(目的)
第一条 この法律は、すベての国民に基本的人権の享有を保障する日本国憲法の理念にのつとり、歴史的社会的理由により生活環境等の安定向上が阻害されている地域(以下「対象地域」という。)について国及び地方公共団体が協力して行なう同和対策事業の目標を明らかにするとともに、この目標を達成するために必要な特別の措置を講ずることにより、対象地域における経済力の培養、住民の生活の安定及び福祉の向上等に寄与することを目的とする。
(同和対策事業)
第二条 この法律において「同和対策事業」とは、第六条各号に掲げる事項を実施する事業をいう。
(国民の責務)
第三条 すべて国民は、同和対策事業の本旨を理解して、相互に基本的人権を尊重するとともに、同和対策事業の円滑な実施に協力するように努めなければならない。
(国及び地方公共団体の責務)
第四条 国及び地方公共団体は、同和対策事業を迅速かつ計画的に推進するように努めなければならない。
(同和対策事業の目標)
第五条 同和対策事業の目標は、対象地域における生活環境の改善、社会福祉の増進、産業の振興、職業の安定、教育の充実、人権擁護活動の強化等を図ることによつて、対象地域の住民の社会的経済的地位の向上を不当にはばむ諸要因を解消することにあるものとする。
(国の施策)
第六条 国は、第一条の目的を達成するため、次の各号に掲げる事項について、その政策全般にわたり、必要な施策を総合的に講じなければならない。
一 対象地域における生活環境の改善を図るため、地区の整理、住宅事情の改善、公共施設及び生活環境施設の整備等の措置を講ずること。
二 対象地域における社会福祉及び公衆衛生の向上及び増進を図るため、社会福祉施設、保健衛生施設の整備等の措置を講ずること。
三 対象地域における農林漁業の振興を図るため、農林漁業の生産基盤の整備及び開発並びに経営の近代化のための施設の導入等の措置を講ずること。
四 対象地域における中小企業の振興を図るため、中小企業の経営の合理化、設備の近代化、技術の向上等の措置を講ずること。
五 対象地域の住民の雇用の促進及び職業の安定を図るため、職業指導及び職業訓練の充実、職業紹介の推進等の措置を講ずること。
六 対象地域の住民に対する学校教育及び社会教育の充実を図るため、進学の奨励、社会教育施設の整備等の措置を講ずること。
七 対象地域の住民に対する人権擁護活動の強化を図るため、人権擁護機関の充実、人権思想の普及高揚、人権相談活動の推進等の措置を講ずること。
八 前各号に掲げるもののほか、前条の目標を達成するために必要な措置を講ずること。
(特別の助成)
第七条 同和対策事業でこれに要する経費について国が負担し、又は補助するものに対するその負担又は補助については、政令で特別の定めをする場合を除き、予算の範囲内で、三分の二の割合をもつて算定するものとする。
2 前項の場合において、法律の規定で国の負担又は補助の割合として三分の二を下る割合を定めているもののうち政令で定めるものについては、政令でこれを三分の二とするものとする。
(地方公共団体の施策)
第八条 地方公共団体は、国の施策に準じて必要な措置を講ずるように努めなければならない。
(地方債)
第九条 同和対策事業につき地方公共団体が必要とする経費については、地方財政法(昭和二十三年法律第百九号)第五条第一項各号に規定する経費に該当しないものについても、地方債をもつてその財源とすることができる。
2 同和対策事業につき地方公共団体が必要とする経費の財源に充てるため起こした地方債は、資金事情の許す限り、国が資金運用部資金又は簡易生命保険及郵便年金特別会計の積立金をもつてその全額を引き受けるものとする。
(元利償還金の基準財政需要額への算入)
第十条 同和対策事業につき地方公共団体が必要とする経費の財源に充てるため起こした地方債で自治大臣が指定したものに係る元利償還に要する経費は、地方交付税法(昭和二十五年法律第二百十一号)の定めるところにより、当該地方公共団体に交付すべき地方交付税の額の算定に用いる基準財政需要額に算入するものとする。
(関係行政機関等の協力)
第十一条 関係行政機関の長及び関係地方公共団体の長は、同和対策事業が円滑に実施されるように相互に協力しなければならない。