有畜農家創設特別措置法
法令番号: 法律第260号
公布年月日: 昭和28年9月1日
法令の形式: 法律

提案理由 (AIによる要約)

農業経営の合理化と生産力向上のため、有畜営農の普及が必要である。政府は昭和27年度から有畜農家創設要綱を定め、農業協同組合等への家畜導入資金の融通あっせんと利子補給を行ってきた。しかし信用力の低い組合では融資が受けにくい状況があり、金融機関への損失補償制度の確立が必要となっている。また、融資を受けることが困難な組合のために、都道府県による家畜購入・貸付制度の奨励や、国による種畜以外の家畜の購入・貸付制度の整備が求められている。これらの制度的整備により、有畜農家創設事業の目的達成を図るため、本法案を提出するものである。

参照した発言:
第16回国会 衆議院 農林委員会 第15号

審議経過

第16回国会

参議院
(昭和28年7月6日)
衆議院
(昭和28年7月8日)
参議院
(昭和28年7月13日)
衆議院
(昭和28年7月23日)
(昭和28年7月24日)
(昭和28年7月25日)
参議院
(昭和28年7月29日)
(昭和28年7月30日)
(昭和28年8月3日)
衆議院
(昭和28年8月10日)
参議院
(昭和28年8月10日)
有畜農家創設特別措置法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十八年九月一日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第二百六十号
有畜農家創設特別措置法
(目的)
第一条 この法律は、計画的且つ効率的に有畜農家の創設を促進するために、当分の間、これに必要な助成措置を講ずることにより、農業経営の合理化を推進し、その総合生産力の向上に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「家畜」とは、牛、馬及びめん羊をいい、「有畜農家創設事業」とは、農林大臣の定める有畜農家創設基準に従い都道府県が定めた有畜農家創設計画に基き、農業協同組合その他農業者の組織する政令で定める団体(以下「組合等」という。)が家畜を購入し、又は借り受けて、これを農家に導入する事業をいい、「有畜農家創設事業資金」とは、有畜農家創設事業を行うため、組合等が家畜を購入し、又は借り受けるのに要する資金をいう。
(資金の融通のあつ旋)
第三条 政府は、有畜農家創設事業を行う組合等が当該事業を達成するために必要な資金の融通のあつ旋に努めるものとする。
(国庫補助)
第四条 政府は、予算の範囲内において、都道府県に対し、左に掲げる経費を補助することができる。
一 都道府県が有畜農家創設事業を行う組合等に対し、その有畜農家創設事業資金につき年次別に計算した利子相当額の全部又は一部を補助するときのその補助に要する経費
二 都道府県が有畜農家創設事業を行う組合等に対し当該事業のために貸し付ける家畜を購入するときのその購入代金につき年次別に計算した利子相当額の経費
第五条 前条の規定により政府が都道府県に対して交付することができる補助金の額は、都道府県別、乳牛、役肉用牛、馬及びめん羊別並びに年次別に、農林大臣が定める金額の範囲内で組合等又は都道府県が家畜の購入又は借受に要した資金の百分の七十に相当する金額につき、政令の定めるところにより年五分の割合で計算した金額を限度とする。
第六条 政府は、都道府県が、組合等に有畜農家創設事業資金を融資する農業協同組合、農業協同組合連合会、農林中央金庫その他政令で定める金融機関又は有畜農家創設事業を行うため農家に家畜の購入若しくは借受に要する資金を融資する組合等(以下「融資機関」という。)と当該融資をすることによつて融資機関が受けた損失を補償する旨の契約を結び損失補償を行うときは、当該都道府県に対し、その損失補償に要した金額の二分の一に相当する金額を補助する。
2 前項の損失補償契約は、融資元本の償還期限到来後一年の範囲内で政令で定める期間を経過してなお元本又は利子(政令で定める遅延利子を含む。)の全部又は一部が回収されなかつた場合におけるその回収されなかつた金額を損失とし、融資機関ごとに、当該融資機関がした融資ごとの融資元本(農家に融資する融資機関にあつては当該融資の総額)のうち当該融資に係る有畜農家創設事業資金の百分の七十をこえない金額についてその百分の三十に相当する金額をその損失補償の限度とするものに限る。
3 第一項の契約には、左の各号の事項を含まなければならない。
一 融資機関は、当該契約により損失補償を受けた後も善良な管理者の注意をもつて当該融資に係る債権の回収に努めなければならないこと。
二 融資機関は、当該契約により損失補償を受けた後に当該融資に係る債権の回収によつて得た金額のうちから債権行使のために必要とした費用を控除し、残額があるときは、これを当該融資について損失補償を受けない損失のてん補に充当し、なお残額があるときは、当該契約により都道府県から受けた損失補償の金額に達するまでの金額を当該都道府県に納付しなければならないこと。
4 第一項の規定により政府が都道府県に対し補助する場合における当該補助に係る融資の総額は、毎年予算でその限度を定め、都道府県ごとの当該補助に係る融資の総額は、予算の限度内で農林大臣が定める。
(政府への納付金)
第七条 前条第一項の規定により補助金の交付を受ける都道府県は、融資機関から同条第三項第二号の契約事項による納付金を受けたときは、その一部を政府から補助を受けた割合に応じて政府に納付しなければならない。
(補助金の打切又は返還)
第八条 政府は、都道府県がこの法律若しくはこの法律に基く命令に違反したとき又は当該都道府県と第六条第一項の契約を結んだ融資機関が同条第三項各号の契約事項に違反したときは、当該都道府県に交付すべき補助金の全部若しくは一部を交付せず、又は既に交付した補助金の全部若しくは一部の返還を命ずることができる。
附 則
1 この法律は、公布の日から施行する。
2 昭和二十八年度において、第六条第一項の規定により政府が都道府県に対し補助する場合における当該補助に係る融資の総額は、同条第四項の規定にかかわらず、二十二億円を限度とする。
3 物品の無償貸付及び譲与等に関する法律(昭和二十二年法律第二百二十九号)の一部を次のように改正する。
第二条第七号中「家畜の改良又は増殖」を「家畜の改良、増殖又は有畜営農の普及」に改める。
第三条第七号中「改良又は」を「改良若しくは」に、「無償貸付を受けた者又は飼育管理の委託を受けた者」を「無償貸付を受け、若しくは飼育管理の委託を受けた者又は有畜営農の普及を図るため無償若しくは時価よりも低い対価で家畜の貸付を受けた者」に改め、同条第八号中「又は飼育管理の委託を受けた者」を「若しくは飼育管理の委託を受けた者又は有畜営農の普及を図るため無償若しくは時価よりも低い対価で家畜の貸付を受けた者」に改める。
第八条を削る。
大蔵大臣 小笠原三九郎
農林大臣 保利茂
内閣総理大臣 吉田茂