航空機製造法の一部を改正する法律
法令番号: 法律第161号
公布年月日: 昭和29年6月3日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

航空機製造法施行から約2年が経過し、航空機工業は修理事業から再開され生産需要も見られるようになった。しかし、新規企業の設立が多く企図される中、需要が少ない現状での企業の濫立は、航空機工業の健全な発達を阻害し、過剰投資により国民経済の運行を妨げる恐れがある。現行法は検査に主眼を置いた技術的立法であり、この事態に対処するため、事業法としての諸規定を整備する必要が生じたことから、本法律案を提案するものである。

参照した発言:
第19回国会 衆議院 通商産業委員会 第31号

審議経過

第19回国会

衆議院
(昭和29年4月6日)
参議院
(昭和29年4月6日)
(昭和29年4月8日)
衆議院
(昭和29年4月22日)
参議院
(昭和29年5月7日)
衆議院
(昭和29年5月18日)
参議院
(昭和29年5月18日)
衆議院
(昭和29年5月19日)
(昭和29年5月20日)
(昭和29年5月22日)
(昭和29年5月24日)
(昭和29年5月25日)
(昭和29年5月25日)
参議院
(昭和29年5月25日)
(昭和29年5月27日)
(昭和29年5月28日)
衆議院
(昭和29年6月15日)
参議院
(昭和29年6月15日)
航空機製造法の一部を改正する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和二十九年六月三日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第百六十一号
航空機製造法の一部を改正する法律
航空機製造法(昭和二十七年法律第二百三十七号)の一部を次のように改正する。
題名を次のように改める。
航空機製造事業法
目次中「製造等の事業(第三条―第五条)」を「事業(第二条の二―第五条)」に、「第十七条」を「第十六条の二」に、「第二十二条」を「第二十一条の二」に改める。
第一条を次のように改める。
(目的)
第一条 この法律は、航空機及び航空機用機器の製造及び修理の事業の事業活動を調整することによつて、国民経済の健全な運行に寄与するとともに、航空機及び航空機用機器の製造及び修理の方法を規律することによつて、その生産技術の向上を図ることを目的とする。
第二条第一項を次のように改める。
この法律において「航空機」とは、人が乗つて航空の用に供することができる飛行機、回転翼航空機、滑空機及び飛行船その他政令で定める航空の用に供することができる機械器具をいう。
第二条に次の一項を加える。
3 この法律において「特定機器」とは、左に掲げる物をいう。
一 前項第一号及び第二号に掲げる航空機用機器
二 前項第三号に掲げる航空機用機器であつて、政令で定めるもの
「第二章 製造等の事業」を「第二章 事業」に改める。
第二章中第三条の前に次の十二条を加える。
(事業の許可)
第二条の二 航空機(通商産業省令で定める滑空機を除く。第十七条第一項を除き、以下同じ。)又は特定機器の製造又は修理(改造を含み、通商産業省令で定める軽微な修理並びに航空運送事業者又は航空機使用事業者の自家修理及びこれに準ずるものを除く。以下同じ。)の事業を行おうとする者は、通商産業省令で定める航空機又は特定機器の製造又は修理の事業の区分に従い、工場ごとに、通商産業大臣の許可を受けなければならない。
(許可の申請)
第二条の三 前条の許可を受けようとする者は、左に掲げる事項を記載した申請書を通商産業大臣に提出しなければならない。
一 氏名又は名称及び住所並びに法人にあつてはその代表者の氏名及び住所
二 事業の区分
三 前号の事業の用に供する特定設備(航空機又は特定機器の製造又は修理のための設備であつて、前条の通商産業省令で定める区分に応じて通商産業省令で定めるものをいう。以下同じ。)の種類及び能力別の数
四 工場の所在地
2 前項の申請書には、事業計画書、事業収支見積書その他通商産業省令で定める書類を添附しなければならない。
(許可の欠格事由)
第二条の四 左の各号の一に該当する者は、第二条の二の許可を受けることができない。
一 この法律の規定に違反して一年以上の懲役の刑に処せられ、その執行を終り、又は執行を受けることがなくなつた日から二年を経過しない者
二 第二条の十三第二項の規定により第二条の二の許可を取り消され、取消の日から二年を経過しない者
三 法人であつて、その業務を行う役員のうちに前二号の一に該当する者があるもの
(許可の基準等)
第二条の五 通商産業大臣は、第二条の二の許可の申請が左の各号に適合していると認めるときでなければ、許可をしてはならない。
一 当該事業の用に供する特定設備が通商産業省令で定める生産技術上の基準に適合すること。
二 その許可をすることによつて当該航空機又は特定機器の製造又は修理の能力が著しく過大にならないこと。
三 その事業を適確に遂行するに足りる経理的基礎及び技術的能力があること。
2 通商産業大臣は、武器を装備し、又はとう載する構造を有する航空機の製造又は修理の事業について第二条の二の許可をするときは、あらかじめ、防衛庁長官の意見をきかなければならない。
(許可証)
第二条の六 通商産業大臣は、第二条の二の許可をしたときは、許可証を交付する。
2 許可証には、左に掲げる事項を記載しなければならない。
一 許可の年月日及び許可の番号
二 氏名又は名称及び住所
三 事業の区分
四 前号の事業の用に供する特定設備の種類及び能力別の数
五 工場の所在地
(承継)
第二条の七 第二条の二の許可を受けた者(以下「許可事業者」という。)について、相続又は合併があつたときは、相続人又は合併後存続する法人若しくは合併により設立した法人は、許可事業者の地位を承継する。
2 前項の規定により許可事業者の地位を承継した者は、遅滞なく、その事実を証する書面を添えて、その旨を通商産業大臣に届け出なければならない。
(事業の区分の変更)
第二条の八 許可事業者は、第二条の六第二項第三号の事項を変更しようとするときは、通商産業大臣の許可を受けなければならない。但し、その変更が二以上の事業の区分に係る許可事業者の一部の区分の事業の廃止であるときは、この限りでない。
2 第二条の五の規定は、前項の許可に準用する。
(許可事業者の設備)
第二条の九 許可事業者は、当該事業の用に供する特定設備を第二条の五第一項第一号の生産技術上の基準に適合するように維持しなければならない。
2 通商産業大臣は、当該事業の用に供する特定設備が第二条の五第一項第一号の生産技術上の基準に適合していないと認めるときは、許可事業者に対し、その生産技術上の基準に適合するように当該特定設備を修理し、又は改造すべきことを命ずることができる。
第二条の十 許可事業者は、当該事業の用に供する特定設備を新設し、増設し、又は改造しようとするときは、通商産業大臣の許可を受けなければならない。
2 第二条の五の規定は、前項の許可に準用する。
(工場の移転)
第二条の十一 許可事業者は、第二条の六第二項第五号の事項を変更しようとするときは、通商産業大臣の許可を受けなければならない。
2 第二条の五第一項第一号の規定は、前項の許可に準用する。
(許可の失効)
第二条の十二 許可事業者がその事業を廃止したときは、許可は、その効力を失う。
(許可の取消等)
第二条の十三 通商産業大臣は、許可事業者が正当な事由がないのに、一年以内にその事業を開始せず、又は一年以上引き続きその事業を休止したときは、第二条の二の許可を取り消すことができる。
2 通商産業大臣は、許可事業者が左の各号の一に該当するときは、第二条の二の許可を取り消し、又は一年以内の期間を定めてその事業の停止を命ずることができる。
一 第二条の四第一号又は第三号に該当するに至つたとき。
二 第二条の八第一項、第二条の十第一項又は第二条の十一第一項の規定により許可を受けなければならない事項を許可を受けないでしたとき。
三 第十六条の二第一項の条件に違反したとき。
四 不正な手段により第二条の二の許可を受けたとき。
第三条を次のように改める。
(事業の届出)
第三条 第二条の二の通商産業省令で定める滑空機又は特定機器以外の航空機用機器の製造又は修理の事業を行おうとする者は、工場ごとに、左に掲げる事項を記載した届出書を通商産業大臣に提出しなければならない。
一 氏名又は名称及び住所
二 事業の種類
三 工場の所在地
2 前項の届出書には、事業計画書その他通商産業省令で定める書類を添付しなければならない。
第三条の次に次の一条を加える。
(届出事業者の設備)
第三条の二 前条第一項の届出書を提出した者(以下「届出事業者」という。)であつて、特定機器以外の航空機用機器の製造又は修理の事業を行うものは、特定機器以外の航空機用機器の製造又は修理のための設備で、その製造又は修理の事業の種類ごとに通商産業省令で定めるものであつて、当該事業の用に供するものを通商産業省令で定める生産技術上の基準に適合するように維持しなければならない。
2 第二条の九第二項の規定は、前項の設備に準用する。
第四条及び第五条を次のように改める。
(氏名等の変更)
第四条 許可事業者は、第二条の六第二項第二号の事項に変更があつたときは、遅滞なく、その旨を通商産業大臣に届け出なければならない。
2 届出事業者は、第三条第一項の届出書に記載した事項に変更があつたときは、遅滞なく、その旨を通商産業大臣に届け出なければならない。
(事業の廃止の届出)
第五条 許可事業者又は届出事業者は、その事業を廃止したときは、遅滞なく、その旨を通商産業大臣に届け出なければならない。
第六条及び第七条を次のように改める。
(製造の方法)
第六条 航空機の製造に係る許可事業者は、通商産業大臣の認可を受けた製造の方法によるのでなければ、航空機の製造をしてはならない。但し、試験的に製造をする場合その他通商産業省令で定める場合は、この限りでない。
2 通商産業大臣は、前項の認可の申請に係る製造の方法が通商産業省令で定める生産技術上の基準に適合すると認めるときは、同項の認可をしなければならない。
第七条 通商産業大臣は、航空機の製造に係る許可事業者が前条第一項の認可を受けた方法によらないで航空機の製造をしていると認めるときは、許可事業者に対し、その認可を受けた方法によつてその製造をすべきことを命ずることができる。但し、同項但書に規定する場合は、この限りでない。
第八条第一項中「航空機の製造をする者」を「航空機の製造に係る許可事業者」に改め、同条第二項中「第六条第一項の検査に合格し、又は同条第三項の承認を受けた製造設備等」を「第六条第一項の認可を受けた製造の方法」に改め、同条第四項中「航空機を製造した者」を「許可事業者」に改める。
第九条を次のように改める。
(修理の方法)
第九条 航空機の修理に係る許可事業者は、通商産業大臣の認可を受けた修理の方法によるのでなければ、航空機の修理をしてはならない。但し、試験的に修理をする場合その他通商産業省令で定める場合は、この限りでない。
2 第六条第二項及び第七条の規定は、航空機の修理の方法に準用する。
第十条第一項中「航空機について通商産業省令で定める修理をする者は」を「航空機の修理に係る許可事業者は、航空機について通商産業省令で定める修理をするときは」に改め、同条第二項中「航空機の修理(前項の通商産業省令で定めるものを除く。)をする者は」を「航空機の修理に係る許可事業者は、航空機について前項の通商産業省令で定めるもの以外の修理をするときは」に改める。
第十一条を次のように改める。
(製造の方法)
第十一条 航空機用機器の製造に係る許可事業者又は届出事業者は、通商産業大臣の認可を受けた製造の方法によるのでなければ、航空機用機器の製造をしてはならない。但し、試験的に製造をする場合その他通商産業省令で定める場合は、この限りでない。
2 第六条第二項及び第七条の規定は、航空機用機器の製造の方法に準用する。
第十二条第一項を次のように改める。
航空機用機器の製造に係る許可事業者又は届出事業者は、その製造に係る航空機用機器について通商産業大臣の製造証明を受けなければならない。但し、前条第一項但書に規定する場合は、この限りでない。
第十三条及び第十四条を次のように改める。
(使用の制限)
第十三条 許可事業者又は届出事業者は、製造証明のない航空機用機器(輸入されたものを除く。)を航空機の製造又は修理(航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)第十七条第一項の予備品証明を受けた装備品を用いてするものを除く。)に用いてはならない。但し、試験的に用いる場合その他通商産業省令で定める場合は、この限りでない。
(修理の方法)
第十四条 航空機用機器の修理に係る許可事業者又は届出事業者は、通商産業大臣の認可を受けた修理の方法によるのでなければ、航空機用機器の修理をしてはならない。但し、継続的な修理を目的としない場合その他通商産業省令で定める場合は、この限りでない。
2 第六条第二項及び第七条の規定は、航空機用機器の修理の方法に準用する。
第十五条第二項中「又は確認」を「、製造若しくは修理の方法の認可、確認又は製造証明」に改める。
第六章中第十七条の前に次の二条を加える。
(許可等の条件)
第十六条の二 許可又は認可には、条件を附し、及びこれを変更することができる。
2 前項の条件は、許可又は認可に係る事項の確実な実施を図るため必要な最少限度のものに限り、且つ、許可又は認可を受ける者に不当な義務を課することとなるものであつてはならない。
(国に対する適用)
第十六条の三 この法律の規定は、第十八条及び第七章の規定を除き、国に適用があるものとする。この場合において、「許可」又は「認可」とあるのは、「承認」と読み替えるものとする。
第十七条第一項中「航空機若しくは航空機用機器の製造若しくは修理をする者」を「許可事業者若しくは届出事業者」に改め、「若しくは製造設備等若しくは修理設備等」を削る。
第二十条の前の見出しを削る。
第七章中第二十二条の前に次の一条を加える。
第二十一条の二 左の各号の一に該当する者は、三年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第二条の二の許可を受けないで航空機又は特定機器の製造又は修理の事業を行つた者
二 第二条の十三第二項の規定による事業の停止の命令に違反した者
第二十二条及び第二十三条を次のように改める。
第二十二条 左の各号の一に該当する者は、一年以下の懲役若しくは十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第二条の八第一項の規定に違反して第二条の六第二項第三号の事項を変更した者
二 第二条の九第二項(第三条の二第二項において準用する場合を含む。)の規定による命令に違反した者
三 第二条の十第一項の許可を受けないで特定設備を新設し、増設し、又は改造した者
四 第二条の十一第一項の許可を受けないで第二条の六第二項第五号の事項を変更した者
第二十三条 左の各号の一に該当する者は、六月以下の懲役若しくは五万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第七条(第九条第二項、第十一条第二項及び第十四条第二項において準用する場合を含む。)の規定による命令に違反した者
二 第八条第四項(第十条第三項及び第十二条第三項において準用する場合を含む。)の規定に違反して航空機又は航空機用機器を引き渡した者
三 第十三条の規定に違反して製造証明のない航空機用機器を航空機の製造又は修理に用いた者
第二十四条中第二号を削り、第一号を第二号とし、第一号として次の一号を加える。
一 第二条の七第二項、第四条又は第五条の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者
第二十五条を次のように改める。
第二十五条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前四条の違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対して、各本条の罰金刑を科する。
別表中「検査又は同条第三項の承認」を「認可」に、「検査又は同条第二項において準用する第六条第三項の承認」を「認可」に改める。
附 則
1 この法律の施行期日は、公布の日から起算して三月をこえない範囲内において政令で定める。
2 この法律の施行の際現に航空機又は特定機器の製造又は修理の事業を行つている者であつて、改正前の第三条第一項の届出書を通商産業大臣に提出しているものは、第二条の二の許可を受けないでも、この法律の施行の日から起算して六十日を限り、許可事業者とみなす。これらの者がその期間内に同条の許可を申請した場合において、その申請について許可又は不許可の処分があるまでの間も、また同様とする。
3 改正前の第三条第一項の規定により提出された届出書は、改正後の同項の規定により提出された届出書とみなす。
4 この法律の施行の際現に附則第二項の規定により許可事業者とみなされる者がその事業の用に供している特定設備であつて、改正前の第六条第一項、第九条第一項、第十一条第一項又は第十四条第一項の検査に合格しているものは、第二条の二の許可を受けた特定設備とみなす。
5 この法律の施行の際現に改正前の第六条第一項若しくは第十一条第一項の検査に合格している製造の方法又は第九条第一項若しくは第十四条第一項の検査に合格している修理の方法は、それぞれ、改正後の第六条第一項、第九条第一項、第十一条第一項又は第十四条第一項の認可を受けたものとみなす。
6 通商産業省設置法(昭和二十七年法律第二百七十五号)の一部を次のように改正する。
第四条第一項第三十五号を次のように改める。
三十五 航空機又は航空機用機器の製造又は修理の事業を許可すること。
第十条第七号を次のように改める。
七 航空機又は航空機用機器の製造又は修理の事業の許可に関すること。
7 この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
内閣総理大臣 吉田茂
通商産業大臣 愛知揆一