南洋拓殖株式会社令
法令番号: 勅令第二百二十八號
公布年月日: 昭和11年7月27日
法令の形式: 勅令
朕南洋拓殖株式會社令ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十一年七月二十五日
內閣總理大臣 廣田弘毅
拓務大臣 永田秀次郞
勅令第二百二十八號
南洋拓殖株式會社令
第一章 總則
第一條 南洋拓殖株式會社ハ拓殖事業ノ經營及拓殖資金ノ供給ヲ目的トスル株式會社トシ其ノ本店ヲ南洋群島ニ置ク
第二條 南洋拓殖株式會社ノ資本ハ二千萬圓トス但シ拓務大臣ノ認可ヲ受ケ之ヲ增加スルコトヲ得
第三條 政府ハ南洋廳長官ノ管理ニ屬スル金錢以外ノ財產ヲ以テ南洋拓殖株式會社ニ對スル出資ノ目的ト爲スコトヲ得
政府前項ノ規定ニ依リ出資ヲ爲サントスルトキハ出資ノ目的タル財產ノ價格ニ付南洋群島官有財產評價委員會ニ諮問スベシ
南洋群島官有財產評價委員會ニ關スル規程ハ別ニ之ヲ定ム
第四條 南洋拓殖株式會社ハ株金全額拂込前ト雖モ其ノ資本ヲ增加スルコトヲ得
第二章 役員
第五條 南洋拓殖株式會社ニ社長一人、理事三人以上及監事二人以上ヲ置ク
第六條 社長ハ南洋拓殖株式會社ヲ代表シ其ノ業務ヲ總理ス
社長事故アルトキハ定款ノ定ムル所ニ從ヒ理事中一人其ノ職務ヲ代理シ社長缺員ノトキハ其ノ職務ヲ行フ
理事ハ社長ヲ輔佐シ定款ノ定ムル所ニ從ヒ南洋拓殖株式會社ノ業務ヲ分掌シ又ハ之ニ參與ス
監事ハ南洋拓殖株式會社ノ業務ヲ監査ス
第七條 社長ハ拓務大臣ノ奏請ニ依リ內閣ニ於テ之ヲ命ジ其ノ任期ヲ五年トス
理事ハ株主總會ニ於テ選擧シタル二倍ノ候補者中ヨリ拓務大臣之ヲ命ジ其ノ任期ヲ四年トス
監事ハ株主總會ニ於テ之ヲ選任シ其ノ任期ヲ二年トス
第八條 社長及南洋拓殖株式會社ノ業務ヲ分掌スル理事ハ他ノ職務又ハ商業ニ從事スルコトヲ得ズ但シ拓務大臣ノ許可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第三章 營業
第九條 南洋拓殖株式會社ハ左ノ事業ヲ營ムモノトス
一 拓殖ノ爲必要ナル農業、水產業、鑛業及海運業
二 拓殖ノ爲必要ナル移民事業
三 拓殖ノ爲必要ナル土地(借地權其ノ他ノ土地ニ關スル權利ヲ含ム)ノ取得、經營及處分
四 委託ニ依ル土地ノ經營及管理
五 農業者、漁業者若ハ移民ニ對シ拓殖上必要ナル物品ノ供給又ハ其ノ生產品ノ買取、加工若ハ販賣
六 拓殖ノ爲必要ナル資金ノ供給
七 前各號ノ事業ニ附帶スル業務
八 前各號ノ外拓殖ノ爲必要ナル事業
前項第八號ノ事業ヲ營ミ又ハ南洋群島以外ノ地域ニ於テ前項第一號乃至第七號ノ事業ヲ營マントスルトキハ其ノ事業及地域ニ付拓務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第十條 南洋拓殖株式會社ハ定款ノ定ムル所ニ從ヒ定期預リ金ヲ爲スコトヲ得
第十一條 南洋拓殖株式會社ハ拓務大臣ノ認可ヲ受ケ銀行ノ業務ヲ代理スルコトヲ得
第四章 南洋拓殖債券
第十二條 南洋拓殖株式會社ハ拂込ミタル株金額ノ三倍ヲ限リ南洋拓殖債券ヲ發行スルコトヲ得
南洋拓殖債券ヲ發行スル場合ニ於テハ南洋群島裁判事務取扱令ニ於テ依ルコトヲ定メタル商法第二百九條ニ定ムル決議ニ依ルコトヲ要セズ
第十三條 南洋拓殖株式會社南洋拓殖債券ヲ發行セントスルトキハ拓務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第十四條 南洋拓殖債券ノ所有者ハ南洋拓殖株式會社ノ財產ニ付他ノ債權者ニ先チテ自己ノ債權ノ辨濟ヲ受クル權利ヲ有ス
第五章 利益金ノ處分
第十五條 南洋拓殖株式會社利益金ノ處分ヲ爲サントスルトキハ拓務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第十六條 南洋拓殖株式會社ハ每營業年度ニ準備金トシテ資本ノ缺損ヲ補フ爲利益金額ノ百分ノ八以上ヲ積立テ且利益配當ノ平均ヲ得シムル爲利益金額ノ百分ノ二以上ヲ積立ツベシ
第十七條 南洋拓殖株式會社ハ每營業年度ニ於ケル配當シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込ミタル株金額ニ對シ年六分ノ割合ニ達スル迄政府ノ所有スル株式ニ對シ利益ノ配當ヲ爲スコトヲ要セズ
第六章 政府ノ監督
第十八條 拓務大臣ハ南洋拓殖株式會社ノ業務ヲ監督ス
第十九條 拓務大臣ハ南洋拓殖株式會社監理官ヲ置キ南洋拓殖株式會社ノ業務ヲ監視セシム
南洋拓殖株式會社監理官ハ何時ニテモ南洋拓殖株式會社ノ金庫、帳簿及諸般ノ文書物件ヲ檢査スルコトヲ得
南洋拓殖株式會社監理官ハ必要ト認ムルトキハ何時ニテモ南洋拓殖株式會社ニ命ジテ營業ニ關スル諸般ノ計算及狀況ヲ報吿セシムルコトヲ得
南洋拓殖株式會社監理官ハ南洋拓殖株式會社ノ株主總會其ノ他諸般ノ會議ニ出席シ意見ヲ陳述スルコトヲ得
第二十條 南洋拓殖株式會社借入金ヲ爲サントスルトキハ拓務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第二十一條 南洋拓殖株式會社其ノ所有スル重要財產ヲ讓渡シ又ハ擔保ニ供セントスルトキハ拓務大臣ノ認可ヲ受クベシ
前項ノ重要財產ハ拓務大臣之ヲ指定シ官報ヲ以テ吿示ス
第二十二條 南洋拓殖株式會社合併又ハ解散ヲ爲サントスルトキハ拓務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第二十三條 南洋拓殖株式會社定款其ノ他拓務大臣ノ認可ヲ受ケタル事項ヲ變更セントスルトキハ更ニ拓務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第二十四條 拓務大臣ハ南洋拓殖株式會社ノ業務ニ關シ監督上必要ナル命令ヲ發スルコトヲ得
第二十五條 拓務大臣ハ南洋拓殖株式會社ノ決議又ハ役員ノ行爲ガ法令、法令ニ基キテ爲ス處分若ハ定款ニ違反シ又ハ公益ヲ害スト認ムルトキハ其ノ決議ヲ取消シ又ハ役員ヲ解任スルコトヲ得
第二十六條 拓務大臣ハ本令中其ノ職務ニ屬スル事項ノ一部ヲ南洋廳長官ニ委任スルコトヲ得
附 則
第二十七條 本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
第二十八條 政府ハ設立委員ヲ命ジ南洋拓殖株式會社ノ設立ニ關スル一切ノ事務ヲ處理セシム
第二十九條 設立委員ハ定款ヲ作成シ拓務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第三十條 前條ノ認可アリタルトキハ設立委員ハ株式總數ヨリ政府ニ割當ツベキ株式ヲ控除シタル殘餘ノ株式ニ付株主ヲ募集スベシ
第三十一條 株式申込證ニハ定款認可ノ年月日竝ニ南洋群島裁判事務取扱令ニ於テ依ルコトヲ定メタル商法第百二十六條第二項第二號、第四號及第五號ニ規定スル事項ヲ記載スベシ
第三十二條 設立委員ハ株主ノ募集ヲ終リタルトキハ株式申込證ヲ拓務大臣ニ提出シ其ノ檢査ヲ受クベシ
設立委員ハ前項ノ檢査ヲ受ケタル後遲滯ナク各株式ニ付第一囘ノ拂込ヲ爲サシメ其ノ拂込アリタルトキハ遲滯ナク創立總會ヲ招集スベシ
第三十三條 創立總會ニ於テハ第七條ノ規定ニ準ジ理事候補者ノ選擧及監事ノ選任ヲ行フベシ
第三十四條 創立總會終結シタルトキハ設立委員ハ其ノ事務ヲ南洋拓殖株式會社社長ニ引渡スベシ
朕南洋拓殖株式会社令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十一年七月二十五日
内閣総理大臣 広田弘毅
拓務大臣 永田秀次郎
勅令第二百二十八号
南洋拓殖株式会社令
第一章 総則
第一条 南洋拓殖株式会社ハ拓殖事業ノ経営及拓殖資金ノ供給ヲ目的トスル株式会社トシ其ノ本店ヲ南洋群島ニ置ク
第二条 南洋拓殖株式会社ノ資本ハ二千万円トス但シ拓務大臣ノ認可ヲ受ケ之ヲ増加スルコトヲ得
第三条 政府ハ南洋庁長官ノ管理ニ属スル金銭以外ノ財産ヲ以テ南洋拓殖株式会社ニ対スル出資ノ目的ト為スコトヲ得
政府前項ノ規定ニ依リ出資ヲ為サントスルトキハ出資ノ目的タル財産ノ価格ニ付南洋群島官有財産評価委員会ニ諮問スベシ
南洋群島官有財産評価委員会ニ関スル規程ハ別ニ之ヲ定ム
第四条 南洋拓殖株式会社ハ株金全額払込前ト雖モ其ノ資本ヲ増加スルコトヲ得
第二章 役員
第五条 南洋拓殖株式会社ニ社長一人、理事三人以上及監事二人以上ヲ置ク
第六条 社長ハ南洋拓殖株式会社ヲ代表シ其ノ業務ヲ総理ス
社長事故アルトキハ定款ノ定ムル所ニ従ヒ理事中一人其ノ職務ヲ代理シ社長欠員ノトキハ其ノ職務ヲ行フ
理事ハ社長ヲ輔佐シ定款ノ定ムル所ニ従ヒ南洋拓殖株式会社ノ業務ヲ分掌シ又ハ之ニ参与ス
監事ハ南洋拓殖株式会社ノ業務ヲ監査ス
第七条 社長ハ拓務大臣ノ奏請ニ依リ内閣ニ於テ之ヲ命ジ其ノ任期ヲ五年トス
理事ハ株主総会ニ於テ選挙シタル二倍ノ候補者中ヨリ拓務大臣之ヲ命ジ其ノ任期ヲ四年トス
監事ハ株主総会ニ於テ之ヲ選任シ其ノ任期ヲ二年トス
第八条 社長及南洋拓殖株式会社ノ業務ヲ分掌スル理事ハ他ノ職務又ハ商業ニ従事スルコトヲ得ズ但シ拓務大臣ノ許可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第三章 営業
第九条 南洋拓殖株式会社ハ左ノ事業ヲ営ムモノトス
一 拓殖ノ為必要ナル農業、水産業、鉱業及海運業
二 拓殖ノ為必要ナル移民事業
三 拓殖ノ為必要ナル土地(借地権其ノ他ノ土地ニ関スル権利ヲ含ム)ノ取得、経営及処分
四 委託ニ依ル土地ノ経営及管理
五 農業者、漁業者若ハ移民ニ対シ拓殖上必要ナル物品ノ供給又ハ其ノ生産品ノ買取、加工若ハ販売
六 拓殖ノ為必要ナル資金ノ供給
七 前各号ノ事業ニ附帯スル業務
八 前各号ノ外拓殖ノ為必要ナル事業
前項第八号ノ事業ヲ営ミ又ハ南洋群島以外ノ地域ニ於テ前項第一号乃至第七号ノ事業ヲ営マントスルトキハ其ノ事業及地域ニ付拓務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第十条 南洋拓殖株式会社ハ定款ノ定ムル所ニ従ヒ定期預リ金ヲ為スコトヲ得
第十一条 南洋拓殖株式会社ハ拓務大臣ノ認可ヲ受ケ銀行ノ業務ヲ代理スルコトヲ得
第四章 南洋拓殖債券
第十二条 南洋拓殖株式会社ハ払込ミタル株金額ノ三倍ヲ限リ南洋拓殖債券ヲ発行スルコトヲ得
南洋拓殖債券ヲ発行スル場合ニ於テハ南洋群島裁判事務取扱令ニ於テ依ルコトヲ定メタル商法第二百九条ニ定ムル決議ニ依ルコトヲ要セズ
第十三条 南洋拓殖株式会社南洋拓殖債券ヲ発行セントスルトキハ拓務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第十四条 南洋拓殖債券ノ所有者ハ南洋拓殖株式会社ノ財産ニ付他ノ債権者ニ先チテ自己ノ債権ノ弁済ヲ受クル権利ヲ有ス
第五章 利益金ノ処分
第十五条 南洋拓殖株式会社利益金ノ処分ヲ為サントスルトキハ拓務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第十六条 南洋拓殖株式会社ハ毎営業年度ニ準備金トシテ資本ノ欠損ヲ補フ為利益金額ノ百分ノ八以上ヲ積立テ且利益配当ノ平均ヲ得シムル為利益金額ノ百分ノ二以上ヲ積立ツベシ
第十七条 南洋拓殖株式会社ハ毎営業年度ニ於ケル配当シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ払込ミタル株金額ニ対シ年六分ノ割合ニ達スル迄政府ノ所有スル株式ニ対シ利益ノ配当ヲ為スコトヲ要セズ
第六章 政府ノ監督
第十八条 拓務大臣ハ南洋拓殖株式会社ノ業務ヲ監督ス
第十九条 拓務大臣ハ南洋拓殖株式会社監理官ヲ置キ南洋拓殖株式会社ノ業務ヲ監視セシム
南洋拓殖株式会社監理官ハ何時ニテモ南洋拓殖株式会社ノ金庫、帳簿及諸般ノ文書物件ヲ検査スルコトヲ得
南洋拓殖株式会社監理官ハ必要ト認ムルトキハ何時ニテモ南洋拓殖株式会社ニ命ジテ営業ニ関スル諸般ノ計算及状況ヲ報告セシムルコトヲ得
南洋拓殖株式会社監理官ハ南洋拓殖株式会社ノ株主総会其ノ他諸般ノ会議ニ出席シ意見ヲ陳述スルコトヲ得
第二十条 南洋拓殖株式会社借入金ヲ為サントスルトキハ拓務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第二十一条 南洋拓殖株式会社其ノ所有スル重要財産ヲ譲渡シ又ハ担保ニ供セントスルトキハ拓務大臣ノ認可ヲ受クベシ
前項ノ重要財産ハ拓務大臣之ヲ指定シ官報ヲ以テ告示ス
第二十二条 南洋拓殖株式会社合併又ハ解散ヲ為サントスルトキハ拓務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第二十三条 南洋拓殖株式会社定款其ノ他拓務大臣ノ認可ヲ受ケタル事項ヲ変更セントスルトキハ更ニ拓務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第二十四条 拓務大臣ハ南洋拓殖株式会社ノ業務ニ関シ監督上必要ナル命令ヲ発スルコトヲ得
第二十五条 拓務大臣ハ南洋拓殖株式会社ノ決議又ハ役員ノ行為ガ法令、法令ニ基キテ為ス処分若ハ定款ニ違反シ又ハ公益ヲ害スト認ムルトキハ其ノ決議ヲ取消シ又ハ役員ヲ解任スルコトヲ得
第二十六条 拓務大臣ハ本令中其ノ職務ニ属スル事項ノ一部ヲ南洋庁長官ニ委任スルコトヲ得
附 則
第二十七条 本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
第二十八条 政府ハ設立委員ヲ命ジ南洋拓殖株式会社ノ設立ニ関スル一切ノ事務ヲ処理セシム
第二十九条 設立委員ハ定款ヲ作成シ拓務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第三十条 前条ノ認可アリタルトキハ設立委員ハ株式総数ヨリ政府ニ割当ツベキ株式ヲ控除シタル残余ノ株式ニ付株主ヲ募集スベシ
第三十一条 株式申込証ニハ定款認可ノ年月日並ニ南洋群島裁判事務取扱令ニ於テ依ルコトヲ定メタル商法第百二十六条第二項第二号、第四号及第五号ニ規定スル事項ヲ記載スベシ
第三十二条 設立委員ハ株主ノ募集ヲ終リタルトキハ株式申込証ヲ拓務大臣ニ提出シ其ノ検査ヲ受クベシ
設立委員ハ前項ノ検査ヲ受ケタル後遅滞ナク各株式ニ付第一回ノ払込ヲ為サシメ其ノ払込アリタルトキハ遅滞ナク創立総会ヲ招集スベシ
第三十三条 創立総会ニ於テハ第七条ノ規定ニ準ジ理事候補者ノ選挙及監事ノ選任ヲ行フベシ
第三十四条 創立総会終結シタルトキハ設立委員ハ其ノ事務ヲ南洋拓殖株式会社社長ニ引渡スベシ