昭和三十年四月及び五月の凍霜害、水害等の被害農家に対する資金の融通に関する特別措置法をここに公布する。
御名御璽
昭和三十年七月一日
内閣総理大臣 鳩山一郎
法律第四十五号
昭和三十年四月及び五月の凍霜害、水害等の被害農家に対する資金の融通に関する特別措置法
(目的)
第一条 この法律は、昭和三十年四月及び五月の凍霜害若しくは水害又は同年五月のひよう害(以下「凍霜害等」という。)によつて損失を受けた農家に対する資金の融通を円滑にする措置を講じて、その経営の安定に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律で「被害農家」とは、農業をおもな業務とする者であつて、凍霜害等による農作物又は春蚕繭の減収量がその農作物又は春蚕繭の平年の収穫量の百分の三十以上であり、かつ、凍霜害等による農作物及び春蚕繭の減収による損失額がその者の農業による平年の総収入額の百分の十以上である旨又は水害によるその耕作上の損失額がその者の農業による平年の総収入額の百分の十以上である旨の市町村長(全部事務組合又は役場事務組合のある地では、組合管理者。以下同じ。)の認定を受けたものをいう。
2 この法律で「営農資金」とは、農業協同組合又は金融機関が被害農家に対し、種苗、肥料、飼料、薬剤等の購入資金その他農業経営に必要な資金として昭和三十年九月三十日までに貸し付ける資金で次の各号に該当するものをいう。
一 市町村長が認定する損失額を基準として政令で定めるところにより算出される額又は五万円のどちらか低い額の範囲内のものであること。
二 償還期限が二年(政令で定める場合は三年)以内のものであること。
三 利率が政令で定めるところにより年六分五厘以内のものであること。
(国庫補助)
第三条 政府は、都道府県に対し、予算の範囲内で、次に掲げる経費の一部を補助する。
一 都道府県が、農業協同組合その他の金融機関との契約により、当該金融機関に対しその貸し付けた営農資金(農業協同組合が農業協同組合連合会又は農林中央金庫から借り入れた資金をもつて貸し付けたものを除く。第三号、第五号及び第七号において同じ。)につき利子補給を行う場合に、その利子補給に要する経費
二 都道府県が、農業協同組合連合会又は農林中央金庫との契約により、当該農業協同組合連合会又は農林中央金庫が営農資金を貸し付けようとする農業協同組合に対し当該資金に充てるために貸し付けた資金につき、当該農業協同組合連合会又は農林中央金庫に対し利子補給を行う場合に、その利子補給に要する経費
三 市町村が、農業協同組合その他の金融機関との契約により、当該金融機関に対し、その貸し付けた営農資金につき利子補給を行うのに要する経費の全部又は一部を都道府県が補助する場合に、その補助に要する経費
四 市町村が、農業協同組合連合会又は農林中央金庫との契約により、当該農業協同組合連合会又は農林中央金庫が、営農資金を貸し付けようとする農業協同組合に対し当該資金に充てるために貸し付けた資金につき、当該農業協同組合連合会又は農林中央金庫に対し利子補給を行うのに要する経費の全部又は一部を都道府県が補助する場合に、その補助に要する経費
五 市町村が、農業協同組合その他の金融機関との契約により、当該金融機関が営農資金を貸し付けたことによつて受けた損失をこれに対し補償するのに要する経費の四分の三以内を都道府県が補助する場合に、その補助に要する経費
六 市町村が、農業協同組合連合会又は農林中央金庫との契約により、当該農業協同組合連合会又は農林中央金庫が、営農資金を貸し付けようとする農業協同組合に対し当該資金に充てるための資金を貸し付けたことによつて受けた損失を、当該農業協同組合連合会又は農林中央金庫に対し補償するのに要する経費の四分の三以内を都道府県が補助する場合に、その補助に要する経費
七 都道府県が、農業協同組合その他の金融機関との契約により当該金融機関が営農資金を貸し付けたことによつて受けた損失を、農林大臣の承認を得て、当該金融機関に対し補償する場合に、その損失補償に要する経費
八 都道府県が、農業協同組合連合会又は農林中央金庫との契約により、当該農業協同組合連合会又は農林中央金庫が、営農資金を貸し付けようとする農業協同組合に対し当該資金に充てるための資金を貸し付けたことによつて受けた損失を、農林大臣の承認を得て、当該農業協同組合連合会又は農林中央金庫に対し補償する場合に、その損失補償に要する経費
2 前項第五号から第八号までの契約には、次の名号の事項を含まなければならない。
一 当該契約の当事者である農業協同組合、農業協同組合連合会及び農林中央金庫その他の金融機関(以下「融資機関」という。)は、当該契約により損失補償を受けた後も、善良な管理者の注意をもつて当該融資に係る債権の回収に努めなければならないこと。
二 融資機関は、当該契約により損失補償を受けた後に当該融資に係る債権の回収によつて得た金額のうちから、債権行使のために必要とした費用を控除し、残額があるときは、これで当該融資について損失補償を受けない損失をうめ、なお残額があるときは、当該契約により都道府県又は市町村から受けた損失補償の金額に達するまでの金額を当該都道府県又は当該市町村に納付しなければならないこと。
3 第一項第五号から第八号までの損失は、融資元本の償還期限の到来後三月を経過してもなお元本又は利子(政令で定める遅延利子を含む。)の全部又は一部が回収されなかつた場合のその回収されなかつた金額とする。
第四条 前条第一項の規定により政府が都道府県に対し補助する場合のその補助に係る同項各号の営農資金の総額は、四億五千万円を限度とする。
2 前条第一項の規定により政府が都道府県に対して交付する補助金は、同項第一号から第四号までの経費については、当該利子補給額の二分の一に相当する額又は当該利子補給の対象となつた貸付金の総額につき年二分五厘(政令で定める場合は年三分)の割合で計算した額のどちらか低い額の範囲内とし、同項第五号から第八号までの経費については、当該損失補償額の二分の一に相当する額又は当該損失補償の対象となつた貸付金の総額の百分の二十に相当する額のどちらか低い額の範囲内とする。
(政府への納付金)
第五条 第三条第一項の規定により補助金の交付を受けた都道府県は、融資機関から同条第二項第二号の契約事項による納付金を受けたときは、その一部を政府から補助を受けた割合に応じて政府に納付しなければならない。
2 第三条第一項の規定により補助金の交付を受けた都道府県は、その都道府県から補助金の交付を受けた市町村が融資機関から同条第二項第二号の契約事項によつて納付金を受けたときは、その全部又は一部をその市町村が都道府県から補助を受けた割合に応じてその市町村から納付させ、その納付金の一部を政府から補助を受けた割合に応じて政府に納付しなければならない。
(補助金の打切又は返還)
第六条 政府は、都道府県若しくはその補助を受けた市町村がこの法律若しくはこの法律に基く命令に違反したとき、又は都道府県若しくは市町村と第三条第一項第五号から第八号までの契約を結んだ融資機関が同条第二項各号の契約事項に違反したときは、その都道府県に対し交付すべき補助金の全部若しくは一部を交付せず、又は既に交付した補助金の全部若しくは一部の返還を命ずることができる。
附 則
1 この法律は、公布の日から施行する。
2 昭和二十八年四月及び五月における凍霜害の被害農家に対する資金の融通に関する特別措置法(昭和二十八年法律第六十九号)の一部を次のように改正する。
第二条に次の一項を加える。
4 被害農家で、昭和三十年四月及び五月の凍霜害、水害等の被害農家に対する資金の融通に関する特別措置法(昭和三十年法律第四十五号)第二条第一項の被害農家にも該当することとなつたものが貸付を受けている営農資金については、昭和三十年九月三十日までに、その償還期限を二年をこえ三年以内(第二項の政令で定める場合は三年をこえ四年以内)とする旨の貸付条件の変更があつた場合にも、なおこれを営農資金とみなす。
3 昭和二十八年台風第二号による被害農家及び被害漁家に対する資金の融通に関する特別措置法(昭和二十八年法律第百八十七号)の一部を次のように改正する。
第二条に次の一項を加える。
5 被害農家で、昭和三十年四月及び五月の凍霜害、水害等の被害農家に対する資金の融通に関する特別措置法(昭和三十年法律第四十五号)第二条第一項の被害農家にも該当することとなつたものが貸付を受けている経営資金については、昭和三十年九月三十日までに、その償還期限を三年をこえ四年以内とする旨の貸付条件の変更があつた場合にも、なおこれを経営資金とみなす。
4 昭和二十九年四月、五月及び六月における凍霜害等の被害農家に対する資金の融通に関する特別措置法(昭和二十九年法律第百六十七号)の一部を次のように改正する。
第二条に次の一項を加える。
3 被害農家で、昭和三十年四月及び五月の凍霜害、水害等の被害農家に対する資金の融通に関する特別措置法(昭和三十年法律第四十五号)第二条第一項の被害農家にも該当することとなつたものが貸付を受けている営農資金については、昭和三十年九月三十日までに、その償還期限を二年をこえ三年以内(前項の政令で定める場合は三年をこえ四年以内)とする旨の貸付条件の変更があつた場合にも、なおこれを営農資金とみなす。
大蔵大臣 一万田尚登
農林大臣 河野一郎
内閣総理大臣 鳩山一郎