厚生年金保険法特例
法令番号: 法律第38号
公布年月日: 昭和26年3月27日
法令の形式: 法律

提案理由 (AIによる要約)

厚生年金保険における障害年金及び遺族年金について、標準報酬月額と年金計算の平均値算出方法が数回改訂され、新旧の年金額に不均衡が生じている。昭和23年と24年に従前の年金額を5倍に引き上げたが、その後の経済情勢の変動で給与水準が上昇し、当時と現在の総平均標準報酬に約2倍の開きが生じた。そこで、昭和23年8月1日以前の低い標準報酬のみを基礎とする年金を更に2倍(計10倍)に引き上げ、同日以後の高い標準報酬と以前の低い標準報酬の双方を基礎とするものは、新制度に基づき高い標準報酬のみで算出する方式に改める。これにより年金受給者間の不均衡を是正し、生活保障の充実を図る。

参照した発言:
第10回国会 参議院 厚生委員会 第10号

審議経過

第10回国会

参議院
(昭和26年3月7日)
(昭和26年3月9日)
(昭和26年3月13日)
衆議院
(昭和26年3月14日)
参議院
(昭和26年3月14日)
衆議院
(昭和26年3月15日)
(昭和26年3月17日)
参議院
(昭和26年3月26日)
衆議院
(昭和26年6月5日)
厚生年金保險法特例をここに公布する。
御名御璽
昭和二十六年三月二十七日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第三十八号
厚生年金保險法特例
(目的)
第一條 この法律は、厚生年金保險法(昭和十六年法律第六十号)による障害年金及び遺族年金であつて、昭和二十三年八月一日(厚生年金保險法等の一部を改正する法律(昭和二十三年法律第百二十七号。以下「昭和二十三年改正法律」という。)の施行の日)前の標準報酬をその額の算定の基礎としたものについて、その額を増額することを目的とする。
(障害年金の増額)
第二條 昭和二十六年二月一日において障害年金を受ける権利を有した者に支給する障害年金のうち、昭和二十三年八月一日前の標準報酬のみに基いてその額を算定した障害年金の額は、厚生年金保險法第三十七條第一項又は健康保險法の一部を改正する等の法律(昭和二十二年法律第四十五号。以下「昭和二十二年改正法律」という。)附則第四條若しくは附則第五條及び昭和二十三年改正法律附則第五條第一項(同法附則第八條において準用する場合を含む。)又は厚生年金保險法等の一部を改正する法律(昭和二十四年法律第三十八号。以下「昭和二十四年改正法律」という。)附則第四項(同法附則第六項において準用する場合を含む。)の規定にかかわらず、従前の障害年金の額の二倍に相当する額とする。
第三條 昭和二十六年二月一日において障害年金を受ける権利を有した者に支給する障害年金のうち、昭和二十二年改正法律附則第五條の規定による障害年金であつて、昭和二十三年八月一日前の標準報酬及び同日以後の標準報酬に基いてその額を算定したものの額は、同條及び昭和二十三年改正法律附則第八條において準用する同法附則第五條第一項の規定にかかわらず、労働者年金保險法施行令中改正の件(昭和十九年勅令第三百六十三号)別表第一に定める業務上の事由に因る癈疾の程度一級から三級までに該当したことによつて障害年金を受ける者(以下「旧法による第一種障害年金受給者」という。)に支給するものにあつては、平均報酬月額の五月分に相当する額とし、その他の者(以下「旧法による第二種障害年金受給者」という。)に支給するものにあつては、平均報酬月額の四月分に相当する額とする。
2 前項の平均報酬月額は、左の各号に掲げる額のうち、最も大きいものとする。
一 癈疾の原因となつた疾病又は負傷の発した日の属する月前三月間(継続して被保險者であつた期間が三月未満であるときは、その期間。以下同じ。)の標準報酬月額を平均した額
二 癈疾となつた日の属する月前三月間の標準報酬月額を平均した額
三 癈疾前に被保險者の資格を喪失した場合においては、資格喪失の日の属する月前三月間の標準報酬月額を平均した額
3 前項の規定により平均報酬月額を定める場合において、同項各号に規定する期間が、昭和二十三年八月一日の前後にまたがるときは、同項各号に規定する額は、同日以後の期間のみによつて算定するものとする。
第四條 前條の規定により障害年金の額を算定する場合において、その額が昭和二十三年八月一日前の標準報酬のみに基いて算定されるときは、その障害年金の額は、同條並びに昭和二十二年改正法律附則第五條及び昭和二十三年改正法律附則第八條において準用する同法附則第五條第一項の規定にかかわらず、前條による額の十倍に相当する額とする。
第五條 第三條第三項の規定は、昭和二十三年改正法律附則第三條の規定により平均標準報酬月額を定める場合に準用する。
第六條 第二條から前條までの規定によつて算定した障害年金の額が、厚生年金保險法別表第一に定める癈疾の程度一級に該当したことによつて障害年金を受ける者又は旧法による第一種障害年金受給者にあつては、三万円、同表第一に定める癈疾の程度二級に該当したことによつて障害年金を受ける者又は旧法による第二種障害年金受給者にあつては、二万四千円をこえるときは、その障害年金の額は、これらの規定にかかわらず、それぞれ、三万円又は二万四千円とする。
(遺族年金の増額)
第七條 昭和二十六年二月一日において遺族年金を受ける権利を有した者に支給する遺族年金のうち、昭和二十三年八月一日前の標準報酬のみに基いてその額を算定した遺族年金の額は、昭和二十二年改正法律附則第四條から附則第六條まで及び昭和二十三年改正法律附則第六條(同法附則第九條において準用する場合を含む。)の規定にかかわらず、昭和二十三年改正法律附則第六條第一項の規定によつて算定した額の二倍に相当する額とする。
第八條 昭和二十六年二月一日において遺族年金を受ける権利を有した者に支給する遺族年金のうち、昭和二十三年八月一日前の標準報酬及び同日以後の標準報酬に基いてその額を算定した遺族年金の額は、昭和二十二年改正法律附則第五條又は附則第六條及び昭和二十三年改正法律附則第九條において準用する同法附則第六條の規定にかかわらず、平均報酬月額の二月分に相当する額とする。
2 前項の平均報酬月額は、左の各号に掲げる額のうち、最も大きいものとする。
一 被保險者又は被保險者であつた者の死亡の原因となつた疾病又は負傷の発した日の属する月前三月間の標準報酬月額を平均した額
二 被保險者の資格喪失の日の属する月前三月間の標準報酬月額を平均した額
三 障害年金を受ける者が死亡したことによる遺族年金については、その障害年金の額の計算の基礎となつた標準報酬月額
3 第三條第三項の規定は、前項の規定により平均報酬月額を定める場合に準用する。
第九條 前條の規定により遺族年金の額を算定する場合において、その額が昭和二十三年八月一日前の標準報酬のみに基いて算定されるときは、その遺族年金の額は、同條並びに昭和二十二年改正法律附則第五條又は附則第六條及び昭和二十三年改正法律附則第九條において準用する同法附則第六條の規定にかかわらず、前條による額の十倍に相当する額とする。
第十條 第七條から前條までの規定によつて算定した遺族年金の額が、一万二千円をこえるときは、その遺族年金の額は、これらの規定にかかわらず、一万二千円とする。
第十一條 被保險者又は被保險者であつた者の子が遺族年金を受ける場合において、その子が二人以上であるときは、遺族年金の額は、第七條から前條までの規定によつて算定した額に、その子のうち一人を除いた子一人について二千四百円を増額するものとする。
(既得権の尊重)
第十二條 第二條から前條までの規定によつて算定した障害年金又は遺族年金の額が従前の額より少いときは、その障害年金又は遺族年金の額は、これらの規定にかかわらず、従前の額とする。
(加給金)
第十三條 昭和二十三年改正法律附則第五條第二項及び第三項の規定は、第二條から第六條まで及び前條の規定によりその額を算定する障害年金に対する加給について、同法附則第七條の規定は、第七條から第十條まで及び前條の規定によりその額を算定する遺族年金に対する加給について、それぞれ、準用する。
(将来の遺族年金に対する措置)
第十四條 第七條から第十二條までの規定は、昭和二十六年二月二日以後において、昭和二十二年改正法律附則第六條の規定によつて遺族年金を受ける権利を有するに至る者に支給する遺族年金の額の算定について、前條の規定は、その遺族年金に対する加給について、それぞれ、準用する。
附 則
この法律は、昭和二十六年四月一日から施行し、同年二月分以降の障害年金及び遺族年金について適用する。
大蔵大臣 池田勇人
厚生大臣 黒川武雄
内閣総理大臣 吉田茂
厚生年金保険法特例をここに公布する。
御名御璽
昭和二十六年三月二十七日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第三十八号
厚生年金保険法特例
(目的)
第一条 この法律は、厚生年金保険法(昭和十六年法律第六十号)による障害年金及び遺族年金であつて、昭和二十三年八月一日(厚生年金保険法等の一部を改正する法律(昭和二十三年法律第百二十七号。以下「昭和二十三年改正法律」という。)の施行の日)前の標準報酬をその額の算定の基礎としたものについて、その額を増額することを目的とする。
(障害年金の増額)
第二条 昭和二十六年二月一日において障害年金を受ける権利を有した者に支給する障害年金のうち、昭和二十三年八月一日前の標準報酬のみに基いてその額を算定した障害年金の額は、厚生年金保険法第三十七条第一項又は健康保険法の一部を改正する等の法律(昭和二十二年法律第四十五号。以下「昭和二十二年改正法律」という。)附則第四条若しくは附則第五条及び昭和二十三年改正法律附則第五条第一項(同法附則第八条において準用する場合を含む。)又は厚生年金保険法等の一部を改正する法律(昭和二十四年法律第三十八号。以下「昭和二十四年改正法律」という。)附則第四項(同法附則第六項において準用する場合を含む。)の規定にかかわらず、従前の障害年金の額の二倍に相当する額とする。
第三条 昭和二十六年二月一日において障害年金を受ける権利を有した者に支給する障害年金のうち、昭和二十二年改正法律附則第五条の規定による障害年金であつて、昭和二十三年八月一日前の標準報酬及び同日以後の標準報酬に基いてその額を算定したものの額は、同条及び昭和二十三年改正法律附則第八条において準用する同法附則第五条第一項の規定にかかわらず、労働者年金保険法施行令中改正の件(昭和十九年勅令第三百六十三号)別表第一に定める業務上の事由に因る廃疾の程度一級から三級までに該当したことによつて障害年金を受ける者(以下「旧法による第一種障害年金受給者」という。)に支給するものにあつては、平均報酬月額の五月分に相当する額とし、その他の者(以下「旧法による第二種障害年金受給者」という。)に支給するものにあつては、平均報酬月額の四月分に相当する額とする。
2 前項の平均報酬月額は、左の各号に掲げる額のうち、最も大きいものとする。
一 廃疾の原因となつた疾病又は負傷の発した日の属する月前三月間(継続して被保険者であつた期間が三月未満であるときは、その期間。以下同じ。)の標準報酬月額を平均した額
二 廃疾となつた日の属する月前三月間の標準報酬月額を平均した額
三 廃疾前に被保険者の資格を喪失した場合においては、資格喪失の日の属する月前三月間の標準報酬月額を平均した額
3 前項の規定により平均報酬月額を定める場合において、同項各号に規定する期間が、昭和二十三年八月一日の前後にまたがるときは、同項各号に規定する額は、同日以後の期間のみによつて算定するものとする。
第四条 前条の規定により障害年金の額を算定する場合において、その額が昭和二十三年八月一日前の標準報酬のみに基いて算定されるときは、その障害年金の額は、同条並びに昭和二十二年改正法律附則第五条及び昭和二十三年改正法律附則第八条において準用する同法附則第五条第一項の規定にかかわらず、前条による額の十倍に相当する額とする。
第五条 第三条第三項の規定は、昭和二十三年改正法律附則第三条の規定により平均標準報酬月額を定める場合に準用する。
第六条 第二条から前条までの規定によつて算定した障害年金の額が、厚生年金保険法別表第一に定める廃疾の程度一級に該当したことによつて障害年金を受ける者又は旧法による第一種障害年金受給者にあつては、三万円、同表第一に定める廃疾の程度二級に該当したことによつて障害年金を受ける者又は旧法による第二種障害年金受給者にあつては、二万四千円をこえるときは、その障害年金の額は、これらの規定にかかわらず、それぞれ、三万円又は二万四千円とする。
(遺族年金の増額)
第七条 昭和二十六年二月一日において遺族年金を受ける権利を有した者に支給する遺族年金のうち、昭和二十三年八月一日前の標準報酬のみに基いてその額を算定した遺族年金の額は、昭和二十二年改正法律附則第四条から附則第六条まで及び昭和二十三年改正法律附則第六条(同法附則第九条において準用する場合を含む。)の規定にかかわらず、昭和二十三年改正法律附則第六条第一項の規定によつて算定した額の二倍に相当する額とする。
第八条 昭和二十六年二月一日において遺族年金を受ける権利を有した者に支給する遺族年金のうち、昭和二十三年八月一日前の標準報酬及び同日以後の標準報酬に基いてその額を算定した遺族年金の額は、昭和二十二年改正法律附則第五条又は附則第六条及び昭和二十三年改正法律附則第九条において準用する同法附則第六条の規定にかかわらず、平均報酬月額の二月分に相当する額とする。
2 前項の平均報酬月額は、左の各号に掲げる額のうち、最も大きいものとする。
一 被保険者又は被保険者であつた者の死亡の原因となつた疾病又は負傷の発した日の属する月前三月間の標準報酬月額を平均した額
二 被保険者の資格喪失の日の属する月前三月間の標準報酬月額を平均した額
三 障害年金を受ける者が死亡したことによる遺族年金については、その障害年金の額の計算の基礎となつた標準報酬月額
3 第三条第三項の規定は、前項の規定により平均報酬月額を定める場合に準用する。
第九条 前条の規定により遺族年金の額を算定する場合において、その額が昭和二十三年八月一日前の標準報酬のみに基いて算定されるときは、その遺族年金の額は、同条並びに昭和二十二年改正法律附則第五条又は附則第六条及び昭和二十三年改正法律附則第九条において準用する同法附則第六条の規定にかかわらず、前条による額の十倍に相当する額とする。
第十条 第七条から前条までの規定によつて算定した遺族年金の額が、一万二千円をこえるときは、その遺族年金の額は、これらの規定にかかわらず、一万二千円とする。
第十一条 被保険者又は被保険者であつた者の子が遺族年金を受ける場合において、その子が二人以上であるときは、遺族年金の額は、第七条から前条までの規定によつて算定した額に、その子のうち一人を除いた子一人について二千四百円を増額するものとする。
(既得権の尊重)
第十二条 第二条から前条までの規定によつて算定した障害年金又は遺族年金の額が従前の額より少いときは、その障害年金又は遺族年金の額は、これらの規定にかかわらず、従前の額とする。
(加給金)
第十三条 昭和二十三年改正法律附則第五条第二項及び第三項の規定は、第二条から第六条まで及び前条の規定によりその額を算定する障害年金に対する加給について、同法附則第七条の規定は、第七条から第十条まで及び前条の規定によりその額を算定する遺族年金に対する加給について、それぞれ、準用する。
(将来の遺族年金に対する措置)
第十四条 第七条から第十二条までの規定は、昭和二十六年二月二日以後において、昭和二十二年改正法律附則第六条の規定によつて遺族年金を受ける権利を有するに至る者に支給する遺族年金の額の算定について、前条の規定は、その遺族年金に対する加給について、それぞれ、準用する。
附 則
この法律は、昭和二十六年四月一日から施行し、同年二月分以降の障害年金及び遺族年金について適用する。
大蔵大臣 池田勇人
厚生大臣 黒川武雄
内閣総理大臣 吉田茂