学校法人紛争の調停等に関する法律
法令番号: 法律第七十号
公布年月日: 昭和37年4月4日
法令の形式: 法律
学校法人紛争の調停等に関する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和三十七年四月四日
内閣総理大臣 池田勇人
法律第七十号
学校法人紛争の調停等に関する法律
(目的)
第一条 この法律は、学校法人紛争が生じ、これにより学校法人の正常な管理及び運営が行なわれなくなり、かつ、そのため当該学校法人が法令の規定に違反するに至つた場合において、当該紛争の処理に関し調停その他の措置を定めることにより、学校法人の正常な管理及び運営を図り、もつて私立学校における教育の円滑な実施に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「学校法人」とは、私立学校法(昭和二十四年法律第二百七十号)第三条に規定する学校法人をいう。
2 この法律において「私立学校」とは、学校法人の設置する学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に規定する学校(当該学校法人が私立学校法第六十四条第二項の規定により各種学枚を設置している場合にあつては、当該各種学校を含む。)をいう。
3 この法律において「学校法人紛争」とは、学校法人の役員又は評議員の間における当該学校法人の管理及び運営についての紛争をいう。
4 この法律において「当事者」とは、学校法人紛争がある場合における当該紛争に係る役員又は評議員(当該紛争により学校法人の役員又は評議員の地位を失つた者を含む。)をいう。
5 この法律において「所轄庁」とは、私立学校法第四条に規定する所轄庁をいう。
(調停の開始)
第三条 所轄庁は、学校法人紛争が生じ、これにより学校法人の正常な管理及び運営が行なわれなくなり、かつ、そのため当該学校法人が法令の規定に違反するに至つたと認めるときは、当該学校法人紛争の解決のため、当事者の申出により、又は私立学校法第九条第一項に規定する私立学校審議会、同法第十八条第一項に規定する私立大学審議会若しくは学校教育法第七十条の七第一項に規定する高等専門学校審議会(以下「審議会」という。)の建議により若しくはあらかじめ審議会の意見をきき職権をもつて、学校法人紛争調停委員(以下「調停委員」という。)に調停を行なわせることができる。
(調停委員)
第四条 調停委員は、三人以上五人以下とし、事件ごとに、審議会の委員その他の者で学識経験を有するもののうちから所轄庁が任命する。
2 調停委員は、非常勤とする。
(意見の聴取等)
第五条 調停委員は、期日を定めて、当事者に対し、出頭を求めてその意見をきき、又は資料の提出を求めることができる。
(調停成立前の措置)
第六条 調停委員は、調停を行なうについて特に必要があると認めるときは、調停成立前の措置として、当事者又は当該学校法人紛争に係る学校法人に対し、調停の成立を困難にするおそれがある行為につき、必要な勧告をすることができる。
(合意による調停の成立)
第七条 当事者の全部又は一部の間に合意が成立し、かつ、調停委員がこれを相当と認めて調停書に記載したときは、当該当事者の間に調停が成立したものとする。
(調停案による調停の措置等)
第八条 調停委員は、当事者の全部の間に前条に規定する合意が成立した場合を除き、適当な時期に、調停委員の全員の一致をもつて調停案を作成してこれを当事者に示し、相当と認める期限を附してその受諾を勧告することができる。この場合において、調停案を作成するときは、あらかじめ、当事者に対し、その旨を通知し、意見を述べる機会を与えなければならない。
2 調停委員は、前項の勧告をしたときは、理由を附して当該調停案を公表することができる。
3 当事者のすべてが第一項の期限内に調停案を受諾し、かつ、その旨を記載した文書に署名押印してこれを調停委員に提出したときは、当該調停案につき、当事者の間に合意が成立したものとみなし、調停が成立したものとする。
4 第一項の期限内に当事者の一部が調停案を受諾しなかつた場合においても、当該調停案を受諾した者の間に当該調停案について調停を成立させることが適当であると認めるときは、調停委員は、当該調停を成立させることについて、当該受諾者に対し同意を求めることができる。この場合において、当該受諾者のすべてが同意し、かつ、その旨を記載した文書に署名押印してこれを調停委員に提出したときは、当該調停案につき、当該受諾者の間に合意が成立したものとみなし、調停が成立したものとする。
5 前項前段の規定により調停を成立させることについて受諾者に対し同意を求める場合において、必要があると認めるときは、調停委員は、調停案を受諾しなかつた者に対し、当該調停案を受諾すべきことを勧告することができる。この場合において、その者が当該調停案を受諾したときは、その者を前項の受諾者とみなして同項の規定を適用する。
6 調停委員は、第一項の規定による調停案を当事者に示した日から相当な期間を経過しても調停が成立するに至らないときは、調停を打ち切ることができる。
(調停成立後の措置)
第九条 所轄庁は、成立した調停の内容の実施について、当該調停に係る当事者若しくは当該学校法人紛争に係る学校法人から報告を求め、又は必要に応じて調査することができる。
2 所轄庁は、当事者が正当な理由がないのに成立した調停の内容を履行せず、又はその内容に違反したと認めるときは、当該当事者に対し、その調停の内容を履行すべきこと、又はその違反行為を是正するために必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
(解職又は辞職の勧告及び解職等)
第十条 当事者が前条第二項の規定による命令に違反した場合において、当該当事者を解職しなければ当該学校法人の正常な管理及び運営を図ることができないと認めるときは、所轄庁は、当該学校法人に対し、期間を定めて、その期間内に当該当事者を解職すべきことを勧告することができる。第八条第一項の調停案に係る当事者で同条第三項、第四項又は第五項の規定による調停が成立したものとされなかつた者を解職しなければ当該学校法人の正常な管理及び運営を図ることができないと認めるときも、同様とする。
2 前項の場合において、当該学校法人が当該勧告に係る措置を実施することができないと認めるときは、所轄庁は、当該学校法人に対する勧告に代えて、直接当該当事者に対し、期間を定めて、その期間内に辞職すべきことを勧告することができる。
3 所轄庁は、前二項の勧告をしようとするときは、あらかじめ、当該勧告に係る者に対して弁明の機会を与えるために通知するとともに、審議会の意見をきかなければならない。この場合において、当該勧告に係る者又はその代理人は、所轄庁に対して弁明することができる。
4 第一項の勧告に係る当事者が同項に規定する期間内に解職されない場合又は第二項の勧告に係る当事者が同項に規定する期間内に辞職しない場合において、当該学校法人の正常な管理及び運営を図るため他に方法がないと認めるときは、所轄庁は、当該勧告に係る者を解職し、かつ、解職した者の後任者の選任について、当該学校法人に対し、必要な指示をすることができる。この場合において、解職された者が私立学校法第三十八条第一項第一号に掲げる校長であるときは、その者は、同時に校長の職を失うものとする。
(所轄庁の資料提出要求等)
第十一条 所轄庁は、第三条の規定により調停を行なわせることについて必要があると認めるときは、学校法人紛争に係る学校法人又はその役員若しくは評議員に対し、必要な資料の提出を求め、及び当該学校法人の帳簿書類その他必要な物件を調査することができる。
(各種学校の設置のみを目的とする法人に関する準用規定)
第十二条 この法律の規定は、私立学校法第六十四条第四項の法人について準用する。
(政令への委任)
第十三条 この法律に規定するもののほか、調停委員、調停手続その他この法律の実施について必要な事項は、政令で定める。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して一月をこえない範囲内において政令で定める日から施行する。
(この法律の施行の日前に生じた学校法人紛争に対する適用)
2 この法律は、この法律の施行の日前に生じた学校法人紛争で、この法律施行の日以後引き続き継続しているものについても、適用があるものとする。
(文部省設置法の一部改正)
3 文部省設置法(昭和二十四年法律第百四十六号)の一部を次のように改正する。
目次中「国立の学校その他の機関(第十四条―第二十七条)」を「国立の学校その他の機関(第十四条―第二十七条の二)」に改める。
第五条第十七号の次に次の一号を加える。
十七の二 学校法人紛争の処理のため必要な措置を行なうこと。
第十二条第一項第三号の次に次の一号を加える。
三の二 文部大臣がその所轄庁である学校法人についての学校法人紛争の処理のため必要な措置を行なうこと。
第十三条第一項第四号中「審議会等」の下に「並びに第二十七条の二に掲げる学校法人紛争調停委員」を加える。
第十四条中「及び第二十七条」を「、第二十七条及び第二十七条の二」に改める。
第二十七条第一項の表の下欄中「私立学校法」を「私立学校法(昭和二十四年法律第二百七十号)及び学校法人紛争の調停等に関する法律(昭和三十七年法律第七十号)」に改める。
第二章第二節中第二十七条の次に次の一条を加える。
(学校法人紛争調停委員)
第二十七条の二 本省に学校法人紛争調停委員を置く。
2 学校法人紛争調停委員の権限、任命その他の事項については、学校法人紛争の調停等に関する法律の定めるところによる。
(この法律の有効期限)
4 この法律は、この法律の施行の日から起算して二年を経過した日に、その効力を失う。ただし、この法律が効力を失う日前に成立した調停及び当該調停に係るこの法律の規定によるその他の措置に関しては、当該二年を経過した日以後も、なおその効力を有する。
文部大臣 荒木萬壽夫
自治大臣 安井謙
内閣総理大臣 池田勇人
学校法人紛争の調停等に関する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和三十七年四月四日
内閣総理大臣 池田勇人
法律第七十号
学校法人紛争の調停等に関する法律
(目的)
第一条 この法律は、学校法人紛争が生じ、これにより学校法人の正常な管理及び運営が行なわれなくなり、かつ、そのため当該学校法人が法令の規定に違反するに至つた場合において、当該紛争の処理に関し調停その他の措置を定めることにより、学校法人の正常な管理及び運営を図り、もつて私立学校における教育の円滑な実施に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「学校法人」とは、私立学校法(昭和二十四年法律第二百七十号)第三条に規定する学校法人をいう。
2 この法律において「私立学校」とは、学校法人の設置する学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に規定する学校(当該学校法人が私立学校法第六十四条第二項の規定により各種学枚を設置している場合にあつては、当該各種学校を含む。)をいう。
3 この法律において「学校法人紛争」とは、学校法人の役員又は評議員の間における当該学校法人の管理及び運営についての紛争をいう。
4 この法律において「当事者」とは、学校法人紛争がある場合における当該紛争に係る役員又は評議員(当該紛争により学校法人の役員又は評議員の地位を失つた者を含む。)をいう。
5 この法律において「所轄庁」とは、私立学校法第四条に規定する所轄庁をいう。
(調停の開始)
第三条 所轄庁は、学校法人紛争が生じ、これにより学校法人の正常な管理及び運営が行なわれなくなり、かつ、そのため当該学校法人が法令の規定に違反するに至つたと認めるときは、当該学校法人紛争の解決のため、当事者の申出により、又は私立学校法第九条第一項に規定する私立学校審議会、同法第十八条第一項に規定する私立大学審議会若しくは学校教育法第七十条の七第一項に規定する高等専門学校審議会(以下「審議会」という。)の建議により若しくはあらかじめ審議会の意見をきき職権をもつて、学校法人紛争調停委員(以下「調停委員」という。)に調停を行なわせることができる。
(調停委員)
第四条 調停委員は、三人以上五人以下とし、事件ごとに、審議会の委員その他の者で学識経験を有するもののうちから所轄庁が任命する。
2 調停委員は、非常勤とする。
(意見の聴取等)
第五条 調停委員は、期日を定めて、当事者に対し、出頭を求めてその意見をきき、又は資料の提出を求めることができる。
(調停成立前の措置)
第六条 調停委員は、調停を行なうについて特に必要があると認めるときは、調停成立前の措置として、当事者又は当該学校法人紛争に係る学校法人に対し、調停の成立を困難にするおそれがある行為につき、必要な勧告をすることができる。
(合意による調停の成立)
第七条 当事者の全部又は一部の間に合意が成立し、かつ、調停委員がこれを相当と認めて調停書に記載したときは、当該当事者の間に調停が成立したものとする。
(調停案による調停の措置等)
第八条 調停委員は、当事者の全部の間に前条に規定する合意が成立した場合を除き、適当な時期に、調停委員の全員の一致をもつて調停案を作成してこれを当事者に示し、相当と認める期限を附してその受諾を勧告することができる。この場合において、調停案を作成するときは、あらかじめ、当事者に対し、その旨を通知し、意見を述べる機会を与えなければならない。
2 調停委員は、前項の勧告をしたときは、理由を附して当該調停案を公表することができる。
3 当事者のすべてが第一項の期限内に調停案を受諾し、かつ、その旨を記載した文書に署名押印してこれを調停委員に提出したときは、当該調停案につき、当事者の間に合意が成立したものとみなし、調停が成立したものとする。
4 第一項の期限内に当事者の一部が調停案を受諾しなかつた場合においても、当該調停案を受諾した者の間に当該調停案について調停を成立させることが適当であると認めるときは、調停委員は、当該調停を成立させることについて、当該受諾者に対し同意を求めることができる。この場合において、当該受諾者のすべてが同意し、かつ、その旨を記載した文書に署名押印してこれを調停委員に提出したときは、当該調停案につき、当該受諾者の間に合意が成立したものとみなし、調停が成立したものとする。
5 前項前段の規定により調停を成立させることについて受諾者に対し同意を求める場合において、必要があると認めるときは、調停委員は、調停案を受諾しなかつた者に対し、当該調停案を受諾すべきことを勧告することができる。この場合において、その者が当該調停案を受諾したときは、その者を前項の受諾者とみなして同項の規定を適用する。
6 調停委員は、第一項の規定による調停案を当事者に示した日から相当な期間を経過しても調停が成立するに至らないときは、調停を打ち切ることができる。
(調停成立後の措置)
第九条 所轄庁は、成立した調停の内容の実施について、当該調停に係る当事者若しくは当該学校法人紛争に係る学校法人から報告を求め、又は必要に応じて調査することができる。
2 所轄庁は、当事者が正当な理由がないのに成立した調停の内容を履行せず、又はその内容に違反したと認めるときは、当該当事者に対し、その調停の内容を履行すべきこと、又はその違反行為を是正するために必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
(解職又は辞職の勧告及び解職等)
第十条 当事者が前条第二項の規定による命令に違反した場合において、当該当事者を解職しなければ当該学校法人の正常な管理及び運営を図ることができないと認めるときは、所轄庁は、当該学校法人に対し、期間を定めて、その期間内に当該当事者を解職すべきことを勧告することができる。第八条第一項の調停案に係る当事者で同条第三項、第四項又は第五項の規定による調停が成立したものとされなかつた者を解職しなければ当該学校法人の正常な管理及び運営を図ることができないと認めるときも、同様とする。
2 前項の場合において、当該学校法人が当該勧告に係る措置を実施することができないと認めるときは、所轄庁は、当該学校法人に対する勧告に代えて、直接当該当事者に対し、期間を定めて、その期間内に辞職すべきことを勧告することができる。
3 所轄庁は、前二項の勧告をしようとするときは、あらかじめ、当該勧告に係る者に対して弁明の機会を与えるために通知するとともに、審議会の意見をきかなければならない。この場合において、当該勧告に係る者又はその代理人は、所轄庁に対して弁明することができる。
4 第一項の勧告に係る当事者が同項に規定する期間内に解職されない場合又は第二項の勧告に係る当事者が同項に規定する期間内に辞職しない場合において、当該学校法人の正常な管理及び運営を図るため他に方法がないと認めるときは、所轄庁は、当該勧告に係る者を解職し、かつ、解職した者の後任者の選任について、当該学校法人に対し、必要な指示をすることができる。この場合において、解職された者が私立学校法第三十八条第一項第一号に掲げる校長であるときは、その者は、同時に校長の職を失うものとする。
(所轄庁の資料提出要求等)
第十一条 所轄庁は、第三条の規定により調停を行なわせることについて必要があると認めるときは、学校法人紛争に係る学校法人又はその役員若しくは評議員に対し、必要な資料の提出を求め、及び当該学校法人の帳簿書類その他必要な物件を調査することができる。
(各種学校の設置のみを目的とする法人に関する準用規定)
第十二条 この法律の規定は、私立学校法第六十四条第四項の法人について準用する。
(政令への委任)
第十三条 この法律に規定するもののほか、調停委員、調停手続その他この法律の実施について必要な事項は、政令で定める。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して一月をこえない範囲内において政令で定める日から施行する。
(この法律の施行の日前に生じた学校法人紛争に対する適用)
2 この法律は、この法律の施行の日前に生じた学校法人紛争で、この法律施行の日以後引き続き継続しているものについても、適用があるものとする。
(文部省設置法の一部改正)
3 文部省設置法(昭和二十四年法律第百四十六号)の一部を次のように改正する。
目次中「国立の学校その他の機関(第十四条―第二十七条)」を「国立の学校その他の機関(第十四条―第二十七条の二)」に改める。
第五条第十七号の次に次の一号を加える。
十七の二 学校法人紛争の処理のため必要な措置を行なうこと。
第十二条第一項第三号の次に次の一号を加える。
三の二 文部大臣がその所轄庁である学校法人についての学校法人紛争の処理のため必要な措置を行なうこと。
第十三条第一項第四号中「審議会等」の下に「並びに第二十七条の二に掲げる学校法人紛争調停委員」を加える。
第十四条中「及び第二十七条」を「、第二十七条及び第二十七条の二」に改める。
第二十七条第一項の表の下欄中「私立学校法」を「私立学校法(昭和二十四年法律第二百七十号)及び学校法人紛争の調停等に関する法律(昭和三十七年法律第七十号)」に改める。
第二章第二節中第二十七条の次に次の一条を加える。
(学校法人紛争調停委員)
第二十七条の二 本省に学校法人紛争調停委員を置く。
2 学校法人紛争調停委員の権限、任命その他の事項については、学校法人紛争の調停等に関する法律の定めるところによる。
(この法律の有効期限)
4 この法律は、この法律の施行の日から起算して二年を経過した日に、その効力を失う。ただし、この法律が効力を失う日前に成立した調停及び当該調停に係るこの法律の規定によるその他の措置に関しては、当該二年を経過した日以後も、なおその効力を有する。
文部大臣 荒木万寿夫
自治大臣 安井謙
内閣総理大臣 池田勇人