関東州海運統制令
法令番号: 勅令第九十一號
公布年月日: 昭和19年2月19日
法令の形式: 勅令
朕關東州海運統制令ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十九年二月十八日
內閣總理大臣 東條英機
運輸通信大臣 八田嘉明
大東亞大臣 靑木一男
勅令第九十一號
關東州海運統制令
第一條 關東州國家總動員令ニ於テ依ルコトヲ定メタル國家總動員法(以下國家總動員法ト稱ス)第八條ノ規定ニ基ク船舶、船體、船舶用機關、艤裝品、其ノ部分品若ハ附屬品(以下船舶等ト稱ス)ノ製造若ハ修繕、海運關係事業ノ用ニ供スル物資ノ讓渡其ノ他ノ處分、使用、消費若ハ保有又ハ海運關係事業ニ於ケル貨物ノ移動ニ關スル命令、同法第十六條ノ規定ニ基ク海運關係事業ニ屬スル設備ノ新設、擴張又ハ改良ノ制限、同法第十六條ノ二ノ規定ニ基ク海運關係事業ニ屬スル設備又ハ權利ノ讓渡其ノ他ノ處分、出資又ハ使用ニ關スル命令及同法第十六條ノ三ノ規定ニ基ク海運關係事業ノ開始、委託、共同經營、讓渡、廢止若ハ休止又ハ海運關係事業ヲ營ム會社ノ合併ニ關スル命令ハ別ニ定ムルモノヲ除クノ外本令ノ定ムル所ニ依ル
第二條 本令ニ於テ海運關係事業トハ左ニ揭グル事業ニシテ滿洲國駐箚特命全權大使ノ定ムルモノヲ謂フ
一 船舶ニ依ル人若ハ物ノ運送、船舶ノ貸渡又ハ其ノ運航ノ委託ヲ爲ス事業
二 船舶等ノ製造又ハ修繕ヲ爲ス事業
三 船舶ノ運航、製造又ハ修繕ニ必要ナル多種類ノ物品ノ販賣ヲ爲ス事業
四 船舶ノ救助、引揚又ハ解撤ヲ爲ス事業
五 船舶ニ依ル人若ハ物ノ運送又ハ船舶ノ貸渡若ハ賣買ニ關スル仲立ヲ爲ス事業
六 海上運送ニ附隨シテ貨物ノ船積又ハ陸揚ノ爲荷捌、積卸又ハ艀船若ハ曳船ニ依ル運搬ヲ爲ス事業及此等ノ作業ノ請負ヲ爲ス事業
本令ニ於テ貸渡又ハ借受トハ船舶ニ付テハ期間傭船ヲ含ムモノトス
第三條 海運關係事業ヲ開始セントスル者ハ大使ノ定ムル所ニ依リ當該開始ニ付大使ノ許可ヲ受クベシ
第四條 大使海運關係事業整備ノ爲必要アリト認ムルトキハ海運關係事業ヲ營ム者(以下海運關係事業者ト稱ス)ニ對シ其ノ事業ニ屬スル設備若ハ權利若ハ其ノ事業ノ用ニ供スル物資ノ讓渡、讓受、貸渡若ハ借受ヲ命ジ又ハ其ノ事業ニ屬スル設備ノ使用ニ關シ其ノ方法ノ改善其ノ他必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル命令ヲ受ケタル者ハ他ノ法令ニ拘ラズ讓渡又ハ貸渡ヲ爲スコトヲ得
第五條 前條ノ場合ニ於ケル讓渡又ハ貸渡ノ條件ハ當事者間ノ協議ニ依ル
前項ノ協議ハ大使ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生ゼズ
第一項ノ協議調ハズ又ハ協議ヲ爲スコト能ハザルトキハ大使之ヲ裁定ス
第六條 大使海運關係事業整備ノ爲必要アリト認ムルトキハ海運關係事業者ニ對シ其ノ事業ニ屬スル設備又ハ權利ノ出資ヲ命ズルコトヲ得此ノ場合ニ於テ大使ハ出資ノ相手方ニ對シ必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得
第四條第二項及前條ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第七條 海運關係事業者其ノ事業ノ全部若ハ一部ノ讓渡、廢止若ハ休止又ハ其ノ事業ニ屬スル設備ノ讓渡、貸渡、新設、擴張若ハ改良ヲ爲サントスルトキハ大使ノ定ムル所ニ依リ其ノ許可ヲ受クベシ
第八條 大使ハ其ノ定ムル所ニ依リ海運關係事業者ニ對シ其ノ事業ノ用ニ供スル物資ノ使用、消費若ハ保有ニ關シ必要ナル事項ヲ命ジ又ハ讓渡、貸渡其ノ他ノ處分、使用、消費若ハ保有ノ制限若ハ禁止ヲ爲スコトヲ得
第九條 大使ハ海運關係事業者ニ對シ規格ヲ指定シテ船舶等ノ製造ヲ命ジ若ハ範圍ヲ指定シテ船舶等ノ修繕ヲ命ジ、指定シタル規格若ハ範圍以外ノ船舶等ノ製造若ハ修繕ヲ制限シ若ハ禁止シ又ハ船舶等ノ製造若ハ修繕ニ付順位ノ變更其ノ他必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得
第十條 船舶等ノ製造又ハ修繕ヲ爲サントスル者ハ大使ノ定ムル所ニ依リ當該製造又ハ修繕ニ付大使ノ許可ヲ受クベシ
本令施行地外ニ船舶等ノ製造又ハ修繕ノ注文ヲ爲サントスル者ハ大使ノ定ムル所ニ依リ其ノ旨ヲ大使ニ屆出ヅベシ
第十一條 第四條第一項又ハ第六條第一項ノ規定ニ依ル讓渡、貸渡又ハ出資ノ命令ヲ受ケタル者ハ讓渡、貸渡又ハ出資ニ支障ヲ及ボス虞ナキ場合ヲ除クノ外大使ノ許可ヲ受クルニ非ザレバ當該設備、權利又ハ物資ノ讓渡、貸渡其ノ他ノ處分ヲ爲スコトヲ得ズ
第十二條 第四條第一項ノ規定ニ依ル命令ニ基キ設備、權利若ハ物資ノ讓渡ヲ受ケタル者又ハ第六條第一項ノ規定ニ依ル命令ニ基キ設備若ハ權利ノ出資ヲ受ケタル者當該設備、權利又ハ物資ニ付讓渡、貸渡其ノ他ノ處分ヲ爲サントスルトキハ大使ノ定ムル所ニ依リ其ノ許可ヲ受クベシ
第十三條 海運關係事業ニ屬スル設備若ハ權利又ハ海運關係事業ノ用ニ供スル物資ニ關シ强制競賣手續、明治四十年勅令第五十六號ニ於テ準用スルコトヲ定メタル國稅徵收法ニ依ル强制徵收手續、關東州土地收用令ニ依ル使用若ハ收用ノ手續又ハ國家總動員法第十三條ノ規定ニ基ク使用ノ手續其ノ他此等ノ手續ニ準ズベキモノノ進行中ナルトキハ其ノ進行中ニ限リ當該設備、權利又ハ物資ニ關シテハ第四條第一項、第六條第一項若ハ第八條前段ノ規定又ハ第九條中船舶等ノ製造若ハ修繕ヲ命ズル規定ハ之ヲ適用セズ
第十四條 工場財團ニ屬スルモノハ第四條第一項又ハ第六條第一項ノ規定ニ依ル命令ニ基キ讓渡又ハ出資アリタル後ト雖モ仍原財團ニ屬スルモノトス
前項ノ場合ニ於ケル登記ニ關シ必要ナル事項ハ大使之ヲ定ム
第十五條 大使ハ第四條第一項又ハ第六條第一項ノ規定ニ依ル命令ニ基キ設備、權利又ハ物資ヲ讓渡シ又ハ出資シタル者ヲシテ第十六條ノ規定ニ依リ債務ノ全部ノ承繼アリタル場合ヲ除クノ外讓渡又ハ出資ヲ受ケタル者ガ擔保權ノ實行ニ因リ受クルコトアルベキ損失ノ補償ニ充ツル爲大使ノ定ムル所ニ依リ相當ノ擔保ヲ供託セシムルコトヲ得
讓渡又ハ出資ヲ受ケタル者ハ前項ノ規定ニ依リ供託セラレタルモノノ上ニ質權ヲ有ス
第十六條 大使ハ第四條第一項又ハ第六條第一項ノ規定ニ依リ設備又ハ權利ノ讓渡又ハ出資ヲ命ジタル場合ニ於テ讓渡シ又ハ出資シタル者ヲシテ當該設備又ハ權利ヲ擔保トスル債務ヲ引續キ負擔セシメ置クコトヲ適當ナラズト認ムルトキハ國家總動員法第十八條ノ二ノ規定ニ基キ大使ノ定ムル所ニ依リ讓渡又ハ出資ヲ受ケタル者ヲシテ當該債務ノ全部又ハ一部ヲ承繼セシムルコトヲ得
第五條ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第十七條 大使海運關係事業整備ノ爲必要アリト認ムルトキハ海運關係事業者ニ對シ其ノ事業ノ全部若ハ一部ノ委託、受託、共同經營、讓渡若ハ讓受又ハ會社ノ合併ヲ命ズルコトヲ得
第四條第二項、第五條及第十一條乃至前條ノ規定ハ前項ノ規定ニ依リ事業ノ讓渡又ハ讓受ノ命令アリタル場合ニ之ヲ準用ス
第四條第二項、第五條及第十一條ノ規定ハ第一項ノ規定ニ依リ事業ノ委託、受託若ハ共同經營又ハ會社ノ合併ノ命令アリタル場合ニ之ヲ準用ス
第十八條 第五條(第六條第二項、第十六條第二項及前條第二項第三項ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)ノ協議又ハ裁定ニ基キ會社ガ事業ノ讓渡、合併其ノ他當該協議又ハ裁定ニ於テ定メラレタル事項ノ實行ヲ爲サントスルニ付株主總會又ハ之ニ準ズベキモノノ決議、同意等ヲ必要トスル場合ニ於テ其ノ決議、同意等ヲ得ルコト能ハザルトキハ會社ハ大使ノ認可ヲ受ケ當該事項ノ實行ヲ爲スコトヲ得
第十九條 大使海運關係事業整備ノ爲必要アリト認ムルトキハ海運關係事業者ニ對シ其ノ事業ノ全部又ハ一部ノ廢止又ハ休止ヲ命ズルコトヲ得
第二十條 關東州、內地、朝鮮又ハ臺灣ニ行ハルル法令ニ依ル日本船舶(以下日本船舶ト稱ス)ニ非ザル船舶ヲ借受ケ又ハ其ノ運航ノ委託ヲ受ケントスル者及日本船舶ニ非ザル船舶ニ依リ大使ノ指定スル物資ヲ運送セシメントスル者ハ大使ノ定ムル所ニ依リ當該借受、受託又ハ運送ニ付大使ノ許可ヲ受クベシ
第二十一條 大使ハ航路若ハ區域ヲ指定シ若ハ一般的ニ船舶ヲ指定シテ航海ヲ制限シ若ハ禁止シ又ハ一般的ニ人若ハ物ヲ指定シテ其ノ運送ヲ制限シ若ハ禁止スルコトヲ得但シ他ノ法令ニ基キテ爲サルル別段ノ處分ノ效力ヲ妨ゲズ
第二十二條 大使海上輸送ノ圓滑ヲ圖ル爲必要アリト認ムルトキハ海運關係事業者、運送取扱業者、荷送人若ハ荷受人又ハ此等ノ者ノ團體ニ對シ貨物ヲ指定シテ其ノ取扱ヲ爲スベキコトヲ命ジ又ハ貨物ノ取扱ノ方法、順位、期日、期間若ハ數量ニ關シ必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第二十三條 國家總動員法第二十七條ノ規定ニ基キ補償スベキ損失ハ第八條、第九條又ハ第十九條ノ規定ニ依ル處分ニ因リ通常生ズベキ損失トス
損失補償請求ノ時期其ノ他損失補償ニ關シ必要ナル事項ハ大使之ヲ定ム
第二十四條 大使必要アリト認ムルトキハ國家總動員法第三十一條ノ規定ニ依リ海運關係事業者若ハ其ノ團體ヨリ其ノ事業ニ關シ報吿ヲ徵シ又ハ當該官吏ヲシテ其ノ事務所、營業所、船舶、工場其ノ他必要ナル場所ニ臨檢シ業務ノ狀況若ハ帳簿書類、設備其ノ他ノ物件ヲ檢査セシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ當該官吏ヲシテ臨檢檢査セシムル場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス證票ヲ携帶セシムベシ
第二十五條 大使ハ本令ニ定ムル職權ノ一部ヲ關東海務局長ニ委任スルコトヲ得
第二十六條 大使第三條乃至第七條、第九條乃至第十二條、第十七條又ハ第十九條乃至第二十一條ノ規定ニ依ル處分ヲ爲サントスルトキハ其ノ重要ナルモノニ付豫メ運輸通信大臣ニ協議スベシ
附 則
本令施行ノ期日ハ大使之ヲ定ム
關東州船舶製造等統制令ハ之ヲ廢止ス但シ本令施行前ニ爲シタル行爲ニ關スル罰則ノ適用ニ付テハ仍其ノ效力ヲ有ス
朕関東州海運統制令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十九年二月十八日
内閣総理大臣 東条英機
運輸通信大臣 八田嘉明
大東亜大臣 青木一男
勅令第九十一号
関東州海運統制令
第一条 関東州国家総動員令ニ於テ依ルコトヲ定メタル国家総動員法(以下国家総動員法ト称ス)第八条ノ規定ニ基ク船舶、船体、船舶用機関、艤装品、其ノ部分品若ハ附属品(以下船舶等ト称ス)ノ製造若ハ修繕、海運関係事業ノ用ニ供スル物資ノ譲渡其ノ他ノ処分、使用、消費若ハ保有又ハ海運関係事業ニ於ケル貨物ノ移動ニ関スル命令、同法第十六条ノ規定ニ基ク海運関係事業ニ属スル設備ノ新設、拡張又ハ改良ノ制限、同法第十六条ノ二ノ規定ニ基ク海運関係事業ニ属スル設備又ハ権利ノ譲渡其ノ他ノ処分、出資又ハ使用ニ関スル命令及同法第十六条ノ三ノ規定ニ基ク海運関係事業ノ開始、委託、共同経営、譲渡、廃止若ハ休止又ハ海運関係事業ヲ営ム会社ノ合併ニ関スル命令ハ別ニ定ムルモノヲ除クノ外本令ノ定ムル所ニ依ル
第二条 本令ニ於テ海運関係事業トハ左ニ掲グル事業ニシテ満洲国駐箚特命全権大使ノ定ムルモノヲ謂フ
一 船舶ニ依ル人若ハ物ノ運送、船舶ノ貸渡又ハ其ノ運航ノ委託ヲ為ス事業
二 船舶等ノ製造又ハ修繕ヲ為ス事業
三 船舶ノ運航、製造又ハ修繕ニ必要ナル多種類ノ物品ノ販売ヲ為ス事業
四 船舶ノ救助、引揚又ハ解撤ヲ為ス事業
五 船舶ニ依ル人若ハ物ノ運送又ハ船舶ノ貸渡若ハ売買ニ関スル仲立ヲ為ス事業
六 海上運送ニ附随シテ貨物ノ船積又ハ陸揚ノ為荷捌、積卸又ハ艀船若ハ曳船ニ依ル運搬ヲ為ス事業及此等ノ作業ノ請負ヲ為ス事業
本令ニ於テ貸渡又ハ借受トハ船舶ニ付テハ期間傭船ヲ含ムモノトス
第三条 海運関係事業ヲ開始セントスル者ハ大使ノ定ムル所ニ依リ当該開始ニ付大使ノ許可ヲ受クベシ
第四条 大使海運関係事業整備ノ為必要アリト認ムルトキハ海運関係事業ヲ営ム者(以下海運関係事業者ト称ス)ニ対シ其ノ事業ニ属スル設備若ハ権利若ハ其ノ事業ノ用ニ供スル物資ノ譲渡、譲受、貸渡若ハ借受ヲ命ジ又ハ其ノ事業ニ属スル設備ノ使用ニ関シ其ノ方法ノ改善其ノ他必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル命令ヲ受ケタル者ハ他ノ法令ニ拘ラズ譲渡又ハ貸渡ヲ為スコトヲ得
第五条 前条ノ場合ニ於ケル譲渡又ハ貸渡ノ条件ハ当事者間ノ協議ニ依ル
前項ノ協議ハ大使ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ効力ヲ生ゼズ
第一項ノ協議調ハズ又ハ協議ヲ為スコト能ハザルトキハ大使之ヲ裁定ス
第六条 大使海運関係事業整備ノ為必要アリト認ムルトキハ海運関係事業者ニ対シ其ノ事業ニ属スル設備又ハ権利ノ出資ヲ命ズルコトヲ得此ノ場合ニ於テ大使ハ出資ノ相手方ニ対シ必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得
第四条第二項及前条ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第七条 海運関係事業者其ノ事業ノ全部若ハ一部ノ譲渡、廃止若ハ休止又ハ其ノ事業ニ属スル設備ノ譲渡、貸渡、新設、拡張若ハ改良ヲ為サントスルトキハ大使ノ定ムル所ニ依リ其ノ許可ヲ受クベシ
第八条 大使ハ其ノ定ムル所ニ依リ海運関係事業者ニ対シ其ノ事業ノ用ニ供スル物資ノ使用、消費若ハ保有ニ関シ必要ナル事項ヲ命ジ又ハ譲渡、貸渡其ノ他ノ処分、使用、消費若ハ保有ノ制限若ハ禁止ヲ為スコトヲ得
第九条 大使ハ海運関係事業者ニ対シ規格ヲ指定シテ船舶等ノ製造ヲ命ジ若ハ範囲ヲ指定シテ船舶等ノ修繕ヲ命ジ、指定シタル規格若ハ範囲以外ノ船舶等ノ製造若ハ修繕ヲ制限シ若ハ禁止シ又ハ船舶等ノ製造若ハ修繕ニ付順位ノ変更其ノ他必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得
第十条 船舶等ノ製造又ハ修繕ヲ為サントスル者ハ大使ノ定ムル所ニ依リ当該製造又ハ修繕ニ付大使ノ許可ヲ受クベシ
本令施行地外ニ船舶等ノ製造又ハ修繕ノ注文ヲ為サントスル者ハ大使ノ定ムル所ニ依リ其ノ旨ヲ大使ニ届出ヅベシ
第十一条 第四条第一項又ハ第六条第一項ノ規定ニ依ル譲渡、貸渡又ハ出資ノ命令ヲ受ケタル者ハ譲渡、貸渡又ハ出資ニ支障ヲ及ボス虞ナキ場合ヲ除クノ外大使ノ許可ヲ受クルニ非ザレバ当該設備、権利又ハ物資ノ譲渡、貸渡其ノ他ノ処分ヲ為スコトヲ得ズ
第十二条 第四条第一項ノ規定ニ依ル命令ニ基キ設備、権利若ハ物資ノ譲渡ヲ受ケタル者又ハ第六条第一項ノ規定ニ依ル命令ニ基キ設備若ハ権利ノ出資ヲ受ケタル者当該設備、権利又ハ物資ニ付譲渡、貸渡其ノ他ノ処分ヲ為サントスルトキハ大使ノ定ムル所ニ依リ其ノ許可ヲ受クベシ
第十三条 海運関係事業ニ属スル設備若ハ権利又ハ海運関係事業ノ用ニ供スル物資ニ関シ強制競売手続、明治四十年勅令第五十六号ニ於テ準用スルコトヲ定メタル国税徴収法ニ依ル強制徴収手続、関東州土地収用令ニ依ル使用若ハ収用ノ手続又ハ国家総動員法第十三条ノ規定ニ基ク使用ノ手続其ノ他此等ノ手続ニ準ズベキモノノ進行中ナルトキハ其ノ進行中ニ限リ当該設備、権利又ハ物資ニ関シテハ第四条第一項、第六条第一項若ハ第八条前段ノ規定又ハ第九条中船舶等ノ製造若ハ修繕ヲ命ズル規定ハ之ヲ適用セズ
第十四条 工場財団ニ属スルモノハ第四条第一項又ハ第六条第一項ノ規定ニ依ル命令ニ基キ譲渡又ハ出資アリタル後ト雖モ仍原財団ニ属スルモノトス
前項ノ場合ニ於ケル登記ニ関シ必要ナル事項ハ大使之ヲ定ム
第十五条 大使ハ第四条第一項又ハ第六条第一項ノ規定ニ依ル命令ニ基キ設備、権利又ハ物資ヲ譲渡シ又ハ出資シタル者ヲシテ第十六条ノ規定ニ依リ債務ノ全部ノ承継アリタル場合ヲ除クノ外譲渡又ハ出資ヲ受ケタル者ガ担保権ノ実行ニ因リ受クルコトアルベキ損失ノ補償ニ充ツル為大使ノ定ムル所ニ依リ相当ノ担保ヲ供託セシムルコトヲ得
譲渡又ハ出資ヲ受ケタル者ハ前項ノ規定ニ依リ供託セラレタルモノノ上ニ質権ヲ有ス
第十六条 大使ハ第四条第一項又ハ第六条第一項ノ規定ニ依リ設備又ハ権利ノ譲渡又ハ出資ヲ命ジタル場合ニ於テ譲渡シ又ハ出資シタル者ヲシテ当該設備又ハ権利ヲ担保トスル債務ヲ引続キ負担セシメ置クコトヲ適当ナラズト認ムルトキハ国家総動員法第十八条ノ二ノ規定ニ基キ大使ノ定ムル所ニ依リ譲渡又ハ出資ヲ受ケタル者ヲシテ当該債務ノ全部又ハ一部ヲ承継セシムルコトヲ得
第五条ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第十七条 大使海運関係事業整備ノ為必要アリト認ムルトキハ海運関係事業者ニ対シ其ノ事業ノ全部若ハ一部ノ委託、受託、共同経営、譲渡若ハ譲受又ハ会社ノ合併ヲ命ズルコトヲ得
第四条第二項、第五条及第十一条乃至前条ノ規定ハ前項ノ規定ニ依リ事業ノ譲渡又ハ譲受ノ命令アリタル場合ニ之ヲ準用ス
第四条第二項、第五条及第十一条ノ規定ハ第一項ノ規定ニ依リ事業ノ委託、受託若ハ共同経営又ハ会社ノ合併ノ命令アリタル場合ニ之ヲ準用ス
第十八条 第五条(第六条第二項、第十六条第二項及前条第二項第三項ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)ノ協議又ハ裁定ニ基キ会社ガ事業ノ譲渡、合併其ノ他当該協議又ハ裁定ニ於テ定メラレタル事項ノ実行ヲ為サントスルニ付株主総会又ハ之ニ準ズベキモノノ決議、同意等ヲ必要トスル場合ニ於テ其ノ決議、同意等ヲ得ルコト能ハザルトキハ会社ハ大使ノ認可ヲ受ケ当該事項ノ実行ヲ為スコトヲ得
第十九条 大使海運関係事業整備ノ為必要アリト認ムルトキハ海運関係事業者ニ対シ其ノ事業ノ全部又ハ一部ノ廃止又ハ休止ヲ命ズルコトヲ得
第二十条 関東州、内地、朝鮮又ハ台湾ニ行ハルル法令ニ依ル日本船舶(以下日本船舶ト称ス)ニ非ザル船舶ヲ借受ケ又ハ其ノ運航ノ委託ヲ受ケントスル者及日本船舶ニ非ザル船舶ニ依リ大使ノ指定スル物資ヲ運送セシメントスル者ハ大使ノ定ムル所ニ依リ当該借受、受託又ハ運送ニ付大使ノ許可ヲ受クベシ
第二十一条 大使ハ航路若ハ区域ヲ指定シ若ハ一般的ニ船舶ヲ指定シテ航海ヲ制限シ若ハ禁止シ又ハ一般的ニ人若ハ物ヲ指定シテ其ノ運送ヲ制限シ若ハ禁止スルコトヲ得但シ他ノ法令ニ基キテ為サルル別段ノ処分ノ効力ヲ妨ゲズ
第二十二条 大使海上輸送ノ円滑ヲ図ル為必要アリト認ムルトキハ海運関係事業者、運送取扱業者、荷送人若ハ荷受人又ハ此等ノ者ノ団体ニ対シ貨物ヲ指定シテ其ノ取扱ヲ為スベキコトヲ命ジ又ハ貨物ノ取扱ノ方法、順位、期日、期間若ハ数量ニ関シ必要ナル命令ヲ為スコトヲ得
第二十三条 国家総動員法第二十七条ノ規定ニ基キ補償スベキ損失ハ第八条、第九条又ハ第十九条ノ規定ニ依ル処分ニ因リ通常生ズベキ損失トス
損失補償請求ノ時期其ノ他損失補償ニ関シ必要ナル事項ハ大使之ヲ定ム
第二十四条 大使必要アリト認ムルトキハ国家総動員法第三十一条ノ規定ニ依リ海運関係事業者若ハ其ノ団体ヨリ其ノ事業ニ関シ報告ヲ徴シ又ハ当該官吏ヲシテ其ノ事務所、営業所、船舶、工場其ノ他必要ナル場所ニ臨検シ業務ノ状況若ハ帳簿書類、設備其ノ他ノ物件ヲ検査セシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ当該官吏ヲシテ臨検検査セシムル場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス証票ヲ携帯セシムベシ
第二十五条 大使ハ本令ニ定ムル職権ノ一部ヲ関東海務局長ニ委任スルコトヲ得
第二十六条 大使第三条乃至第七条、第九条乃至第十二条、第十七条又ハ第十九条乃至第二十一条ノ規定ニ依ル処分ヲ為サントスルトキハ其ノ重要ナルモノニ付予メ運輸通信大臣ニ協議スベシ
附 則
本令施行ノ期日ハ大使之ヲ定ム
関東州船舶製造等統制令ハ之ヲ廃止ス但シ本令施行前ニ為シタル行為ニ関スル罰則ノ適用ニ付テハ仍其ノ効力ヲ有ス