(鉱業法中改正法律)
法令番号: 法律第二十三號
公布年月日: 昭和14年3月24日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル鑛業法中改正法律ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十四年三月二十三日
內閣總理大臣 男爵 平沼騏一郞
司法大臣 鹽野季彥
商工大臣兼拓務大臣 八田嘉明
法律第二十三號
鑛業法中左ノ通改正ス
第十四條中「第八章」ヲ「第九章」ニ改ム
第四十一條中「第七十二條」ノ下ニ「若ハ第七十四條ノ四第三項」ヲ加フ
第五章ヲ第六章トシ以下順次繰下ゲ第四章ノ次ニ左ノ一章ヲ加フ
第五章 鑛害ノ賠償
第七十四條ノ二 鑛物掘採ノ爲ノ土地ノ掘鑿、坑水廢水ノ放流、捨石鑛滓ノ堆積又ハ鑛煙ノ排出ニ因リテ他人ニ損害ヲ與ヘタルトキハ損害發生ノ時ニ於ケル當該鑛區ノ鑛業權者、損害發生ノ時鑛業權消滅セル場合ニ於テハ鑛業權消滅ノ時ニ於ケル當該鑛區ノ鑛業權者其ノ損害ヲ賠償スル責ニ任ス
前項ノ場合ニ於テ損害カ二以上ノ鑛區ノ鑛業權者ノ作業ニ因リテ生シタルトキハ各鑛業權者ハ連帶シテ損害ヲ賠償スル義務ヲ負フ損害カ二以上ノ鑛區ノ鑛業權者ノ作業ノ中孰レニ因リテ生シタルカヲ知ルコト能ハサルトキ亦同シ
前二項ノ場合ニ於テ損害發生ノ後鑛業權者其ノ鑛業權ヲ讓渡シタルトキハ損害發生ノ時ノ鑛業權者及其ノ後ノ鑛業權者ハ連帶シテ損害ヲ賠償スル義務ヲ負フ
前三項ノ賠償ニ付テハ共同鑛業權者ノ義務ハ連帶トス
第七十四條ノ三 前條第二項ノ連帶債務者相互ノ間ニ於テハ其ノ各自ノ負擔部分ハ相均シキモノト推定ス
前條第三項ノ場合ニ於テ鑛業權ヲ讓受ケタル者賠償ノ義務ヲ履行シタルトキハ損害發生ノ時ノ鑛業權者ニ對シ償還ノ請求ヲ爲スコトヲ得
第七十四條ノ四 石炭ヲ目的トスル鑛業權者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ石炭掘採ノ爲ノ土地ノ掘鑿ニ因リテ生スヘキ損害ノ賠償ヲ擔保スル爲其ノ掘採シタル石炭ノ數量ニ應シ每年一定額ノ金錢ヲ供託スヘシ但シ金錢ニ代ヘ其ノ金額ニ相當スル國債ヲ供託スルコトヲ妨ケス
前項ノ規定ハ國ノ鑛業ニ之ヲ適用セス
石炭ヲ目的トスル鑛業權者第一項ノ供託ヲ怠リタルトキハ主務大臣ハ鑛業ノ停止ヲ命スルコトヲ得
第七十四條ノ五 石炭掘採ノ爲ノ土地ノ掘鑿ニ因リテ損害ヲ被リタル者ハ其ノ損害賠償請求權ニ關シ前條第一項ノ供託物ニ付他ノ債權者ニ先チ辨濟ヲ受クルノ權利ヲ有ス
前項ノ權利ノ實行ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第七十四條ノ六 石炭ヲ目的トスル鑛業權者其ノ鑛業權ヲ讓渡シタルトキハ第七十四條ノ四第一項ノ供託物ニ對スル權利ハ讓受人ニ移轉ス
第七十四條ノ七 石炭ヲ目的トスル鑛業權者又ハ鑛業權者タリシ者ハ左ノ場合ニ限リ命令ノ定ムル所ニ依リ第七十四條ノ四第一項ノ供託物ヲ取戾スコトヲ得
一 石炭掘採ノ爲ノ土地ノ掘鑿ニ因リテ生シタル損害ヲ賠償シタルトキ
二 鑛業權消滅後十箇年ヲ經ルモ石炭掘採ノ爲ノ土地ノ掘鑿ニ因ル損害ノ生セサルトキ
第七十四條ノ八 損害ノ賠償ハ金錢ヲ以テ之ヲ爲ス但シ賠償金額ニ比シ著シク多額ノ費用ヲ要セスシテ原狀ノ囘復ヲ爲スコトヲ得ルトキハ被害者ハ原狀ノ囘復ヲ請求スルコトヲ得
賠償義務者ノ申立アリタル場合ニ於テ裁判所適當ト認ムルトキハ前項ノ規定ニ拘ラス金錢ノ賠償ニ代ヘ原狀ノ囘復ヲ命スルコトヲ得
第七十四條ノ九 損害ノ發生ニ關シ被害者ニ責ムヘキ事由アリタルトキハ裁判所ハ損害賠償ノ責任及範圍ヲ定ムルニ付之ヲ斟酌スルコトヲ得損害ノ發生ニ關シ天災其ノ他ノ不可抗力ノ競合シタルトキ亦同シ
第七十四條ノ十 損害賠償ノ額カ豫定セラレタル場合ニ於テ其ノ額カ著シク不當ナルトキハ當事者ハ之カ增減ヲ請求スルコトヲ得
第七十四條ノ十一 損害賠償請求權ハ被害者カ損害及賠償義務者ヲ知リタル時ヨリ三箇年間之ヲ行ハサルトキハ時效ニ因リテ消滅ス損害發生ノ時ヨリ二十箇年ヲ經過シタルトキ亦同シ
前項ノ期間ハ進行中ノ損害ニ付テハ其ノ進行ノ止ミタル時ヨリ之ヲ起算ス
第七十四條ノ十二 鑛害ノ賠償ニ關シ爭議ノ生シタルトキハ當事者ハ損害ノ發生地ヲ管轄スル地方裁判所又ハ當事者ノ合意ニ依リテ定ムル地方裁判所ニ調停ノ申立ヲ爲スコトヲ得
小作調停法第二條、第六條、第十條、第十二條乃至第十五條、第二十一條、第二十二條、第二十四條乃至第二十八條、第二十九條第一項、第三十條乃至第三十五條、第三十七條乃至第四十條及第四十八條、借地借家調停法第四條ノ二、第十條、第十八條及第二十九條乃至第三十一條、金錢債務臨時調停法第六條第一項第四項、商事調停法第一條第二項第三項、第四條及第五條竝人事調停法第六條及第十條ノ規定ハ前項ノ調停ニ之ヲ準用ス
第七十四條ノ十三 調停委員ハ特別ノ知識經驗ヲ有シ公正ナル調停ヲ爲スニ適スル者ニ就キ每年豫メ地方裁判所長ノ選任シタル者又ハ當事者ノ合意ニ依リ選定セラレタル者ノ中ヨリ各事件ニ付調停主任之ヲ指定ス
第七十四條ノ十四 裁判所又ハ調停委員會必要アリト認ムルトキハ關係官廳其ノ他適當ト認ムル者ニ對シ意見ヲ求メ又ハ調査ヲ囑託スルコトヲ得
關係官廳ハ裁判所又ハ調停委員會ニ對シ意見ヲ述フルコトヲ得
第七十四條ノ十五 本章ノ規定ハ鑛業ニ從事スル者ノ業務上ノ負傷、疾病及死亡ニ關シテハ之ヲ適用セス
第九十六條 第十條第三項若ハ第十一條ノ規定ニ違背シタル者又ハ第七十二條、第七十四條第一項若ハ第七十四條ノ四第三項ノ命令ニ從ハサル者ハ二百圓以下ノ罰金ニ處ス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五章ノ改正規定ハ第七十四條ノ四乃至第七十四條ノ七ノ規定ヲ除クノ外本法施行前ニ爲シタル作業ニ因リテ本法施行後ニ生ジタル損害ニモ之ヲ適用ス
本法施行前ニ生ジタル損害ニシテ補償金、手當金、見舞金其ノ他何等ノ名義ヲ以テスルヲ問ハズ被害者ガ其ノ賠償ヲ受ケズ又ハ賠償ヲ受ケタルモ其ノ額ガ著シク少額ナリシモノニ付テハ被害者ハ賠償又ハ其ノ增額ヲ請求スルコトヲ得
第七十四條ノ二第一項、第二項及第四項、第七十四條ノ三第一項、第七十四條ノ八、第七十四條ノ九竝ニ第七十四條ノ十一乃至第七十四條ノ十五ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ適用ス但シ第七十四條ノ十一第一項ノ三箇年ノ期間ハ被害者ガ本法施行前ニ損害及賠償義務者ヲ知リタルトキハ本法施行ノ日ヨリ之ヲ起算ス
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル鉱業法中改正法律ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十四年三月二十三日
内閣総理大臣 男爵 平沼騏一郎
司法大臣 塩野季彦
商工大臣兼拓務大臣 八田嘉明
法律第二十三号
鉱業法中左ノ通改正ス
第十四条中「第八章」ヲ「第九章」ニ改ム
第四十一条中「第七十二条」ノ下ニ「若ハ第七十四条ノ四第三項」ヲ加フ
第五章ヲ第六章トシ以下順次繰下ゲ第四章ノ次ニ左ノ一章ヲ加フ
第五章 鉱害ノ賠償
第七十四条ノ二 鉱物掘採ノ為ノ土地ノ掘鑿、坑水廃水ノ放流、捨石鉱滓ノ堆積又ハ鉱煙ノ排出ニ因リテ他人ニ損害ヲ与ヘタルトキハ損害発生ノ時ニ於ケル当該鉱区ノ鉱業権者、損害発生ノ時鉱業権消滅セル場合ニ於テハ鉱業権消滅ノ時ニ於ケル当該鉱区ノ鉱業権者其ノ損害ヲ賠償スル責ニ任ス
前項ノ場合ニ於テ損害カ二以上ノ鉱区ノ鉱業権者ノ作業ニ因リテ生シタルトキハ各鉱業権者ハ連帯シテ損害ヲ賠償スル義務ヲ負フ損害カ二以上ノ鉱区ノ鉱業権者ノ作業ノ中孰レニ因リテ生シタルカヲ知ルコト能ハサルトキ亦同シ
前二項ノ場合ニ於テ損害発生ノ後鉱業権者其ノ鉱業権ヲ譲渡シタルトキハ損害発生ノ時ノ鉱業権者及其ノ後ノ鉱業権者ハ連帯シテ損害ヲ賠償スル義務ヲ負フ
前三項ノ賠償ニ付テハ共同鉱業権者ノ義務ハ連帯トス
第七十四条ノ三 前条第二項ノ連帯債務者相互ノ間ニ於テハ其ノ各自ノ負担部分ハ相均シキモノト推定ス
前条第三項ノ場合ニ於テ鉱業権ヲ譲受ケタル者賠償ノ義務ヲ履行シタルトキハ損害発生ノ時ノ鉱業権者ニ対シ償還ノ請求ヲ為スコトヲ得
第七十四条ノ四 石炭ヲ目的トスル鉱業権者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ石炭掘採ノ為ノ土地ノ掘鑿ニ因リテ生スヘキ損害ノ賠償ヲ担保スル為其ノ掘採シタル石炭ノ数量ニ応シ毎年一定額ノ金銭ヲ供託スヘシ但シ金銭ニ代ヘ其ノ金額ニ相当スル国債ヲ供託スルコトヲ妨ケス
前項ノ規定ハ国ノ鉱業ニ之ヲ適用セス
石炭ヲ目的トスル鉱業権者第一項ノ供託ヲ怠リタルトキハ主務大臣ハ鉱業ノ停止ヲ命スルコトヲ得
第七十四条ノ五 石炭掘採ノ為ノ土地ノ掘鑿ニ因リテ損害ヲ被リタル者ハ其ノ損害賠償請求権ニ関シ前条第一項ノ供託物ニ付他ノ債権者ニ先チ弁済ヲ受クルノ権利ヲ有ス
前項ノ権利ノ実行ニ関シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第七十四条ノ六 石炭ヲ目的トスル鉱業権者其ノ鉱業権ヲ譲渡シタルトキハ第七十四条ノ四第一項ノ供託物ニ対スル権利ハ譲受人ニ移転ス
第七十四条ノ七 石炭ヲ目的トスル鉱業権者又ハ鉱業権者タリシ者ハ左ノ場合ニ限リ命令ノ定ムル所ニ依リ第七十四条ノ四第一項ノ供託物ヲ取戻スコトヲ得
一 石炭掘採ノ為ノ土地ノ掘鑿ニ因リテ生シタル損害ヲ賠償シタルトキ
二 鉱業権消滅後十箇年ヲ経ルモ石炭掘採ノ為ノ土地ノ掘鑿ニ因ル損害ノ生セサルトキ
第七十四条ノ八 損害ノ賠償ハ金銭ヲ以テ之ヲ為ス但シ賠償金額ニ比シ著シク多額ノ費用ヲ要セスシテ原状ノ回復ヲ為スコトヲ得ルトキハ被害者ハ原状ノ回復ヲ請求スルコトヲ得
賠償義務者ノ申立アリタル場合ニ於テ裁判所適当ト認ムルトキハ前項ノ規定ニ拘ラス金銭ノ賠償ニ代ヘ原状ノ回復ヲ命スルコトヲ得
第七十四条ノ九 損害ノ発生ニ関シ被害者ニ責ムヘキ事由アリタルトキハ裁判所ハ損害賠償ノ責任及範囲ヲ定ムルニ付之ヲ斟酌スルコトヲ得損害ノ発生ニ関シ天災其ノ他ノ不可抗力ノ競合シタルトキ亦同シ
第七十四条ノ十 損害賠償ノ額カ予定セラレタル場合ニ於テ其ノ額カ著シク不当ナルトキハ当事者ハ之カ増減ヲ請求スルコトヲ得
第七十四条ノ十一 損害賠償請求権ハ被害者カ損害及賠償義務者ヲ知リタル時ヨリ三箇年間之ヲ行ハサルトキハ時効ニ因リテ消滅ス損害発生ノ時ヨリ二十箇年ヲ経過シタルトキ亦同シ
前項ノ期間ハ進行中ノ損害ニ付テハ其ノ進行ノ止ミタル時ヨリ之ヲ起算ス
第七十四条ノ十二 鉱害ノ賠償ニ関シ争議ノ生シタルトキハ当事者ハ損害ノ発生地ヲ管轄スル地方裁判所又ハ当事者ノ合意ニ依リテ定ムル地方裁判所ニ調停ノ申立ヲ為スコトヲ得
小作調停法第二条、第六条、第十条、第十二条乃至第十五条、第二十一条、第二十二条、第二十四条乃至第二十八条、第二十九条第一項、第三十条乃至第三十五条、第三十七条乃至第四十条及第四十八条、借地借家調停法第四条ノ二、第十条、第十八条及第二十九条乃至第三十一条、金銭債務臨時調停法第六条第一項第四項、商事調停法第一条第二項第三項、第四条及第五条並人事調停法第六条及第十条ノ規定ハ前項ノ調停ニ之ヲ準用ス
第七十四条ノ十三 調停委員ハ特別ノ知識経験ヲ有シ公正ナル調停ヲ為スニ適スル者ニ就キ毎年予メ地方裁判所長ノ選任シタル者又ハ当事者ノ合意ニ依リ選定セラレタル者ノ中ヨリ各事件ニ付調停主任之ヲ指定ス
第七十四条ノ十四 裁判所又ハ調停委員会必要アリト認ムルトキハ関係官庁其ノ他適当ト認ムル者ニ対シ意見ヲ求メ又ハ調査ヲ嘱託スルコトヲ得
関係官庁ハ裁判所又ハ調停委員会ニ対シ意見ヲ述フルコトヲ得
第七十四条ノ十五 本章ノ規定ハ鉱業ニ従事スル者ノ業務上ノ負傷、疾病及死亡ニ関シテハ之ヲ適用セス
第九十六条 第十条第三項若ハ第十一条ノ規定ニ違背シタル者又ハ第七十二条、第七十四条第一項若ハ第七十四条ノ四第三項ノ命令ニ従ハサル者ハ二百円以下ノ罰金ニ処ス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五章ノ改正規定ハ第七十四条ノ四乃至第七十四条ノ七ノ規定ヲ除クノ外本法施行前ニ為シタル作業ニ因リテ本法施行後ニ生ジタル損害ニモ之ヲ適用ス
本法施行前ニ生ジタル損害ニシテ補償金、手当金、見舞金其ノ他何等ノ名義ヲ以テスルヲ問ハズ被害者ガ其ノ賠償ヲ受ケズ又ハ賠償ヲ受ケタルモ其ノ額ガ著シク少額ナリシモノニ付テハ被害者ハ賠償又ハ其ノ増額ヲ請求スルコトヲ得
第七十四条ノ二第一項、第二項及第四項、第七十四条ノ三第一項、第七十四条ノ八、第七十四条ノ九並ニ第七十四条ノ十一乃至第七十四条ノ十五ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ適用ス但シ第七十四条ノ十一第一項ノ三箇年ノ期間ハ被害者ガ本法施行前ニ損害及賠償義務者ヲ知リタルトキハ本法施行ノ日ヨリ之ヲ起算ス