第一條 政府ハ海運業ノ振興ヲ圖ル爲必要アリト認ムルトキハ船舶建造資金ノ融通ヲ爲ス金融機關ニ對シ補給金ヲ支給シ且融通ニ因リテ受ケタル損失ヲ補償スルノ契約ヲ爲スコトヲ得
前項ノ契約ハ之ニ基キ支給スベキ補給金ノ總額ガ帝國議會ノ協贊ヲ經タル金額ヲ超エザル範圍內ニ於テ之ヲ爲スコトヲ要ス
第二條 前條ノ契約ヲ爲スコトヲ得ル期間ハ昭和十四年度以降十年度間トス
第三條 第一條ノ船舶建造資金及金融機關ノ範圍、補給金支給ノ限度竝ニ船舶建造資金ノ融通ヲ受クルコトヲ得ベキ者ノ範圍ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四條 政府ハ第一條ノ契約ヲ爲サントスルトキハ金融機關ヲシテ船舶建造資金ノ融通ニ付左ノ各號ニ依ラシムルコトヲ要ス
一 融通資金ノ償還方法ハ十五年以內ノ年賦償還ニ依ルコト但シ其ノ期間內ニ於テ二年以內ノ据置期間ヲ定メ得ルコト
二 融通資金ニ依リテ建造セラルル船舶ニ第一順位ノ抵當權ヲ設定スルコト但シ船舶建造中ニ在リテハ之ニ代ヘテ一時他ノ船舶其ノ他ノ物件ヲ擔保ト爲シ得ルコト
三 資金融通ノ限度ハ建造セラルル船舶ノ擔保價格ヲ超エザルコト但シ政府ノ認可ヲ受ケ其ノ擔保不足分ニ付他ノ船舶其ノ他ノ物件ヲ擔保ト爲シタルトキハ此ノ限ニ在ラザルコト
四 船舶ノ擔保價格ハ當該船舶ノ價格ノ三分ノ二又ハ保險金額ノ五分ノ四ノ中其ノ低キモノニ依ルコト
第五條 第一條ノ契約ニ基ク政府ノ損失補償ハ金融機關ガ融通ニ因リテ受ケタル損失ノ百分ノ七十トス
第一項ノ損失及其ノ額ハ船舶融資損失審査會之ヲ決定ス
船舶融資損失審査會ニ關スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第六條 金融機關ハ損失補償ヲ受ケタル後ト雖モ其ノ債權ヲ保有シ且之ヲ取立ツルコトヲ要ス
金融機關ハ前項ノ取立ニ依リテ得タル金額ヨリ債權行使ノ爲要シタル費用ヲ控除シ其ノ殘額ノ百分ノ七十ニ相當スル金額ヲ政府ニ納付スベシ
第七條 第一條ノ契約ニ基キ政府ガ金融機關ニ對シテ支拂フベキ損失補償金ハ國債證券ヲ以テ之ヲ交付スルコトヲ得
第八條 政府ハ前條ノ規定ニ依リ交付スル爲必要ナル額ヲ限度トシ公債ヲ發行スルコトヲ得
第九條 本法ニ依リ交付スル國債證券ノ交付價格ハ時價ヲ參酌シテ大藏大臣之ヲ定ム
第十條 金融機關ガ本法又ハ第一條ノ契約ニ違反シタルトキハ政府ハ融通資金ノ全部若ハ一部ニ付補給ヲ爲サズ、損失ノ全部若ハ一部ニ付補償ヲ爲サズ又ハ補給金若ハ補償金ノ全部若ハ一部ノ返還ヲ命ズルコトヲ得