熱管理法
法令番号: 法律第百四十六号
公布年月日: 昭和26年4月10日
法令の形式: 法律
熱管理法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十六年四月十日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第百四十六号
熱管理法
(目的)
第一條 この法律は、工場又は事業場における燃料及びこれを熱源とする熱の有効利用を図り、燃料資源の保全及び企業の合理化に寄與することを目的とする。
(定義)
第二條 この法律において「燃料」とは、燃燒、ガス化又は乾りゆうの用に供する石炭、亜炭及びコークス(半成コークスを含む。)並びに加熱の用に供するガス及び重油をいう。
(熱管理の実施及び指導)
第三條 燃料を使用する工場又は事業場(以下「工場等」という。)の事業主は、燃料及びこれを熱源とする熱の有効利用(以下「熱管理」という。)に関し、左の各号に掲げる事項の実施について最大限の努力を盡さなければならない。
一 風化、自然発火、漏失等による燃料の損失の防止
二 燃料の燃燒、ガス化及び乾りゆうの合理化
三 加熱及び伝熱の合理化
四 ふく射、伝導、漏失等による熱の損失の防止
五 廃熱の回收
2 通商産業大臣は、予算の範囲内において、工場等に対し、熱管理の実施上必要な指導を行うものとする。
(目標原單位)
第四條 通商産業大臣は、工場等における熱管理の実施上の目標を明らかにするため必要があると認めるときは、鉱工業品單位当りの目標となるべき燃料又は熱の使用量を公表する。
(熱管理指定工場)
第五條 工場等の事業主は、その工場等の事業が政令で定める業種に属し、且つ、その工場等の前年中における燃料の使用量が政令で定める基準に該当するときは、左の各号に掲げる事項について、省令の定めるところにより、毎年一月三十一日までに通商産業大臣に届け出なければならない。但し、第二項の指定工場については、この限りでない。
一 前年中における燃料の使用量
二 その年中における燃料の使用見込量
三 燃料の使用設備の状況
2 通商産業大臣は、前項の規定による届出に基いて、同項の届出に係る工場等を熱管理指定工場(以下「指定工場」という。)に指定することができる。
3 指定工場の事業主は、当該指定工場が第一項の政令で定められた業種に属する事業を行わなくなつたとき、又は当該指定工場の燃料の使用量が同項の政令で定められた基準に該当する見込がなくなつたときは、省令の定めるところにより、その理由を附して、通商産業大臣に指定工場の指定の取消を申請することができる。
4 通商産業大臣は、前項の指定の取消の申請が理由があると認めるときは、遅滯なく、指定工場の指定を取り消すものとする。指定の取消の申請がない場合でも、指定工場に指定する事由がなくなつたと認められる指定工場について、また同様とする。
(熱管理者)
第六條 指定工場の事業主は、第十二條の規定による熱管理士免状を有する者(以下「熱管理士」という。)の中から、政令で定める基準に従い、政令で定める員数の熱管理者を選任しなければならない。
2 指定工場の事業主は、前條第二項の規定による指定があつたときは、その指定の日から六箇月以内に、前項の規定による熱管理者の選任をしなければならない。
3 前項の規定は、第一項の熱管理者が欠けた場合又は同項の政令で定める基準に従い熱管理者を増員しなければならなくなつた場合に準用する。
4 第一項の熱管理者が旅行、疾病その他の事故によつてその職務を行うことができない場合において、その期間が引き続き六箇月をこえたときは、その六箇月の期間が経過した日においてその熱管理者が欠けたものとみなす。
5 指定工場の事業主は、当該指定工場における第三條第一項各号に掲げる事項を実施するについては、熱管理者の意見を尊重しなければならない。
(熱管理者の職務の代行)
第七條 指定工場の事業主は、熱管理者が、欠けたとき、又は旅行、疾病その他の事故によつてその職務を行うことができないときは、省令の定めるところにより、他の者にその職務を代行させなければならない。
(届出)
第八條 指定工場の事業主は、熱管理者を選任したときは、遅滯なく、その氏名及び担任させる業務の範囲を通商産業大臣に届け出なければならない。
2 指定工場の事業主は、熱管理者が欠けたとき、又は熱管理者の担任する業務の範囲に変更があつたときは、遅滯なく、その旨を通商産業大臣に届け出なければならない。
(帳簿)
第九條 指定工場の事業主は、当該指定工場に帳簿を備え、省令の定めるところにより、左の各号に掲げる事項に関し記録しなければならない。
一 当該指定工場で使用する燃料の数量、種類及び品位
二 当該指定工場の熱管理に関する設備
三 当該指定工場における燃料及び熱の利用の状況
(報告及び実地調査)
第十條 通商産業大臣は、熱管理の実施の適正を確保するため必要があると認めるときは、省令の定めるところにより、指定工場の事業主に前條各号に掲げる事項に関して報告をさせることができる。
2 通商産業大臣は、指定工場の事業主が前項の報告をなさず、又はその報告が虚僞であると認めるときは、その職員に、当該指定工場に立ち入り、帳簿書類その他必要な物件を調査させ、又は関係者に質問させることができる。
3 前項の職員は、その身分を示す証票を携帶し、関係者にこれを呈示しなければならない。
4 第二項の規定による調査又は質問の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
(勧獎)
第十一條 通商産業大臣は、熱管理の実施の適正を確保するため必要があると認めるときは、指定工場の事業主に対し、第三條第一項各号に掲げる事項の実施について必要な勧獎をすることができる。
(熱管理士免状)
第十二條 通商産業大臣は、左の各号の一に該当する者に対し、熱管理士免状を交付する。
一 通商産業大臣が行う熱管理士試験に合格した者
二 三年以上熱管理の実務に従事し、且つ、省令の定めるところにより通商産業大臣が行う熱管理に関する研修を経た者であつて、前号に掲げる者と同等以上の学識及び技能を有していると通商産業大臣が認める者
(熱管理士試験)
第十三條 熱管理士試験は、熱管理に関し必要な学識及び技能について行う。
2 熱管理士試験は、毎年少くとも一回、通商産業大臣が行う。
3 熱管理士試験は、一年以上熱管理の実務に従事した者でなければ受けることができない。
4 熱管理士試験を受けようとする者は、政令の定めるところにより、五百円以内の手数料を納めなければならない。
5 前項の規定により納付した手数料は、熱管理士試験を受けなかつた場合においても、返還しない。
6 熱管理士試験の科目、受験手続その他熱管理士試験に関し必要な事項は、省令で定める。
(熱管理士試験委員)
第十四條 熱管理士試験に関する事務をつかさどらせるため、通商産業省に熱管理士試験委員を置く。
2 熱管理士試験委員は、通商産業大臣が、その職員又は学識経験のある者の中から、命じ、又は委嘱する。
3 前二項に規定するものの外、熱管理士試験委員に関し必要な事項は、政令で定める。
(都道府県知事の指導)
第十五條 都道府県知事は、その管轄区域内にある指定工場以外の工場等に対し、熱管理の実施上必要な指導を行うことができる。
(罰則)
第十六條 左の各号の一に該当する者は、三万円以下の罰金に処する。
一 第五條第一項又は第八條の規定による届出をせず、又は虚僞の届出をした者
二 第六條第二項(同條第三項において準用する場合を含む。)又は第七條の規定に違反した者
三 第九條の規定による帳簿を備えず、記録をせず、又は虚僞の記録をした者
四 第十條第一項の規定による報告をせず、又は虚僞の報告をした者
五 第十條第二項の規定による調査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は質問に対して虚僞の陳述をした者
第十七條 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前條の違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対しても、同條の罰金刑を科する。但し、法人又は人の代理人、使用人その他の従業者の当該違反行為を防止するため、当該業務に関し相当の注意及び監督が盡されたことの証明があつたときは、その法人又は人については、この限りでない。
附 則
(施行期日)
1 この法律の施行期日は、公布の日から起算して六箇月をこえない期間内において、政令で定める。
(熱管理規則等の廃止)
2 左に掲げる省令は、廃止する。
熱管理規則(昭和二十三年商工省令第一号)
熱管理技能試験規程(昭和二十三年商工省令第二号)
熱管理士選衡規程(昭和二十三年商工省令第三号)
(経過規定)
3 この法律施行の際、現に熱管理規則による甲種指定工場であるものは、この法律施行の日において、第五條第二項の指定工場に指定されたものとみなす。
4 この法律施行前に熱管理規則に基いて交付された甲種免状及び乙種免状は、第十二條の規定により交付された熱管理士免状とみなす。但し、乙種免状は、この法律施行の日から二箇年を限り効力を有するものとする。
5 この法律施行前に熱管理技能試験規程に基いて行われた甲種試験は、第十三條の規定により行われた熱管理士試験とみなす。
6 この法律施行前にした熱管理規則に違反する行為に対する臨時物資需給調整法(昭和二十一年法律第三十二号)の罰則の適用については、なお従前の例による。
通商産業大臣 横尾龍
内閣総理大臣 吉田茂
熱管理法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十六年四月十日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第百四十六号
熱管理法
(目的)
第一条 この法律は、工場又は事業場における燃料及びこれを熱源とする熱の有効利用を図り、燃料資源の保全及び企業の合理化に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「燃料」とは、燃焼、ガス化又は乾りゆうの用に供する石炭、亜炭及びコークス(半成コークスを含む。)並びに加熱の用に供するガス及び重油をいう。
(熱管理の実施及び指導)
第三条 燃料を使用する工場又は事業場(以下「工場等」という。)の事業主は、燃料及びこれを熱源とする熱の有効利用(以下「熱管理」という。)に関し、左の各号に掲げる事項の実施について最大限の努力を尽さなければならない。
一 風化、自然発火、漏失等による燃料の損失の防止
二 燃料の燃焼、ガス化及び乾りゆうの合理化
三 加熱及び伝熱の合理化
四 ふく射、伝導、漏失等による熱の損失の防止
五 廃熱の回収
2 通商産業大臣は、予算の範囲内において、工場等に対し、熱管理の実施上必要な指導を行うものとする。
(目標原単位)
第四条 通商産業大臣は、工場等における熱管理の実施上の目標を明らかにするため必要があると認めるときは、鉱工業品単位当りの目標となるべき燃料又は熱の使用量を公表する。
(熱管理指定工場)
第五条 工場等の事業主は、その工場等の事業が政令で定める業種に属し、且つ、その工場等の前年中における燃料の使用量が政令で定める基準に該当するときは、左の各号に掲げる事項について、省令の定めるところにより、毎年一月三十一日までに通商産業大臣に届け出なければならない。但し、第二項の指定工場については、この限りでない。
一 前年中における燃料の使用量
二 その年中における燃料の使用見込量
三 燃料の使用設備の状況
2 通商産業大臣は、前項の規定による届出に基いて、同項の届出に係る工場等を熱管理指定工場(以下「指定工場」という。)に指定することができる。
3 指定工場の事業主は、当該指定工場が第一項の政令で定められた業種に属する事業を行わなくなつたとき、又は当該指定工場の燃料の使用量が同項の政令で定められた基準に該当する見込がなくなつたときは、省令の定めるところにより、その理由を附して、通商産業大臣に指定工場の指定の取消を申請することができる。
4 通商産業大臣は、前項の指定の取消の申請が理由があると認めるときは、遅滞なく、指定工場の指定を取り消すものとする。指定の取消の申請がない場合でも、指定工場に指定する事由がなくなつたと認められる指定工場について、また同様とする。
(熱管理者)
第六条 指定工場の事業主は、第十二条の規定による熱管理士免状を有する者(以下「熱管理士」という。)の中から、政令で定める基準に従い、政令で定める員数の熱管理者を選任しなければならない。
2 指定工場の事業主は、前条第二項の規定による指定があつたときは、その指定の日から六箇月以内に、前項の規定による熱管理者の選任をしなければならない。
3 前項の規定は、第一項の熱管理者が欠けた場合又は同項の政令で定める基準に従い熱管理者を増員しなければならなくなつた場合に準用する。
4 第一項の熱管理者が旅行、疾病その他の事故によつてその職務を行うことができない場合において、その期間が引き続き六箇月をこえたときは、その六箇月の期間が経過した日においてその熱管理者が欠けたものとみなす。
5 指定工場の事業主は、当該指定工場における第三条第一項各号に掲げる事項を実施するについては、熱管理者の意見を尊重しなければならない。
(熱管理者の職務の代行)
第七条 指定工場の事業主は、熱管理者が、欠けたとき、又は旅行、疾病その他の事故によつてその職務を行うことができないときは、省令の定めるところにより、他の者にその職務を代行させなければならない。
(届出)
第八条 指定工場の事業主は、熱管理者を選任したときは、遅滞なく、その氏名及び担任させる業務の範囲を通商産業大臣に届け出なければならない。
2 指定工場の事業主は、熱管理者が欠けたとき、又は熱管理者の担任する業務の範囲に変更があつたときは、遅滞なく、その旨を通商産業大臣に届け出なければならない。
(帳簿)
第九条 指定工場の事業主は、当該指定工場に帳簿を備え、省令の定めるところにより、左の各号に掲げる事項に関し記録しなければならない。
一 当該指定工場で使用する燃料の数量、種類及び品位
二 当該指定工場の熱管理に関する設備
三 当該指定工場における燃料及び熱の利用の状況
(報告及び実地調査)
第十条 通商産業大臣は、熱管理の実施の適正を確保するため必要があると認めるときは、省令の定めるところにより、指定工場の事業主に前条各号に掲げる事項に関して報告をさせることができる。
2 通商産業大臣は、指定工場の事業主が前項の報告をなさず、又はその報告が虚偽であると認めるときは、その職員に、当該指定工場に立ち入り、帳簿書類その他必要な物件を調査させ、又は関係者に質問させることができる。
3 前項の職員は、その身分を示す証票を携帯し、関係者にこれを呈示しなければならない。
4 第二項の規定による調査又は質問の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
(勧奨)
第十一条 通商産業大臣は、熱管理の実施の適正を確保するため必要があると認めるときは、指定工場の事業主に対し、第三条第一項各号に掲げる事項の実施について必要な勧奨をすることができる。
(熱管理士免状)
第十二条 通商産業大臣は、左の各号の一に該当する者に対し、熱管理士免状を交付する。
一 通商産業大臣が行う熱管理士試験に合格した者
二 三年以上熱管理の実務に従事し、且つ、省令の定めるところにより通商産業大臣が行う熱管理に関する研修を経た者であつて、前号に掲げる者と同等以上の学識及び技能を有していると通商産業大臣が認める者
(熱管理士試験)
第十三条 熱管理士試験は、熱管理に関し必要な学識及び技能について行う。
2 熱管理士試験は、毎年少くとも一回、通商産業大臣が行う。
3 熱管理士試験は、一年以上熱管理の実務に従事した者でなければ受けることができない。
4 熱管理士試験を受けようとする者は、政令の定めるところにより、五百円以内の手数料を納めなければならない。
5 前項の規定により納付した手数料は、熱管理士試験を受けなかつた場合においても、返還しない。
6 熱管理士試験の科目、受験手続その他熱管理士試験に関し必要な事項は、省令で定める。
(熱管理士試験委員)
第十四条 熱管理士試験に関する事務をつかさどらせるため、通商産業省に熱管理士試験委員を置く。
2 熱管理士試験委員は、通商産業大臣が、その職員又は学識経験のある者の中から、命じ、又は委嘱する。
3 前二項に規定するものの外、熱管理士試験委員に関し必要な事項は、政令で定める。
(都道府県知事の指導)
第十五条 都道府県知事は、その管轄区域内にある指定工場以外の工場等に対し、熱管理の実施上必要な指導を行うことができる。
(罰則)
第十六条 左の各号の一に該当する者は、三万円以下の罰金に処する。
一 第五条第一項又は第八条の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者
二 第六条第二項(同条第三項において準用する場合を含む。)又は第七条の規定に違反した者
三 第九条の規定による帳簿を備えず、記録をせず、又は虚偽の記録をした者
四 第十条第一項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
五 第十条第二項の規定による調査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は質問に対して虚偽の陳述をした者
第十七条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前条の違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対しても、同条の罰金刑を科する。但し、法人又は人の代理人、使用人その他の従業者の当該違反行為を防止するため、当該業務に関し相当の注意及び監督が尽されたことの証明があつたときは、その法人又は人については、この限りでない。
附 則
(施行期日)
1 この法律の施行期日は、公布の日から起算して六箇月をこえない期間内において、政令で定める。
(熱管理規則等の廃止)
2 左に掲げる省令は、廃止する。
熱管理規則(昭和二十三年商工省令第一号)
熱管理技能試験規程(昭和二十三年商工省令第二号)
熱管理士選衡規程(昭和二十三年商工省令第三号)
(経過規定)
3 この法律施行の際、現に熱管理規則による甲種指定工場であるものは、この法律施行の日において、第五条第二項の指定工場に指定されたものとみなす。
4 この法律施行前に熱管理規則に基いて交付された甲種免状及び乙種免状は、第十二条の規定により交付された熱管理士免状とみなす。但し、乙種免状は、この法律施行の日から二箇年を限り効力を有するものとする。
5 この法律施行前に熱管理技能試験規程に基いて行われた甲種試験は、第十三条の規定により行われた熱管理士試験とみなす。
6 この法律施行前にした熱管理規則に違反する行為に対する臨時物資需給調整法(昭和二十一年法律第三十二号)の罰則の適用については、なお従前の例による。
通商産業大臣 横尾龍
内閣総理大臣 吉田茂