第一條 生絲ノ價格ガ一般經濟狀況ニ照シ異常ナル低落ヲ爲シ蠶絲業ノ基礎ヲ危クスル虞アル場合ニ於テ其ノ價格ノ安定ヲ圖ル爲必要アリト認ムルトキハ政府ハ銀行ガ生絲ノ製造又ハ加工ヲ爲ス者ニ對シ主務大臣ノ定ムル條件ニ從ヒ生絲ヲ擔保トシ手形割引ノ方法ニ依リ資金ノ融通ヲ爲ス場合ニ於テ之ニ因リ損失ヲ受クルトキ銀行ニ對シ其ノ損失ニ付補償スルノ契約ヲ爲スコトヲ得
前項ノ規定ハ左ノ各號ノ一ニ該當スル者ガ命令ノ定ムル所ニ依リ生絲ノ製造又ハ加工ヲ爲ス者ニ對シ資金ノ融通ヲ爲ス場合ニ於テ其ノ者ニ對シ銀行ガ前項ノ條件ニ從ヒ生絲ヲ擔保トシ手形割引ノ方法ニ依リ資金ノ融通ヲ爲ス場合ニ之ヲ準用ス
前二項ノ規定ニ依リ政府ガ損失補償ノ契約ヲ爲スニ付テハ絲價委員會ノ議ヲ經ルコトヲ要ス
第二條 損失補償ノ契約ヲ爲スコトヲ得ル期間ハ本法施行ノ日ヨリ五年トス
第三條 損失補償ノ契約ニ基キ政府ノ支拂フベキ損失補償金ノ總額ハ三千萬圓ヲ超ユルコトヲ得ズ
第四條 第一條ノ損失ハ銀行ガ擔保トシテ受取リタル生絲ニ付債權ノ辨濟ヲ受ケ尙不足アルトキ其ノ不足分トス
前項ノ損失ニ付政府ノ補償スベキ額ハ損失補償ノ契約ニ定ムル金額ノ制限其ノ他ノ條件ニ從ヒ絲價安定融資補償審査會之ヲ決定ス
絲價安定融資補償審査會ノ組織及權限ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五條 銀行ガ擔保トシテ受取リタル生絲ヲ債權ノ辨濟ヲ受クル爲處分セントスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
主務大臣前項ノ認可ヲ爲サントスルトキハ絲價委員會ノ議ヲ經ルコトヲ要ス
第六條 政府ガ銀行ニ對シテ支拂フベキ損失補償金ハ五分利附國債證券ヲ以テ之ヲ交付スルコトヲ得
第七條 政府ハ前條ノ規定ニ依リ交付スル爲必要ナル額ヲ限度トシ公債ヲ發行スルコトヲ得
第八條 本法ニ依リ交付スル國債證券ノ交付價格ハ時價ヲ參酌シテ主務大臣之ヲ定ム
第九條 損失ノ補償ヲ受ケタル銀行ハ命令ノ定ムル所ニ依リ債權ノ取立ヲ爲シ其ノ取立金ヲ政府ニ納付スベシ
銀行ハ命令ノ定ムル所ニ依リ生絲ノ問屋其ノ他生絲ノ製造又ハ加工ヲ爲ス者ノ爲ニ生絲ノ販賣ヲ爲ス者ヲシテ其ノ取扱ニ係ル生絲ノ販賣代金中ヨリ前項ノ債權ノ取立ヲ爲サシムルコトヲ得
第十條 損失ノ補償ヲ受クルノ契約ヲ爲シタル銀行ガ本法若ハ本法ニ基キテ發スル命令又ハ損失補償ノ契約ニ違反シタルトキハ政府ハ契約ヲ解除シ、損失ノ全部若ハ一部ニ付補償ヲ爲サズ又ハ損失補償金ノ全部若ハ一部ノ償還ヲ命ズルコトヲ得
第十一條 主務大臣本法施行ノ爲必要アリト認ムルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ生絲ノ製造又ハ加工ヲ爲ス者及第一條第二項各號ノ一ニ該當スル者ニ對シ其ノ事業又ハ財產ニ關スル報告ヲ爲サシメ、其ノ事業又ハ財產ノ狀況ヲ檢査シ其ノ他必要ナル命令又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
第十二條 本法ノ適用ニ付テハ產業組合中央金庫ハ之ヲ銀行ト看做ス