関東州納税施設令
法令番号: 勅令第五十四號
公布年月日: 昭和19年1月28日
法令の形式: 勅令
朕關東州納稅施設令ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十九年一月二十七日
內閣總理大臣 東條英機
大東亞大臣 靑木一男
勅令第五十四號
關東州納稅施設令
第一章 納稅組合
第一條 本令ニ於テ納稅組合トハ組合員ノ滿洲國駐箚特命全權大使ノ定ムル租稅公課ノ納付ヲ容易確實ナラシムル爲當該租稅公課ノ納付又ハ其ノ納付資金(納稅資金ト稱ス以下同ジ)ノ管理及當該租稅公課ノ納付ニ關シ必要ナル事業ヲ行フ組合ヲ謂フ
第二條 納稅組合ヲ組織シタトキハ其ノ組合ノ代表者ハ大使ノ定ムル所ニ依リ規約ヲ稅務署長、民政署長又ハ市長ニ屆出ヅベシ規約ヲ變更シタルトキ亦同ジ
第三條 納稅組合ノ管理スル納稅資金ハ納稅準備預金又ハ郵便貯金ヲ以テ之ヲ保有スベシ
第四條 納稅組合ノ代表者ハ其ノ事業ニ關スル帳簿ヲ備ヘ大使ノ定ムル事項ヲ之ニ記載スベシ
第五條 政府ハ豫算ノ範圍內ニ於テ納稅組合ニ補助金又ハ奬勵金ヲ交付スルコトヲ得
第六條 稅務署長、民政署長若ハ此等ノ代理官又ハ市長必要アリト認ムルトキハ大使ノ定ムル所ニ依リ納稅組合ノ代表者ニ對シ其ノ事業ニ關シ質問ヲ爲シ若ハ報吿ヲ爲サシメ又ハ帳簿書類其ノ他ノ物件ヲ檢査スルコトヲ得
稅務署長、民政署長又ハ市長必要アリト認ムルトキハ大使ノ定ムル所ニ依リ納稅組合ノ代表者ニ對シ規約ノ變更其ノ他監督上必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第二章 法人納稅積立金
第七條 法人ハ每事業年度ノ利益金又ハ剩餘金ノ處分ニ當リ第一種ノ所得ニ對スル所得稅其ノ他大使ノ定ムル租稅ニ付大使ノ定ムル所ニ依リ納稅積立金ヲ積立ツベシ
納稅積立金ハ當該事業年度分ノ前項ニ規定スル租稅ノ納付ニ充ツル場合ヲ除クノ外之ヲ使用スルコトヲ得ズ但シ大使ノ定ムル所ニ依リ稅務署長若ハ民政署長ノ承認アリタル場合又ハ納稅積立金ガ前項ニ規定スル租稅ノ額ヲ超過スル場合ニ於ケル其ノ超過額ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第八條 納稅積立金ハ大使ノ定ムル所ニ依リ納稅準備預金ヲ以テ之ヲ保有スベシ
納稅積立金中納稅準備預金ヲ以テ保有スベキ割合ハ大使之ヲ定ム
第九條 稅務署長又ハ民政署長ハ大使ノ定ムル所ニ依リ前條ノ規定ニ依ル義務ノ全部又ハ一部ヲ免除スルコトヲ得
第三章 納稅準備預金
第十條 本令ニ於テ納稅準備預金トハ大使ノ定ムル租稅公課ノ納付ニ充ツル爲大使ノ定ムル金融機關(指定金融機關ト稱ス以下同ジ)ニ預入レタル預金ヲ謂フ
第十一條 指定金融機關ハ他ノ法令ニ拘ラズ納稅準備預金ヲ受入ルルコトヲ得
第十二條 納稅準備預金ハ第十條ニ規定スル租稅公課ノ納付ニ充ツル場合其ノ他大使ノ定ムル場合ヲ除クノ外之ヲ引出スコトヲ得ズ
第十三條 納稅準備預金ヲ引出シ第十條ニ規定スル租稅公課ノ納付ニ充テントスルトキハ納稅吿知書其ノ他納付ニ必要ナル書類ヲ指定金融機關ニ提出シ租稅公課ノ納付ヲ委託スベシ
指定金融機關ハ正當ノ事由ナクシテ前項ノ委託ヲ拒ムコトヲ得ズ
第十四條 納稅準備預金ハ之ヲ讓渡スルコトヲ得ズ
第十五條 納稅準備預金ハ大使ノ定ムル場合ヲ除クノ外之ヲ差押フルコトヲ得ズ
第十六條 納稅準備預金ノ利子ニ付テハ大使ノ定ムル所ニ依リ第二種甲ノ所得ニ對スル所得稅ヲ免除ス
第四章 雜則
第十七條 左ノ場合ニ於テハ法人ノ代表者ヲ千圓以下ノ過料ニ處ス
一 第七條ノ規定ニ違反シ納稅積立金ヲ積立テズ又ハ納稅積立金ヲ使用シタルトキ
二 第八條ノ規定ニ違反シ納稅積立金ヲ納稅準備預金ヲ以テ保有セザルトキ
第十八條 左ノ場合ニ於テハ納稅組合ノ代表者ヲ三百圓以下ノ過料ニ處ス
一 第三條ノ規定ニ違反シ納稅資金ヲ納稅準備預金又ハ郵便貯金ヲ以テ保有セザルトキ
二 第六條第二項ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタルトキ
第十九條 左ノ場合ニ於テハ納稅組合ノ代表者ヲ百圓以下ノ過料ニ處ス
一 本令ニ依ル屆出ヲ爲サザルトキ
二 第四條ノ規定ニ依ル帳簿ノ記載ヲ爲サズ又ハ虛僞ノ記載ヲ爲シタルトキ
三 第六條第一項ノ規定ニ依ル稅務署長、民政署長若ハ此等ノ代理官又ハ市長ノ質問ニ對シ答辯ヲ爲サズ又ハ虛僞ノ陳述ヲ爲シタルトキ
四 第六條第一項ノ規定ニ違反シ報吿ヲ爲サズ若ハ虛僞ノ報吿ヲ爲シ又ハ帳簿書類其ノ他ノ物件ノ檢査ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シタルトキ
第二十條 本令ニ規定スルモノノ外納稅組合、法人納稅積立金及納稅準備預金ニ關シ必要ナル事項ハ大使之ヲ定ム
附 則
本令施行ノ期日ハ大使之ヲ定ム
法人納稅積立金ニ付テハ昭和十九年七月一日以後終了スル事業年度分ヨリ本令ヲ適用ス
本令施行ノ際現ニ第一條ニ規定スル事業ヲ行フ組合ノ代表者ハ本令施行ノ日ヨリ一月以內ニ大使ノ定ムル所ニ依リ規約ヲ稅務署長、民政署長又ハ市長ニ屆出ヅベシ
朕関東州納税施設令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十九年一月二十七日
内閣総理大臣 東条英機
大東亜大臣 青木一男
勅令第五十四号
関東州納税施設令
第一章 納税組合
第一条 本令ニ於テ納税組合トハ組合員ノ満洲国駐箚特命全権大使ノ定ムル租税公課ノ納付ヲ容易確実ナラシムル為当該租税公課ノ納付又ハ其ノ納付資金(納税資金ト称ス以下同ジ)ノ管理及当該租税公課ノ納付ニ関シ必要ナル事業ヲ行フ組合ヲ謂フ
第二条 納税組合ヲ組織シタトキハ其ノ組合ノ代表者ハ大使ノ定ムル所ニ依リ規約ヲ税務署長、民政署長又ハ市長ニ届出ヅベシ規約ヲ変更シタルトキ亦同ジ
第三条 納税組合ノ管理スル納税資金ハ納税準備預金又ハ郵便貯金ヲ以テ之ヲ保有スベシ
第四条 納税組合ノ代表者ハ其ノ事業ニ関スル帳簿ヲ備ヘ大使ノ定ムル事項ヲ之ニ記載スベシ
第五条 政府ハ予算ノ範囲内ニ於テ納税組合ニ補助金又ハ奨励金ヲ交付スルコトヲ得
第六条 税務署長、民政署長若ハ此等ノ代理官又ハ市長必要アリト認ムルトキハ大使ノ定ムル所ニ依リ納税組合ノ代表者ニ対シ其ノ事業ニ関シ質問ヲ為シ若ハ報告ヲ為サシメ又ハ帳簿書類其ノ他ノ物件ヲ検査スルコトヲ得
税務署長、民政署長又ハ市長必要アリト認ムルトキハ大使ノ定ムル所ニ依リ納税組合ノ代表者ニ対シ規約ノ変更其ノ他監督上必要ナル命令ヲ為スコトヲ得
第二章 法人納税積立金
第七条 法人ハ毎事業年度ノ利益金又ハ剰余金ノ処分ニ当リ第一種ノ所得ニ対スル所得税其ノ他大使ノ定ムル租税ニ付大使ノ定ムル所ニ依リ納税積立金ヲ積立ツベシ
納税積立金ハ当該事業年度分ノ前項ニ規定スル租税ノ納付ニ充ツル場合ヲ除クノ外之ヲ使用スルコトヲ得ズ但シ大使ノ定ムル所ニ依リ税務署長若ハ民政署長ノ承認アリタル場合又ハ納税積立金ガ前項ニ規定スル租税ノ額ヲ超過スル場合ニ於ケル其ノ超過額ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第八条 納税積立金ハ大使ノ定ムル所ニ依リ納税準備預金ヲ以テ之ヲ保有スベシ
納税積立金中納税準備預金ヲ以テ保有スベキ割合ハ大使之ヲ定ム
第九条 税務署長又ハ民政署長ハ大使ノ定ムル所ニ依リ前条ノ規定ニ依ル義務ノ全部又ハ一部ヲ免除スルコトヲ得
第三章 納税準備預金
第十条 本令ニ於テ納税準備預金トハ大使ノ定ムル租税公課ノ納付ニ充ツル為大使ノ定ムル金融機関(指定金融機関ト称ス以下同ジ)ニ預入レタル預金ヲ謂フ
第十一条 指定金融機関ハ他ノ法令ニ拘ラズ納税準備預金ヲ受入ルルコトヲ得
第十二条 納税準備預金ハ第十条ニ規定スル租税公課ノ納付ニ充ツル場合其ノ他大使ノ定ムル場合ヲ除クノ外之ヲ引出スコトヲ得ズ
第十三条 納税準備預金ヲ引出シ第十条ニ規定スル租税公課ノ納付ニ充テントスルトキハ納税告知書其ノ他納付ニ必要ナル書類ヲ指定金融機関ニ提出シ租税公課ノ納付ヲ委託スベシ
指定金融機関ハ正当ノ事由ナクシテ前項ノ委託ヲ拒ムコトヲ得ズ
第十四条 納税準備預金ハ之ヲ譲渡スルコトヲ得ズ
第十五条 納税準備預金ハ大使ノ定ムル場合ヲ除クノ外之ヲ差押フルコトヲ得ズ
第十六条 納税準備預金ノ利子ニ付テハ大使ノ定ムル所ニ依リ第二種甲ノ所得ニ対スル所得税ヲ免除ス
第四章 雑則
第十七条 左ノ場合ニ於テハ法人ノ代表者ヲ千円以下ノ過料ニ処ス
一 第七条ノ規定ニ違反シ納税積立金ヲ積立テズ又ハ納税積立金ヲ使用シタルトキ
二 第八条ノ規定ニ違反シ納税積立金ヲ納税準備預金ヲ以テ保有セザルトキ
第十八条 左ノ場合ニ於テハ納税組合ノ代表者ヲ三百円以下ノ過料ニ処ス
一 第三条ノ規定ニ違反シ納税資金ヲ納税準備預金又ハ郵便貯金ヲ以テ保有セザルトキ
二 第六条第二項ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタルトキ
第十九条 左ノ場合ニ於テハ納税組合ノ代表者ヲ百円以下ノ過料ニ処ス
一 本令ニ依ル届出ヲ為サザルトキ
二 第四条ノ規定ニ依ル帳簿ノ記載ヲ為サズ又ハ虚偽ノ記載ヲ為シタルトキ
三 第六条第一項ノ規定ニ依ル税務署長、民政署長若ハ此等ノ代理官又ハ市長ノ質問ニ対シ答弁ヲ為サズ又ハ虚偽ノ陳述ヲ為シタルトキ
四 第六条第一項ノ規定ニ違反シ報告ヲ為サズ若ハ虚偽ノ報告ヲ為シ又ハ帳簿書類其ノ他ノ物件ノ検査ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シタルトキ
第二十条 本令ニ規定スルモノノ外納税組合、法人納税積立金及納税準備預金ニ関シ必要ナル事項ハ大使之ヲ定ム
附 則
本令施行ノ期日ハ大使之ヲ定ム
法人納税積立金ニ付テハ昭和十九年七月一日以後終了スル事業年度分ヨリ本令ヲ適用ス
本令施行ノ際現ニ第一条ニ規定スル事業ヲ行フ組合ノ代表者ハ本令施行ノ日ヨリ一月以内ニ大使ノ定ムル所ニ依リ規約ヲ税務署長、民政署長又ハ市長ニ届出ヅベシ