行ない、その品質が当該認定規程に定める基準に適合していると認めて前項の表示を附する場合を除き、特定貨物又はその包装に同項の表示又はこれと紛らわしい表示を附してはならない。
3 検査機関以外の者は、特定貨物又はその包装に第一項の表示又はこれと紛らわしい表示を附してはならない。
(輸出の制限)
第十四条 認定商標又はこれに類似する商標が附された特定貨物は、当該特定貨物に係る第六条の規定による公示の日から起算して二月を経過した日以後当該認定が効力を失うまでの間は、前条第一項の表示が同条第二項に規定するところにより附されたものでなければ、輸出してはならない。
(輸出の制限の適用除外)
第十五条 前条の規定は、次に掲げる場合は、適用しない。
一 商標法(昭和三十四年法律第百二十七号)第三十二条第一項の規定に基づき、特定貨物について認定商標と同一の商標又はこれに類似する商標を使用する権利を有する者が当該商標を附した当該特定貨物を輸出する場合
二 一時的に出国する者が本人の使用に供することを目的とする特定貨物であつて必要と認められるものを携帯して輸出する場合その他主務省令で定める場合
(輸出停止命令)
第十六条 通商産業大臣は、第十四条の規定に違反して特定貨物を輸出した者に対し、一年以内の期間を限り、特定貨物の品目を定め、その輸出の停止を命ずることができる。
第四章 雑則
(輸出入取引審議会への諮問)
第十七条 主務大臣は、第二条第一項又は第三条第一項の政令の制定又は改廃の立案をしようとするときは、輸出入取引審議会に諮問しなければならない。
(報告の徴収)
第十八条 主務大臣は、この法律の施行に必要な限度において、政令で定めるところにより、使用者に対し、その輸出向けに出荷する特定貨物に関し報告をさせることができる。
2 主務大臣は、この法律の施行に必要な限度において、認定団体又は検査機関に対し、その業務の状況に関し報告をさせることができる。
(立入検査)
第十九条 主務大臣は、この法律の施行に必要な限度において、その職員に、使用者の所有する特定貨物の保管の場所に立ち入り、その特定貨物を検査させることができる。
2 主務大臣は、この法律の施行に必要な限度において、その職員に、認定団体又は検査機関の事務所、事業所又は倉庫に立ち入り、業務の状況又は特定貨物、帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。
3 前二項の規定により職員が立入検査をする場合においては、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。
4 第一項又は第二項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
(表示の除去等)
第二十条 主務大臣は、前条第一項又は第二項の規定によりその職員に特定貨物を検査させた場合において、当該特定貨物が次の各号の一に該当するときは、その表示を除去し、又はこれに消印を附することができる。
一 当該特定貨物又はその包装に第十三条第二項又は第三項の規定に違反して表示が附されているとき。
二 前号に掲げる場合のほか、第十三条第一項の表示が附されている場合において、当該特定貨物の品質が当該認定規程に定める基準に適合していないとき。
(主務大臣及び主務省令)
第二十一条 この法律において主務大臣は、通商産業大臣及び当該特定貨物の生産を所掌する大臣とする。
2 この法律において主務省令は、主務大臣の発する命令とする。
第五章 罰則
第二十二条 第十六条の規定による命令に違反して特定貨物を輸出した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
2 前項の未遂罪は、罰する。
第二十三条 次の各号の一に該当する者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
一 第十三条第二項の規定に違反して表示を附した検査機関の役員又は職員
二 第十三条第三項の規定に違反して表示を附した者
第二十四条 次の各号の一に該当する者は、三万円以下の罰金に処する。
一 第十八条第一項又は第二項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
二 第十九条第一項又は第二項の規定による立入検査を拒み、妨げ、又は忌避した者
第二十五条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前三条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して、各本条の罰金刑を科する。
第二十六条 第九条の規定に違反して届出をせず、又は虚偽の届出をした場合には、その行為をした団体の役員は、一万円以下の過料に処する。
附 則
この法律は、公布の日から施行する。
法務大臣 小林武治
厚生大臣 内田常雄
農林大臣 倉石忠雄
通商産業大臣臨時代理 国務大臣 佐藤一郎
運輸大臣 橋本登美三郎
内閣総理大臣 佐藤栄作