人事調停法
法令番号: 法律第十一號
公布年月日: 昭和14年3月17日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル人事調停法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十四年三月十六日
內閣總理大臣 男爵 平沼騏一郞
司法大臣 鹽野季彥
法律第十一號
人事調停法
第一條 家族親族間ノ紛爭其ノ他一般ニ家庭ニ關スル事件ニ付テハ當事者ハ本法ニ依リ調停ノ申立ヲ爲スコトヲ得
第二條 調停ハ道義ニ本ヅキ溫情ヲ以テ事件ヲ解決スルコトヲ以テ其ノ本旨トス
第三條 調停ノ申立ハ相手方ノ住所地ヲ管轄スル區裁判所又ハ當事者ノ合意ニ依リテ定ムル區裁判所ニ之ヲ爲スコトヲ要ス
第四條 裁判所其ノ管轄ニ屬セザル事件ニ付申立ヲ受ケタルトキハ決定ヲ以テ事件ヲ管轄裁判所ニ移送スルコトヲ要ス但シ事件ノ處理上適當ト認ムルトキハ之ヲ他ノ區裁判所ニ移送シ又ハ自ラ處理スルコトヲ妨ゲズ
裁判所其ノ管轄ニ屬スル事件ニ付申立ヲ受ケタルトキト雖モ事件ノ處理上適當ト認ムルトキハ決定ヲ以テ之ヲ他ノ區裁判所ニ移送スルコトヲ得
前二項ノ決定ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ズ
第五條 調停ノ申立ガ淳風ニ副ハズ又ハ權利ノ濫用其ノ他不當ノ目的ニ出ヅルモノト認ムルトキハ裁判所ハ其ノ申立ヲ却下スルコトヲ得
第六條 當事者及利害關係人ハ自身出頭スルコトヲ要ス但シ已ムコトヲ得ザル事由アル場合ニ於テハ代理人ヲシテ出頭セシムルコトヲ得
辯護士ニ非ザル者前項ノ代理人ト爲ルニハ裁判所ノ許可ヲ受クルコトヲ要ス
裁判所ハ何時ニテモ前項ノ許可ヲ取消スコトヲ得
第七條 調停ハ裁判上ノ和解ト同一ノ效力ヲ有ス但シ本人ノ處分ヲ許サザル事項ニ關スルモノニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第八條 借地借家調停法第二條、第四條ノ二乃至第六條、第八條乃至第十一條、第十三條乃至第十五條、第十六條第一項、第十八條乃至第二十三條及第二十六條乃至第三十二條ノ規定ハ本法ノ調停ニ付之ヲ準用ス
第九條 調停委員ハ德望アル者其ノ他適當ト認メラルル者ニ就キ每年豫メ地方裁判所長ノ選任シタル者又ハ當事者ノ合意ニ依リ選定セラレタル者ノ中ヨリ各事件ニ付調停主任之ヲ指定ス
第十條 調停委員會ヲ開キタル場合ニ於テハ第六條第二項及第三項ニ規定スル裁判所ノ權限ハ調停委員會ニ屬ス
第十一條 調停委員會第五條ニ規定スル事由アリト認ムルトキハ調停ヲ爲サザルコトヲ得
第十二條 調停委員又ハ調停委員タリシ者故ナク評議ノ顚末又ハ調停主任、調停委員ノ意見若ハ其ノ多少ノ數ヲ漏泄シタルトキハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
調停委員又ハ調停委員タリシ者故ナク其ノ職務上取扱ヒタルコトニ付知得タル人ノ祕密ヲ漏泄シタルトキハ三月以下ノ懲役又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
前項ノ罪ハ吿訴ヲ待テ之ヲ論ズ
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル人事調停法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十四年三月十六日
内閣総理大臣 男爵 平沼騏一郎
司法大臣 塩野季彦
法律第十一号
人事調停法
第一条 家族親族間ノ紛争其ノ他一般ニ家庭ニ関スル事件ニ付テハ当事者ハ本法ニ依リ調停ノ申立ヲ為スコトヲ得
第二条 調停ハ道義ニ本ヅキ温情ヲ以テ事件ヲ解決スルコトヲ以テ其ノ本旨トス
第三条 調停ノ申立ハ相手方ノ住所地ヲ管轄スル区裁判所又ハ当事者ノ合意ニ依リテ定ムル区裁判所ニ之ヲ為スコトヲ要ス
第四条 裁判所其ノ管轄ニ属セザル事件ニ付申立ヲ受ケタルトキハ決定ヲ以テ事件ヲ管轄裁判所ニ移送スルコトヲ要ス但シ事件ノ処理上適当ト認ムルトキハ之ヲ他ノ区裁判所ニ移送シ又ハ自ラ処理スルコトヲ妨ゲズ
裁判所其ノ管轄ニ属スル事件ニ付申立ヲ受ケタルトキト雖モ事件ノ処理上適当ト認ムルトキハ決定ヲ以テ之ヲ他ノ区裁判所ニ移送スルコトヲ得
前二項ノ決定ニ対シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ズ
第五条 調停ノ申立ガ淳風ニ副ハズ又ハ権利ノ濫用其ノ他不当ノ目的ニ出ヅルモノト認ムルトキハ裁判所ハ其ノ申立ヲ却下スルコトヲ得
第六条 当事者及利害関係人ハ自身出頭スルコトヲ要ス但シ已ムコトヲ得ザル事由アル場合ニ於テハ代理人ヲシテ出頭セシムルコトヲ得
弁護士ニ非ザル者前項ノ代理人ト為ルニハ裁判所ノ許可ヲ受クルコトヲ要ス
裁判所ハ何時ニテモ前項ノ許可ヲ取消スコトヲ得
第七条 調停ハ裁判上ノ和解ト同一ノ効力ヲ有ス但シ本人ノ処分ヲ許サザル事項ニ関スルモノニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第八条 借地借家調停法第二条、第四条ノ二乃至第六条、第八条乃至第十一条、第十三条乃至第十五条、第十六条第一項、第十八条乃至第二十三条及第二十六条乃至第三十二条ノ規定ハ本法ノ調停ニ付之ヲ準用ス
第九条 調停委員ハ徳望アル者其ノ他適当ト認メラルル者ニ就キ毎年予メ地方裁判所長ノ選任シタル者又ハ当事者ノ合意ニ依リ選定セラレタル者ノ中ヨリ各事件ニ付調停主任之ヲ指定ス
第十条 調停委員会ヲ開キタル場合ニ於テハ第六条第二項及第三項ニ規定スル裁判所ノ権限ハ調停委員会ニ属ス
第十一条 調停委員会第五条ニ規定スル事由アリト認ムルトキハ調停ヲ為サザルコトヲ得
第十二条 調停委員又ハ調停委員タリシ者故ナク評議ノ顛末又ハ調停主任、調停委員ノ意見若ハ其ノ多少ノ数ヲ漏泄シタルトキハ千円以下ノ罰金ニ処ス
調停委員又ハ調停委員タリシ者故ナク其ノ職務上取扱ヒタルコトニ付知得タル人ノ秘密ヲ漏泄シタルトキハ三月以下ノ懲役又ハ千円以下ノ罰金ニ処ス
前項ノ罪ハ告訴ヲ待テ之ヲ論ズ
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム