(相続税法中改正法律)
法令番号: 法律第四十七號
公布年月日: 昭和13年3月31日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル相續稅法中改正法律ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十三年三月三十日
內閣總理大臣 公爵 近衞文麿
大藏大臣 賀屋興宣
法律第四十七號
相續稅法中左ノ通改正ス
第一條 相續開始シタル場合ニ於テ被相續人カ本法施行地ニ住所ヲ有スルトキ又ハ本法施行地ニ相續財產アルトキハ本法ニ依リ相續稅ヲ課ス
第二條 被相續人カ本法施行地ニ住所ヲ有スルトキハ相續財產ノ全部ニ對シ相續稅ヲ課ス
被相續人カ本法施行地ニ住所ヲ有セサルトキハ本法施行地ニ在ル相續財產ニ付テノミ相續稅ヲ課ス
第二條ノ二 財產ノ所在ハ動產、不動產及不動產ノ上ニ存スル權利ニ付テハ當該動產又ハ不動產ノ所在ニ依ル但シ船舶ノ所在ハ船籍ノ所在ニ依ル
前項ニ揭クルモノ以外ノ財產ノ所在ハ權利者ノ住所地ニ依ル
第三條 被相續人カ本法施行地ニ住所ヲ有スルトキハ相續稅ヲ課スヘキ相續財產ノ價額ニ相續開始前一年內ニ被相續人カ爲シタル贈與ノ價額ヲ加ヘ其ノ中ヨリ左ノ金額ヲ控除シタルモノヲ以テ課稅價格トス
一 公課
二 被相續人ノ葬式費用
三 債務
第三條ノ二 被相續人カ本法施行地ニ住所ヲ有セサルトキハ相續稅ヲ課スヘキ相續財產ノ價額ニ相續開始前一年內ニ被相續人カ本法施行地ニ在ル財產ニ付爲シタル贈與ノ價額ヲ加ヘ其ノ中ヨリ左ノ金額ヲ控除シタルモノヲ以テ課稅價格トス
一 其ノ財產ニ係ル公課
二 其ノ財產ヲ目的トスル留置權、特別ノ先取特權、質權又ハ抵當權ヲ以テ擔保セラルル債務
三 其ノ財產ニ關スル贈與ノ義務
第三條ノ三 被相續人ノ死亡ニ因リ相續人ノ受取ル生命保險ノ保險金ニシテ被相續人カ保險契約者タル保險契約ニ基クモノハ之ヲ相續財產ト看做ス但シ相續人ノ受取ル保險金ノ合計額中五千圓迄ノ金額ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
保險契約者カ被相續人以外ノ者ナル場合ト雖被相續人カ現實ニ保險料ノ支拂ヲ爲スモノナルトキハ被相續人ヲ保險契約者ト看做シ前項ノ規定ヲ適用スルコトヲ得
第三條ノ四 退職手當、功勞金及此等ノ性質ヲ有スル給與ニシテ被相續人ニ支給セラルヘキモノカ被相續人死亡シタル爲其ノ相續人其ノ他ノ者ニ支給セラルルトキハ之ヲ相續財產ト看做ス但シ給與ノ合計額中五千圓迄ノ金額ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
前項ノ給與カ相續人以外ノ者ニ支給セラルルトキハ遺贈アリタルモノト看做ス
第三條ノ五 公共團體又ハ慈善其ノ他ノ公益事業ニ對シ爲シタル贈興及遺贈ハ相續稅ノ課稅價格ニ算入セス
第四條第一項ヲ左ノ如ク改ム
相續財產ノ價額、相續財產ノ價額ニ加算スヘキ贈與ノ價額竝ニ相續財產ノ價額中ヨリ控除スヘキ公課及債務金額ハ相續開始當時ノ現況ニ依ル
第五條第二項中「第三條」ヲ「第三條又ハ第三條ノ二ノ規定」ニ改ム
第十條中「相續稅ヲ課セラレタル後」ヲ「相續稅ヲ課セラルヘキ相續開始シタル後」ニ改メ「相續開始シタルトキハ」ノ下ニ「命令ノ定ムル所ニ依リ」ヲ加フ
第十條ノ二 第二條第一項ノ場合ニ於テ外國ニ在ル相續財產ニ付其ノ國ノ法令ニ依リ相續稅ヲ課セラレタルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ財產ノ價額ニ對スル相續稅ヲ免除ス
第十條ノ三 相續人(相續人二人以上ナルトキハ各相續人)、受遺者及第三條又ハ第三條ノ二ノ規定ニ依リ相續財產ノ價額ニ加算シタル贈與ヲ受ケタル者ハ課稅價格中各自其ノ受ケタル利益ノ價格ノ占ムル割合ニ應シテ相續稅ヲ納付スル義務アルモノトス但シ相續人ハ共同相續人、受遺者及第三條又ハ第三條ノ二ノ規定ニ依リ相續財產ノ價額ニ加算シタル贈與ヲ受ケタル者ノ納付スヘキ相續稅ニ付連帶納付ノ責ニ任ス
第三條又ハ第三條ノ二ノ規定ニ依リ相續財產ノ價額ニ加算シタル贈與ノ價額ニシテ第二十三條ノ規定ニ依リ相續稅ヲ課スヘキモノアルトキハ其ノ相續稅額ハ當該贈與ヲ受ケタル者カ前項ノ規定ニ依リ當該贈與ニ付納付スヘキ相續稅額ヨリ之ヲ控除ス
第十條ノ四 相續人アルコト分明ナラサルトキ又ハ相續人カ相續財產ニ付全ク處分ノ權能ナキトキハ本法中相續人ニ關スル規定ハ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外之ヲ相續財產管理人又ハ遺言執行者ニ適用ス
第十一條 相續人ハ相續開始ヲ知リタル日ヨリ三月以內ニ相續稅ヲ課セラルヘキ相續財產ノ目錄竝ニ相續財產ノ價額ニ加算セラルヘキ贈與ノ價額及相續財產ノ價額中ヨリ控除セラルヘキ金額ノ明細書ヲ政府ニ提出スヘシ
前項ノ期間ハ遺言執行者又ハ相續財產管理人ニ付テハ就職ノ日ヨリ三月トス
被相續人又ハ相續人カ帝國內ニ住所ヲ有セサルトキハ前二項ノ期間ハ六月トス
相續人確定シタルトキハ第一項ノ書類ヲ提出スルト同時ニ又ハ其ノ確定ノ日ヨリ一月以內ニ相續人ノ相續關係ヲ記載シタル書面ヲ政府ニ提出スヘシ
第十一條ノ二 納稅義務者本法施行地ニ住所又ハ居所ヲ有セサルトキハ前條ノ書類ノ提出、納稅其ノ他相續稅ニ關スル一切ノ事項ヲ處理セシムル爲納稅管理人ヲ定メ政府ニ申吿スヘシ本法施行地外ニ住所又ハ居所ヲ移サムトスルトキ亦同シ
第十二條中「戶籍吏」ヲ「市町村長」ニ、「收稅官廳」ヲ「稅務署長」ニ改メ同條ニ左ノ一項ヲ加フ
前項ノ規定ハ市制第六條又ハ第八十二條第三項ノ市ニ於テハ區長ニ、町村制ヲ施行セサル地ニ於テハ町村長ニ準スヘキモノニ之ヲ適用ス
第十二條ノ二 本法施行地ニ於テ生命保險(徵兵保險ヲ含ム以下同シ)ノ保險金ヲ支拂ヒタル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ支拂調書ヲ政府ニ提出スヘシ
前項ノ支拂調書ヲ提出シタル者ニ對シテハ命令ノ定ムル金額ヲ交付スルコトヲ得
第十二條ノ三 稅務署長又ハ其ノ代理官ハ調査上必要アルトキハ被相續人、納稅義務者、納稅義務アリト認ムル者又ハ前條第一項ノ支拂調書ヲ提出スル義務アル者ニ質問スルコトヲ得
第十二條ノ四 稅務署長又ハ其ノ代理官ハ調査上必要アルトキハ被相續人、納稅義務者若ハ納稅義務アリト認ムル者ニ金錢若ハ物品ヲ支拂フ義務ヲ有スト認ムル者ニ對シ又ハ被相續人、納稅義務者若ハ納稅義務アリト認ムル者ヨリ金錢若ハ物品ノ支拂ヲ受クル權利ヲ有スト認ムル者ニ對シ其ノ金額、數量、價額、支拂期日等ニ付質問スルコトヲ得
第十三條第二項中「相續人、遺言執行者又ハ相續財產管理人」ヲ「納稅義務者」ニ改メ同條ニ左ノ一項ヲ加フ
本法施行地ニ住所又ハ居所ヲ有セサル納稅義務者納稅管理人ノ申吿ヲ爲ササルトキハ前項ノ通知ハ公吿ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ得此ノ場合ニ於テ公吿ノ初日ヨリ七日ヲ經過シタルトキハ其ノ通知アリタルモノト看做ス
第十四條中「相續人、遺言執行者又ハ相續財產管理人」ヲ「納稅義務者」ニ、「再審査」ヲ「審査」ニ、「三箇月」ヲ「三月」ニ改ム
第十六條 前條第一項ノ決定ニ對シ不服アル者ハ訴願ヲ爲シ又ハ行政裁判法ニ依リ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第十七條第二項及第三項ヲ左ノ如ク改ム
納稅義務者前項ノ規定ニ依リ年賦延納ヲ求メムトスルトキハ第十三條ノ通知ヲ受ケタル後二十日以內ニ政府ニ申請スヘシ但シ連帶納付ノ責アル納稅義務者ニ在リテハ其ノ一人ヨリ申請スルヲ以テ足ル
納稅義務者帝國內ニ住所ヲ有セサルトキハ前項ノ期間ハ之ヲ三月トス
第十八條中「相續人、遺言執行者又ハ相續財產管理人」ヲ「納稅義務者」ニ改ム
第十九條 削除
第二十條 削除
第二十二條中「、遺言執行者又ハ相續財產管理人」ヲ削ル
第二十三條 左ニ揭クル場合ニ於テ贈與ノ價額カ千圓以上ナルトキハ遺產相續開始シタルモノト看做シ其ノ財產ノ價額ヲ課稅價格トシテ本法ニ依リ相續稅ヲ課ス但シ本法施行地ニ住所ヲ有セサル者ノ爲シタル贈與ニ在リテハ本法施行地ニ在ル財產ニ付爲シタルモノニ限ル
一 親族ニ贈與ヲ爲シタルトキ
二 分家ヲ爲スニ際シ若ハ分家ヲ爲シタル後本家ノ戶主又ハ家族カ分家ノ戶主又ハ家族ニ贈與ヲ爲シタルトキ
不動產又ハ船舶ノ贈與ニ付登錄稅ヲ納付シタルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ登錄稅額カ相續ニ因ル所有權ノ取得ニ付テノ登錄稅額ヲ超過スル金額ヲ前項ノ相續稅額ヨリ控除ス
第一項ノ規定ニ依リ相續稅ヲ課スル場合ニ於テハ第十條ノ規定ヲ適用セス
第二十三條ノ二 信託ニ因リ委託者カ他人ニ信託ノ利益ヲ受クヘキ權利ヲ有セシメタルトキハ左ニ揭クル時ニ於テ信託ノ利益ヲ受クヘキ權利ヲ贈與シタルモノト看做ス此ノ場合ニ於テ不動產又ハ船舶ノ信託ニ因ル所有權取得ノ登記ハ前條第二項ノ規定ノ適用ニ付テハ之ヲ贈與ニ因ル所有權取得ノ登記ト看做ス
一 元本ノ利益ヲ受クヘキ權利ヲ有セシメタルトキハ受益者カ其ノ元本ヲ受ケタル時但シ數囘ニ之ヲ受クルトキハ最初ニ其ノ一部ヲ受ケタル時
二 收益ノ利益ヲ受クヘキ權利ヲ有セシメタルトキハ受益者カ其ノ收益ヲ受ケタル時但シ數囘ニ之ヲ受クルトキハ最初ニ其ノ一部ヲ受ケタル時
前項ノ場合ニ於テ受益者不特定ナルトキ又ハ未タ存在セサルトキハ委託者又ハ其ノ相續人ヲ受益者ト看做シ受益者特定シ又ハ存在スルニ至リタル時ニ於テ新ニ信託アリタルモノト看做ス
元本又ハ收益ノ受益者カ其ノ元本又ハ收益ノ全部又ハ一部ヲ受クル迄ハ元本又ハ收益ノ利益ヲ受クヘキ權利ハ委託者又ハ其ノ相續人之ヲ有スルモノト看做ス
信託ノ利益ヲ受クル時ノ委託者ト受益者トノ身分關係カ信託ノ時ノ身分關係ト異ルトキハ其ノ身分關係ハ第一項ノ規定ヲ適用スル場合ニ於テハ信託ノ利益ヲ受クル時迄存續スルモノト看做ス
第二十三條ノ三 生命保險契約ニシテ保險金受取人カ保險契約者以外ノ者ナルトキハ保險事故ノ生シタル時ニ於テ保險契約者カ保險金額ニ相當スル金額ヲ保險金受取人ニ贈與シタルモノト看做ス但シ保險契約者ノ同一ナル保險契約ニ基キ同一事故ニ因リ同一人ノ受取ル保險金ノ合計額カ五千圓ヲ超ユル場合ニ於ケル其ノ超過額ニ相當スル金額ニ限ル
前項ノ規定ハ第三條ノ三ノ規定ニ依リ保險金ヲ相續財產ト看做ス場合ニ付テハ之ヲ適用セス
保險契約者以外ノ者カ現實ニ保險料ノ支拂ヲ爲スモノナルトキハ其ノ者ヲ保險契約者ト看做シ第一項ノ規定ヲ適用スルコトヲ得
前條第四項ノ規定ハ第一項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二十三條ノ四 郵便年金契約ニシテ年金受取人カ年金契約者以外ノ者ナルトキハ年金支拂ノ事由發生シタル時ニ於テ年金契約者カ當該郵便年金ノ價額ニ相當スル金額ヲ年金受取人ニ贈與シタルモノト看做ス但シ年金契約者ノ同一ナル年金契約ニ基キ同一事由ニ因リ同一人ノ受取ル年金ノ價額ノ合計額カ五千圓ヲ超ユル場合ニ於ケル其ノ超過額ニ相當スル金額ニ限ル
第二十三條ノ二第四項及前條第三項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二十三條ノ五 死亡ニ因ル相續開始後一年內ニ於テ相續人カ相續財產ニ付爲シタル贈與ニ付テハ第二十三條ノ規定ヲ適用セス但シ自己ノ直系卑屬ニ贈與ヲ爲シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第二十四條ノ二 正當ノ事由ナクシテ第十二條ノ二第一項ノ規定ニ依リ政府ニ提出スヘキ支拂調書ヲ提出セス又ハ虛僞ノ記載ヲ爲シタル支拂調書ヲ提出シタル者ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
前項ノ規定ニ依リ處罰セラレタル者ニ對シテハ其ノ提出ニ係ル支拂調書ニ付第十二條ノ二第二項ノ規定ニ依ル金額ヲ交付セス
第二十五條中「三圓以上三十圓以下ノ罰金又ハ科料」ヲ「五百圓以下ノ罰金」ニ改ム
第二十七條 被相續人カ朝鮮、臺灣又ハ樺太ニ住所ヲ有シ其ノ地ニ於ケル法令ニ依リ相續稅ヲ課セラルルトキハ本法施行地ニ相續財產アルモ相續稅ヲ課セス
第二十八條 朝鮮、臺灣又ハ樺太ニ於ケル法令ニ依リ相續稅ヲ課セラルヘキ相續カ其ノ地ニ於テ開始シタル後五年又ハ七年以內ニ於テ更ニ本法施行地ニ於テ相續開始シタルトキハ第十條ノ規定ヲ準用ス
第二十九條 朝鮮、臺灣又ハ樺太ニ住所ヲ有スル者カ本法施行地ニ在ル財產ニ付爲シタル贈與ニハ第二十三條ノ規定ヲ適用セス
第三十條 朝鮮、臺灣又ハ樺太ニ於テ死亡ニ因リ相續開始シタル後一年內ニ本法施行地ニ住所ヲ有スル相續人カ相續財產ニ付爲シタル贈與ニ付テハ第二十三條ノ五ノ規定ヲ準用ス
附 則
本法ハ昭和十三年四月一日ヨリ之ヲ施行ス但シ本法施行前開始シタル相續ニ關シテハ仍從前ノ例ニ依ル
永代借地權ハ當分ノ內相續稅ノ課稅價格ニ算入セズ
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル相続税法中改正法律ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十三年三月三十日
内閣総理大臣 公爵 近衛文麿
大蔵大臣 賀屋興宣
法律第四十七号
相続税法中左ノ通改正ス
第一条 相続開始シタル場合ニ於テ被相続人カ本法施行地ニ住所ヲ有スルトキ又ハ本法施行地ニ相続財産アルトキハ本法ニ依リ相続税ヲ課ス
第二条 被相続人カ本法施行地ニ住所ヲ有スルトキハ相続財産ノ全部ニ対シ相続税ヲ課ス
被相続人カ本法施行地ニ住所ヲ有セサルトキハ本法施行地ニ在ル相続財産ニ付テノミ相続税ヲ課ス
第二条ノ二 財産ノ所在ハ動産、不動産及不動産ノ上ニ存スル権利ニ付テハ当該動産又ハ不動産ノ所在ニ依ル但シ船舶ノ所在ハ船籍ノ所在ニ依ル
前項ニ掲クルモノ以外ノ財産ノ所在ハ権利者ノ住所地ニ依ル
第三条 被相続人カ本法施行地ニ住所ヲ有スルトキハ相続税ヲ課スヘキ相続財産ノ価額ニ相続開始前一年内ニ被相続人カ為シタル贈与ノ価額ヲ加ヘ其ノ中ヨリ左ノ金額ヲ控除シタルモノヲ以テ課税価格トス
一 公課
二 被相続人ノ葬式費用
三 債務
第三条ノ二 被相続人カ本法施行地ニ住所ヲ有セサルトキハ相続税ヲ課スヘキ相続財産ノ価額ニ相続開始前一年内ニ被相続人カ本法施行地ニ在ル財産ニ付為シタル贈与ノ価額ヲ加ヘ其ノ中ヨリ左ノ金額ヲ控除シタルモノヲ以テ課税価格トス
一 其ノ財産ニ係ル公課
二 其ノ財産ヲ目的トスル留置権、特別ノ先取特権、質権又ハ抵当権ヲ以テ担保セラルル債務
三 其ノ財産ニ関スル贈与ノ義務
第三条ノ三 被相続人ノ死亡ニ因リ相続人ノ受取ル生命保険ノ保険金ニシテ被相続人カ保険契約者タル保険契約ニ基クモノハ之ヲ相続財産ト看做ス但シ相続人ノ受取ル保険金ノ合計額中五千円迄ノ金額ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
保険契約者カ被相続人以外ノ者ナル場合ト雖被相続人カ現実ニ保険料ノ支払ヲ為スモノナルトキハ被相続人ヲ保険契約者ト看做シ前項ノ規定ヲ適用スルコトヲ得
第三条ノ四 退職手当、功労金及此等ノ性質ヲ有スル給与ニシテ被相続人ニ支給セラルヘキモノカ被相続人死亡シタル為其ノ相続人其ノ他ノ者ニ支給セラルルトキハ之ヲ相続財産ト看做ス但シ給与ノ合計額中五千円迄ノ金額ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
前項ノ給与カ相続人以外ノ者ニ支給セラルルトキハ遺贈アリタルモノト看做ス
第三条ノ五 公共団体又ハ慈善其ノ他ノ公益事業ニ対シ為シタル贈興及遺贈ハ相続税ノ課税価格ニ算入セス
第四条第一項ヲ左ノ如ク改ム
相続財産ノ価額、相続財産ノ価額ニ加算スヘキ贈与ノ価額並ニ相続財産ノ価額中ヨリ控除スヘキ公課及債務金額ハ相続開始当時ノ現況ニ依ル
第五条第二項中「第三条」ヲ「第三条又ハ第三条ノ二ノ規定」ニ改ム
第十条中「相続税ヲ課セラレタル後」ヲ「相続税ヲ課セラルヘキ相続開始シタル後」ニ改メ「相続開始シタルトキハ」ノ下ニ「命令ノ定ムル所ニ依リ」ヲ加フ
第十条ノ二 第二条第一項ノ場合ニ於テ外国ニ在ル相続財産ニ付其ノ国ノ法令ニ依リ相続税ヲ課セラレタルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ財産ノ価額ニ対スル相続税ヲ免除ス
第十条ノ三 相続人(相続人二人以上ナルトキハ各相続人)、受遺者及第三条又ハ第三条ノ二ノ規定ニ依リ相続財産ノ価額ニ加算シタル贈与ヲ受ケタル者ハ課税価格中各自其ノ受ケタル利益ノ価格ノ占ムル割合ニ応シテ相続税ヲ納付スル義務アルモノトス但シ相続人ハ共同相続人、受遺者及第三条又ハ第三条ノ二ノ規定ニ依リ相続財産ノ価額ニ加算シタル贈与ヲ受ケタル者ノ納付スヘキ相続税ニ付連帯納付ノ責ニ任ス
第三条又ハ第三条ノ二ノ規定ニ依リ相続財産ノ価額ニ加算シタル贈与ノ価額ニシテ第二十三条ノ規定ニ依リ相続税ヲ課スヘキモノアルトキハ其ノ相続税額ハ当該贈与ヲ受ケタル者カ前項ノ規定ニ依リ当該贈与ニ付納付スヘキ相続税額ヨリ之ヲ控除ス
第十条ノ四 相続人アルコト分明ナラサルトキ又ハ相続人カ相続財産ニ付全ク処分ノ権能ナキトキハ本法中相続人ニ関スル規定ハ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外之ヲ相続財産管理人又ハ遺言執行者ニ適用ス
第十一条 相続人ハ相続開始ヲ知リタル日ヨリ三月以内ニ相続税ヲ課セラルヘキ相続財産ノ目録並ニ相続財産ノ価額ニ加算セラルヘキ贈与ノ価額及相続財産ノ価額中ヨリ控除セラルヘキ金額ノ明細書ヲ政府ニ提出スヘシ
前項ノ期間ハ遺言執行者又ハ相続財産管理人ニ付テハ就職ノ日ヨリ三月トス
被相続人又ハ相続人カ帝国内ニ住所ヲ有セサルトキハ前二項ノ期間ハ六月トス
相続人確定シタルトキハ第一項ノ書類ヲ提出スルト同時ニ又ハ其ノ確定ノ日ヨリ一月以内ニ相続人ノ相続関係ヲ記載シタル書面ヲ政府ニ提出スヘシ
第十一条ノ二 納税義務者本法施行地ニ住所又ハ居所ヲ有セサルトキハ前条ノ書類ノ提出、納税其ノ他相続税ニ関スル一切ノ事項ヲ処理セシムル為納税管理人ヲ定メ政府ニ申告スヘシ本法施行地外ニ住所又ハ居所ヲ移サムトスルトキ亦同シ
第十二条中「戸籍吏」ヲ「市町村長」ニ、「収税官庁」ヲ「税務署長」ニ改メ同条ニ左ノ一項ヲ加フ
前項ノ規定ハ市制第六条又ハ第八十二条第三項ノ市ニ於テハ区長ニ、町村制ヲ施行セサル地ニ於テハ町村長ニ準スヘキモノニ之ヲ適用ス
第十二条ノ二 本法施行地ニ於テ生命保険(徴兵保険ヲ含ム以下同シ)ノ保険金ヲ支払ヒタル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ支払調書ヲ政府ニ提出スヘシ
前項ノ支払調書ヲ提出シタル者ニ対シテハ命令ノ定ムル金額ヲ交付スルコトヲ得
第十二条ノ三 税務署長又ハ其ノ代理官ハ調査上必要アルトキハ被相続人、納税義務者、納税義務アリト認ムル者又ハ前条第一項ノ支払調書ヲ提出スル義務アル者ニ質問スルコトヲ得
第十二条ノ四 税務署長又ハ其ノ代理官ハ調査上必要アルトキハ被相続人、納税義務者若ハ納税義務アリト認ムル者ニ金銭若ハ物品ヲ支払フ義務ヲ有スト認ムル者ニ対シ又ハ被相続人、納税義務者若ハ納税義務アリト認ムル者ヨリ金銭若ハ物品ノ支払ヲ受クル権利ヲ有スト認ムル者ニ対シ其ノ金額、数量、価額、支払期日等ニ付質問スルコトヲ得
第十三条第二項中「相続人、遺言執行者又ハ相続財産管理人」ヲ「納税義務者」ニ改メ同条ニ左ノ一項ヲ加フ
本法施行地ニ住所又ハ居所ヲ有セサル納税義務者納税管理人ノ申告ヲ為ササルトキハ前項ノ通知ハ公告ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得此ノ場合ニ於テ公告ノ初日ヨリ七日ヲ経過シタルトキハ其ノ通知アリタルモノト看做ス
第十四条中「相続人、遺言執行者又ハ相続財産管理人」ヲ「納税義務者」ニ、「再審査」ヲ「審査」ニ、「三箇月」ヲ「三月」ニ改ム
第十六条 前条第一項ノ決定ニ対シ不服アル者ハ訴願ヲ為シ又ハ行政裁判法ニ依リ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第十七条第二項及第三項ヲ左ノ如ク改ム
納税義務者前項ノ規定ニ依リ年賦延納ヲ求メムトスルトキハ第十三条ノ通知ヲ受ケタル後二十日以内ニ政府ニ申請スヘシ但シ連帯納付ノ責アル納税義務者ニ在リテハ其ノ一人ヨリ申請スルヲ以テ足ル
納税義務者帝国内ニ住所ヲ有セサルトキハ前項ノ期間ハ之ヲ三月トス
第十八条中「相続人、遺言執行者又ハ相続財産管理人」ヲ「納税義務者」ニ改ム
第十九条 削除
第二十条 削除
第二十二条中「、遺言執行者又ハ相続財産管理人」ヲ削ル
第二十三条 左ニ掲クル場合ニ於テ贈与ノ価額カ千円以上ナルトキハ遺産相続開始シタルモノト看做シ其ノ財産ノ価額ヲ課税価格トシテ本法ニ依リ相続税ヲ課ス但シ本法施行地ニ住所ヲ有セサル者ノ為シタル贈与ニ在リテハ本法施行地ニ在ル財産ニ付為シタルモノニ限ル
一 親族ニ贈与ヲ為シタルトキ
二 分家ヲ為スニ際シ若ハ分家ヲ為シタル後本家ノ戸主又ハ家族カ分家ノ戸主又ハ家族ニ贈与ヲ為シタルトキ
不動産又ハ船舶ノ贈与ニ付登録税ヲ納付シタルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ登録税額カ相続ニ因ル所有権ノ取得ニ付テノ登録税額ヲ超過スル金額ヲ前項ノ相続税額ヨリ控除ス
第一項ノ規定ニ依リ相続税ヲ課スル場合ニ於テハ第十条ノ規定ヲ適用セス
第二十三条ノ二 信託ニ因リ委託者カ他人ニ信託ノ利益ヲ受クヘキ権利ヲ有セシメタルトキハ左ニ掲クル時ニ於テ信託ノ利益ヲ受クヘキ権利ヲ贈与シタルモノト看做ス此ノ場合ニ於テ不動産又ハ船舶ノ信託ニ因ル所有権取得ノ登記ハ前条第二項ノ規定ノ適用ニ付テハ之ヲ贈与ニ因ル所有権取得ノ登記ト看做ス
一 元本ノ利益ヲ受クヘキ権利ヲ有セシメタルトキハ受益者カ其ノ元本ヲ受ケタル時但シ数回ニ之ヲ受クルトキハ最初ニ其ノ一部ヲ受ケタル時
二 収益ノ利益ヲ受クヘキ権利ヲ有セシメタルトキハ受益者カ其ノ収益ヲ受ケタル時但シ数回ニ之ヲ受クルトキハ最初ニ其ノ一部ヲ受ケタル時
前項ノ場合ニ於テ受益者不特定ナルトキ又ハ未タ存在セサルトキハ委託者又ハ其ノ相続人ヲ受益者ト看做シ受益者特定シ又ハ存在スルニ至リタル時ニ於テ新ニ信託アリタルモノト看做ス
元本又ハ収益ノ受益者カ其ノ元本又ハ収益ノ全部又ハ一部ヲ受クル迄ハ元本又ハ収益ノ利益ヲ受クヘキ権利ハ委託者又ハ其ノ相続人之ヲ有スルモノト看做ス
信託ノ利益ヲ受クル時ノ委託者ト受益者トノ身分関係カ信託ノ時ノ身分関係ト異ルトキハ其ノ身分関係ハ第一項ノ規定ヲ適用スル場合ニ於テハ信託ノ利益ヲ受クル時迄存続スルモノト看做ス
第二十三条ノ三 生命保険契約ニシテ保険金受取人カ保険契約者以外ノ者ナルトキハ保険事故ノ生シタル時ニ於テ保険契約者カ保険金額ニ相当スル金額ヲ保険金受取人ニ贈与シタルモノト看做ス但シ保険契約者ノ同一ナル保険契約ニ基キ同一事故ニ因リ同一人ノ受取ル保険金ノ合計額カ五千円ヲ超ユル場合ニ於ケル其ノ超過額ニ相当スル金額ニ限ル
前項ノ規定ハ第三条ノ三ノ規定ニ依リ保険金ヲ相続財産ト看做ス場合ニ付テハ之ヲ適用セス
保険契約者以外ノ者カ現実ニ保険料ノ支払ヲ為スモノナルトキハ其ノ者ヲ保険契約者ト看做シ第一項ノ規定ヲ適用スルコトヲ得
前条第四項ノ規定ハ第一項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二十三条ノ四 郵便年金契約ニシテ年金受取人カ年金契約者以外ノ者ナルトキハ年金支払ノ事由発生シタル時ニ於テ年金契約者カ当該郵便年金ノ価額ニ相当スル金額ヲ年金受取人ニ贈与シタルモノト看做ス但シ年金契約者ノ同一ナル年金契約ニ基キ同一事由ニ因リ同一人ノ受取ル年金ノ価額ノ合計額カ五千円ヲ超ユル場合ニ於ケル其ノ超過額ニ相当スル金額ニ限ル
第二十三条ノ二第四項及前条第三項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二十三条ノ五 死亡ニ因ル相続開始後一年内ニ於テ相続人カ相続財産ニ付為シタル贈与ニ付テハ第二十三条ノ規定ヲ適用セス但シ自己ノ直系卑属ニ贈与ヲ為シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第二十四条ノ二 正当ノ事由ナクシテ第十二条ノ二第一項ノ規定ニ依リ政府ニ提出スヘキ支払調書ヲ提出セス又ハ虚偽ノ記載ヲ為シタル支払調書ヲ提出シタル者ハ千円以下ノ罰金ニ処ス
前項ノ規定ニ依リ処罰セラレタル者ニ対シテハ其ノ提出ニ係ル支払調書ニ付第十二条ノ二第二項ノ規定ニ依ル金額ヲ交付セス
第二十五条中「三円以上三十円以下ノ罰金又ハ科料」ヲ「五百円以下ノ罰金」ニ改ム
第二十七条 被相続人カ朝鮮、台湾又ハ樺太ニ住所ヲ有シ其ノ地ニ於ケル法令ニ依リ相続税ヲ課セラルルトキハ本法施行地ニ相続財産アルモ相続税ヲ課セス
第二十八条 朝鮮、台湾又ハ樺太ニ於ケル法令ニ依リ相続税ヲ課セラルヘキ相続カ其ノ地ニ於テ開始シタル後五年又ハ七年以内ニ於テ更ニ本法施行地ニ於テ相続開始シタルトキハ第十条ノ規定ヲ準用ス
第二十九条 朝鮮、台湾又ハ樺太ニ住所ヲ有スル者カ本法施行地ニ在ル財産ニ付為シタル贈与ニハ第二十三条ノ規定ヲ適用セス
第三十条 朝鮮、台湾又ハ樺太ニ於テ死亡ニ因リ相続開始シタル後一年内ニ本法施行地ニ住所ヲ有スル相続人カ相続財産ニ付為シタル贈与ニ付テハ第二十三条ノ五ノ規定ヲ準用ス
附 則
本法ハ昭和十三年四月一日ヨリ之ヲ施行ス但シ本法施行前開始シタル相続ニ関シテハ仍従前ノ例ニ依ル
永代借地権ハ当分ノ内相続税ノ課税価格ニ算入セズ