軍用資源秘密保護法
法令番号: 法律第二十五號
公布年月日: 昭和14年3月25日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル軍用資源祕密保護法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十四年三月二十四日
內閣總理大臣 男爵 平沼騏一郞
海軍大臣 米內光政
司法大臣 鹽野季彥
陸軍大臣 板垣征四郞
拓務大臣 八田嘉明
法律第二十五號
軍用資源祕密保護法
第一條 本法ハ國防目的達成ノ爲軍用ニ供スル(軍用ニ供スベキ場合ヲ含ム以下之ニ同ジ)人的及物的資源ニ關シ外國ニ祕匿スルコトヲ要スル事項ノ漏泄ヲ防止スルヲ以テ目的トス
第二條 陸軍大臣又ハ海軍大臣(官廳ノ管理ニ屬スルモノニ係ルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ主務大臣)ハ左ニ揭グルモノニ就キ命令ヲ以テ軍用資源祕密ヲ指定ス但シ公示ヲ不適當トスルモノニ係ル指定ハ當該事項又ハ圖書物件ノ管理者又ハ之ニ準ズベキ者ニ對スル通知ヲ以テ之ヲ爲ス
一 全國(關東州及南洋群島ヲ含ム以下之ニ同ジ)又ハ一地方ニ於ケル軍用ニ供スル重要ナル物資ノ生產額、生產能力、生產能力判定資料タル設備ノ種類別數(之ヲ判定シ得ベキ比率ヲ含ム以下之ニ同ジ)及政府ノ決定シタル生產計畫竝ニ此等ヲ表示スル圖書物件
二 兵器ヲ生產スル工場事業場又ハ之ニ轉用スルコトヲ得ル工場事業場ノ當該兵器ノ生產額、生產能力竝ニ生產能力判定資料タル重要ナル設備ノ種類別數及其ノ設備ニ屬スル從業者ノ總數(之ヲ判定シ得ベキ比率ヲ含ム以下之ニ同ジ)又ハ種類別數竝ニ此等ヲ表示スル圖書物件
三 兵器以外ノ軍用ニ供スル重要ナル物資ヲ生產スル工場事業場又ハ之ニ轉用スルコトヲ得ル工場事業場ノ當該物資ノ生產額、生產能力、生產能力判定資料タル重要ナル設備ノ種類別數及其ノ設備ニ屬スル從業者ノ總數又ハ種類別數竝ニ政府ノ決定シタル生產計畫竝ニ此等ヲ表示スル圖書物件
四 全國又ハ一地方ニ於ケル軍用ニ供スル重要ナル物資ノ貯藏額及貯藏設備ノ貯藏能力、此等ノ判定資料タル重要ナル貯藏設備ノ當該物資ノ貯藏額及貯藏能力、政府ノ決定シタル當該物資ノ貯藏計畫竝ニ此等ヲ表示スル圖書物件
五 政府ガ貯藏セシメタル軍用ニ供スル重要ナル物資ノ貯藏額、政府ガ當該物資ヲ貯藏セシメタル貯藏設備ノ貯藏能力、政府ノ決定シタル當該物資ノ貯藏命令等ニ係ル貯藏計畫竝ニ此等ヲ表示スル圖書物件
六 全國若ハ一地方又ハ重要ナル港灣ニ於ケル軍用ニ供スル重要ナル物資ノ輸入額及政府ノ決定シタル輸入計畫竝ニ此等ヲ表示スル圖書物件
七 全國又ハ一地方ニ於ケル軍用ニ供スル特殊技能者其ノ他ノ重要ナル人的資源ノ總數又ハ種類別數及此等ヲ表示スル圖書物件
八 全國又ハ一地方ニ於ケル軍用ニ供スル航空機、自動車又ハ馬ノ總數又ハ種類別數及此等ヲ表示スル圖書物件
九 軍用ニ供スル重要ナル鐵道ノ輸送能力及輸送能力判定資料タル輸送統計、此等ヲ表示スル圖書物件竝ニ軍用ニ供スル重要ナル鐵道ノ施設又ハ車輛ニ關スル重要ナル記錄圖表及其ノ內容
十 軍用ニ供スル重要ナル飛行場又ハ其ノ附屬設備ニ關スル重要ナル記錄圖表及其ノ內容
十一 軍用ニ供スル船舶ニ於ケル特殊設備ニ關スル重要ナル記錄圖表及其ノ內容
十二 軍用ニ供スル重要ナル通信連絡系統及其ノ通信能力、此等ヲ表示スル圖書物件竝ニ軍用ニ供スル重要ナル通信設備又ハ其ノ設備ノ通信能力若ハ連絡系統ニ關スル重要ナル記錄圖表及其ノ內容
十三 陸軍大臣若ハ海軍大臣ノ命令若ハ委囑ニ依ル重要ナル試驗硏究又ハ軍事上祕匿ヲ要スル發明考案ニ關スル事項及圖書物件
十四 軍事上祕匿ヲ要スル氣象ニ關スル重要ナル事項及圖書物件
十五 特ニ祕匿ノ措置ヲ要スル第二號乃至第五號及第九號乃至第十二號ニ規定スル設備、第十三號ノ試驗硏究ニ關スル設備竝ニ此等ノ機構及性能竝ニ此等ヲ表示スル圖書物件
第三條 軍用資源祕密トシテ祕匿スルノ要ナキニ至リタルモノニ付テハ其ノ指定ヲ解除ス
前條ノ規定ハ前項ノ規定ニ依ル解除ノ場合ニ之ヲ準用ス
軍用資源祕密ニ關シ政府ノ公表シタルモノアルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ其ノ內容ト爲リタル部分ニ限リ其ノ指定ノ解除アリタルモノト看做ス
第四條 陸軍大臣又ハ海軍大臣ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ軍用資源祕密ニ屬スル圖書物件ニ一定ノ標記ヲ附セシムルコトヲ得
第五條 陸軍大臣又ハ海軍大臣ハ第二條第十五號ニ該當スル軍用資源祕密ニ屬スル設備ヲ祕匿スル爲必要アルトキハ其ノ管理者又ハ之ニ準ズベキ者ニ對シ當該設備ノ遮蔽其ノ他之ヲ祕匿スルニ必要ナル措置ヲ命ズルコトヲ得
第六條 陸軍大臣又ハ海軍大臣(官廳ノ管理ニ屬スルモノニ付テハ勅令ノ定ムル所ニ依リ主務大臣)ハ第二條第十五號ニ該當スル軍用資源祕密ニ屬スル設備ヲ祕匿スル爲必要アルトキハ命令ヲ以テ之ニ付立入又ハ測量、撮影、模寫、模造若ハ錄取又ハ其ノ複寫若ハ複製ヲ禁止シ又ハ制限スルコトヲ得
第七條 政府ハ軍用資源祕密ヲ祕匿スル爲特ニ必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ軍用資源祕密ヲ記載スル登記簿ノ閱覽又ハ謄本若ハ抄本ノ交付ヲ制限スルコトヲ得
第八條 政府ハ第二條第二號又ハ第十五號ニ該當スル軍用資源祕密ヲ祕匿スル爲特ニ必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ法令ニ基ク出願、申請、報吿、屆出等ヲ爲シ又ハ立入、檢査、質問等ヲ受クル場合ニ付軍用資源祕密ノ開示又ハ交付ヲ禁止シ又ハ制限スルコトヲ得
第九條 陸軍大臣又ハ海軍大臣ハ第五條ノ規定ニ依ル命令ニ係ル事項ニ關シ當該設備ノ管理者又ハ之ニ準ズベキ者ニ對シ報吿ヲ命ジ又ハ當該官吏ヲシテ必要ナル場所ニ立入リ、檢査ヲ爲シ若ハ關係者ニ對シ質問ヲ爲サシムルコトヲ得
第十條 政府ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ第五條ノ規定ニ依ル命令ニ因リ生ジタル損失ヲ補償ス
前項ノ規定ニ依ル補償金額ニ付不服アル者ハ其ノ補償金額ノ通知ヲ受ケタル日ヨリ三月以內ニ通常裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第十一條 外國若ハ外國ノ爲ニ行動スル者ニ漏泄シ又ハ公ニスル目的ヲ以テ軍用資源祕密ヲ探知シ又ハ收集シタル者ハ十年以下ノ懲役ニ處ス
第十二條 業務ニ因リ軍用資源祕密ヲ知得シ又ハ領有シタル者之ヲ外國若ハ外國ノ爲ニ行動スル者ニ漏泄シ又ハ公ニシタルトキハ一年以上ノ有期懲役ニ處ス
外國若ハ外國ノ爲ニ行動スル者ニ漏泄シ又ハ公ニスル目的ヲ以テ軍用資源祕密ヲ探知シ又ハ收集シタル者之ヲ外國若ハ外國ノ爲ニ行動スル者ニ漏泄シ又ハ公ニシタルトキ亦前項ニ同ジ
前二項ニ規定スル原由以外ノ原由ニ因リ軍用資源祕密ヲ知得シ又ハ領有シタル者之ヲ外國若ハ外國ノ爲ニ行動スル者ニ漏泄シ又ハ公ニシタルトキハ十年以下ノ懲役ニ處ス
第十三條 業務ニ因リ軍用資源祕密ヲ知得シ又ハ領有シタル者之ヲ外國人ニ漏泄シタルトキハ二年以下ノ懲役又ハ二千圓以下ノ罰金ニ處ス
前項ニ規定スル原由以外ノ原由ニ因リ軍用資源祕密ヲ知得シ又ハ領有シタル者之ヲ外國人ニ漏泄シタルトキハ一年以下ノ懲役又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第十四條 第二條第二號又ハ第十五號ニ該當スル軍用資源祕密ヲ知得シ又ハ領有シタル者之ヲ他人ニ漏泄シタルトキハ六月以下ノ懲役又ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
第十五條 軍用資源祕密ヲ外國又ハ外國ノ爲ニ行動スル者ニ漏泄スル爲之ヲ探知シ、收集シ又ハ漏泄スルコトヲ目的トシテ團體ヲ組織シタル者又ハ其ノ團體ノ指導者タル任務ニ從事シタル者ハ五年以下ノ懲役ニ處ス
情ヲ知リテ前項ノ團體ニ加入シタル者ハ二年以下ノ懲役ニ處ス
第十六條 第六條ノ規定ニ依ル禁止又ハ制限ニ違反シタル者ハ六月以下ノ懲役又ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
第十七條 第五條ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタル者ハ三千圓以下ノ罰金ニ處ス
第十八條 第七條ノ規定ニ依ル制限ニ違反シタル者及第九條ノ規定ニ依ル立入若ハ檢査ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シ又ハ質問ニ對シ答辯ヲ爲サズ若ハ虛僞ノ陳述ヲ爲シタル者ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
第九條ノ規定ニ依ル報吿ヲ爲サズ又ハ虛僞ノ報吿ヲ爲シタル者亦前項ニ同ジ
第十九條 第十一條及第十二條ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス
第二十條 第十一條、第十五條又ハ前條ノ罪ヲ犯シタル者未ダ官ニ發覺セザル前自首シタルトキハ其ノ刑ヲ減輕シ又ハ免除ス
第二十一條 第五條ノ規定ニ依リ祕匿ノ措置ヲ命ゼラレタル者ハ其ノ代理人、戶主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ從業者ガ其ノ業務ニ關シ第十七條又ハ第十八條第二項ノ違反行爲ヲ爲シタルトキハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ處罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第二十二條 第十七條及第十八條第二項ノ罰則ハ其ノ者ガ法人ナルトキハ理事、取締役其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者又ハ禁治產者ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス但シ營業ニ關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第二十三條 本法ノ罰則ハ何人ヲ問ハズ本法施行地外ニ於テ罪ヲ犯シタル者ニ亦之ヲ適用ス
第二十四條 軍用資源祕密ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ政府ノ許可ヲ受ケタルトキハ之ヲ他人ニ開示シ若ハ交付シ又ハ公ニスルコトヲ妨ゲズ
第二十五條 軍用資源祕密ニシテ官廳ノ管理ニ屬スルモノニ係ル標記及祕匿ノ措置ニ關シテハ勅令ノ定ムル所ニ依ル
第二十六條 朝鮮、臺灣又ハ樺太ニ於テハ本法ニ規定スル主務大臣ノ職權ハ勅令ノ定ムル官廳之ヲ行フ
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル軍用資源秘密保護法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十四年三月二十四日
内閣総理大臣 男爵 平沼騏一郎
海軍大臣 米内光政
司法大臣 塩野季彦
陸軍大臣 板垣征四郎
拓務大臣 八田嘉明
法律第二十五号
軍用資源秘密保護法
第一条 本法ハ国防目的達成ノ為軍用ニ供スル(軍用ニ供スベキ場合ヲ含ム以下之ニ同ジ)人的及物的資源ニ関シ外国ニ秘匿スルコトヲ要スル事項ノ漏泄ヲ防止スルヲ以テ目的トス
第二条 陸軍大臣又ハ海軍大臣(官庁ノ管理ニ属スルモノニ係ルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ主務大臣)ハ左ニ掲グルモノニ就キ命令ヲ以テ軍用資源秘密ヲ指定ス但シ公示ヲ不適当トスルモノニ係ル指定ハ当該事項又ハ図書物件ノ管理者又ハ之ニ準ズベキ者ニ対スル通知ヲ以テ之ヲ為ス
一 全国(関東州及南洋群島ヲ含ム以下之ニ同ジ)又ハ一地方ニ於ケル軍用ニ供スル重要ナル物資ノ生産額、生産能力、生産能力判定資料タル設備ノ種類別数(之ヲ判定シ得ベキ比率ヲ含ム以下之ニ同ジ)及政府ノ決定シタル生産計画並ニ此等ヲ表示スル図書物件
二 兵器ヲ生産スル工場事業場又ハ之ニ転用スルコトヲ得ル工場事業場ノ当該兵器ノ生産額、生産能力並ニ生産能力判定資料タル重要ナル設備ノ種類別数及其ノ設備ニ属スル従業者ノ総数(之ヲ判定シ得ベキ比率ヲ含ム以下之ニ同ジ)又ハ種類別数並ニ此等ヲ表示スル図書物件
三 兵器以外ノ軍用ニ供スル重要ナル物資ヲ生産スル工場事業場又ハ之ニ転用スルコトヲ得ル工場事業場ノ当該物資ノ生産額、生産能力、生産能力判定資料タル重要ナル設備ノ種類別数及其ノ設備ニ属スル従業者ノ総数又ハ種類別数並ニ政府ノ決定シタル生産計画並ニ此等ヲ表示スル図書物件
四 全国又ハ一地方ニ於ケル軍用ニ供スル重要ナル物資ノ貯蔵額及貯蔵設備ノ貯蔵能力、此等ノ判定資料タル重要ナル貯蔵設備ノ当該物資ノ貯蔵額及貯蔵能力、政府ノ決定シタル当該物資ノ貯蔵計画並ニ此等ヲ表示スル図書物件
五 政府ガ貯蔵セシメタル軍用ニ供スル重要ナル物資ノ貯蔵額、政府ガ当該物資ヲ貯蔵セシメタル貯蔵設備ノ貯蔵能力、政府ノ決定シタル当該物資ノ貯蔵命令等ニ係ル貯蔵計画並ニ此等ヲ表示スル図書物件
六 全国若ハ一地方又ハ重要ナル港湾ニ於ケル軍用ニ供スル重要ナル物資ノ輸入額及政府ノ決定シタル輸入計画並ニ此等ヲ表示スル図書物件
七 全国又ハ一地方ニ於ケル軍用ニ供スル特殊技能者其ノ他ノ重要ナル人的資源ノ総数又ハ種類別数及此等ヲ表示スル図書物件
八 全国又ハ一地方ニ於ケル軍用ニ供スル航空機、自動車又ハ馬ノ総数又ハ種類別数及此等ヲ表示スル図書物件
九 軍用ニ供スル重要ナル鉄道ノ輸送能力及輸送能力判定資料タル輸送統計、此等ヲ表示スル図書物件並ニ軍用ニ供スル重要ナル鉄道ノ施設又ハ車輛ニ関スル重要ナル記録図表及其ノ内容
十 軍用ニ供スル重要ナル飛行場又ハ其ノ附属設備ニ関スル重要ナル記録図表及其ノ内容
十一 軍用ニ供スル船舶ニ於ケル特殊設備ニ関スル重要ナル記録図表及其ノ内容
十二 軍用ニ供スル重要ナル通信連絡系統及其ノ通信能力、此等ヲ表示スル図書物件並ニ軍用ニ供スル重要ナル通信設備又ハ其ノ設備ノ通信能力若ハ連絡系統ニ関スル重要ナル記録図表及其ノ内容
十三 陸軍大臣若ハ海軍大臣ノ命令若ハ委嘱ニ依ル重要ナル試験研究又ハ軍事上秘匿ヲ要スル発明考案ニ関スル事項及図書物件
十四 軍事上秘匿ヲ要スル気象ニ関スル重要ナル事項及図書物件
十五 特ニ秘匿ノ措置ヲ要スル第二号乃至第五号及第九号乃至第十二号ニ規定スル設備、第十三号ノ試験研究ニ関スル設備並ニ此等ノ機構及性能並ニ此等ヲ表示スル図書物件
第三条 軍用資源秘密トシテ秘匿スルノ要ナキニ至リタルモノニ付テハ其ノ指定ヲ解除ス
前条ノ規定ハ前項ノ規定ニ依ル解除ノ場合ニ之ヲ準用ス
軍用資源秘密ニ関シ政府ノ公表シタルモノアルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ其ノ内容ト為リタル部分ニ限リ其ノ指定ノ解除アリタルモノト看做ス
第四条 陸軍大臣又ハ海軍大臣ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ軍用資源秘密ニ属スル図書物件ニ一定ノ標記ヲ附セシムルコトヲ得
第五条 陸軍大臣又ハ海軍大臣ハ第二条第十五号ニ該当スル軍用資源秘密ニ属スル設備ヲ秘匿スル為必要アルトキハ其ノ管理者又ハ之ニ準ズベキ者ニ対シ当該設備ノ遮蔽其ノ他之ヲ秘匿スルニ必要ナル措置ヲ命ズルコトヲ得
第六条 陸軍大臣又ハ海軍大臣(官庁ノ管理ニ属スルモノニ付テハ勅令ノ定ムル所ニ依リ主務大臣)ハ第二条第十五号ニ該当スル軍用資源秘密ニ属スル設備ヲ秘匿スル為必要アルトキハ命令ヲ以テ之ニ付立入又ハ測量、撮影、模写、模造若ハ録取又ハ其ノ複写若ハ複製ヲ禁止シ又ハ制限スルコトヲ得
第七条 政府ハ軍用資源秘密ヲ秘匿スル為特ニ必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ軍用資源秘密ヲ記載スル登記簿ノ閲覧又ハ謄本若ハ抄本ノ交付ヲ制限スルコトヲ得
第八条 政府ハ第二条第二号又ハ第十五号ニ該当スル軍用資源秘密ヲ秘匿スル為特ニ必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ法令ニ基ク出願、申請、報告、届出等ヲ為シ又ハ立入、検査、質問等ヲ受クル場合ニ付軍用資源秘密ノ開示又ハ交付ヲ禁止シ又ハ制限スルコトヲ得
第九条 陸軍大臣又ハ海軍大臣ハ第五条ノ規定ニ依ル命令ニ係ル事項ニ関シ当該設備ノ管理者又ハ之ニ準ズベキ者ニ対シ報告ヲ命ジ又ハ当該官吏ヲシテ必要ナル場所ニ立入リ、検査ヲ為シ若ハ関係者ニ対シ質問ヲ為サシムルコトヲ得
第十条 政府ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ第五条ノ規定ニ依ル命令ニ因リ生ジタル損失ヲ補償ス
前項ノ規定ニ依ル補償金額ニ付不服アル者ハ其ノ補償金額ノ通知ヲ受ケタル日ヨリ三月以内ニ通常裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第十一条 外国若ハ外国ノ為ニ行動スル者ニ漏泄シ又ハ公ニスル目的ヲ以テ軍用資源秘密ヲ探知シ又ハ収集シタル者ハ十年以下ノ懲役ニ処ス
第十二条 業務ニ因リ軍用資源秘密ヲ知得シ又ハ領有シタル者之ヲ外国若ハ外国ノ為ニ行動スル者ニ漏泄シ又ハ公ニシタルトキハ一年以上ノ有期懲役ニ処ス
外国若ハ外国ノ為ニ行動スル者ニ漏泄シ又ハ公ニスル目的ヲ以テ軍用資源秘密ヲ探知シ又ハ収集シタル者之ヲ外国若ハ外国ノ為ニ行動スル者ニ漏泄シ又ハ公ニシタルトキ亦前項ニ同ジ
前二項ニ規定スル原由以外ノ原由ニ因リ軍用資源秘密ヲ知得シ又ハ領有シタル者之ヲ外国若ハ外国ノ為ニ行動スル者ニ漏泄シ又ハ公ニシタルトキハ十年以下ノ懲役ニ処ス
第十三条 業務ニ因リ軍用資源秘密ヲ知得シ又ハ領有シタル者之ヲ外国人ニ漏泄シタルトキハ二年以下ノ懲役又ハ二千円以下ノ罰金ニ処ス
前項ニ規定スル原由以外ノ原由ニ因リ軍用資源秘密ヲ知得シ又ハ領有シタル者之ヲ外国人ニ漏泄シタルトキハ一年以下ノ懲役又ハ千円以下ノ罰金ニ処ス
第十四条 第二条第二号又ハ第十五号ニ該当スル軍用資源秘密ヲ知得シ又ハ領有シタル者之ヲ他人ニ漏泄シタルトキハ六月以下ノ懲役又ハ五百円以下ノ罰金ニ処ス
第十五条 軍用資源秘密ヲ外国又ハ外国ノ為ニ行動スル者ニ漏泄スル為之ヲ探知シ、収集シ又ハ漏泄スルコトヲ目的トシテ団体ヲ組織シタル者又ハ其ノ団体ノ指導者タル任務ニ従事シタル者ハ五年以下ノ懲役ニ処ス
情ヲ知リテ前項ノ団体ニ加入シタル者ハ二年以下ノ懲役ニ処ス
第十六条 第六条ノ規定ニ依ル禁止又ハ制限ニ違反シタル者ハ六月以下ノ懲役又ハ五百円以下ノ罰金ニ処ス
第十七条 第五条ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタル者ハ三千円以下ノ罰金ニ処ス
第十八条 第七条ノ規定ニ依ル制限ニ違反シタル者及第九条ノ規定ニ依ル立入若ハ検査ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シ又ハ質問ニ対シ答弁ヲ為サズ若ハ虚偽ノ陳述ヲ為シタル者ハ五百円以下ノ罰金ニ処ス
第九条ノ規定ニ依ル報告ヲ為サズ又ハ虚偽ノ報告ヲ為シタル者亦前項ニ同ジ
第十九条 第十一条及第十二条ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス
第二十条 第十一条、第十五条又ハ前条ノ罪ヲ犯シタル者未ダ官ニ発覚セザル前自首シタルトキハ其ノ刑ヲ減軽シ又ハ免除ス
第二十一条 第五条ノ規定ニ依リ秘匿ノ措置ヲ命ゼラレタル者ハ其ノ代理人、戸主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ従業者ガ其ノ業務ニ関シ第十七条又ハ第十八条第二項ノ違反行為ヲ為シタルトキハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ処罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第二十二条 第十七条及第十八条第二項ノ罰則ハ其ノ者ガ法人ナルトキハ理事、取締役其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者又ハ禁治産者ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス但シ営業ニ関シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第二十三条 本法ノ罰則ハ何人ヲ問ハズ本法施行地外ニ於テ罪ヲ犯シタル者ニ亦之ヲ適用ス
第二十四条 軍用資源秘密ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ政府ノ許可ヲ受ケタルトキハ之ヲ他人ニ開示シ若ハ交付シ又ハ公ニスルコトヲ妨ゲズ
第二十五条 軍用資源秘密ニシテ官庁ノ管理ニ属スルモノニ係ル標記及秘匿ノ措置ニ関シテハ勅令ノ定ムル所ニ依ル
第二十六条 朝鮮、台湾又ハ樺太ニ於テハ本法ニ規定スル主務大臣ノ職権ハ勅令ノ定ムル官庁之ヲ行フ
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム