関東州弁護士令
法令番号: 勅令第十六號
公布年月日: 昭和11年2月26日
法令の形式: 勅令
朕關東州辯護士令改正ノ件ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十一年二月二十五日
內閣總理大臣 岡田啓介
勅令第十六號
關東州辯護士令
第一條 辯護士ハ當事者其ノ他ノ關係人ノ委囑又ハ官廳ノ選任ニ因リ訴訟ニ關スル行爲其ノ他一般ノ法律事務ヲ行フコトヲ職務トス
第二條 辯護士タルニハ辯護士法ニ依ル辯護士タル資格ヲ有スル者ニシテ滿洲國駐箚特命全權大使ノ認可ヲ受ケ且辯護士名簿ニ登錄セラルルコトヲ要ス
第三條 左ニ揭グル者ハ辯護士タル資格ヲ有セズ
一 禁錮以上ノ刑ニ處セラレタル者
二 懲戒ノ處分ニ因リ免官若ハ免職セラレタル者、辯護士ニ關スル法令ニ依リ除名セラレタル者又ハ辨理士法若ハ計理士法ニ依リ業務ヲ禁止セラレタル者ニシテ免官、免職、除名又ハ業務禁止後二年ヲ經過セザル者
三 禁治產者又ハ準禁治產者
四 破產者ニシテ復權ヲ得ザル者
第四條 外國ノ辯護士タル資格ヲ有スル外國人ハ相互ノ保證アルトキニ限リ大使ノ認可ヲ受ケ外國人又ハ外國法ニ關シ第一條ニ規定スル事項ヲ行フコトヲ得但シ前條ニ揭グル者ハ此ノ限ニ在ラズ
第十三條第二項、第十四條及第十七條乃至第二十條ノ規定ハ前項ノ認可ヲ受ケタル者ニ之ヲ準用ス
大使必要ト認ムルトキハ第一項ノ認可ヲ取消スコトヲ得
第五條 第二條又ハ前條ノ認可ヲ受ケントスル者ハ關東地方法院檢察官長ヲ經由シテ大使ニ申請書ヲ提出スベシ
前項ノ認可申請書ニハ資格ニ關スル證明書及履歷書ヲ添附スベシ
第六條 地方法院檢察官長前條ノ認可申請書ヲ受理シタルトキハ申請者ノ資格、履歷其ノ他必要ナル事項ヲ調査シ意見ヲ附シテ之ヲ大使ニ進達スベシ
第七條 第二條ノ認可ヲ受ケタル者認可ノ日ヨリ六月內ニ辯護士名簿ノ登錄ノ申請ヲ爲サザルトキハ認可ハ其ノ效力ヲ失フ第十條第三號又ハ第五號ノ規定ニ依リ登錄ヲ取消サレタル後六月ヲ經過シタルトキ亦同ジ
第八條 辯護士名簿ハ之ヲ地方法院檢察局ニ備フ
第九條 辯護士名簿ノ登錄ヲ受ケントスル者ハ地方法院檢察官長ニ第二條ノ認可書ノ寫ヲ添附シテ登錄請求書ヲ提出スベシ
第十條 左ノ場合ニ於テハ地方法院檢察官長ハ辯護士名簿ノ登錄ヲ取消スベシ
一 辯護士國籍ヲ喪失シタルトキ
二 辯護士第三條ノ各號ノ一ニ該當スルニ至リタルトキ
三 第二十八條第二項ノ規定ニ依リ登錄取消ノ請求アリタルトキ
四 辯護士死亡シタルトキ
五 總會ノ決議ニ因リ辯護士會解散シタルトキ
第十一條 辯護士名簿ノ登錄ヲ爲シ又ハ其ノ取消ヲ爲シタルトキハ地方法院檢察官長ハ之ヲ辯護士會及本人ニ通知スベシ
第十二條 登錄ニ關スル事項ハ大使之ヲ定ム
第十三條 辯護士ノ事務所ハ辯護士會ノ地域內ニ之ヲ設クベシ
辯護士ハ大使ノ定ムル所ニ依ルノ外如何ナル名義ヲ以テスルモ二個以上ノ事務所ヲ設クルコトヲ得ズ但シ他ノ辯護士事務所ニ於テ執務スルコトヲ妨ゲズ
辯護士事務所ヲ設ケタルトキ又ハ事務所ヲ移轉シタルトキハ直ニ之ヲ地方法院檢察官長及辯護士會ニ屆出ヅベシ
第十四條 辯護士ハ誠實ニ其ノ職務ヲ行ヒ職務ノ內外ヲ問ハズ其ノ品位ヲ保持スベシ
第十五條 辯護士又ハ辯護士タリシ者ハ其ノ職務上知得タル祕密ヲ保持スル權利ヲ有シ義務ヲ負フ但シ他ノ法令ニ別段ノ規定アル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第十六條 辯護士ハ辯護士會ノ會則ヲ遵守スベシ
第十七條 辯護士ハ正當ノ理由アルニ非ザレバ法令ニ依リ官廳ノ命ジタル事項及會則ノ定ムル所ニ依リ辯護士會ノ指定シタル事項ヲ行フコトヲ辭スルコトヲ得ズ
第十八條 辯護士ハ左ニ揭グル事件ニ付其ノ職務ヲ行フコトヲ得ズ
一 相手方ノ協議ヲ受ケテ贊助ヲ爲シ又ハ其ノ委囑ヲ承諾シタル事件
二 相手方ノ協議ヲ受ケタル事件ニシテ其ノ協議ノ程度及方法ガ信賴關係ニ基クモノト認メラルルモノ
三 公務員トシテ職務上取扱ヒタル事件
四 仲裁手續ニ依リ仲裁人トシテ取扱ヒタル事件
第十九條 辯護士ハ係爭權利ヲ讓受クルコトヲ得ズ
第二十條 辯護士ハ事件ノ委囑ヲ承諾セザルトキハ速ニ其ノ旨ヲ委囑者ニ通吿スベシ若シ通吿ヲ怠リタルトキハ之ガ爲生ジタル損害ヲ賠償スル責ニ任ズ
第二十一條 辯護士ハ報酬アル公務ヲ兼ヌルコトヲ得ズ但シ帝國議會若ハ地方議會ノ議員ト爲リ又ハ官署若ハ公署ヨリ特ニ命ゼラレ若ハ囑託セラレタル職務ヲ行フハ此ノ限ニ在ラズ
辯護士ハ地方法院檢察官長ノ許可ヲ受クルニ非ザレバ商業其ノ他營利ヲ目的トスル業務ヲ營ミ若ハ之ヲ營ム者ノ使用人ト爲リ又ハ營利ヲ目的トスル法人ノ業務執行社員、取締役若ハ使用人ト爲ルコトヲ得ズ
第二十二條 辯護士會ハ法人トス
辯護士會ハ辯護士ノ品位ノ保持及辯護士事務ノ改善進步ヲ圖ルヲ以テ目的トス
第二十三條 關東州ニ於テハ辯護士會ニ限リ之ヲ設立スベシ
第二十四條 辯護士會ヲ設立セントスルトキハ會員ト爲ルベキ辯護士ハ會則ヲ定メ地方法院檢察官長ヲ經由シ大使ノ認可ヲ受クベシ
辯護士會會則ヲ變更セントスルトキハ地方法院檢察官長ヲ經由シ大使ノ認可ヲ受クベシ
第二十五條 大使辯護士會ノ設立ヲ認可シタルトキハ辯護士會ノ名稱、事務所ノ所在地及設立ノ年月日ヲ吿示スベシ
大使辯護士會ノ名稱又ハ事務所ノ所在地ノ變更ヲ認可シタルトキハ變更ノ吿示ヲ爲スベシ
第二十六條 辯護士會ノ代表者ハ一人トス但シ代表者差支アル場合ニ於テ之ニ代リテ辯護士會ヲ代表スベキ者ヲ置クコトヲ妨ゲズ
第二十七條 辯護士會ハ地方法院檢察官長ノ監督ヲ受ク
第二十八條 辯護士名簿ニ登錄ヲ受ケタル者ハ當然辯護士會ノ會員ト爲ルモノトス
辯護士辯護士會ヲ退會セントスルトキハ地方法院檢察官長ニ登錄取消ノ請求ヲ爲スベシ
辯護士前項ノ規定ニ依ル請求ニ因リ登錄ヲ取消サレタルトキハ當然辯護士會ヲ退會シタルモノトス
第二十九條 辯護士會ハ官廳ヨリ諮問ヲ受ケタル事項ニ付答申ヲ爲スベシ
辯護士會ハ司法事務ニ關シ官廳ニ建議ヲ爲スコトヲ得辯護士ノ利害ニ關スル事項ニ付亦同ジ
第三十條 辯護士會ノ會則ニハ左ノ事項ヲ記載スベシ
一 名稱及事務所ノ所在地
二 會ノ代表者其ノ他ノ機關ノ組織及職務權限ニ關スル規定
三 會議ニ關スル規定
四 辯護士ノ報酬ニ關シ標準ヲ示ス規定
五 會員ノ風紀保持ニ關スル規定
六 無資力者ノ爲ニスル法律相談及訴訟扶助ニ關スル規定
七 答申及建議ノ決議ニ關スル規定
八 會員ト委囑者トノ間ニ於ケル紛議ノ調停ニ關スル規定
九 入會及退會ニ關スル規定
十 懲戒ノ申吿ニ關スル規定
十一 會費ノ徵收ニ關スル規定
十二 資產ニ關スル規定
第三十一條 辯護士會ハ每年定期總會ヲ開ク
辯護士會ハ必要アル場合ニ於テ臨時總會ヲ開クコトヲ得
第三十二條 辯護士會ハ總會ノ日時、場所及議題竝ニ役員選擧ノ日時及場所ヲ豫メ地方法院檢察官長ニ申吿スベシ
第三十三條 地方法院檢察官長ハ辯護士會ノ總會又ハ役員選擧ノ場所ニ臨席シ又ハ所部ノ官吏ヲシテ臨席セシムルコトヲ得
第三十四條 辯護士會ハ遲滯ナク總會ノ決議竝ニ役員ノ就任及退任ヲ地方法院檢察官長ニ申吿スベシ
第三十五條 左ノ事項ハ總會ノ決議ヲ經ベシ
一 會則ノ變更
二 豫算及決算
第三十六條 辯護士會ノ會議ガ法令若ハ會則ニ違反シ又ハ公益ヲ害スルトキハ地方法院檢察官長ハ其ノ決議ヲ取消シ又ハ其ノ議事ヲ停止スルコトヲ得
辯護士會ノ役員ノ行爲ガ法令若ハ會則ニ違反シ又ハ公益ヲ害スルトキハ地方法院檢察官長ハ其ノ役員ヲ解任スルコトヲ得
第三十七條 辯護士會ハ辯護士ト委囑者トノ間ニ紛議ヲ生ジタルトキハ當事者ノ請求ニ因リ其ノ調停ヲ爲スコトヲ得
第三十八條 辯護士會ハ總會ノ決議ニ因リテ解散ス
前項ノ總會ノ決議ハ大使ノ認可ヲ受クベシ
民法第七十三條乃至第七十六條、第七十八條乃至第八十條、第八十二條及第八十三條竝ニ民法施行法第二十六條及第二十七條ノ規定ハ辯護士會ノ淸算ニ關シ之ヲ準用ス
大使ハ辯護士會ノ解散ノ決議ヲ認可シタルトキハ解散ノ吿示ヲ爲スベシ
附 則
本令ハ昭和十一年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
本令施行ノ際現ニ從前ノ規定ニ依リテ辯護士タル資格ヲ有スル者ハ本令施行後ト雖モ仍其ノ資格ヲ有ス
舊刑法ノ重罪ノ刑又ハ禁錮ニ處セラレタル者ハ第三條ノ規定ノ適用ニ付テハ之ヲ禁錮以上ノ刑ニ處セラレタルモノト看做ス
從前ノ規定ニ依ル辯護士名簿ノ登錄ハ之ヲ本令ニ依ル辯護士名簿ノ登錄ト看做ス
本令施行ノ際現ニ辯護士會ニ加入シ居ラザル辯護士ニ付テハ本令施行ノ日ヨリ三月內ニ從前ノ例ニ依リテ辯護士會ニ加入スルニ非ザレバ其ノ登錄ハ效力ヲ失フ
辯護士會ニ關シテハ本令ニ依ル辯護士會成立スルニ至ル迄ハ仍從前ノ例ニ依ル
本令施行ノ際現ニ存スル辯護士會ハ本令施行ノ日ヨリ六月內ニ本令ニ依ル辯護士會ヲ設立スル爲會則ヲ定メ大使ノ認可ヲ受クベシ大使認可ヲ爲シタルトキハ辯護士會ノ名稱、事務所ノ所在地及設立ノ年月日ヲ吿示スベシ
前項ノ規定ニ依リテ辯護士會成立シタルトキハ舊辯護士會ノ會員ハ當然新辯護士會ノ會員ト爲リ舊辯護士會ニ屬シタル權利義務ハ新辯護士會之ヲ承繼ス
本令施行ノ際現ニ二個以上ノ事務所ヲ有スル辯護士ハ本令施行ノ日ヨリ六月內ニ限リ之ヲ存續スルコトヲ得
朕関東州弁護士令改正ノ件ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十一年二月二十五日
内閣総理大臣 岡田啓介
勅令第十六号
関東州弁護士令
第一条 弁護士ハ当事者其ノ他ノ関係人ノ委嘱又ハ官庁ノ選任ニ因リ訴訟ニ関スル行為其ノ他一般ノ法律事務ヲ行フコトヲ職務トス
第二条 弁護士タルニハ弁護士法ニ依ル弁護士タル資格ヲ有スル者ニシテ満洲国駐箚特命全権大使ノ認可ヲ受ケ且弁護士名簿ニ登録セラルルコトヲ要ス
第三条 左ニ掲グル者ハ弁護士タル資格ヲ有セズ
一 禁錮以上ノ刑ニ処セラレタル者
二 懲戒ノ処分ニ因リ免官若ハ免職セラレタル者、弁護士ニ関スル法令ニ依リ除名セラレタル者又ハ弁理士法若ハ計理士法ニ依リ業務ヲ禁止セラレタル者ニシテ免官、免職、除名又ハ業務禁止後二年ヲ経過セザル者
三 禁治産者又ハ準禁治産者
四 破産者ニシテ復権ヲ得ザル者
第四条 外国ノ弁護士タル資格ヲ有スル外国人ハ相互ノ保証アルトキニ限リ大使ノ認可ヲ受ケ外国人又ハ外国法ニ関シ第一条ニ規定スル事項ヲ行フコトヲ得但シ前条ニ掲グル者ハ此ノ限ニ在ラズ
第十三条第二項、第十四条及第十七条乃至第二十条ノ規定ハ前項ノ認可ヲ受ケタル者ニ之ヲ準用ス
大使必要ト認ムルトキハ第一項ノ認可ヲ取消スコトヲ得
第五条 第二条又ハ前条ノ認可ヲ受ケントスル者ハ関東地方法院検察官長ヲ経由シテ大使ニ申請書ヲ提出スベシ
前項ノ認可申請書ニハ資格ニ関スル証明書及履歴書ヲ添附スベシ
第六条 地方法院検察官長前条ノ認可申請書ヲ受理シタルトキハ申請者ノ資格、履歴其ノ他必要ナル事項ヲ調査シ意見ヲ附シテ之ヲ大使ニ進達スベシ
第七条 第二条ノ認可ヲ受ケタル者認可ノ日ヨリ六月内ニ弁護士名簿ノ登録ノ申請ヲ為サザルトキハ認可ハ其ノ効力ヲ失フ第十条第三号又ハ第五号ノ規定ニ依リ登録ヲ取消サレタル後六月ヲ経過シタルトキ亦同ジ
第八条 弁護士名簿ハ之ヲ地方法院検察局ニ備フ
第九条 弁護士名簿ノ登録ヲ受ケントスル者ハ地方法院検察官長ニ第二条ノ認可書ノ写ヲ添附シテ登録請求書ヲ提出スベシ
第十条 左ノ場合ニ於テハ地方法院検察官長ハ弁護士名簿ノ登録ヲ取消スベシ
一 弁護士国籍ヲ喪失シタルトキ
二 弁護士第三条ノ各号ノ一ニ該当スルニ至リタルトキ
三 第二十八条第二項ノ規定ニ依リ登録取消ノ請求アリタルトキ
四 弁護士死亡シタルトキ
五 総会ノ決議ニ因リ弁護士会解散シタルトキ
第十一条 弁護士名簿ノ登録ヲ為シ又ハ其ノ取消ヲ為シタルトキハ地方法院検察官長ハ之ヲ弁護士会及本人ニ通知スベシ
第十二条 登録ニ関スル事項ハ大使之ヲ定ム
第十三条 弁護士ノ事務所ハ弁護士会ノ地域内ニ之ヲ設クベシ
弁護士ハ大使ノ定ムル所ニ依ルノ外如何ナル名義ヲ以テスルモ二個以上ノ事務所ヲ設クルコトヲ得ズ但シ他ノ弁護士事務所ニ於テ執務スルコトヲ妨ゲズ
弁護士事務所ヲ設ケタルトキ又ハ事務所ヲ移転シタルトキハ直ニ之ヲ地方法院検察官長及弁護士会ニ届出ヅベシ
第十四条 弁護士ハ誠実ニ其ノ職務ヲ行ヒ職務ノ内外ヲ問ハズ其ノ品位ヲ保持スベシ
第十五条 弁護士又ハ弁護士タリシ者ハ其ノ職務上知得タル秘密ヲ保持スル権利ヲ有シ義務ヲ負フ但シ他ノ法令ニ別段ノ規定アル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第十六条 弁護士ハ弁護士会ノ会則ヲ遵守スベシ
第十七条 弁護士ハ正当ノ理由アルニ非ザレバ法令ニ依リ官庁ノ命ジタル事項及会則ノ定ムル所ニ依リ弁護士会ノ指定シタル事項ヲ行フコトヲ辞スルコトヲ得ズ
第十八条 弁護士ハ左ニ掲グル事件ニ付其ノ職務ヲ行フコトヲ得ズ
一 相手方ノ協議ヲ受ケテ賛助ヲ為シ又ハ其ノ委嘱ヲ承諾シタル事件
二 相手方ノ協議ヲ受ケタル事件ニシテ其ノ協議ノ程度及方法ガ信頼関係ニ基クモノト認メラルルモノ
三 公務員トシテ職務上取扱ヒタル事件
四 仲裁手続ニ依リ仲裁人トシテ取扱ヒタル事件
第十九条 弁護士ハ係争権利ヲ譲受クルコトヲ得ズ
第二十条 弁護士ハ事件ノ委嘱ヲ承諾セザルトキハ速ニ其ノ旨ヲ委嘱者ニ通告スベシ若シ通告ヲ怠リタルトキハ之ガ為生ジタル損害ヲ賠償スル責ニ任ズ
第二十一条 弁護士ハ報酬アル公務ヲ兼ヌルコトヲ得ズ但シ帝国議会若ハ地方議会ノ議員ト為リ又ハ官署若ハ公署ヨリ特ニ命ゼラレ若ハ嘱託セラレタル職務ヲ行フハ此ノ限ニ在ラズ
弁護士ハ地方法院検察官長ノ許可ヲ受クルニ非ザレバ商業其ノ他営利ヲ目的トスル業務ヲ営ミ若ハ之ヲ営ム者ノ使用人ト為リ又ハ営利ヲ目的トスル法人ノ業務執行社員、取締役若ハ使用人ト為ルコトヲ得ズ
第二十二条 弁護士会ハ法人トス
弁護士会ハ弁護士ノ品位ノ保持及弁護士事務ノ改善進歩ヲ図ルヲ以テ目的トス
第二十三条 関東州ニ於テハ弁護士会ニ限リ之ヲ設立スベシ
第二十四条 弁護士会ヲ設立セントスルトキハ会員ト為ルベキ弁護士ハ会則ヲ定メ地方法院検察官長ヲ経由シ大使ノ認可ヲ受クベシ
弁護士会会則ヲ変更セントスルトキハ地方法院検察官長ヲ経由シ大使ノ認可ヲ受クベシ
第二十五条 大使弁護士会ノ設立ヲ認可シタルトキハ弁護士会ノ名称、事務所ノ所在地及設立ノ年月日ヲ告示スベシ
大使弁護士会ノ名称又ハ事務所ノ所在地ノ変更ヲ認可シタルトキハ変更ノ告示ヲ為スベシ
第二十六条 弁護士会ノ代表者ハ一人トス但シ代表者差支アル場合ニ於テ之ニ代リテ弁護士会ヲ代表スベキ者ヲ置クコトヲ妨ゲズ
第二十七条 弁護士会ハ地方法院検察官長ノ監督ヲ受ク
第二十八条 弁護士名簿ニ登録ヲ受ケタル者ハ当然弁護士会ノ会員ト為ルモノトス
弁護士弁護士会ヲ退会セントスルトキハ地方法院検察官長ニ登録取消ノ請求ヲ為スベシ
弁護士前項ノ規定ニ依ル請求ニ因リ登録ヲ取消サレタルトキハ当然弁護士会ヲ退会シタルモノトス
第二十九条 弁護士会ハ官庁ヨリ諮問ヲ受ケタル事項ニ付答申ヲ為スベシ
弁護士会ハ司法事務ニ関シ官庁ニ建議ヲ為スコトヲ得弁護士ノ利害ニ関スル事項ニ付亦同ジ
第三十条 弁護士会ノ会則ニハ左ノ事項ヲ記載スベシ
一 名称及事務所ノ所在地
二 会ノ代表者其ノ他ノ機関ノ組織及職務権限ニ関スル規定
三 会議ニ関スル規定
四 弁護士ノ報酬ニ関シ標準ヲ示ス規定
五 会員ノ風紀保持ニ関スル規定
六 無資力者ノ為ニスル法律相談及訴訟扶助ニ関スル規定
七 答申及建議ノ決議ニ関スル規定
八 会員ト委嘱者トノ間ニ於ケル紛議ノ調停ニ関スル規定
九 入会及退会ニ関スル規定
十 懲戒ノ申告ニ関スル規定
十一 会費ノ徴収ニ関スル規定
十二 資産ニ関スル規定
第三十一条 弁護士会ハ毎年定期総会ヲ開ク
弁護士会ハ必要アル場合ニ於テ臨時総会ヲ開クコトヲ得
第三十二条 弁護士会ハ総会ノ日時、場所及議題並ニ役員選挙ノ日時及場所ヲ予メ地方法院検察官長ニ申告スベシ
第三十三条 地方法院検察官長ハ弁護士会ノ総会又ハ役員選挙ノ場所ニ臨席シ又ハ所部ノ官吏ヲシテ臨席セシムルコトヲ得
第三十四条 弁護士会ハ遅滞ナク総会ノ決議並ニ役員ノ就任及退任ヲ地方法院検察官長ニ申告スベシ
第三十五条 左ノ事項ハ総会ノ決議ヲ経ベシ
一 会則ノ変更
二 予算及決算
第三十六条 弁護士会ノ会議ガ法令若ハ会則ニ違反シ又ハ公益ヲ害スルトキハ地方法院検察官長ハ其ノ決議ヲ取消シ又ハ其ノ議事ヲ停止スルコトヲ得
弁護士会ノ役員ノ行為ガ法令若ハ会則ニ違反シ又ハ公益ヲ害スルトキハ地方法院検察官長ハ其ノ役員ヲ解任スルコトヲ得
第三十七条 弁護士会ハ弁護士ト委嘱者トノ間ニ紛議ヲ生ジタルトキハ当事者ノ請求ニ因リ其ノ調停ヲ為スコトヲ得
第三十八条 弁護士会ハ総会ノ決議ニ因リテ解散ス
前項ノ総会ノ決議ハ大使ノ認可ヲ受クベシ
民法第七十三条乃至第七十六条、第七十八条乃至第八十条、第八十二条及第八十三条並ニ民法施行法第二十六条及第二十七条ノ規定ハ弁護士会ノ清算ニ関シ之ヲ準用ス
大使ハ弁護士会ノ解散ノ決議ヲ認可シタルトキハ解散ノ告示ヲ為スベシ
附 則
本令ハ昭和十一年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
本令施行ノ際現ニ従前ノ規定ニ依リテ弁護士タル資格ヲ有スル者ハ本令施行後ト雖モ仍其ノ資格ヲ有ス
旧刑法ノ重罪ノ刑又ハ禁錮ニ処セラレタル者ハ第三条ノ規定ノ適用ニ付テハ之ヲ禁錮以上ノ刑ニ処セラレタルモノト看做ス
従前ノ規定ニ依ル弁護士名簿ノ登録ハ之ヲ本令ニ依ル弁護士名簿ノ登録ト看做ス
本令施行ノ際現ニ弁護士会ニ加入シ居ラザル弁護士ニ付テハ本令施行ノ日ヨリ三月内ニ従前ノ例ニ依リテ弁護士会ニ加入スルニ非ザレバ其ノ登録ハ効力ヲ失フ
弁護士会ニ関シテハ本令ニ依ル弁護士会成立スルニ至ル迄ハ仍従前ノ例ニ依ル
本令施行ノ際現ニ存スル弁護士会ハ本令施行ノ日ヨリ六月内ニ本令ニ依ル弁護士会ヲ設立スル為会則ヲ定メ大使ノ認可ヲ受クベシ大使認可ヲ為シタルトキハ弁護士会ノ名称、事務所ノ所在地及設立ノ年月日ヲ告示スベシ
前項ノ規定ニ依リテ弁護士会成立シタルトキハ旧弁護士会ノ会員ハ当然新弁護士会ノ会員ト為リ旧弁護士会ニ属シタル権利義務ハ新弁護士会之ヲ承継ス
本令施行ノ際現ニ二個以上ノ事務所ヲ有スル弁護士ハ本令施行ノ日ヨリ六月内ニ限リ之ヲ存続スルコトヲ得