証券投資信託法の一部を改正する法律
法令番号: 法律第141号
公布年月日: 昭和28年8月1日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

証券投資信託の実施状況を踏まえ、公益及び投資者保護のため、委託会社の監督強化等が必要となったことから改正を行う。主な改正点として、委託会社について登録制から免許制へ移行し、適格性審査を厳格化。また委託会社の監督を整備強化し、取締役の他社常務従事等には大蔵大臣の承認を要することとした。さらに、信託財産に重大な損失を生じさせた場合は新規契約締結の禁止や免許取消が可能となり、免許取消時の既存契約の取扱いも整備。加えて、信託財産としての金銭のコールローン運用を可能とした。

参照した発言:
第16回国会 参議院 大蔵委員会 第5号

審議経過

第16回国会

参議院
(昭和28年6月23日)
衆議院
(昭和28年6月24日)
(昭和28年6月25日)
参議院
(昭和28年6月25日)
衆議院
(昭和28年6月27日)
(昭和28年6月30日)
参議院
(昭和28年7月3日)
衆議院
(昭和28年7月7日)
(昭和28年7月9日)
(昭和28年7月10日)
参議院
(昭和28年7月10日)
衆議院
(昭和28年7月14日)
参議院
(昭和28年7月14日)
衆議院
(昭和28年7月15日)
(昭和28年7月16日)
(昭和28年7月18日)
(昭和28年7月21日)
参議院
(昭和28年7月21日)
衆議院
(昭和28年7月22日)
(昭和28年7月23日)
参議院
(昭和28年7月23日)
衆議院
(昭和28年7月24日)
参議院
(昭和28年7月24日)
衆議院
(昭和28年7月25日)
(昭和28年8月10日)
参議院
(昭和28年8月10日)
証券投資信託法の一部を改正する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和二十八年八月一日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第百四十一号
証券投資信託法の一部を改正する法律
証券投資信託法(昭和二十六年法律第百九十八号)の一部を次のように改正する。
目次中「登録」を「免許」に、「第二十一条」を「第二十条の二」に改める。
第二条に次の一項を加える。
3 この法律において「委託会社」とは、証券投資信託の委託者となることを業とする会社をいう。
第四条第一項中「大蔵省に備える証券投資信託委託会社登録原簿(以下「登録原簿」という。)に登録された会社(以下「委託会社」という。)」を「委託会社」に改め、同条第二項中「資本の金額」を「資本の額」に改める。
第五条に次の一項を加える。
7 元本の追加信託をすることができる証券投資信託の受益証券は、前項各号に掲げる事項の外、左に掲げる事項を記載したものでなければならない。
一 追加信託をすることができる元本の限度額
二 当該受益証券が追加信託に係るものであるときは、その発行の際までに追加信託をした信託の元本の額及び受益権の総口数
第二章の標題中「登録」を「免許」に改める。
第六条を次のように改める。
(免許の申請)
第六条 委託会社となろうとする会社は、大蔵大臣の免許を受けなければならない。
2 前項の免許を受けようとする会社は、左に掲げる事項を記載した免許申請書を大蔵大臣に提出しなければならない。
一 商号及び資本の額
二 本店、支店その他の営業所の名称及び所在の場所
三 取締役の氏名
3 前項の免許申請書には、定款、会社登記簿の謄本、信託契約締結に関する計画書その他大蔵省令で定める書類を添附しなければならない。
第七条を削り、第八条及び第九条を次のように改める。
(免許基準)
第七条 大蔵大臣は、前条第二項の規定による免許の申請があつた場合において、その申請が第一号及び第二号に適合するかどうかを審査しなければならない。
一 免許申請者の人的構成及び有価証券への投資の経験及び能力並びに証券市場の状況等に照らし、当該免許申請者が証券投資信託の委託者としての業務を行うにつき十分な適格性を有する者であること。
二 証券投資信託の委託者としての業務の収支の見込が良好であること。
2 大蔵大臣は、前項の規定により審査した結果、その申請が同項の基準に適合していると認めたときは、左の各号の一に該当する場合を除いて、その免許を与えなければならない。
一 免許申請者が資本の額が五千万円以上の株式会社でないとき。
二 免許申請者がこの法律又は証券取引法の規定により罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終つた後又は執行を受けることがないこととなつた日から五年を経過するまでの会社であるとき。
三 免許申請者が第二十二条第一項若しくは第二十三条第一項第一号ハの規定によりその免許を取り消され、又は証券取引法第三十九条、第四十条第三項、第五十七条第一項若しくは第五十九条の規定により登録を取り消され、取消の日から五年を経過するまでの会社であるとき。
四 免許申請者がその取締役のうちにイからニまでの一に該当する者のある会社であるとき。
イ 破産者で復権を得ないもの
ロ 禁こ以上の刑に処せられ、又はこの法律若しくは証券取引法の規定により罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終つた後又は執行を受けることがないこととなつた日から五年を経過するまでの者
ハ 委託会社が第二十二条第一項若しくは第二十三条第一項第一号ハの規定により免許を取り消された場合又は証券取引法第二条第九項に規定する証券業者が同法第三十九条、第四十条第三項、第五十七条第一項若しくは第五十九条の規定により登録を取り消された場合において、取消があつた日以前三十日内に当該会社の取締役であつた者で、取消の日から五年を経過するまでのもの
ニ 第二十三条第一項第二号又は証券取引法第五十九条の規定により解任を命ぜられた取締役で当該処分のあつた日から五年を経過するまでのもの
五 免許申請書又はその添附書類のうちに重要な事項について虚偽の記載があるとき。
(免許を与えない場合の審問等)
第八条 大蔵大臣は、第六条第二項の規定による免許の申請があつた場合において、その免許を与えることが適当でないと認めるときは、免許申請者に通知して、当該職員をして審問を行わせなければならない。
2 大蔵大臣が、第六条第一項の規定による免許を与えることとし、又はこれを与えないこととした場合においては、遅滞なくその旨を書面をもつて免許申請者に通知しなければならない。この場合において、免許を与えない旨の通知には、その理由を示さなければならない。
第十条第一項中「第七条第一項第一号から第三号まで」を「第六条第二項各号」に改め、同条第二項中「左に掲げる書類」を「当該変更を証する書面その他の大蔵省令で定める書類」に改め、同項各号を削り、同条を第九条とする。
第十一条を次のように改める。
第十条及び第十一条 削除
第十六条第一項中「貸付」の下に「(コールローンを除く。)」を加える。
第四章中第二十一条の前に次の三条を加える。
(役員の兼職制限)
第二十条の二 委託会社の常務に従事する取締役が、他の会社の常務に従事し、又は事業を営もうとする場合には、大蔵大臣の承認を受けなければならない。
(廃業、解散等についての認可)
第二十条の三 左に掲げる事項は、大蔵大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
一 委託会社の業務の廃止又は委託会社の解散の決議
二 委託会社の合併又は営業の全部若しくは一部の譲渡若しくは譲受
第二十条の四 委託会社が合併の決議をした場合において、信託契約に関する業務以外の業務を兼ねて営んでいないときは、商法(明治三十二年法律第四十八号)第百条第一項に規定する一定の期間は、同項但書の規定にかかわらず、一月まで短縮することができる。
2 前項の規定は、合併に因る株式併合の場合における商法第三百七十七条第一項に規定する一定の期間について準用する。
第二十一条中「若しくは受託会社」を「、受託会社若しくはこれらの会社であつた者」に、「委託会社の信託財産その他その業務」を「証券投資信託の信託財産若しくは委託会社、受託会社若しくはこれらの会社であつた者の証券投資信託に係る業務」に改める。
第二十二条第一項各号列記以外の部分中「登録」を「免許」に改め、同条第一項各号を次のように改める。
一 第七条第二項第一号から第三号までの一に該当することとなつたとき。
二 免許当時第七条第二項第一号から第三号までの一に該当していたことを発見したとき。
第二十二条第二項から第四項までを次のように改める。
2 大蔵大臣は、前項の規定により免許を取り消した場合においては、遅滞なくその旨及びその理由を書面をもつて委託会社に通知しなければならない。
第二十三条第一項第一号を次のように改める。
一 委託会社がこの法律若しくは証券取引法若しくはこれらの法律に基く命令(以下「この法律等」と総称する。)、この法律等に基いてする行政官庁の処分若しくは信託契約に違反した場合、その資産内容が不良となつた場合又はその指図が適正を欠くため信託財産に重大な損失を生ぜしめた場合において、公益又は投資者保護のため適当であると認めるときは、左に掲げる処分
イ 新たな信託契約の締結又は現に存する信託契約についての元本の追加信託をしてはならない旨を命ずること。
ロ 現に存する信託約款に基く信託契約の解約若しくは当該信託約款の変更を命じ、又は大蔵大臣があらかじめ当該信託契約に係る受託会社及び他の委託会社の同意を得た上、当該信託契約に関する業務をその同意を得た他の委託会社に引き継ぐことを命ずること。
ハ 当該委託会社の免許の取消をすること。
第二十三条第一項第二号中「法令若しくは信託契約に違反し、又はその取締役が法令に違反した場合」を「この法律等若しくは信託契約に違反し、又はその取締役がこの法律等に違反した場合」に改め、「違反行為をした取締役」の下に「、その取締役が第七条第二項第四号イからニまでの一に該当することとなり、若しくは免許当時同号イからニまでの一に該当していたことを発見した場合においては、その取締役」を加え、同条第二項及び第三項を次のように改める。
2 大蔵大臣は、前項の規定による処分をした場合においては、遅滞なくその旨及びその理由を、書面をもつてその処分を受ける委託会社又は取締役の属する委託会社に通知しなければならない。
3 大蔵大臣は、第一項第一号ロの規定により信託契約に関する業務の引継を命じた場合においては、遅滞なくその旨を受託会社及びその引継を受ける委託会社に通知しなければならない。
第二十三条の次に次の一条を加える。
第二十三条の二 大蔵大臣は、委託会社又は受託会社が第一号又は第二号に該当することとなる場合において、当該委託会社又は受託会社に係る信託契約の存続が公益又は投資者保護のため必要且つ適当であると認めるときは、当該委託会社又は受託会社に対し、大蔵大臣があらかじめ当該信託契約に係る受託会社又は委託会社及び他の委託会社又は受託会社の同意を得た上、当該信託契約に関する業務をその同意を得た他の委託会社又は受託会社に引き継ぐことを命ずることができる。
一 委託会社が第二十二条第一項又は前条第一項第一号ハの規定により免許を取り消されること。
二 受託会社が営業の免許又は信託業務を営むことについての認可を取り消されること。
2 大蔵大臣は、前項の同意を得られない場合においては、同項に規定する当該委託会社に対しその旨、当該委託会社が前項第一号に該当することとなる虞があること及び次項の規定による申請の期限を通知しなければならない。
3 前項の通知を受けた委託会社は、当該通知に係る期限までに、信託契約の存続の承認の申請をすることができる。
4 大蔵大臣は、前項の申請があつた場合においては、第二十二条第一項又は前条第一項第一号ハの規定により当該委託会社の免許を取り消した日以後、当該信託契約の存続期間その他につき条件を附して、当該信託契約を存続させることを承認することができる。この場合において、当該委託会社であつた者は、その業務の執行の範囲内において、第六条第一項の規定による免許を取り消されていないものとみなす。
5 第八条第二項の規定は、前項の規定による信託契約の存続の承認について準用する。この場合において、同条第二項中「免許申請者」とあるのは、「承認申請者」と読み替えるものとする。
第二十五条の次に次の一条を加える。
(免許及び認可の失効)
第二十五条の二 委託会社が、この法律の規定による免許を受けた日から六月以内に証券投資信託の委託者とならないときは、その免許は、効力を失う。
2 委託会社が、この法律の規定による認可を受けた日から六月以内にその認可を受けた事項を実行しないときは、その認可は、効力を失う。
3 やむを得ない事由がある場合において、あらかじめ大蔵大臣の承認を受けたときは、前二項の規定は、適用しない。
第二十六条第一項第一号を次のように改める。
一 委託会社が第二十二条第一項又は第二十三条第一号ハの規定により免許を取り消されたとき。
第二十六条第二項第一号中「第二十二条第二項」を「第二十三条の二第一項」に改め、「引継をしたとき」の下に「、又は同条第四項の規定により信託契約の存続の承認を受けたとき」を加え、同項第三号中「登録の申請をして当該登録を受けたとき」を「免許の申請をして当該免許を受けたとき」に改める。
第三十二条第一号を削り、同条第二号を同条第一号とし、以下同条第四号までを一号ずつ繰り上げ、同条に第四号として次のように加える。
四 第二十条の二の規定に違反して、承認を受けないで他の会社の常務に従事し、又は事業を営んだとき。
第三十二条第五号を削り、同条第六号中「第一号」を「第一号イ又はロ」に改め、同号を同条第五号とし、同条第七号を同条第六号とし、同号の次に次の一号を加える。
七 第二十三条の二第四項の規定による条件に違反したとき。
第三十三条中「登録申請書」を「免許申請書」に改める。
第三十八条中第一号を削り、第二号を第一号とし、以下一号ずつ繰り上げる。
附 則
1 この法律は、公布の日から起算して三月をこえない範囲内において政令で定める日から施行する。
2 改正後の証券投資信託法(以下「新法」という。)第五条第七項の規定は、この法律施行の日前に発行された受益証券については、適用しない。
3 この法律施行の際、現に改正前の証券投資信託法(以下「旧法」という。)第七条第一項の規定により登録されている会社は、新法第六条第一項の規定による免許を受けたものとみなす。
4 この法律施行の際、現に新法第二条第三項に規定する委託会社の常務に従事する取締役であつて、現に他の会社の常務に従事し、又は事業を営んでいるものが、当該他の会社の常務に従事し、又は当該事業を営むことについては、新法第二十条の二の規定は、この法律施行の日から六月を限り、適用しない。
5 旧法第二十二条第一項による登録の取消は、新法の適用については、新法第二十二条第一項の規定による免許の取消とみなす。
6 この法律施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の列による。
7 大蔵省設置法(昭和二十四年法律第百四十四号)の一部を次のように改正する。
第四条第四十九号及び第十条第二十二号中「登録」を「免許」に改める。
大蔵大臣 小笠原三九郎
内閣総理大臣 吉田茂