低性能船舶買入法
法令番号: 法律第二百四十二号
公布年月日: 昭和25年8月10日
法令の形式: 法律
低性能船舶買入法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十五年八月十日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第二百四十二号
低性能船舶買入法
(目的)
第一條 この法律は、低性能船舶を政府が買い入れることにより内航における過剰船腹を減少させ、もつて内航海運事業の正常な運営に資することを目的とする。
(定義)
第二條 この法律において、「低性能船舶」とは、左に掲げる船舶であつて、総トン数八百トン以上の鋼製のもの(重量トン数が総トン数の六十パーセント未満のものを除く。)をいう。
一 戦時標準型の船舶(海上ニ於ケル人命ノ安全ノ為ノ国際條約及国際満載吃水線條約ニ依ル証書ニ関スル件(昭和十年逓信省令第二十二号)に規定する国際満載吃水線証書を受有するものを除く。)
二 大正十年八月以前に進水した船舶
(買入)
第三條 政府は、低性能船舶で左の各号に掲げる設備を有するものを所有者(船舶公団と共有関係にある船舶については、船舶公団以外の共有者。以下同じ。)の申込により買い入れるものとする。但し、この法律施行の際現に沈没している船舶若しくは大修繕を要する船舶、この法律施行の後沈没した船舶若しくは大修繕を要することとなつた船舶又は日本專売公社、日本国有鉄道若しくは地方公共団体の所有する船舶については、この限りでない。
一 ハツチその他の船体開口部の閉鎖裝置
二 諸管
三 手動の操だ設備
四 端艇一隻
五 けい帶用消火器及び消防手おけ
六 てい泊油燈及び黒球
七 いかり、びよう鎖及び索
八 揚びよう機
九 手動ビルヂポンプ
十 タラツプ
十一 その他運輸大臣が船舶をけい留して管理するのに必要であると認めて告示したもの
2 前項の規定による買入は、買入の価格の総額が二十七億円をこえない範囲内でされなければならない。
3 第一項の規定による買入に係る船舶については、航海の制限等に関する件(昭和二十年運輸省令第四十号)第二條の規定は、適用しない。
(買入価格)
第四條 前條の規定による船舶の買入の価格は、左に掲げる通りとする。
船舶の区分
買入価格
総トン数五千トン以上の船舶
 四千六百六円に当該船舶の総トン数を乘じて得た金額
総トン数五千トン未満二千トン以上の船舶
 七千三十七円に当該船舶の総トン数を乘じて得た金額。但し、その金額が二千三百三万円をこえることとなるときは、二千三百三万円
総トン数二千トン未満の船舶
 八千八百九十円に当該船舶の総トン数を乘じて得た金額。但し、その金額が一千四百七万四千円をこえることとなるときは、一千四百七万四千円
(申込の期間)
第五條 第三條の買入の申込をすることができる期間は、昭和二十五年九月一日から同月三十日までとする。
(買入の順位)
第六條 前條の申込の期間内に買入の申込のあつた船舶のすべてを買い入れることにより第三條第二項の制限をこえることとなる場合の買入の順位は、買入の申込をした者がその買入について定める順位(買入の申込をした者の申込に係る船舶が一隻である場合には、その順位は、第一順位とする。)により、同順位の申込については抽せんによる。
(買入契約)
第七條 買入契約は、文書をもつて締結し、その文書には、少くとも左の事項が記載されなければならない。
一 当該船舶の名称、番号及び信号符字
二 当該船舶の買入の価格
三 当該船舶の引渡の時期及び場所
四 当該船舶が船舶公団との共有に属する場合における船舶公団の持分の買取に関する事項
五 当該船舶の上に先取特権又は抵当権が存する場合における先取特権又は抵当権の消滅に関する事項
六 当該船舶の主汽罐及び主機関の除去又は破壞に関する事項
(買入契約の解除)
第八條 運輸大臣は、左の各号の場合には、買入契約を解除しなければならない。
一 買入契約の目的物たる船舶が船舶公団との共有に属する場合において、買入契約で定める引渡の日までに船舶公団以外の共有者が船舶公団の持分の買取を行わなかつたとき。
二 買入契約の目的物たる船舶の上に先取特権又は抵当権が存する場合において、買入契約で定める引渡の日までに先取特権又は抵当権を消滅させなかつたとき。
三 買入契約で定める引渡の日までに買入契約の目的物たる船舶の主汽罐及び主機関を除去せず、且つ、これらを修復することが採算上困難な程度に破壞しなかつたとき。
(支拂方法)
第九條 運輸大臣は、買入契約の目的物たる船舶の引渡を受けた後に当該船舶の対価を支拂うものとする。
第十條 前條の支拂は、買入契約で定めるところにより、銀行(日本銀行を除く。)に設けられた当該船舶を政府に売却した者の別段預金の勘定に拂い込むものとする。
(拂戻の制限)
第十一條 買入契約においては、当該船舶を政府に売却した者が前條の規定によりその別段預金の勘定に拂い込まれた金額を、左の各号に掲げる債務を弁済する場合、左の各号に掲げる債務を完済した場合又は左の各号に掲げる債務がない場合の外拂戻を請求しない旨を定めなければならない。
一 当該船舶を政府に売却した者が、その売却にあたりその使用人が組織する労働組合との間に使用人に対する退職金の支拂のための労働協約を締結した場合におけるその退職金の債務
二 当該船舶を政府に売却した者が、この法律公布の際当該船舶に関し有する債務
三 当該船舶を政府に売却した者が、第八條第一号に掲げる船舶公団の持分の買取又は同條第二号に掲げる先取特権若しくは抵当権の消滅のため有することとなつた債務
(所有権移転の時期)
第十二條 買入契約の目的物たる船舶の所有権は、当該船舶の引渡の時に移転する。
(登記のまつ消等)
第十三條 国が買入契約の目的物たる船舶の所有権を取得したときは、運輸大臣は、速かに、当該船舶(以下「買入船がい」という。)の登記のまつ消の嘱託及びまつ消の登録をしなければならない。
(管理)
第十四條 買入船がいは、運輸大臣が管理する。
(保管)
第十五條 買入契約の目的物たる船舶を政府に売却した者は、買入契約で定めるところにより、当該買入船がいを次條の規定により運輸大臣が大蔵大臣に引き継ぐまでの間保管しなければならない。この場合において、その保管の期間は、昭和二十六年七月三十一日以後にわたることはない。
(売拂)
第十六條 運輸大臣は、買入船がいを売り拂おうとするときは、当該買入船がいを大蔵大臣に引き継がなければならない。
2 大蔵大臣は、遅滯なく、買入船がいを、解撤して鉄くずとする者に売り拂うものとする。
3 大蔵大臣は、昭和二十六年七月三十一日までに買入船がいの売拂ができないときは、同年九月三十日までに解撤し、又は破棄しなければならない。
(解撤の義務)
第十七條 買入船がいを政府から買い受けた者は、昭和二十六年九月三十日までに、当該買入船がいの船体から、これに使用している鋼製の部分の重量の少くとも四分の一に相当する重量の鋼製の部分を除去することに努めなければならない。
(譲渡等の禁止)
第十八條 買入船がいを政府から買い受けた者は、当該買入船がいを譲り渡し、貸し渡し、又は担保に供してはならない。
(優先的取扱の禁止)
第十九條 この法律の規定に基き、低性能船舶を政府に売却した者は、船舶の製造に関し、運輸大臣その他の政府機関によつて特に有利な取扱を受けることがない。
(罰則)
第二十條 第十八條の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から施行する。但し、附則第二項から第四項までの規定は、昭和二十五年十月一日から施行する。
(船舶運航令の改正)
2 船舶運航令(昭和二十五年政令第四十八号)の一部を次のように改正する。
目次中「第二章 内航船舶(第四條―第十一條)」を「第二章 削除」に改める。
第二章を次のように改める。
第二章 削除
第四條から第十一條まで 削除
(経過規定)
3 昭和二十五年九月三十日までに引き続き三十日以上したけい船に係るけい船補助金の支給については、なお従前の例による。
4 政府は、船舶運航令に規定する内航船舶の所有者(船舶共有の場合には船舶管理人、船舶貸借(期間よう船を含む。)の場合には船舶借入人)が、その船舶をこの法律施行の際現にけい船し、昭和二十五年九月三十日までに引き続き十日以上三十日未満の期間けい船したときは、その者に対し、けい船補助金を交付する。この場合においてけい船補助金の支給については、改正前の船舶運航令の規定の例による。
大蔵大臣 池田勇人
運輸大臣 山崎猛
内閣総理大臣 吉田茂
低性能船舶買入法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十五年八月十日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第二百四十二号
低性能船舶買入法
(目的)
第一条 この法律は、低性能船舶を政府が買い入れることにより内航における過剰船腹を減少させ、もつて内航海運事業の正常な運営に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において、「低性能船舶」とは、左に掲げる船舶であつて、総トン数八百トン以上の鋼製のもの(重量トン数が総トン数の六十パーセント未満のものを除く。)をいう。
一 戦時標準型の船舶(海上ニ於ケル人命ノ安全ノ為ノ国際条約及国際満載吃水線条約ニ依ル証書ニ関スル件(昭和十年逓信省令第二十二号)に規定する国際満載吃水線証書を受有するものを除く。)
二 大正十年八月以前に進水した船舶
(買入)
第三条 政府は、低性能船舶で左の各号に掲げる設備を有するものを所有者(船舶公団と共有関係にある船舶については、船舶公団以外の共有者。以下同じ。)の申込により買い入れるものとする。但し、この法律施行の際現に沈没している船舶若しくは大修繕を要する船舶、この法律施行の後沈没した船舶若しくは大修繕を要することとなつた船舶又は日本専売公社、日本国有鉄道若しくは地方公共団体の所有する船舶については、この限りでない。
一 ハツチその他の船体開口部の閉鎖装置
二 諸管
三 手動の操だ設備
四 端艇一隻
五 けい帯用消火器及び消防手おけ
六 てい泊油灯及び黒球
七 いかり、びよう鎖及び索
八 揚びよう機
九 手動ビルヂポンプ
十 タラツプ
十一 その他運輸大臣が船舶をけい留して管理するのに必要であると認めて告示したもの
2 前項の規定による買入は、買入の価格の総額が二十七億円をこえない範囲内でされなければならない。
3 第一項の規定による買入に係る船舶については、航海の制限等に関する件(昭和二十年運輸省令第四十号)第二条の規定は、適用しない。
(買入価格)
第四条 前条の規定による船舶の買入の価格は、左に掲げる通りとする。
船舶の区分
買入価格
総トン数五千トン以上の船舶
 四千六百六円に当該船舶の総トン数を乗じて得た金額
総トン数五千トン未満二千トン以上の船舶
 七千三十七円に当該船舶の総トン数を乗じて得た金額。但し、その金額が二千三百三万円をこえることとなるときは、二千三百三万円
総トン数二千トン未満の船舶
 八千八百九十円に当該船舶の総トン数を乗じて得た金額。但し、その金額が一千四百七万四千円をこえることとなるときは、一千四百七万四千円
(申込の期間)
第五条 第三条の買入の申込をすることができる期間は、昭和二十五年九月一日から同月三十日までとする。
(買入の順位)
第六条 前条の申込の期間内に買入の申込のあつた船舶のすべてを買い入れることにより第三条第二項の制限をこえることとなる場合の買入の順位は、買入の申込をした者がその買入について定める順位(買入の申込をした者の申込に係る船舶が一隻である場合には、その順位は、第一順位とする。)により、同順位の申込については抽せんによる。
(買入契約)
第七条 買入契約は、文書をもつて締結し、その文書には、少くとも左の事項が記載されなければならない。
一 当該船舶の名称、番号及び信号符字
二 当該船舶の買入の価格
三 当該船舶の引渡の時期及び場所
四 当該船舶が船舶公団との共有に属する場合における船舶公団の持分の買取に関する事項
五 当該船舶の上に先取特権又は抵当権が存する場合における先取特権又は抵当権の消滅に関する事項
六 当該船舶の主汽缶及び主機関の除去又は破壊に関する事項
(買入契約の解除)
第八条 運輸大臣は、左の各号の場合には、買入契約を解除しなければならない。
一 買入契約の目的物たる船舶が船舶公団との共有に属する場合において、買入契約で定める引渡の日までに船舶公団以外の共有者が船舶公団の持分の買取を行わなかつたとき。
二 買入契約の目的物たる船舶の上に先取特権又は抵当権が存する場合において、買入契約で定める引渡の日までに先取特権又は抵当権を消滅させなかつたとき。
三 買入契約で定める引渡の日までに買入契約の目的物たる船舶の主汽缶及び主機関を除去せず、且つ、これらを修復することが採算上困難な程度に破壊しなかつたとき。
(支払方法)
第九条 運輸大臣は、買入契約の目的物たる船舶の引渡を受けた後に当該船舶の対価を支払うものとする。
第十条 前条の支払は、買入契約で定めるところにより、銀行(日本銀行を除く。)に設けられた当該船舶を政府に売却した者の別段預金の勘定に払い込むものとする。
(払戻の制限)
第十一条 買入契約においては、当該船舶を政府に売却した者が前条の規定によりその別段預金の勘定に払い込まれた金額を、左の各号に掲げる債務を弁済する場合、左の各号に掲げる債務を完済した場合又は左の各号に掲げる債務がない場合の外払戻を請求しない旨を定めなければならない。
一 当該船舶を政府に売却した者が、その売却にあたりその使用人が組織する労働組合との間に使用人に対する退職金の支払のための労働協約を締結した場合におけるその退職金の債務
二 当該船舶を政府に売却した者が、この法律公布の際当該船舶に関し有する債務
三 当該船舶を政府に売却した者が、第八条第一号に掲げる船舶公団の持分の買取又は同条第二号に掲げる先取特権若しくは抵当権の消滅のため有することとなつた債務
(所有権移転の時期)
第十二条 買入契約の目的物たる船舶の所有権は、当該船舶の引渡の時に移転する。
(登記のまつ消等)
第十三条 国が買入契約の目的物たる船舶の所有権を取得したときは、運輸大臣は、速かに、当該船舶(以下「買入船がい」という。)の登記のまつ消の嘱託及びまつ消の登録をしなければならない。
(管理)
第十四条 買入船がいは、運輸大臣が管理する。
(保管)
第十五条 買入契約の目的物たる船舶を政府に売却した者は、買入契約で定めるところにより、当該買入船がいを次条の規定により運輸大臣が大蔵大臣に引き継ぐまでの間保管しなければならない。この場合において、その保管の期間は、昭和二十六年七月三十一日以後にわたることはない。
(売払)
第十六条 運輸大臣は、買入船がいを売り払おうとするときは、当該買入船がいを大蔵大臣に引き継がなければならない。
2 大蔵大臣は、遅滞なく、買入船がいを、解撤して鉄くずとする者に売り払うものとする。
3 大蔵大臣は、昭和二十六年七月三十一日までに買入船がいの売払ができないときは、同年九月三十日までに解撤し、又は破棄しなければならない。
(解撤の義務)
第十七条 買入船がいを政府から買い受けた者は、昭和二十六年九月三十日までに、当該買入船がいの船体から、これに使用している鋼製の部分の重量の少くとも四分の一に相当する重量の鋼製の部分を除去することに努めなければならない。
(譲渡等の禁止)
第十八条 買入船がいを政府から買い受けた者は、当該買入船がいを譲り渡し、貸し渡し、又は担保に供してはならない。
(優先的取扱の禁止)
第十九条 この法律の規定に基き、低性能船舶を政府に売却した者は、船舶の製造に関し、運輸大臣その他の政府機関によつて特に有利な取扱を受けることがない。
(罰則)
第二十条 第十八条の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から施行する。但し、附則第二項から第四項までの規定は、昭和二十五年十月一日から施行する。
(船舶運航令の改正)
2 船舶運航令(昭和二十五年政令第四十八号)の一部を次のように改正する。
目次中「第二章 内航船舶(第四条―第十一条)」を「第二章 削除」に改める。
第二章を次のように改める。
第二章 削除
第四条から第十一条まで 削除
(経過規定)
3 昭和二十五年九月三十日までに引き続き三十日以上したけい船に係るけい船補助金の支給については、なお従前の例による。
4 政府は、船舶運航令に規定する内航船舶の所有者(船舶共有の場合には船舶管理人、船舶貸借(期間よう船を含む。)の場合には船舶借入人)が、その船舶をこの法律施行の際現にけい船し、昭和二十五年九月三十日までに引き続き十日以上三十日未満の期間けい船したときは、その者に対し、けい船補助金を交付する。この場合においてけい船補助金の支給については、改正前の船舶運航令の規定の例による。
大蔵大臣 池田勇人
運輸大臣 山崎猛
内閣総理大臣 吉田茂