陸軍将校分限令
法令番号: 勅令第百九十八號
公布年月日: 昭和16年3月8日
法令の形式: 勅令
朕陸軍將校分限令改正ノ件ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十六年三月七日
內閣總理大臣 公爵 近衞文麿
陸軍大臣 東條英機
勅令第百九十八號
陸軍將校分限令
第一條 陸軍將校トハ將官、佐官及尉官ヲ謂フ
第二條 將校ハ終身其ノ官ヲ保有シ之ニ對スル禮遇ヲ享ク
第三條 將校ハ左ノ各號ノ一ニ該當スル場合ニ非ザレバ其ノ官ヲ失フコトナシ
一 本人ノ願ニ依リ其ノ官ヲ免ゼラレタルトキ
二 將校タルノ本分ニ背キ又ハ其ノ體面ヲ汚シ勅裁ニ依リ免官ト爲リタルトキ
三 禁錮以上ノ刑ニ處セラレタルトキ但シ陸軍刑法又ハ海軍刑法ニ依リ一年未滿ノ禁錮ノ刑ニ處セラレタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第四條 將校ニシテ陸軍ノ諸生徒又ハ海軍ノ學生生徒ノ兵籍ニ編入セラレタルモノハ別ニ辭令ヲ用ヒズ當該兵籍ニ編入セラレタル日ヲ以テ其ノ官ヲ免ゼラレタルモノトス
前項ノ規定ニ該當スル者當該學生生徒ヲ免ゼラレタルトキハ將校タルノ體面ヲ保持シ得ザル者ナル場合ヲ除クノ外同項ノ規定ニ依リ免ゼラレタル官ニ復シ前ノ服役ヲ繼續セシムルモノトス
第五條 現役將校ハ左ノ各號ノ一ニ該當スル場合ヲ除クノ外現役ノ儘宮內官又ハ文官(待遇職員ヲ含ム)ニ專任又ハ專補セラルルコトヲ得ザルモノトス
一 陸軍大臣又ハ陸軍次官其ノ他武官ヲ以テ充ツベキ官又ハ職ニ專任又ハ專補セラルルトキ
二 法令ニ別段ノ定アルトキ
第六條 現役將校ニシテ一時職務ニ服セシメザルモノニハ待命ヲ命ズ
陸軍大臣必要アリト認ムルトキハ待命發令ノ際待命ヲ命ゼラルル者ニ對シ滯在地ヲ指定スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ滯在地ヲ指定セラレタル者ハ陸軍武官服役令第二條ノ規定ニ拘ラズ陸軍大臣ノ定ムル所ニ依リ之ヲ滯在地所管師團司令部又ハ之ニ準ズベキ部隊ノ兵籍ニ編入シ當該部隊長ノ管轄ニ屬セシム
第七條 現役將校傷痍疾病ニ因リ執務セザルコト六月ニ及ブトキハ之ニ休職ヲ命ズルコトヲ得但シ本人ノ願アルトキハ六月ヲ待ツノ限ニ在ラズ
第八條 現役將校ニシテ懲戒スベキ行爲アリタルモノニハ停職ヲ命ズルコトヲ得
陸軍大臣統督上必要アリト認ムルトキハ其ノ定ムル所ニ依リ停職ヲ命ゼラレタル者ニ對シ居住及旅行ヲ制限スルコトヲ得
停職ヲ命ゼラレタル者ハ三月ノ後ニ非ザレバ就職スルコトヲ得ズ但シ戰時又ハ事變ニ際シテハ此ノ限ニ在ラズ
第九條 戰地ニ臨ムノ首將ニハ特ニ停職ヲ命ズルノ權ヲ假スコトアルベシ
第十條 待命、休職又ハ停職中ノ將校ハ健康狀態又ハ補充上ノ必要ニ依リ之ヲ豫備役ニ入ラシムルコトヲ得
將校ニシテ傷痍疾病ノ爲現役ニ堪ヘザルモノハ本人ノ願ニ依リ之ヲ豫備役ニ入ラシムルコトヲ得
第十一條 現役將校左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ豫備役ニ入ルモノトス
一 待命又ハ休職ト爲リ二年ヲ經過シ就職ノ命ナキトキ
二 停職ト爲リ一年ヲ經過シ就職ノ命ナキトキ
三 待命、休職又ハ停職ヲ通ジテ二年ヲ經過シ就職ノ命ナキトキ
四 宮內官又ハ文官(待遇職員ヲ含ム)ニ專任又ハ專補セラレタルトキ但シ第五條各號ノ一ニ該當スル場合ヲ除ク
五 貴族院令第四條ノ規定ニ依リ貴族院議員ト爲リタルトキ
第十二條 現役將校現役定限年齡ニ達シタルトキハ豫備役ニ入ルモノトス
第十三條 豫備役將校豫備役滿期ト爲リタルトキハ退役トス
第十四條 現役又ハ豫備役ノ將校傷痍疾病ノ爲永久服役ニ堪ヘザルトキハ之ニ退役ヲ命ズルコトヲ得
附 則
本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
第七條及第八條ノ規定ハ當分ノ內昭和八年勅令第十二號ニ依リ充用セラルル者(特別志願將校)ニ之ヲ準用ス
昭和十六年三月三十一日迄ハ第十二條乃至第十四條ノ規定ニ代ヘ仍從前ノ陸軍將校分限令第九條及第十條ノ規定ヲ適用ス
朕陸軍将校分限令改正ノ件ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十六年三月七日
内閣総理大臣 公爵 近衛文麿
陸軍大臣 東条英機
勅令第百九十八号
陸軍将校分限令
第一条 陸軍将校トハ将官、佐官及尉官ヲ謂フ
第二条 将校ハ終身其ノ官ヲ保有シ之ニ対スル礼遇ヲ享ク
第三条 将校ハ左ノ各号ノ一ニ該当スル場合ニ非ザレバ其ノ官ヲ失フコトナシ
一 本人ノ願ニ依リ其ノ官ヲ免ゼラレタルトキ
二 将校タルノ本分ニ背キ又ハ其ノ体面ヲ汚シ勅裁ニ依リ免官ト為リタルトキ
三 禁錮以上ノ刑ニ処セラレタルトキ但シ陸軍刑法又ハ海軍刑法ニ依リ一年未満ノ禁錮ノ刑ニ処セラレタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第四条 将校ニシテ陸軍ノ諸生徒又ハ海軍ノ学生生徒ノ兵籍ニ編入セラレタルモノハ別ニ辞令ヲ用ヒズ当該兵籍ニ編入セラレタル日ヲ以テ其ノ官ヲ免ゼラレタルモノトス
前項ノ規定ニ該当スル者当該学生生徒ヲ免ゼラレタルトキハ将校タルノ体面ヲ保持シ得ザル者ナル場合ヲ除クノ外同項ノ規定ニ依リ免ゼラレタル官ニ復シ前ノ服役ヲ継続セシムルモノトス
第五条 現役将校ハ左ノ各号ノ一ニ該当スル場合ヲ除クノ外現役ノ儘宮内官又ハ文官(待遇職員ヲ含ム)ニ専任又ハ専補セラルルコトヲ得ザルモノトス
一 陸軍大臣又ハ陸軍次官其ノ他武官ヲ以テ充ツベキ官又ハ職ニ専任又ハ専補セラルルトキ
二 法令ニ別段ノ定アルトキ
第六条 現役将校ニシテ一時職務ニ服セシメザルモノニハ待命ヲ命ズ
陸軍大臣必要アリト認ムルトキハ待命発令ノ際待命ヲ命ゼラルル者ニ対シ滞在地ヲ指定スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ滞在地ヲ指定セラレタル者ハ陸軍武官服役令第二条ノ規定ニ拘ラズ陸軍大臣ノ定ムル所ニ依リ之ヲ滞在地所管師団司令部又ハ之ニ準ズベキ部隊ノ兵籍ニ編入シ当該部隊長ノ管轄ニ属セシム
第七条 現役将校傷痍疾病ニ因リ執務セザルコト六月ニ及ブトキハ之ニ休職ヲ命ズルコトヲ得但シ本人ノ願アルトキハ六月ヲ待ツノ限ニ在ラズ
第八条 現役将校ニシテ懲戒スベキ行為アリタルモノニハ停職ヲ命ズルコトヲ得
陸軍大臣統督上必要アリト認ムルトキハ其ノ定ムル所ニ依リ停職ヲ命ゼラレタル者ニ対シ居住及旅行ヲ制限スルコトヲ得
停職ヲ命ゼラレタル者ハ三月ノ後ニ非ザレバ就職スルコトヲ得ズ但シ戦時又ハ事変ニ際シテハ此ノ限ニ在ラズ
第九条 戦地ニ臨ムノ首将ニハ特ニ停職ヲ命ズルノ権ヲ仮スコトアルベシ
第十条 待命、休職又ハ停職中ノ将校ハ健康状態又ハ補充上ノ必要ニ依リ之ヲ予備役ニ入ラシムルコトヲ得
将校ニシテ傷痍疾病ノ為現役ニ堪ヘザルモノハ本人ノ願ニ依リ之ヲ予備役ニ入ラシムルコトヲ得
第十一条 現役将校左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ予備役ニ入ルモノトス
一 待命又ハ休職ト為リ二年ヲ経過シ就職ノ命ナキトキ
二 停職ト為リ一年ヲ経過シ就職ノ命ナキトキ
三 待命、休職又ハ停職ヲ通ジテ二年ヲ経過シ就職ノ命ナキトキ
四 宮内官又ハ文官(待遇職員ヲ含ム)ニ専任又ハ専補セラレタルトキ但シ第五条各号ノ一ニ該当スル場合ヲ除ク
五 貴族院令第四条ノ規定ニ依リ貴族院議員ト為リタルトキ
第十二条 現役将校現役定限年齢ニ達シタルトキハ予備役ニ入ルモノトス
第十三条 予備役将校予備役満期ト為リタルトキハ退役トス
第十四条 現役又ハ予備役ノ将校傷痍疾病ノ為永久服役ニ堪ヘザルトキハ之ニ退役ヲ命ズルコトヲ得
附 則
本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
第七条及第八条ノ規定ハ当分ノ内昭和八年勅令第十二号ニ依リ充用セラルル者(特別志願将校)ニ之ヲ準用ス
昭和十六年三月三十一日迄ハ第十二条乃至第十四条ノ規定ニ代ヘ仍従前ノ陸軍将校分限令第九条及第十条ノ規定ヲ適用ス