逃亡犯罪人引渡法の一部を改正する法律
法令番号: 法律第86号
公布年月日: 昭和39年5月29日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

近年、交通機関の発達により国外への逃亡による刑事責任逃れが増加していることから、犯罪人引渡条約が存在しない国との間でも、必要に応じて逃亡犯罪人の引き渡しを可能にする必要が生じている。現行法では条約に基づく引き渡し請求を前提としており、条約によらない請求は類推適用で対応しているが、国際的観点から適当でないため、条約によらない引き渡しの要件や手続きを整備する。具体的には、一定の重大犯罪に限定し、相互主義に基づく保証がある場合に引き渡しを可能とすること、および引き渡し手続きを明確化することを主な改正点とする。また、刑事補償法も改正し、条約によらない引き渡し請求の場合も補償対象とする。

参照した発言:
第46回国会 衆議院 法務委員会 第9号

審議経過

第46回国会

衆議院
(昭和39年3月3日)
参議院
(昭和39年3月3日)
衆議院
(昭和39年3月5日)
参議院
(昭和39年3月5日)
衆議院
(昭和39年3月6日)
(昭和39年3月10日)
(昭和39年3月13日)
(昭和39年3月19日)
参議院
(昭和39年5月7日)
(昭和39年5月12日)
(昭和39年5月14日)
(昭和39年5月19日)
(昭和39年5月21日)
(昭和39年5月26日)
(昭和39年5月27日)
(昭和39年6月26日)
逃亡犯罪人引渡法の一部を改正する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和三十九年五月二十九日
内閣総理大臣 池田勇人
法律第八十六号
逃亡犯罪人引渡法の一部を改正する法律
逃亡犯罪人引渡法(昭和二十八年法律第六十八号)の一部を次のように改正する。
第一条を次のように改める。
(定義)
第一条 この法律において「引渡条約」とは、日本国と外国との間に締結された犯罪人の引渡しに関する条約をいう。
2 この法律において「請求国」とは、日本国に対して犯罪人の引渡しを請求した外国をいう。
3 この法律において「引渡犯罪」とは、請求国からの犯罪人の引渡しの請求において当該犯罪人が犯したとする犯罪をいう。
4 この法律において「逃亡犯罪人」とは、引渡犯罪について請求国の刑事に関する手続が行なわれた者をいう。
第二条中「第六号又は第七号」を「第三号、第四号、第八号又は第九号」に改め、同条第一号中「逃亡犯罪人の犯した」を削り、同条第七号を同条第九号とし、同条第六号を同条第八号とし、同条第五号中「逃亡犯罪人の犯した」を削り、同号を同条第七号とし、同条第四号中「逃亡犯罪人の犯した」を削り、「締約国」を「請求国」に改め、同号を同条第六号とし、同条第三号中「逃亡犯罪人の犯した」及び「その」を削り、同号を同条第五号とし、同条第二号の次に次の二号を加える。
三 引渡犯罪が請求国の法令により死刑又は無期若しくは長期三年以上の拘禁刑にあたるものでないとき。
四 引渡犯罪に係る行為が日本国内において行なわれたとした場合において、当該行為が日本国の法令により死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁錮に処すべき罪にあたるものでないとき。
第三条を次のように改める。
(引渡しの請求を受けた外務大臣の措置)
第三条 外務大臣は、逃亡犯罪人の引渡しの請求があつたときは、次の各号の一に該当する場合を除き、引渡請求書又は外務大臣の作成した引渡しの請求があつたことを証明する書面に関係書類を添附し、これを法務大臣に送付しなければならない。
一 請求が引渡条約に基づいて行なわれたものである場合において、その方式が引渡条約に適合しないと認めるとき。
二 請求が引渡条約に基づかないで行なわれたものである場合において、請求国から日本国が行なう同種の請求に応ずべき旨の保証がなされないとき。
第四条第二号中「第六号又は第七号」を「第八号又は第九号」に改め、同条に次の一号を加える。
三 引渡しの請求が引渡条約に基づかないで行なわれたものである場合において、逃亡犯罪人を引き渡すことが相当でないと認めるとき。
第四条に次の一項を加える。
2 法務大臣は、前項第三号の認定をしようとするときは、あらかじめ外務大臣と協議しなければならない。
第五条第一項中「前条」を「前条第一項」に改め、同条第三項中「引渡を請求した締約国」を「請求国」に改める。
第八条第一項中「第四条」を「第四条第一項」に改める。
第十一条第一項中「締約国から逃亡犯罪人の引渡の請求を撤回する旨の通知があつたときは」を「、請求国から逃亡犯罪人の引渡しの請求を撤回する旨の通知を受け、又は第三条第二号に該当するに至つたときは」に改め、同条第二項中「第四条」を「第四条第一項」に改める。
第十四条第三項中「第六号」を「第八号」に改める。
第十六条第四項中「引渡を請求した締約国」を「請求国」に改める。
第十九条第一項中「引渡を請求した締約国」を「請求国」に改め、同条第二項中「締約国」を「請求国」に改める。
第二十条及び第二十一条(見出しを含む。)中「締約国」を「請求国」に改める。
第二十三条第一項中「逃亡犯罪人が犯した引渡犯罪」を「引渡条約により日本国に対し引渡しの請求をすることができる犯罪人が犯した犯罪(引渡条約において締約国が日本国に対し犯罪人の引渡しを請求することができるものとして掲げる犯罪に限る。)」に改め、「逃亡犯罪人の引渡」を「その者の引渡し」に改める。
第二十四条及び第二十五条中「逃亡犯罪人」を「当該犯罪人」に改める。
第二十六条第一項中「逃亡犯罪人について」を「犯罪人について」に、「各号の一」を「第一項第一号又は第二号」に、「同条」を「同条同項」に、「逃亡犯罪人にその旨」を「当該犯罪人にその旨」に、「仮拘禁許可状により拘禁されている逃亡犯罪人の」を「当該犯罪人の」に改め、同条第二項中「逃亡犯罪人」を「当該犯罪人」に改める。
第二十七条第一項中「逃亡犯罪人について」を「犯罪人について」に、「第四条」を「第四条第一項」に、「逃亡犯罪人に対し」を「当該犯罪人に対し」に改め、同条第二項中「逃亡犯罪人」を「当該犯罪人」に改め、同条第三項中「逃亡犯罪人に対し」を「犯罪人に対し」に改める。
第二十八条第一項中「逃亡犯罪人」を「当該犯罪人」に改め、同条第二項中「逃亡犯罪人に」を「当該犯罪人に」に、「仮拘禁許可状により拘禁されている逃亡犯罪人」を「当該犯罪人」に改め、同条第三項中「逃亡犯罪人」を「当該犯罪人」に改める。
第二十九条中「仮拘禁許可状により逃亡犯罪人が拘禁されている」を削り、「逃亡犯罪人が拘束された」を「仮拘禁許可状により拘禁されている犯罪人について、その者が拘束された」に、「逃亡犯罪人を」を「当該犯罪人を」に改める。
第三十条中「逃亡犯罪人」を「当該犯罪人」に改める。
第三十三条(見出しを含む。)中「引渡犯罪」を「犯罪」に、「逃亡犯罪人」を「犯罪人」に、「この法律」を「この法律中引渡条約に基づく引渡しの請求に関する規定」に改める。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から施行する。
(経過規定)
2 この法律による改正後の逃亡犯罪人引渡法の規定は、この法律の施行前に犯された犯罪に係る犯罪人の引渡しの請求についても、適用する。
(刑事補償法の一部改正)
3 刑事補償法(昭和二十五年法律第一号)の一部を次のように改正する。
第二十六条中「犯罪人の引渡に関する条約により、」を削り、「締約国に対し」を「外国に対し」に、「締約国が当該逃亡犯罪人の」を「当該外国がその」に改める。
法務大臣 賀屋興宣
外務大臣臨時代理 内閣総理大臣 池田勇人
内閣総理大臣 池田勇人