労働者災害補償保険法の一部を改正する法律
法令番号: 法律第131号
公布年月日: 昭和30年8月5日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

労災保険法改正の主な目的は、漁業への強制適用範囲の拡大と土木建築事業へのメリット制度適用である。特に5トン以上の漁船による水産動植物採捕事業を強制適用事業に加える点について、従来は任意適用であった30トン未満の漁船事業は、災害リスクが高く大規模災害につながりやすいにもかかわらず、事業の特殊性から保険技術上の制約があった。しかし、漁船の活動範囲拡大に伴う災害リスクの増大や、近年の台風による大規模災害の発生を契機に関係者から強い要望があり、漁業労働者の保護と事業主の負担軽減を図るため、この改正を行うこととした。

参照した発言:
第22回国会 衆議院 社会労働委員会 第16号

審議経過

第22回国会

衆議院
(昭和30年5月31日)
参議院
(昭和30年6月2日)
衆議院
(昭和30年7月7日)
(昭和30年7月8日)
(昭和30年7月12日)
(昭和30年7月13日)
(昭和30年7月14日)
参議院
(昭和30年7月26日)
(昭和30年7月27日)
(昭和30年7月29日)
(昭和30年7月30日)
衆議院
(昭和30年7月25日)
労働者災害補償保険法の一部を改正する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和三十年八月五日
内閣総理大臣 鳩山一郎
法律第百三十一号
労働者災害補償保険法の一部を改正する法律
労働者災害補償保険法(昭和二十二年法律第五十号)の一部を次のように改正する。
第三条第一項中第三号を第四号とし、第二号の次に次の一号を加える。
三 総トン数五トン以上の漁船による水産動植物の採捕の事業(河川、湖沼その他災害の発生のおそれが少いと認められる労働大臣の指定する水面において主として操業する事業を除く。)
第八条に次の一項を加える。
元請負人が下請負人との間の書面による契約で、下請負人に第二十四条の保険料の納付を引き受けさせることとした場合において、元請負人の申請により、政府がこれを承認したときは、前項の規定にかかわらず、その下請負人の請負に係る事業については、その下請負人をこの保険の適用事業の事業主とする。
第十条に次の一項を加える。
水産動植物の採捕の事業を行う漁船の存否が一箇月間分らないときは、前項の規定の適用については、当該漁船による水産動植物の採捕の事業は、その期間が満了する日に廃止されたものと推定する。
第十一条中ただし書を削り、同条に次の一項を加える。
前項の事業主が同項の規定による政府の承諾を受けるには、保険関係を消滅させることについてその事業に使用される労働者の過半数の同意を得ること及び第七条の規定によつて保険関係の成立している事業については、その事業が保険関係の成立後一年を経過していることを要する。
第十五条の次に次の一条を加える。
第十五条の二 船舶が沈没し、転覆し、滅失し、若しくは行方不明となつた際現にその船舶に乗り組んでいた労働者若しくは船舶に乗り組み、その船舶の航行中行方不明となつた労働者の生死が三箇月間分らない場合又はこれらの労働者の死亡が三箇月以内に明らかとなり、かつ、その死亡の時期が分らない場合は、この法律の遺族補償費及び葬祭料の支給に関する規定の適用については、その船舶が沈没し、転覆し、滅失し、若しくは行方不明となつた日又は労働者が行方不明となつた日に、当該労働者は、死亡したものと推定する。
前項の規定は、航空機が墜落し、滅失し、若しくは行方不明となつた際現にその航空機に乗り組んでいた労働者若しくは航空機に乗り組み、その航空機の航行中行方不明となつた労働者の生死が三箇月間分らない場合又はこれらの労働者の死亡が三箇月以内に明らかとなり、かつ、その死亡の時期が分らない場合に準用する。
第二十七条中「保険金と保険料」を「保険給付の額と保険料の額」に改める。
第二十八条第一項中「毎年三月末日まで」を「その保険年度の初日から十五日以内」に、「四月一日(保険年度の中途に保険関係が成立したものについては、保険関係成立の日)から三十日以内」を「その保険年度の初日から四十五日以内(保険年度の中途に保険関係が成立したものについては、保険関係成立の日から三十五日以内)」に改め、同条第二項中「十四日以内」を「二十日以内」に改め、同条第三項及び第四項を次のように改める。
政府は、保険加入者が前二項の規定による報告をしないとき、又はその報告に誤があると認めるときは、その調査により概算保険料の額を算定し、これを保険加入者に通知する。
前項の通知を受けた保険加入者は、政府が算定した額又はその額と納付した概算保険料の額との差額を、通知を受けた日から十五日以内に納付しなければならない。
第二十九条の二に次の一項を加える。
政府は、前項の概算保険料を徴収する場合には、命令で定めるところにより、保険加入者に対して、期限を指定して、その納付すべき概算保険料の額を通知しなければならない。
第二十九条の二の次に次の一条を加える。
第二十九条の三 政府は、命令で定めるところにより、保険加入者が前三条の規定により納付すべき概算保険料を、その申請に基き、延納させることができる。
第三十条を次のように改める。
第三十条 保険加入者は、その保険年度の末日又は保険関係が消滅した日までに使用したすべての労働者に支払つた賃金総額に保険料率を乗じて算定した確定保険料の額その他命令で定める事項を、次の保険年度の初日又は保険関係が消滅した日から十五日以内に報告しなければならない。
政府は、保険加入者が前項の規定による報告をしないとき、又はその報告に誤があると認めるときは、その調査により確定保険料の額を算定し、これを保険加入者に通知する。
保険加入者が第二十八条から第二十九条の二までの規定により納付した概算保険料の額が、第一項の規定による確定保険料の額(前項の規定により政府が確定保険料の額を算定した場合には、その算定した額)をこえる場合には、政府は、命令で定めるところにより、そのこえる額を次の保険年度の概算保険料若しくは未納の保険料に充当し、又は還付する。
保険加入者は、第一項の規定により報告をした場合においては、納付した概算保険料の額が同項の規定による確定保険料の額に足りないときはその不足額を、納付した概算保険料がないときは同項の規定による確定保険料を、次の保険年度の初日又は保険関係が消滅した日から三十日以内に納付しなければならない。
保険加入者は、第二項の規定による通知を受けた場合においては、納付した保険料の額が政府が算定した確定保険料の額に足りないときはその不足額を、納付した保険料がないときは政府が算定した確定保険料を、その通知を受けた日から十五日以内に納付しなければならない。
第三十条の二を次のように改める。
第三十条の二 事業の期間が予定される事業であつて第三条第一項第二号イに該当するもののうち、前条第一項の規定による確定保険料の額(同条第二項の規定により政府が確定保険料の額を算定した場合には、その算定した額。この条において同じ。)が二十万円以上のものが左の各号の一に該当する場合には、第二十五条第一項の規定にかかわらず、主務大臣は、その事業についての前条第一項の規定による確定保険料の額を百分の二十の範囲内において命令で定める率だけ引き上げ、又は引き下げて得た額を、その事業について当該事業主が納付すべき保険料の額として決定する。
一 事業が終了した日から三箇月を経過した日前にした保険給付の額と前条第一項の規定による確定保険料の額との割合が百分の八十五をこえ、又は百分の七十五以下であつて、その割合がその日以後において変動せず、又は命令で定める範囲をこえて変動しないと認められるとき。
二 前号に該当する場合を除き、事業が終了した日から九箇月を経過した日前にした保険給付の額と前条第一項の規定による確定保険料の額との割合が百分の八十五をこえ、又は百分の七十五以下であるとき。
政府は、前項の規定により保険料の額を決定した場合には、その額と前条第一項の規定による確定保険料の額との差額を徴収し、又は還付する。
第二十九条の二第二項の規定は、前項の規定により保険料の差額を徴収する場合に準用する。
第三十条の二の次に次の一条を加える。
第三十条の三 政府は、保険加入者が第三十条第五項の規定により確定保険料又はその不足額を納付しなければならない場合には、その納付すべき額に百分の十を乗じて得た額を追徴金として徴収する。但し、保険加入者が天災その他やむを得ない事由により、同項の規定による確定保険料又はその不足額を納付しなければならなくなつた場合は、この限りでない。
第二十九条の二第二項の規定は、前項の追徴金を徴収する場合に準用する。
第三十二条第一項ただし書を次のように改める。
但し、保険料の額が千円未満であるときは、延滞金は、徴収しない。
第三十二条第二項中「保険料額」を「保険料の額」に改め、同項の次に次の三項を加える。
延滞金の計算において、前二項の保険料の額に千円未満の端数があるときは、その端数は、切り捨てる。
前三項の規定によつて計算した延滞金の額に十円未満の端数があるときは、その端数は、切り捨てる。
延滞金は、左の各号の一に該当する場合には、徴収しない。但し、第四号の場合には、その執行を停止し、又は猶予した期間に対応する部分の金額に限る。
一 督促状の指定期限までに徴収金を完納したとき。
二 納付義務者の住所又は居所が不明なため、公示送達の方法によつて督促したとき。
三 延滞金の額が十円未満であるとき。
四 保険料について滞納処分の執行を停止し、又は猶予したとき。
五 保険料を納付しないことについてやむを得ない事由があると認められるとき。
第三十三条中「市町村の徴収金」を「国税及び地方税」に改める。
第三十五条の二中「第二十八条第四項又は第三十条第三項の規定」を「第二十八条第三項又は第三十条第二項の規定」に改める。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、昭和三十年九月一日から施行する。
(下請負人の事業についての経過措置)
2 この法律の施行の際現に保険関係が成立している事業については、改正後の労働者災害補償保険法(以下「新法」という。)第八条第二項の規定は、適用しない。
(強制適用事業についての経過措置)
3 新法第三条第一項第三号に該当する事業であつて、この法律の施行の際改正前の労働者災害補償保険法(以下「旧法」という。)の規定による保険関係が成立していないもののうち、この法律の施行の際現に当該事業に係る漁船の存否が分らないものについては、新法第三条の規定にかかわらず、なお従前の例による。ただし、この法律の施行後において、その漁船の存否が明らかとなつたものについては、その明らかとなつた日以後は、新法第三条の規定による。
4 この法律の施行の際旧法の規定により保険関係が成立している水産動植物の採捕の事業であつて漁船によるもののうち、この法律の施行の際現にその漁船の存否が分らないものについては、次の各号に掲げる日に、その事業は、廃止されたものと推定する。
一 この法律の施行前その漁船の存否が分らなくなつた日から一箇月以上を経過しているものについては、この法律の施行の日の前日
二 この法律の施行前その漁船の存否が分らなくなつた日から一箇月を経過していないものについては、その漁船の存否が分らなくなつた日から一箇月の期間が満了する日
(死亡の推定についての経過措置)
5 この法律の施行前旧法の規定により保険関係が成立していた事業に使用されていた労働者であつて、この法律の施行前その乗り組む船舶若しくは航空機が沈没し、転覆し、墜落し、滅失し、若しくは行方不明となつたことにより、又は船舶若しくは航空機に乗り組み、その航行中行方不明となつたことにより、この法律の施行の際現にその生死が分らないものについても、新法第十五条の二の規定は、適用する。
(保険料の報告及び納付についての経過措置)
6 新法第三条第一項第三号に該当する事業であつて、この法律の施行によつて新たに新法第六条の規定により保険関係が成立したものの事業主についての新法第二十八条第一項の規定の適用については、同項中「五日以内」とあるのは「十五日以内」と、「三十五日以内」とあるのは、「四十五日以内」とする。
7 この法律の施行前に保険関係が成立した事業に係る概算保険料であつて、この法律の施行の際旧法第二十八条第一項又は第二項の規定による納付の期限が到来していないものの納付の期限については、新法第二十八条第一項又は第二項の規定を適用する。
8 この法律の施行前に保険関係が消滅した事業に係る確定保険料であつて、この法律の施行の際旧法第三十条第一項の規定による報告の期限が到来していないものの報告の期限については、新法第三十条第一項の規定を適用する。
9 この法律の施行の際現に保険関係が成立している事業については、新法第三十条の二の規定は、適用しない。ただし、事業の期間が昭和三十一年九月一日以後にわたると予定されているものについては、この法律の施行の日に事業が開始されたものとみなして適用する。
労働大臣 西田隆男
内閣総理大臣 鳩山一郎