第七十四條ノ二 鑛物掘採ノ爲ノ土地ノ掘鑿、坑水廢水ノ放流、捨石鑛滓ノ堆積又ハ鑛煙ノ排出ニ因リテ他人ニ損害ヲ與ヘタルトキハ損害發生ノ時ニ於ケル當該鑛區ノ鑛業權者、損害發生ノ時鑛業權消滅セル場合ニ於テハ鑛業權消滅ノ時ニ於ケル當該鑛區ノ鑛業權者其ノ損害ヲ賠償スル責ニ任ス
前項ノ場合ニ於テ損害カ二以上ノ鑛區ノ鑛業權者ノ作業ニ因リテ生シタルトキハ各鑛業權者ハ連帶シテ損害ヲ賠償スル義務ヲ負フ損害カ二以上ノ鑛區ノ鑛業權者ノ作業ノ中孰レニ因リテ生シタルカヲ知ルコト能ハサルトキ亦同シ
前二項ノ場合ニ於テ損害發生ノ後鑛業權者其ノ鑛業權ヲ讓渡シタルトキハ損害發生ノ時ノ鑛業權者及其ノ後ノ鑛業權者ハ連帶シテ損害ヲ賠償スル義務ヲ負フ
第七十四條ノ三 前條第二項ノ連帶債務者相互ノ間ニ於テハ其ノ各自ノ負擔部分ハ相均シキモノト推定ス
前條第三項ノ場合ニ於テ鑛業權ヲ讓受ケタル者賠償ノ義務ヲ履行シタルトキハ損害發生ノ時ノ鑛業權者ニ對シ償還ノ請求ヲ爲スコトヲ得
第七十四條ノ四 石炭ヲ目的トスル鑛業權者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ石炭掘採ノ爲ノ土地ノ掘鑿ニ因リテ生スヘキ損害ノ賠償ヲ擔保スル爲其ノ掘採シタル石炭ノ數量ニ應シ每年一定額ノ金錢ヲ供託スヘシ但シ金錢ニ代ヘ其ノ金額ニ相當スル國債ヲ供託スルコトヲ妨ケス
石炭ヲ目的トスル鑛業權者第一項ノ供託ヲ怠リタルトキハ主務大臣ハ鑛業ノ停止ヲ命スルコトヲ得
第七十四條ノ五 石炭掘採ノ爲ノ土地ノ掘鑿ニ因リテ損害ヲ被リタル者ハ其ノ損害賠償請求權ニ關シ前條第一項ノ供託物ニ付他ノ債權者ニ先チ辨濟ヲ受クルノ權利ヲ有ス
前項ノ權利ノ實行ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第七十四條ノ六 石炭ヲ目的トスル鑛業權者其ノ鑛業權ヲ讓渡シタルトキハ第七十四條ノ四第一項ノ供託物ニ對スル權利ハ讓受人ニ移轉ス
第七十四條ノ七 石炭ヲ目的トスル鑛業權者又ハ鑛業權者タリシ者ハ左ノ場合ニ限リ命令ノ定ムル所ニ依リ第七十四條ノ四第一項ノ供託物ヲ取戾スコトヲ得
一 石炭掘採ノ爲ノ土地ノ掘鑿ニ因リテ生シタル損害ヲ賠償シタルトキ
二 鑛業權消滅後十箇年ヲ經ルモ石炭掘採ノ爲ノ土地ノ掘鑿ニ因ル損害ノ生セサルトキ
第七十四條ノ八 損害ノ賠償ハ金錢ヲ以テ之ヲ爲ス但シ賠償金額ニ比シ著シク多額ノ費用ヲ要セスシテ原狀ノ囘復ヲ爲スコトヲ得ルトキハ被害者ハ原狀ノ囘復ヲ請求スルコトヲ得
賠償義務者ノ申立アリタル場合ニ於テ裁判所適當ト認ムルトキハ前項ノ規定ニ拘ラス金錢ノ賠償ニ代ヘ原狀ノ囘復ヲ命スルコトヲ得
第七十四條ノ九 損害ノ發生ニ關シ被害者ニ責ムヘキ事由アリタルトキハ裁判所ハ損害賠償ノ責任及範圍ヲ定ムルニ付之ヲ斟酌スルコトヲ得損害ノ發生ニ關シ天災其ノ他ノ不可抗力ノ競合シタルトキ亦同シ
第七十四條ノ十 損害賠償ノ額カ豫定セラレタル場合ニ於テ其ノ額カ著シク不當ナルトキハ當事者ハ之カ增減ヲ請求スルコトヲ得
第七十四條ノ十一 損害賠償請求權ハ被害者カ損害及賠償義務者ヲ知リタル時ヨリ三箇年間之ヲ行ハサルトキハ時效ニ因リテ消滅ス損害發生ノ時ヨリ二十箇年ヲ經過シタルトキ亦同シ
前項ノ期間ハ進行中ノ損害ニ付テハ其ノ進行ノ止ミタル時ヨリ之ヲ起算ス
第七十四條ノ十二 鑛害ノ賠償ニ關シ爭議ノ生シタルトキハ當事者ハ損害ノ發生地ヲ管轄スル地方裁判所又ハ當事者ノ合意ニ依リテ定ムル地方裁判所ニ調停ノ申立ヲ爲スコトヲ得
小作調停法第二條、第六條、第十條、第十二條乃至第十五條、第二十一條、第二十二條、第二十四條乃至第二十八條、第二十九條第一項、第三十條乃至第三十五條、第三十七條乃至第四十條及第四十八條、借地借家調停法第四條ノ二、第十條、第十八條及第二十九條乃至第三十一條、金錢債務臨時調停法第六條第一項第四項、商事調停法第一條第二項第三項、第四條及第五條竝人事調停法第六條及第十條ノ規定ハ前項ノ調停ニ之ヲ準用ス
第七十四條ノ十三 調停委員ハ特別ノ知識經驗ヲ有シ公正ナル調停ヲ爲スニ適スル者ニ就キ每年豫メ地方裁判所長ノ選任シタル者又ハ當事者ノ合意ニ依リ選定セラレタル者ノ中ヨリ各事件ニ付調停主任之ヲ指定ス
第七十四條ノ十四 裁判所又ハ調停委員會必要アリト認ムルトキハ關係官廳其ノ他適當ト認ムル者ニ對シ意見ヲ求メ又ハ調査ヲ囑託スルコトヲ得
關係官廳ハ裁判所又ハ調停委員會ニ對シ意見ヲ述フルコトヲ得
第七十四條ノ十五 本章ノ規定ハ鑛業ニ從事スル者ノ業務上ノ負傷、疾病及死亡ニ關シテハ之ヲ適用セス
第九十六條 第十條第三項若ハ第十一條ノ規定ニ違背シタル者又ハ第七十二條、第七十四條第一項若ハ第七十四條ノ四第三項ノ命令ニ從ハサル者ハ二百圓以下ノ罰金ニ處ス