角膜移植に関する法律
法令番号: 法律第64号
公布年月日: 昭和33年4月17日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

現在日本には20万人以上の視力障害者がおり、その多くは角膜移植で視力回復の可能性がある。しかし現行法制下では、死体から角膜を摘出することが死体損壊罪に抵触する可能性があり、移植が困難な状況にある。そこで、視力障害者の視力回復のため、医師が適法に死体から眼球を摘出できるようにすることを目的として本法案を提案する。なお、死体に対する国民感情を尊重し、特定の患者がいる場合のみ摘出を可能とし、礼意保持や伝染病対策などの規定も設けている。

参照した発言:
第26回国会 衆議院 社会労働委員会 第52号

審議経過

第26回国会

衆議院
(昭和32年5月16日)
参議院
(昭和32年5月18日)

第27回国会

参議院
(昭和32年11月14日)

第28回国会

衆議院
(昭和33年2月12日)
(昭和33年2月13日)
(昭和33年2月14日)
(昭和33年2月18日)
参議院
(昭和33年2月20日)
(昭和33年3月4日)
(昭和33年3月25日)
(昭和33年4月1日)
(昭和33年4月4日)
衆議院
(昭和33年4月25日)
参議院
(昭和33年4月25日)
角膜移植に関する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和三十三年四月十七日
内閣総理大臣 岸信介
法律第六十四号
角膜移植に関する法律
(この法律の趣旨)
第一条 この法律は、角膜移植術による視力障害者の視力の回復に資するため、死体から眼球を摘出すること等につき必要な事項を規定するものとする。
(眼球の摘出)
第二条 視力障害者の視力の回復を図るため角膜移植術を行う必要があるときは、医師は、死体から眼球を摘出することができる。
2 医師は、前項の規定により死体から眼球を摘出しようとするときは、あらかじめ、その遺族の承諾を受けなければならない。ただし、遺族がないときは、この限りでない。
3 前項の承諾は、書面をもつてするものとする。
(摘出してはならない場合)
第三条 医師は、変死体若しくは変死の疑のある死体又は角膜移植術を受ける者に疾病を伝染させ、その他危害を与えるおそれのある疾病にかかつていた者の死体から、眼球を摘出してはならない。
(礼意の保持)
第四条 第二条の規定により死体から眼球を摘出するに当つては、礼意を失わないように特に注意しなければならない。
(省令への委任)
第五条 この法律に定めるもののほか、第二条の規定による眼球の摘出及び同条の規定により摘出した眼球の取扱に関し必要な事項は、厚生省令で定める。
(使用しなかつた部分の眼球の処理)
第六条 病院又は診療所の管理者は、第二条の規定により死体から摘出した眼球であつて、角膜移植術に使用しなかつた部分の眼球を、厚生省令の定めるところにより処理しなければならない。
(眼球の提供のあつせんの許可)
第七条 業として死体の眼球の提供のあつせんをしようとするときは、厚生省令の定めるところにより、厚生大臣の許可を受けなければならない。
(罰則)
第八条 第六条の規定に違反した者は、五千円以下の罰金に処する。
第九条 第七条の規定に違反した者は、六箇月以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。
2 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して、前項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、同項の罰金刑を科する。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して三箇月をこえない範囲内で政令で定める日から施行する。
(厚生省設置法の一部改正)
2 厚生省設置法(昭和二十四年法律第百五十一号)の一部を次のように改正する。
第五条第四十二号の次に次の一号を加える。
四十二の二 角膜移植に関する法律(昭和三十三年法律第六十四号)の規定に基き、業として行う眼球の提供のあつせんの許可を行うこと。
第十条第二号の次に次の一号を加える。
二の二 角膜移植に関する法律を施行すること。
厚生大臣 堀木鎌三
内閣総理大臣 岸信介