隠匿物資等緊急措置令
法令番号: 勅令第八十八號
公布年月日: 昭和21年2月17日
法令の形式: 勅令
朕玆ニ緊急ノ必要アリト認メ樞密顧問ノ諮詢ヲ經テ帝國憲法第八條第一項ニ依リ隱匿物資等緊急措置令ヲ裁可シ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和二十一年二月十七日
內閣總理大臣兼第一復員大臣 第二復員大臣 男爵 幣原喜重郞
內務大臣 三土忠造
司法大臣 岩田宙造
外務大臣 吉田茂
國務大臣 松本烝治
厚生大臣 芦田均
大藏大臣 子爵 澁澤敬三
商工大臣 小笠原三九郞
國務大臣 小林一三
文部大臣 安倍能成
農林大臣 副島千八
運輸大臣 村上義一
勅令第八十八號
隱匿物資等緊急措置令
第一條 本令施行ノ際現ニ別表ニ揭グル物資(以下調查物資ト稱ス)ヲ所有シ又ハ占有スル者ハ本令施行ノ日ニ於テ所有シ又ハ占有スル調查物資ニ付左ニ揭グル事項ヲ記載シタル報吿書三通ヲ昭和二十一年三月十日迄ニ當該物資ノ所在ノ場所ヲ管轄スル地方長官ヲ經由シ商工大臣ニ提出スベシ但シ商工大臣ノ指定スル數量ニ滿タザル數量ノ調查物資ヲ所有シ又ハ占有スル者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
一 所有シ又ハ占有スル本人ノ氏名又ハ名稱、住所及職業又ハ事業
二 當該物資ニ付本人以外ノ所有者又ハ占有者ノ有スル場合ニ於テハ其ノ者ノ氏名又ハ名稱、住所及職業又ハ事業
三 當該物資ノ名稱、數量及所在ノ場所竝ニ本令施行前一年間ニ入手シタルモノニ付テハ其ノ旨
四 所有又ハ占有ノ目的
五 入手ノ經路
六 最近四月間ノ使用又ハ販賣ノ數量及今後四月間ノ使用又ハ販賣ノ見込數量
七 其ノ他必要ト認ムル事項
調查物資ニシテ世帶ヲ同ジクスル戶主及家族ノ所有シ又ハ占有スルモノ(戶主及家族ノ業務上所有シ又ハ占有スルモノヲ除ク以下同ジ)ニ付テハ前項本文ノ規定ニ拘ラズ世帶主ハ同項ニ揭グル事項ヲ同一ノ報吿書ニ取纏メ記載シ之ヲ提出スベシ此ノ場合ニ於テハ同項但書ノ規定ハ調查物資ニシテ世帶ヲ同ジクスル戶主及家族ノ所有シ又ハ占有スルモノノ合計數量ニ付之ヲ適用ス
世帶ヲ同ジクスル戶主及家族ニシテ世帶主以外ノモノハ其ノ所有シ又ハ占有スル調查物資ニ關スル記載ニ付前項ノ規定ニ依ル世帶主ノ報吿書ノ作成ニ對シ協力スベシ
第一項ノ規定ハ昭和二十年商工農林省令第一號第一條ノ規定ノ適用ヲ受クル者ノ所有ニ係ル絹紡絲、柞蠶絲又ハ絹製品ニ付テハ之ヲ適用セズ
第二條 前條ノ規定ニ依リ報吿書ヲ提出スベキ調查物資ヲ所有シ又ハ占有スル者ハ本令施行ノ日ヨリ昭和二十一年四月二十日ニ至ル期間當該物資ヲ讓渡シ又ハ隱匿若ハ退藏ノ目的ヲ以テ其ノ形質ヲ變更シ若ハ之ヲ移動スルコトヲ得ズ但シ左ノ各號ノ一ニ該當スル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
一 物資統制令又ハ昭和十二年法律第九十二號ニ基キテ發スル命令ノ定ムル所ニ從ヒ又ハ此等ノ命令ニ基ク處分ニ依リ調查物資ヲ讓渡スル場合
二 重要產業團體令ニ依ル統制會ノ統制規程又ハ商工組合法ニ依ル統制組合ノ統制規程ノ定ムル所ニ從ヒ調查物資ヲ讓渡スル場合
三 商工大臣又ハ地方長官ノ指示スル配給經路ニ從ヒ調查物資ヲ讓渡スル場合
四 商工大臣ノ指定スル者(以下統制機關ト稱ス)ガ調查物資ヲ讓渡スル場合
五 統制機關ニ對シ調查物資ヲ讓渡スル場合
六 統制機關ノ指示ニ基キ調查物資ヲ讓渡スル場合
七 農業團體法ニ依ル農業團體、水產業團體法ニ依ル水產業團體、森林法ニ依ル森林組合又ハ市町村其ノ他ノ公共團體ガ調查物資ヲ讓渡スル場合
八 工場又ハ事業場ニ於テ其ノ從業者ニ對シ其ノ業務上必要トスル數量ノ調查物資ヲ讓渡スル場合
九 小賣業者ガ消費者ニ對シ調查物資ヲ讓渡スル場合
十 特別ノ事情ニ依リ商工大臣又ハ地方長官ノ許可ヲ受ケ讓渡スル場合
前項ノ規定ニ依リ調查物資ノ讓渡ノ禁止セラレタル場合ニ於テハ當該物資ハ之ヲ讓受クルコトヲ得ズ
第三條 主務大臣又ハ地方長官調查物資又ハ調查物資以外ノ國民生活ノ安定ヲ確保スル爲必要ナル物資ニシテ主務大臣ノ指定スルモノ(以下指定物資ト稱ス)ノ配給ノ適正又ハ價格ノ安定其ノ他國民經濟ノ正常ナル運行ヲ圖ル爲必要アリト認ムルトキハ調查物資又ハ指定物資ヲ隱匿シ又ハ退藏スト認メラルル所有者其ノ他此等ノ物資ヲ多量ニ所有スル者ニ對シ期間其ノ他必要ナル事項ヲ指定シテ當該物資ノ讓渡其ノ他ノ處分ヲ禁止シ又ハ讓渡ノ時期、價格、相手方其ノ他必要ナル事項ヲ指定シテ當該物資ノ讓渡ヲ命ズルコトヲ得
主務大臣又ハ地方長官前項ノ規定ニ依ル讓渡其ノ他ノ處分ノ禁止ノ命令ヲ爲シタル場合又ハ調查物資若ハ指定物資ノ所有者知レザル場合其ノ他所有者ニ對シ當該物資ニ付同項ノ規定ニ依ル讓渡其ノ他ノ處分ノ禁止ノ命令ヲ爲スコト著シク困難ナル場合ニ於テ必要アリト認ムルトキハ當該物資ヲ占有スル者ニ對シ期間其ノ他必要ナル事項ヲ指定シテ當該物資ノ引渡其ノ他ノ處分ヲ禁止スルコトヲ得
主務大臣又ハ地方長官第一項ノ規定ニ依ル讓渡ノ命令ヲ爲シタル場合又ハ調查物資若ハ指定物資ノ所有者知レザル場合其ノ他所有者ニ對シ同項ノ規定ニ依ル讓渡ノ命令ヲ爲スコト著シク困難ナル場合ニ於テ必要アリト認ムルトキハ當該物資ヲ占有スル者ニ對シ引渡ノ時期、相手方其ノ他必要ナル事項ヲ指定シテ之ガ引渡ヲ命ズルコトヲ得
主務大臣又ハ地方長官調查物資又ハ指定物資ノ所有者知レザル場合其ノ他所有者ニ對シ第一項ノ規定ニ依ル讓渡命令ヲ爲スコト著シク困難ナル場合ニ於テ前項ノ規定ニ依ル引渡ノ命令ヲ爲シタルトキハ當該物資ノ引渡ノ相手方ヲシテ其ノ對價ヲ供託セシムベシ此ノ場合ニ於テハ當該物資ノ引渡ノ相手方其ノ供託ヲ爲シタル時當該物資ノ讓渡ヲ受ケタルモノト看做ス
第四條 調查物資又ハ指定物資ヲ隱匿シ又ハ退藏スト認メラルル所有者其ノ他此等ノ物資ヲ多量ニ所有スル者ハ主務大臣又ハ地方長官ノ指定スル者ガ讓渡ヲ受クベキ調查物資又ハ指定物資ノ名稱、數量及價格、所有者、讓渡ノ時期其ノ他必要ナル事項ニ付主務大臣又ハ地方長官ノ認可ヲ受ケ之ガ讓渡ヲ求メタルトキハ之ヲ拒ムコトヲ得ズ但シ特別ノ事由アル場合ニ於テ主務大臣又ハ地方長官ノ許可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
調查物資又ハ指定物資ヲ占有スル者ハ前項ノ規定ニ依リ主務大臣又ハ地方長官ノ指定スル者ガ同項ノ規定ニ依リ當該物資ノ讓渡ヲ受ケタル場合又ハ當該物資ノ所有者知レザル場合其ノ他所有者ニ對シ同項ノ規定ニ依ル讓渡ヲ求ムルコト著シク困難ナル場合ニ於テ引渡ヲ受クル當該物資ノ名稱及數量、占有者、引渡ノ時期其ノ他心要ナル事項ニ付主務大臣又ハ地方長官ノ認可ヲ受ケ之ガ引渡ヲ求メタルトキハ之ヲ拒ムコトヲ得ズ但シ特別ノ事情アル場合ニ於テ主務大臣又ハ地方長官ノ許可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
前二項ノ規定ニ依ル主務大臣又ハ地方長官ノ認可ハ調查物資又ハ指定物資ノ配給ノ適正又ハ價格ノ安定其ノ他國民經濟ノ正常ナル運行ヲ圖ル爲心要アリト認ムル場合ニ於テ之ヲ爲スモノトシ主務大臣又ハ地方長官ハ其ノ認可ヲ爲シタルトキハ其ノ旨ヲ吿示スベシ
第一項ノ規定ニ依リ主務大臣又ハ地方長官ノ指定スル者ガ調查物資又ハ指定物資ノ所有者知レザル場合其ノ他所有者ニ對シ同項ノ規定ニ依ル讓渡ヲ求ムルコト著シク困難ナル場合ニ於テ第二項ノ規定ニ依リ當該物資ノ引渡ヲ受クルトキハ其ノ對價ヲ供託スベシ
前條第四項後段ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第五條 調查物資又ハ指定物資ニ關シ强制競賣手續、國稅徵收法ニ依ル强制徵收手續、要求物資使用收用令ニ依ル使用又ハ收用ノ手續其ノ他此等ニ準ズベキモノノ進行中ナルトキハ其ノ進行中ニ限リ當該物資ニ關シテハ前二條ノ規定ハ之ヲ適用セズ
第六條 第三條又ハ第四條ノ規定ニ依ル調查物資又ハ指定物資ノ讓渡ハ他ノ法令ニ拘ラズ其ノ效力ヲ有ス
第三條又ハ第四條ノ規定ニ依リ讓渡スベキ調查物資又ハ指定物資ガ知レタル擔保權ノ目的タル場合ニ於テハ當該物資ノ讓渡ヲ受クル者ハ其ノ對價ヲ供託スベシ
第三條又ハ第四條ノ規定ニ依ル調查物資又ハ指定物資ノ讓渡又ハ引渡アリタル場合ニ於テハ當該物資ニ付存シタル擔保權ハ他ノ法令ニ拘ラズ所有權移轉ノ時ヨリ之ヲ行フコトヲ得ズ
第三條又ハ第四條ノ規定ニ依リ讓渡又ハ引渡ヲ命ゼラレタル調查物資又ハ指定物資ニ付擔保權ヲ有シタル者ハ第三條第四項、第四條第四項又ハ第二項ノ規定ニ依ル供託金ニ對シ其ノ權利ヲ行フコトヲ得
第七條 主務大臣又ハ地方長官ハ調查物資若ハ指定物資ニ付關係者ヨリ必要ナル報吿ヲ徵シ又ハ當該官吏ヲシテ工場、事業場、店舖、倉庫其ノ他ノ場所ニ臨檢シ業務ノ狀況若ハ調查物資、指定物資、書類、帳簿等ヲ檢查セシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ當該官吏ヲシテ臨檢檢查セシムル場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス證票ヲ携帶セシムベシ
前項ノ證票ノ樣式ハ主務大臣之ヲ定ム
第八條 主務大臣又ハ地方長官必要アリト認ムルトキハ關係アル法人其ノ他ノ團體ノ職員ヲシテ前條ノ規定ニ依ル檢查ニ關スル事務ニ從事セシムルコトヲ得
前條第二項及第三項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第一項ノ規定ニ依リ檢查ニ關スル事務ニ從事スル職員ハ之ヲ法令ニ依リ公務ニ從事スル職員ト看做ス
第九條 主務大臣又ハ地方長官必要アリト認ムルトキハ市町村長又ハ之ニ準ズベキモノヲシテ本令ニ依ル調查物資ニ關スル調查ノ實施上必要ナル事務ヲ行ハシムルコトヲ得
第十條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ三年以下ノ懲役又ハ一萬圓以下ノ罰金ニ處ス
一 第一條ノ規定ニ違反シ報吿書ノ提出ヲ怠リ、虛僞ノ報吿書ヲ提出シ又ハ世帶主ノ報吿書ノ作成ニ協力セザル者
二 第二條ノ規定ニ違反シタル者
第十一條 第三條第一項乃至第三項ノ規定ニ依ル處分又ハ第四條第一項若ハ第二項ノ規定ニ違反シタル者ハ五年以下ノ懲役又ハ五萬圓以下ノ罰金ニ處ス
第十二條 前二項ノ罪ヲ犯シタル者ニハ情狀ニ因リ懲役及罰金ヲ併科スルコトヲ得
第十三條 第七條又ハ第八條ノ規定ニ依ル當該官吏又ハ職員ノ檢查ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シタル者ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
第十四條 法人ノ代表者又ハ法人若ハ人ノ代理人、使用人其ノ他ノ從業者其ノ法人又ハ人ノ業務ニ關シ第十條又ハ第十一條ノ違反行爲ヲ爲シタルトキハ行爲者ヲ罰スルノ外其ノ法人又ハ人ニ對シ各本條ノ罰金刑ヲ科ス
附 則
本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
別表
一 石油製品(鑛物性ノ揮發油、燈油、輕油、機械油及重油ヲ謂フ)
二 糸(屑糸及生糸ヲ除ク)
三 左ニ揭グル纖維製品(中古品ヲ除ク)
イ 織物(長サ半ヤール以上ノ布ヲ謂フ)
ロ 毛布
ハ 外套(婦人子供用ノモノヲ除ク)
ニ 洋服(婦人子供用ノモノヲ除ク)
ホ 作業服
ヘ シヤツ及ズボン下
ト 軍手
チ 卷脚絆
リ 靴下
ヌ 足袋
四 纖維屑
五 生ゴム、屑ゴム及ゴム製品(地下足袋、總ゴム靴、タイヤ及チユーブヲ謂ヒ中古品ヲ除ク)
六 革及革靴(牛、馬、山羊、緬羊及豚ノ革及此等ヲ主タル材料トスル靴ヲ謂ヒ中古品ヲ除ク)
七 硬化油及脂肪酸
八 鐵鋼(銑鐵、普通鋼鋼材及特殊鋼鋼材ヲ謂フ)及鐵鋼製品(釘、鋼索及亞鉛鐵板ヲ謂フ)
九 電氣抵抗合金
十 電氣銅、黃銅及靑銅(此等ノ板、管、棒及條ヲ含ム)竝ニ此等ノ屑及故
十一 錫(板、管、棒及條ヲ含ム)竝ニ其ノ屑及故
十二 アルミニウム及ジユラルミン(此等ノ板、管、棒及條ヲ含ム)竝ニ此等ノ屑及故
十三 電動機(据付ケタルモノヲ除ク)
十四 變壓器(据付ケタルモノヲ除ク)
十五 電球(使用中ノモノヲ除ク)
十六 軸受
朕茲ニ緊急ノ必要アリト認メ枢密顧問ノ諮詢ヲ経テ帝国憲法第八条第一項ニ依リ隠匿物資等緊急措置令ヲ裁可シ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和二十一年二月十七日
内閣総理大臣兼第一復員大臣 第二復員大臣 男爵 幣原喜重郎
内務大臣 三土忠造
司法大臣 岩田宙造
外務大臣 吉田茂
国務大臣 松本烝治
厚生大臣 芦田均
大蔵大臣 子爵 渋沢敬三
商工大臣 小笠原三九郎
国務大臣 小林一三
文部大臣 安倍能成
農林大臣 副島千八
運輸大臣 村上義一
勅令第八十八号
隠匿物資等緊急措置令
第一条 本令施行ノ際現ニ別表ニ掲グル物資(以下調査物資ト称ス)ヲ所有シ又ハ占有スル者ハ本令施行ノ日ニ於テ所有シ又ハ占有スル調査物資ニ付左ニ掲グル事項ヲ記載シタル報告書三通ヲ昭和二十一年三月十日迄ニ当該物資ノ所在ノ場所ヲ管轄スル地方長官ヲ経由シ商工大臣ニ提出スベシ但シ商工大臣ノ指定スル数量ニ満タザル数量ノ調査物資ヲ所有シ又ハ占有スル者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
一 所有シ又ハ占有スル本人ノ氏名又ハ名称、住所及職業又ハ事業
二 当該物資ニ付本人以外ノ所有者又ハ占有者ノ有スル場合ニ於テハ其ノ者ノ氏名又ハ名称、住所及職業又ハ事業
三 当該物資ノ名称、数量及所在ノ場所並ニ本令施行前一年間ニ入手シタルモノニ付テハ其ノ旨
四 所有又ハ占有ノ目的
五 入手ノ経路
六 最近四月間ノ使用又ハ販売ノ数量及今後四月間ノ使用又ハ販売ノ見込数量
七 其ノ他必要ト認ムル事項
調査物資ニシテ世帯ヲ同ジクスル戸主及家族ノ所有シ又ハ占有スルモノ(戸主及家族ノ業務上所有シ又ハ占有スルモノヲ除ク以下同ジ)ニ付テハ前項本文ノ規定ニ拘ラズ世帯主ハ同項ニ掲グル事項ヲ同一ノ報告書ニ取纏メ記載シ之ヲ提出スベシ此ノ場合ニ於テハ同項但書ノ規定ハ調査物資ニシテ世帯ヲ同ジクスル戸主及家族ノ所有シ又ハ占有スルモノノ合計数量ニ付之ヲ適用ス
世帯ヲ同ジクスル戸主及家族ニシテ世帯主以外ノモノハ其ノ所有シ又ハ占有スル調査物資ニ関スル記載ニ付前項ノ規定ニ依ル世帯主ノ報告書ノ作成ニ対シ協力スベシ
第一項ノ規定ハ昭和二十年商工農林省令第一号第一条ノ規定ノ適用ヲ受クル者ノ所有ニ係ル絹紡糸、柞蚕糸又ハ絹製品ニ付テハ之ヲ適用セズ
第二条 前条ノ規定ニ依リ報告書ヲ提出スベキ調査物資ヲ所有シ又ハ占有スル者ハ本令施行ノ日ヨリ昭和二十一年四月二十日ニ至ル期間当該物資ヲ譲渡シ又ハ隠匿若ハ退蔵ノ目的ヲ以テ其ノ形質ヲ変更シ若ハ之ヲ移動スルコトヲ得ズ但シ左ノ各号ノ一ニ該当スル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
一 物資統制令又ハ昭和十二年法律第九十二号ニ基キテ発スル命令ノ定ムル所ニ従ヒ又ハ此等ノ命令ニ基ク処分ニ依リ調査物資ヲ譲渡スル場合
二 重要産業団体令ニ依ル統制会ノ統制規程又ハ商工組合法ニ依ル統制組合ノ統制規程ノ定ムル所ニ従ヒ調査物資ヲ譲渡スル場合
三 商工大臣又ハ地方長官ノ指示スル配給経路ニ従ヒ調査物資ヲ譲渡スル場合
四 商工大臣ノ指定スル者(以下統制機関ト称ス)ガ調査物資ヲ譲渡スル場合
五 統制機関ニ対シ調査物資ヲ譲渡スル場合
六 統制機関ノ指示ニ基キ調査物資ヲ譲渡スル場合
七 農業団体法ニ依ル農業団体、水産業団体法ニ依ル水産業団体、森林法ニ依ル森林組合又ハ市町村其ノ他ノ公共団体ガ調査物資ヲ譲渡スル場合
八 工場又ハ事業場ニ於テ其ノ従業者ニ対シ其ノ業務上必要トスル数量ノ調査物資ヲ譲渡スル場合
九 小売業者ガ消費者ニ対シ調査物資ヲ譲渡スル場合
十 特別ノ事情ニ依リ商工大臣又ハ地方長官ノ許可ヲ受ケ譲渡スル場合
前項ノ規定ニ依リ調査物資ノ譲渡ノ禁止セラレタル場合ニ於テハ当該物資ハ之ヲ譲受クルコトヲ得ズ
第三条 主務大臣又ハ地方長官調査物資又ハ調査物資以外ノ国民生活ノ安定ヲ確保スル為必要ナル物資ニシテ主務大臣ノ指定スルモノ(以下指定物資ト称ス)ノ配給ノ適正又ハ価格ノ安定其ノ他国民経済ノ正常ナル運行ヲ図ル為必要アリト認ムルトキハ調査物資又ハ指定物資ヲ隠匿シ又ハ退蔵スト認メラルル所有者其ノ他此等ノ物資ヲ多量ニ所有スル者ニ対シ期間其ノ他必要ナル事項ヲ指定シテ当該物資ノ譲渡其ノ他ノ処分ヲ禁止シ又ハ譲渡ノ時期、価格、相手方其ノ他必要ナル事項ヲ指定シテ当該物資ノ譲渡ヲ命ズルコトヲ得
主務大臣又ハ地方長官前項ノ規定ニ依ル譲渡其ノ他ノ処分ノ禁止ノ命令ヲ為シタル場合又ハ調査物資若ハ指定物資ノ所有者知レザル場合其ノ他所有者ニ対シ当該物資ニ付同項ノ規定ニ依ル譲渡其ノ他ノ処分ノ禁止ノ命令ヲ為スコト著シク困難ナル場合ニ於テ必要アリト認ムルトキハ当該物資ヲ占有スル者ニ対シ期間其ノ他必要ナル事項ヲ指定シテ当該物資ノ引渡其ノ他ノ処分ヲ禁止スルコトヲ得
主務大臣又ハ地方長官第一項ノ規定ニ依ル譲渡ノ命令ヲ為シタル場合又ハ調査物資若ハ指定物資ノ所有者知レザル場合其ノ他所有者ニ対シ同項ノ規定ニ依ル譲渡ノ命令ヲ為スコト著シク困難ナル場合ニ於テ必要アリト認ムルトキハ当該物資ヲ占有スル者ニ対シ引渡ノ時期、相手方其ノ他必要ナル事項ヲ指定シテ之ガ引渡ヲ命ズルコトヲ得
主務大臣又ハ地方長官調査物資又ハ指定物資ノ所有者知レザル場合其ノ他所有者ニ対シ第一項ノ規定ニ依ル譲渡命令ヲ為スコト著シク困難ナル場合ニ於テ前項ノ規定ニ依ル引渡ノ命令ヲ為シタルトキハ当該物資ノ引渡ノ相手方ヲシテ其ノ対価ヲ供託セシムベシ此ノ場合ニ於テハ当該物資ノ引渡ノ相手方其ノ供託ヲ為シタル時当該物資ノ譲渡ヲ受ケタルモノト看做ス
第四条 調査物資又ハ指定物資ヲ隠匿シ又ハ退蔵スト認メラルル所有者其ノ他此等ノ物資ヲ多量ニ所有スル者ハ主務大臣又ハ地方長官ノ指定スル者ガ譲渡ヲ受クベキ調査物資又ハ指定物資ノ名称、数量及価格、所有者、譲渡ノ時期其ノ他必要ナル事項ニ付主務大臣又ハ地方長官ノ認可ヲ受ケ之ガ譲渡ヲ求メタルトキハ之ヲ拒ムコトヲ得ズ但シ特別ノ事由アル場合ニ於テ主務大臣又ハ地方長官ノ許可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
調査物資又ハ指定物資ヲ占有スル者ハ前項ノ規定ニ依リ主務大臣又ハ地方長官ノ指定スル者ガ同項ノ規定ニ依リ当該物資ノ譲渡ヲ受ケタル場合又ハ当該物資ノ所有者知レザル場合其ノ他所有者ニ対シ同項ノ規定ニ依ル譲渡ヲ求ムルコト著シク困難ナル場合ニ於テ引渡ヲ受クル当該物資ノ名称及数量、占有者、引渡ノ時期其ノ他心要ナル事項ニ付主務大臣又ハ地方長官ノ認可ヲ受ケ之ガ引渡ヲ求メタルトキハ之ヲ拒ムコトヲ得ズ但シ特別ノ事情アル場合ニ於テ主務大臣又ハ地方長官ノ許可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
前二項ノ規定ニ依ル主務大臣又ハ地方長官ノ認可ハ調査物資又ハ指定物資ノ配給ノ適正又ハ価格ノ安定其ノ他国民経済ノ正常ナル運行ヲ図ル為心要アリト認ムル場合ニ於テ之ヲ為スモノトシ主務大臣又ハ地方長官ハ其ノ認可ヲ為シタルトキハ其ノ旨ヲ告示スベシ
第一項ノ規定ニ依リ主務大臣又ハ地方長官ノ指定スル者ガ調査物資又ハ指定物資ノ所有者知レザル場合其ノ他所有者ニ対シ同項ノ規定ニ依ル譲渡ヲ求ムルコト著シク困難ナル場合ニ於テ第二項ノ規定ニ依リ当該物資ノ引渡ヲ受クルトキハ其ノ対価ヲ供託スベシ
前条第四項後段ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第五条 調査物資又ハ指定物資ニ関シ強制競売手続、国税徴収法ニ依ル強制徴収手続、要求物資使用収用令ニ依ル使用又ハ収用ノ手続其ノ他此等ニ準ズベキモノノ進行中ナルトキハ其ノ進行中ニ限リ当該物資ニ関シテハ前二条ノ規定ハ之ヲ適用セズ
第六条 第三条又ハ第四条ノ規定ニ依ル調査物資又ハ指定物資ノ譲渡ハ他ノ法令ニ拘ラズ其ノ効力ヲ有ス
第三条又ハ第四条ノ規定ニ依リ譲渡スベキ調査物資又ハ指定物資ガ知レタル担保権ノ目的タル場合ニ於テハ当該物資ノ譲渡ヲ受クル者ハ其ノ対価ヲ供託スベシ
第三条又ハ第四条ノ規定ニ依ル調査物資又ハ指定物資ノ譲渡又ハ引渡アリタル場合ニ於テハ当該物資ニ付存シタル担保権ハ他ノ法令ニ拘ラズ所有権移転ノ時ヨリ之ヲ行フコトヲ得ズ
第三条又ハ第四条ノ規定ニ依リ譲渡又ハ引渡ヲ命ゼラレタル調査物資又ハ指定物資ニ付担保権ヲ有シタル者ハ第三条第四項、第四条第四項又ハ第二項ノ規定ニ依ル供託金ニ対シ其ノ権利ヲ行フコトヲ得
第七条 主務大臣又ハ地方長官ハ調査物資若ハ指定物資ニ付関係者ヨリ必要ナル報告ヲ徴シ又ハ当該官吏ヲシテ工場、事業場、店舗、倉庫其ノ他ノ場所ニ臨検シ業務ノ状況若ハ調査物資、指定物資、書類、帳簿等ヲ検査セシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ当該官吏ヲシテ臨検検査セシムル場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス証票ヲ携帯セシムベシ
前項ノ証票ノ様式ハ主務大臣之ヲ定ム
第八条 主務大臣又ハ地方長官必要アリト認ムルトキハ関係アル法人其ノ他ノ団体ノ職員ヲシテ前条ノ規定ニ依ル検査ニ関スル事務ニ従事セシムルコトヲ得
前条第二項及第三項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第一項ノ規定ニ依リ検査ニ関スル事務ニ従事スル職員ハ之ヲ法令ニ依リ公務ニ従事スル職員ト看做ス
第九条 主務大臣又ハ地方長官必要アリト認ムルトキハ市町村長又ハ之ニ準ズベキモノヲシテ本令ニ依ル調査物資ニ関スル調査ノ実施上必要ナル事務ヲ行ハシムルコトヲ得
第十条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ三年以下ノ懲役又ハ一万円以下ノ罰金ニ処ス
一 第一条ノ規定ニ違反シ報告書ノ提出ヲ怠リ、虚偽ノ報告書ヲ提出シ又ハ世帯主ノ報告書ノ作成ニ協力セザル者
二 第二条ノ規定ニ違反シタル者
第十一条 第三条第一項乃至第三項ノ規定ニ依ル処分又ハ第四条第一項若ハ第二項ノ規定ニ違反シタル者ハ五年以下ノ懲役又ハ五万円以下ノ罰金ニ処ス
第十二条 前二項ノ罪ヲ犯シタル者ニハ情状ニ因リ懲役及罰金ヲ併科スルコトヲ得
第十三条 第七条又ハ第八条ノ規定ニ依ル当該官吏又ハ職員ノ検査ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シタル者ハ五百円以下ノ罰金ニ処ス
第十四条 法人ノ代表者又ハ法人若ハ人ノ代理人、使用人其ノ他ノ従業者其ノ法人又ハ人ノ業務ニ関シ第十条又ハ第十一条ノ違反行為ヲ為シタルトキハ行為者ヲ罰スルノ外其ノ法人又ハ人ニ対シ各本条ノ罰金刑ヲ科ス
附 則
本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
別表
一 石油製品(鉱物性ノ揮発油、灯油、軽油、機械油及重油ヲ謂フ)
二 糸(屑糸及生糸ヲ除ク)
三 左ニ掲グル繊維製品(中古品ヲ除ク)
イ 織物(長サ半ヤール以上ノ布ヲ謂フ)
ロ 毛布
ハ 外套(婦人子供用ノモノヲ除ク)
ニ 洋服(婦人子供用ノモノヲ除ク)
ホ 作業服
ヘ シヤツ及ズボン下
ト 軍手
チ 巻脚絆
リ 靴下
ヌ 足袋
四 繊維屑
五 生ゴム、屑ゴム及ゴム製品(地下足袋、総ゴム靴、タイヤ及チユーブヲ謂ヒ中古品ヲ除ク)
六 革及革靴(牛、馬、山羊、緬羊及豚ノ革及此等ヲ主タル材料トスル靴ヲ謂ヒ中古品ヲ除ク)
七 硬化油及脂肪酸
八 鉄鋼(銑鉄、普通鋼鋼材及特殊鋼鋼材ヲ謂フ)及鉄鋼製品(釘、鋼索及亜鉛鉄板ヲ謂フ)
九 電気抵抗合金
十 電気銅、黄銅及青銅(此等ノ板、管、棒及条ヲ含ム)並ニ此等ノ屑及故
十一 錫(板、管、棒及条ヲ含ム)並ニ其ノ屑及故
十二 アルミニウム及ジユラルミン(此等ノ板、管、棒及条ヲ含ム)並ニ此等ノ屑及故
十三 電動機(据付ケタルモノヲ除ク)
十四 変圧器(据付ケタルモノヲ除ク)
十五 電球(使用中ノモノヲ除ク)
十六 軸受