日満司法事務共助法
法令番号: 法律第二十六號
公布年月日: 昭和13年3月26日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル日滿司法事務共助法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十三年三月二十五日
內閣總理大臣 公爵 近衞文麿
司法大臣 鹽野季彥
法律第二十六號
日滿司法事務共助法
第一條 裁判所又ハ檢事局ハ滿洲國ノ法院又ハ檢察廳ノ囑託ニ因リ民事及刑事ニ關シ左ノ事項ニ付司法事務ノ共助ヲ爲ス
一 訴訟書類ノ送達
二 證據調
三 犯罪ノ搜査
四 被疑者又ハ被吿人ニ對スル勾引狀ノ發付又ハ執行
五 逮捕狀ノ發付又ハ執行
六 刑事判決ノ執行
共助ハ所要ノ事務ヲ取扱フベキ地ヲ管轄スル區裁判所又ハ區裁判所檢事局ニ於テ之ヲ爲ス
第二條 受託事項ノ實施ガ法律上許スベカラザルモノナルトキ又ハ公益ヲ害スル虞アルトキハ之ヲ爲サザルコトヲ得
受託事項ノ實施ガ搜査、裁判又ハ刑ノ執行ノ障礙ト爲ルベキ場合ニ於テハ障礙ナキニ至ル迄之ヲ爲サザルコトヲ得
第三條 囑託ニ因ル勾引狀ノ發付又ハ執行ノ實施ガ不相當ナルトキハ之ヲ爲サザルコトヲ得
第四條 囑託ニ因ル自由刑ノ執行ノ實施ガ著シク不相當又ハ不便ナルトキハ之ヲ爲サザルコトヲ得
第五條 前三條ノ規定ニ依リ受託事項ノ實施ヲ爲サザル場合ニ於テハ速ニ其ノ旨ヲ囑託官廳ニ通知スベシ
第六條 檢事犯罪ノ搜査ノ共助ヲ爲スニ付强制ノ處分ヲ必要トスルトキハ押收、搜索、檢證、被疑者若ハ證人ノ訊問又ハ鑑定ノ處分ヲ其ノ所屬區裁判所ノ判事ニ請求スルコトヲ得
檢事被疑者ニ對スル勾引狀ノ發付ノ共助ヲ爲スニ付必要アルトキハ其ノ處分ヲ其ノ所屬區裁判所ノ判事ニ請求スルコトヲ得
前二項ノ規定ニ依ル請求ヲ受ケタル判事ハ其ノ處分ニ關シ豫審判事ト同一ノ權ヲ有ス
判事本條ノ處分ヲ爲シタルトキハ速ニ之ニ關スル書類及證據物ヲ檢事ニ送付スベシ
第七條 刑事判決ノ執行ハ司法大臣ヲ經由シ判決書ノ謄本ヲ送付シテ囑託アリタルトキハ死刑及法律ノ認メザル刑ヲ除キ之ガ共助ヲ爲スベシ
前項ノ囑託ニ因ル執行ニ付テハ刑名同ジキモノハ之ヲ同一ノ刑ト看做シ滿洲國刑法ノ徒刑ハ之ヲ懲役ト看做ス
第八條 囑託ニ因ル受刑者ノ假出獄ニ關シテハ帝國ノ法令ニ依ル
第九條 囑託ニ因リ罰金、科料若ハ沒收ノ刑ヲ執行シ又ハ追徵金ヲ徵收シタルトキハ其ノ金額又ハ物品ヲ滿洲國ニ引渡スベシ但シ沒收物中價値ナキ物ハ之ヲ廢棄シ引渡ニ不便ナル物ハ之ヲ公賣シテ其ノ代價ヲ引渡スコトヲ得
第十條 受託官廳受託事項ニ付權限ヲ有セザルトキハ受託ノ權限アル官廳ニ囑託ヲ移送シタル上速ニ其ノ旨ヲ囑託官廳ニ通知スベシ
第十一條 受託事項ハ帝國ノ法令ニ依リ之ヲ實施ス
第十二條 民事ニ關スル受託事項ノ實施ニ要スル費用ニシテ當事者ノ負擔ト爲ラザルモノハ之ヲ國庫ノ負擔トス
刑事ニ關スル受託事項ノ實施ニ要スル費用ハ之ヲ國庫ノ負擔トス但シ他ノ法令ニ於テ別ニ負擔者ヲ定ムルモノハ之ヲ其ノ者ノ負擔トス
第十三條 裁判所又ハ檢事局ハ滿洲國ノ法院又ハ檢察廳ニ對シ第一條第一項ノ事項ノ囑託ヲ爲スコトヲ得
第十四條 第一條第一項ノ事項ノ囑託ハ裁判所又ハ檢事局ヨリ滿洲國ノ地方法院又ハ地方檢察廳ニ對シ直接之ヲ爲スコトヲ得但シ刑事判決ノ執行ノ囑託ハ司法大臣ヲ經テ之ヲ爲スベシ
第十五條 滿洲國ノ法院又ハ檢察廳ガ囑託ニ因リ爲シタル行爲ハ帝國ノ法令ノ適用ニ關シテハ帝國ノ法令ニ依リ爲シタルモノト同一ノ效力ヲ有ス
第十六條 滿洲國ノ執行名義ニ依リテ强制執行ヲ爲スニハ裁判所ノ認可ヲ得ルコトヲ要ス
第十七條 前條ノ認可ノ申立ハ債務者ノ普通裁判籍又ハ執行ノ目的タル財產ノ所在地ヲ管轄スル區裁判所ニ之ヲ爲スコトヲ要ス
第十八條 前條ノ申立ニ對スル裁判ハ非訟事件手續法ニ依リ之ヲ爲ス
民事訴訟法第五百十五條ノ規定ハ前項ノ裁判ニ之ヲ準用ス
第十九條 執行認可ノ裁判ハ執行力アル債務名義ト同一ノ效力ヲ有ス
第二十條 第十八條ノ裁判ニ對シテハ卽時抗吿ヲ爲スコトヲ得其ノ期間ハ之ヲ二週間トス
執行認可ノ裁判ニ對スル卽時抗吿ハ執行停止ノ效力ヲ有ス
第二十一條 前五條ノ規定ハ滿洲國法院ノ爲シタル强制執行ノ停止ヲ命ズル裁判ニ依リテ强制執行ノ停止ヲ爲ス場合ニ之ヲ準用ス
民事訴訟法第五百二十二條第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル日満司法事務共助法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十三年三月二十五日
内閣総理大臣 公爵 近衛文麿
司法大臣 塩野季彦
法律第二十六号
日満司法事務共助法
第一条 裁判所又ハ検事局ハ満洲国ノ法院又ハ検察庁ノ嘱託ニ因リ民事及刑事ニ関シ左ノ事項ニ付司法事務ノ共助ヲ為ス
一 訴訟書類ノ送達
二 証拠調
三 犯罪ノ捜査
四 被疑者又ハ被告人ニ対スル勾引状ノ発付又ハ執行
五 逮捕状ノ発付又ハ執行
六 刑事判決ノ執行
共助ハ所要ノ事務ヲ取扱フベキ地ヲ管轄スル区裁判所又ハ区裁判所検事局ニ於テ之ヲ為ス
第二条 受託事項ノ実施ガ法律上許スベカラザルモノナルトキ又ハ公益ヲ害スル虞アルトキハ之ヲ為サザルコトヲ得
受託事項ノ実施ガ捜査、裁判又ハ刑ノ執行ノ障碍ト為ルベキ場合ニ於テハ障碍ナキニ至ル迄之ヲ為サザルコトヲ得
第三条 嘱託ニ因ル勾引状ノ発付又ハ執行ノ実施ガ不相当ナルトキハ之ヲ為サザルコトヲ得
第四条 嘱託ニ因ル自由刑ノ執行ノ実施ガ著シク不相当又ハ不便ナルトキハ之ヲ為サザルコトヲ得
第五条 前三条ノ規定ニ依リ受託事項ノ実施ヲ為サザル場合ニ於テハ速ニ其ノ旨ヲ嘱託官庁ニ通知スベシ
第六条 検事犯罪ノ捜査ノ共助ヲ為スニ付強制ノ処分ヲ必要トスルトキハ押収、捜索、検証、被疑者若ハ証人ノ訊問又ハ鑑定ノ処分ヲ其ノ所属区裁判所ノ判事ニ請求スルコトヲ得
検事被疑者ニ対スル勾引状ノ発付ノ共助ヲ為スニ付必要アルトキハ其ノ処分ヲ其ノ所属区裁判所ノ判事ニ請求スルコトヲ得
前二項ノ規定ニ依ル請求ヲ受ケタル判事ハ其ノ処分ニ関シ予審判事ト同一ノ権ヲ有ス
判事本条ノ処分ヲ為シタルトキハ速ニ之ニ関スル書類及証拠物ヲ検事ニ送付スベシ
第七条 刑事判決ノ執行ハ司法大臣ヲ経由シ判決書ノ謄本ヲ送付シテ嘱託アリタルトキハ死刑及法律ノ認メザル刑ヲ除キ之ガ共助ヲ為スベシ
前項ノ嘱託ニ因ル執行ニ付テハ刑名同ジキモノハ之ヲ同一ノ刑ト看做シ満洲国刑法ノ徒刑ハ之ヲ懲役ト看做ス
第八条 嘱託ニ因ル受刑者ノ仮出獄ニ関シテハ帝国ノ法令ニ依ル
第九条 嘱託ニ因リ罰金、科料若ハ没収ノ刑ヲ執行シ又ハ追徴金ヲ徴収シタルトキハ其ノ金額又ハ物品ヲ満洲国ニ引渡スベシ但シ没収物中価値ナキ物ハ之ヲ廃棄シ引渡ニ不便ナル物ハ之ヲ公売シテ其ノ代価ヲ引渡スコトヲ得
第十条 受託官庁受託事項ニ付権限ヲ有セザルトキハ受託ノ権限アル官庁ニ嘱託ヲ移送シタル上速ニ其ノ旨ヲ嘱託官庁ニ通知スベシ
第十一条 受託事項ハ帝国ノ法令ニ依リ之ヲ実施ス
第十二条 民事ニ関スル受託事項ノ実施ニ要スル費用ニシテ当事者ノ負担ト為ラザルモノハ之ヲ国庫ノ負担トス
刑事ニ関スル受託事項ノ実施ニ要スル費用ハ之ヲ国庫ノ負担トス但シ他ノ法令ニ於テ別ニ負担者ヲ定ムルモノハ之ヲ其ノ者ノ負担トス
第十三条 裁判所又ハ検事局ハ満洲国ノ法院又ハ検察庁ニ対シ第一条第一項ノ事項ノ嘱託ヲ為スコトヲ得
第十四条 第一条第一項ノ事項ノ嘱託ハ裁判所又ハ検事局ヨリ満洲国ノ地方法院又ハ地方検察庁ニ対シ直接之ヲ為スコトヲ得但シ刑事判決ノ執行ノ嘱託ハ司法大臣ヲ経テ之ヲ為スベシ
第十五条 満洲国ノ法院又ハ検察庁ガ嘱託ニ因リ為シタル行為ハ帝国ノ法令ノ適用ニ関シテハ帝国ノ法令ニ依リ為シタルモノト同一ノ効力ヲ有ス
第十六条 満洲国ノ執行名義ニ依リテ強制執行ヲ為スニハ裁判所ノ認可ヲ得ルコトヲ要ス
第十七条 前条ノ認可ノ申立ハ債務者ノ普通裁判籍又ハ執行ノ目的タル財産ノ所在地ヲ管轄スル区裁判所ニ之ヲ為スコトヲ要ス
第十八条 前条ノ申立ニ対スル裁判ハ非訟事件手続法ニ依リ之ヲ為ス
民事訴訟法第五百十五条ノ規定ハ前項ノ裁判ニ之ヲ準用ス
第十九条 執行認可ノ裁判ハ執行力アル債務名義ト同一ノ効力ヲ有ス
第二十条 第十八条ノ裁判ニ対シテハ即時抗告ヲ為スコトヲ得其ノ期間ハ之ヲ二週間トス
執行認可ノ裁判ニ対スル即時抗告ハ執行停止ノ効力ヲ有ス
第二十一条 前五条ノ規定ハ満洲国法院ノ為シタル強制執行ノ停止ヲ命ズル裁判ニ依リテ強制執行ノ停止ヲ為ス場合ニ之ヲ準用ス
民事訴訟法第五百二十二条第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム