土地収用法の一部を改正する法律
法令番号: 法律第199号
公布年月日: 昭和28年8月12日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

土地収用法の改正は、二点の要点からなる。第一に、ダム建設等の事業準備における地質調査のためのボーリングについて、土地所有者の同意が得られない場合でも、知事の許可を得て実施できるよう規定を整備する。第二に、公共事業に伴う用地取得において、土地収用手続き以前の任意交渉段階で、当事者間の合意形成を促進するためのあっせん制度を新設する。あっせん委員は知事が収用委員会の推薦に基づき事件ごとに5名を任命し、うち1名は収用委員会委員が務める。あっせん中は一定期間、事業施行者による土地細目の公告申請を制限し、収用手続開始後はあっせんを打ち切ることとする。

参照した発言:
第16回国会 衆議院 建設委員会 第8号

審議経過

第16回国会

参議院
(昭和28年7月2日)
衆議院
(昭和28年7月3日)
(昭和28年7月7日)
(昭和28年7月9日)
(昭和28年7月9日)
参議院
(昭和28年7月13日)
(昭和28年7月14日)
(昭和28年7月16日)
(昭和28年7月21日)
(昭和28年7月23日)
(昭和28年7月24日)
(昭和28年7月27日)
(昭和28年7月28日)
(昭和28年7月30日)
衆議院
(昭和28年8月10日)
参議院
(昭和28年8月10日)
土地収用法の一部を改正する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和二十八年八月十二日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第百九十九号
土地収用法の一部を改正する法律
土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)の一部を次のように改正する。
目次中「第二章 事業の準備(第十一条―第十五条)」を
第二章
事業の準備(第十一条―第十五条)
第二章の二
あつ旋委員のあつ旋(第十五条の二―第十五条の六)
に改める。
第十四条の見出しを「(障害物の伐除及び土地の試掘等)」に改め、同条第一項を次のように改める。
起業者又はその命を受けた者若しくは委任を受けた者は、第三条各号の一に掲げる事業の準備のために他人の占有する土地に立ち入つて測量又は調査を行うに当り、やむを得ない必要があつて、障害となる植物若しくはかき、さく等(以下「障害物」という。)を伐除しようとする場合又は当該土地に試掘若しくは試すい若しくはこれに伴う障害物の伐除(以下「試掘等」という。)を行おうとする場合において、当該障害物又は当該土地の所有者及び占有者の同意を得ることができないときは、当該障害物の所在地を管轄する市町村長の許可を受けて当該障害物を伐除し、又は当該土地の所在地を管轄する都道府県知事の許可を受けて当該土地に試掘等を行うことができる。この場合において、市町村長が許可を与えようとするときは障害物の所有者及び占有者に、都道府県知事が許可を与えようとするときは土地の所有者及び占有者に、あらかじめ、意見を述べる機会を与えなければならない。
第十四条第二項中「伐除しようとする者」の下に「又は土地に試掘等を行おうとする者」を、「伐除しようとする日」の下に「又は試掘等を行おうとする日」を加え、「その所有者及び占有者」を「当該障害物又は当該土地の所有者及び占有者」に改める。
第十四条に次の一項を加える。
4 前項の規定は、第一項の規定による土地の試掘又は試すいに伴う障害物の伐除をする場合には適用しない。
第十五条第二項中「伐除しようとする者」の下に「又は土地に試掘等を行おうとする者」を、「市町村長」の下に「又は都道府県知事」を加える。
第二章の次に次の一章を加える。
第二章の二 あつ旋委員のあつ旋
(あつ旋の申請)
第十五条の二 第三条各号の一に掲げる事業の用に供するための土地等の取得に関する関係当事者間の合意が成立するに至らなかつたときは、関係当事者の双方又は一方は、書面をもつて、当該紛争に係る土地等が所在する都道府県の知事に対して、当該紛争の解決をあつ旋委員のあつ旋に付することを申請することができる。但し、当該土地等について、土地細目、権利細目、物件細目又は土石砂れきの細目の公告の申請があつた後は、この限りでない。
2 都道府県知事は、前項の規定による申請があつた場合においては、当該紛争があつ旋を行うに適しないと認められるときを除くの外、あつ旋委員のあつ旋に付するものとする。
3 第一項の規定による申請で同一の事業に係るものが二以上の都道府県知事にされた場合において、それぞれの都道府県のあつ旋委員のあつ旋に付することが適当でないと認められるときは、関係都道府県知事は、協議により、いずれの都道府県のあつ旋委員のあつ旋に付するかを定めることができる。
(あつ旋委員)
第十五条の三 あつ旋委員は五人とし、事件ごとに、収用委員会がその委員の中から推薦するもの一人及び学識経験を有する者で収用委員会が推薦する者について、都道府県知事が任命する。
(あつ旋の打切)
第十五条の四 あつ旋委員は、あつ旋中の紛争に係る土地等について、土地細目、権利細目、物件細目又は土石砂れきの細目の公告があつた場合には、当該あつ旋を打ち切るものとする。
(あつ旋委員の報告及び退任)
第十五条の五 あつ旋委員は、あつ旋が終つたとき、又は前条に規定する場合その他の事由に因りあつ旋を打ち切つたときには、遅滞なく、その経過及び結果を都道府県知事に報告しなければならない。
2 あつ旋委員は、前項の規定による報告をしたときは、当然に退任するものとする。
(あつ旋の申請の手続等)
第十五条の六 この法律に規定する事項を除くの外、あつ旋の申請の手続その他あつ旋に関し必要な事項は、政令で定める。
第三十一条第二項中「前項」を「第一項」に改め、同項を同条第三項とし、第一項の次に次の一項を加える。
2 起業者は、その事業の用に供するための土地の取得に関する紛争が第十五条の二第二項の規定によりあつ旋委員のあつ旋に付された日から三月をこえない期間内において、当該紛争に係るあつ旋が継続している間は、前項の規定による土地細目の公告の申請をすることができない。
第九十一条第一項中「又は障害物を伐除すること」を「障害物を伐除し、又は土地に試掘等を行うこと」に改める。
第百二十五条各号列記以外の部分中「第一号」を「第二号」に、「第二号から第五号まで」を「第一号及び第三号から第六号まで」に改め、同条第一号を同条第二号とし、以下一号ずつ繰り下げ、同条に第一号として次の一号を加える。
一 第十五条の二第一項の規定によつてあつ旋に付することを申請する起業者
第百三十六条第一項中「関係人」の下に「並びに第十五条の二第一項に規定する関係当事者」を加える。
第百三十七条中「調停委員の委員」の下に「並びにあつ旋委員」を加える。
第百四十三条第三号中「伐除した者」の下に「又は都道府県知事の許可を受けないで土地に試掘等を行つた者」を加える。
附 則
この法律は、公布の日から施行する。
建設大臣 戸塚九一郎
内閣総理大臣 吉田茂