繭糸価格安定法の一部を改正する法律
法令番号: 法律第174号
公布年月日: 昭和30年8月25日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

繭糸価格安定法の施行後、政府の手持ち生糸がない状態で開始したため、生糸価格が最高価格を大幅に超過する事態が発生した。このため、輸出生糸の価格安定と輸出増進のため、政府が輸出適格生糸を保有できる制度を新設する必要がある。また、現行法では繭価維持に関する規定が抽象的で不明確なため、養蚕農家が安心して生産できるよう、繭価維持についての具体的な規定を整備する必要がある。これらの課題に対応するため、本法の改正を行うものである。

参照した発言:
第22回国会 参議院 農林水産委員会 第11号

審議経過

第22回国会

参議院
(昭和30年5月26日)
(昭和30年6月2日)
衆議院
(昭和30年6月10日)
(昭和30年7月7日)
(昭和30年7月8日)
(昭和30年7月16日)
(昭和30年7月19日)
参議院
(昭和30年7月20日)
(昭和30年7月22日)
(昭和30年7月25日)
(昭和30年7月27日)
(昭和30年7月30日)
衆議院
(昭和30年7月25日)
繭糸価格安定法の一部を改正する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和三十年八月二十五日
内閣総理大臣 鳩山一郎
法律第百七十四号
繭糸価格安定法の一部を改正する法律
繭糸価格安定法(昭和二十六年法律第三百十号)の一部を次のように改正する。
第九条の次に次の二条を加える。
(輸出適格生糸の特別買入)
第九条の二 政府は、第二条の規定により売り渡す生糸として輸出適格生糸(輸出に適する種類、繊度及び品位の生糸で省令で定めるものをいう。以下同じ。)を保有する必要があるときは、農林大臣の指定する者を相手方として、その者が、農林大臣の定める条件に従い買い入れて保管する輸出適格生糸のうち、その買入後政令で定める期間を経過してなお保管しているものを買い入れる旨の契約を締結することができる。
2 前項の規定により契約を締結する場合における政府の買入の価格は、政令で定めるところにより、海外における生糸及び主要繊維の市価並びに物価その他の経済事情を参酌して、農林大臣が定める。
3 政府は、第一項の契約に基く買入の結果保有する輸出適格生糸の数量(第二条の規定による買入又は第十二条の二第一項の規定による加工若しくは交換の結果保有している輸出適格生糸がある場合には、その数量を含む。)の合計が生糸の輸出を確保するために必要と認められる一定数量をこえることとならず、かつ、その輸出適格生糸の数量の合計に他の政府保有生糸の数量を加えた総数量が農林大臣の定める生糸の価格の異常な騰貴を防止するために必要な数量をこえることとならないように、同項の契約を締結するものとする。
4 前項の一定数量は、政令で定める。
5 第六条の規定は、第二項の場合に準用する。
(必要数量をこえる数量の生糸の売渡)
第九条の三 政府は、第二条の規定による買入又は第十二条の二第一項の規定による加工若しくは交換によつて保有する生糸の数量が、前条第三項の農林大臣の定める生糸の価格の異常な騰貴を防止するために必要な数量をこえるときは、そのこえる部分に相当する数量の生糸を売り渡すことができる。
2 前項の規定による売渡は、生糸の価格が、政令で定めるところにより、繭の生産費の額に生糸の製造及び販売に要する費用の額を加えて得た額以上である場合に限り、することができる。
3 第一項の規定による売渡は、生糸の時価に悪影響を及ぼさない方法によつてしなければならない。
第十一条を次のように改める。
(繭価維持のための補充措置)
第十一条 政府は、第二条の規定による生糸の買入によつては、繭の価格が、政令で定めるところにより、その生産費の額を基準とし、生糸の最低価格及び物価その他の経済事情を参酌して農林大臣の定める額を下ることを防止することが困難であると認める場合において、農林大臣の指定する農業協同組合連合会が、省令で定める手続に従い農林大臣の承認を受け、保管及び売渡につき農林大臣の定める条件を遵守し、繭(くず繭その他省令で定める繭を除く。以下この条において同じ。)の保管をしたときは、予算の範囲内において、政令で定めるところにより、その保管に要する経費につき、補助金を交付することができる。
2 政府は、前項に規定する農業協同組合連合会が同項の規定により保管する繭を同項の農林大臣の定める条件を遵守して売り渡すとしても、政令で定める期日までにはその全部を売り渡すことが困難であると認めるときは、その農業協同組合連合会を相手方として、その者が引き続きその条件を遵守する場合には、その繭のうち政令で定める期日を経過してなお保管しているものを買い入れる旨の契約を締結することができる。
3 前項の規定により契約を締結する場合における政府の買入の価格は、政令で定めるところにより、第一項の規定により農林大臣の定ある額に乾繭とするために要する費用等を加えて得た額を基準として、農林大臣が定める。
第十二条の次に次の二条を加える。
(政府保有繭の売渡等)
第十二条の二 政府は、その保有する繭を売り渡し、若しくは加工し、又は生糸と交換することができる。
2 前項の規定による売渡及び交換は、繭の時価に悪影響を及ぼさない方法によつてしなければならない。
3 政府は、第一項の規定による交換をする場合において、その価格が等しくないときは、その差額を金銭で補足し、又は補足させなければならない。
(買入又は補助の契約の限度額)
第十二条の三 政府が、第二条若しくは第九条の二の規定による生糸の買入の契約又は第十一条第一項の規定による補助若しくは同条第二項の規定による繭の買入の契約を締結する場合における当該契約に係る買入又は補助の金額の限度は、当該契約を締結する時における糸価安定特別会計の当該年度の収納済歳入額(証券の発行及び借入金によるものを除く。)及び糸価安定特別会計法(昭和二十六年法律第三百十一号)第十一条に規定する額の合計額から左の各号に掲げる額の合計額を控除した額とする。
一 当該契約をする時における糸価安定特別会計の当該年度の支出済歳出額
二 第二条の規定による生糸の買入契約金額(当該契約をする時までに支払われた金額を除く。)
三 第九条の二の規定による生糸の買入契約金額(当該契約をする時までに支払われた金額を除く。)
四 第十一条第一項の規定による補助契約金額(当該契約をする時までに支払われた金額を除く。)
五 第十一条第二項の規定による繭の買入契約金額(当該契約をする時までに支払われた金額を除く。)
六 糸価安定特別会計における政令で定める経費の額
附 則
1 この法律は、公布の日から施行する。
2 農林省設置法(昭和二十四年法律第百五十三号)の一部を次のように改正する。
第四条第四十二号の二中「生糸」の下に「若しくは繭」を加え、「又は加工すること。」を「若しくは加工し、又は繭を生糸と交換すること。」に改める。
第十二条第四号の二中「生糸」の下に「及び繭」を加える。
大蔵大臣 一万田尚登
農林大臣臨時代理 国務大臣 高碕達之助
内閣総理大臣 鳩山一郎