(震災被害者ニ対スル租税ノ減免等ニ関スル件ノ施行ニ関スル件)
法令番号: 勅令第四百三十三號
公布年月日: 大正12年9月30日
法令の形式: 勅令
朕大正十二年勅令第四百十號震災被害者ニ對スル租稅ノ減免等ニ關スル件ノ施行ニ關スル件ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
攝政名
大正十二年九月三十日
內閣總理大臣 伯爵 山本權兵衞
大藏大臣 井上準之助
勅令第四百三十三號
第一條 大正十二年勅令第四百十號第三條ノ規定ニ依リ震災地及震災被害者ヲ左ノ如ク定ム
一 震災地
東京府(西多摩郡及小笠原島ヲ除ク)
神奈川縣
埼玉縣(秩父郡、兒玉郡及大里郡ヲ除ク)
千葉縣 千葉市 千葉郡 市原郡 東葛飾郡 君津郡 安房郡
山梨縣 中巨摩郡花輪村 東八代郡富士見村 南巨摩郡鰍澤町 南都留郡明見村中野村忍野村
靜岡縣 沼津市 田方郡 駿東郡 賀茂郡
二 震災被害者
大正十二年九月一日ノ震災(之ニ伴フ火災又ハ海嘯ヲ含ム以下同シ)ニ因リ損害ヲ受ケタル者
第二條 震災被害者中政府ノ決定シタル所得金額一萬圓以下(同居ノ戶主又ハ家族ノ分トノ合算額ニ依ル)ノ者ニシテ自己(同居ノ戶主又ハ家族ヲ含ム)ノ所有ニ係ル其ノ住宅又ハ家財ノ過半カ震災ニ因リ滅失シ又ハ其ノ用ヲ爲ササルニ至リタルモノニ付テハ大正十二年分第三種ノ所得ニ對スル所得稅ヲ免除ス
第三條 震災被害者ニシテ前條ニ該當セサルモノノ大正十二年分第三種ノ所得ニ付テハ政府ノ決定シタル所得金額中ヨリ左ノ金額ヲ控除シ其ノ殘所得金額ニ付所得稅法第二十三條ノ規定ヲ適用ス
一 所得稅法第十四條第一項第六號ノ所得ノ基因タル自己所有ノ家屋其ノ他ノ築造物、船舶、機械、器具、商品、原料品等カ震災ニ因リ滅失又ハ毀損シタルトキハ其ノ損害見積金額
二 自己(同居ノ戶主又ハ家族ヲ含ム)ノ所有ニ係ル其ノ住宅又ハ家財カ震災ニ因リ滅失又ハ毀損シタルトキハ左ノ金額
甲 住宅又ハ家財ノ過半カ滅失シ又ハ其ノ用ヲ爲ササルニ至リタルトキ
所得金額中一萬圓以下ノ金額(同居ノ戶主又ハ家族ノ分トノ合算額ニ依ル以下同シ)ノ全部
同 一萬圓ヲ超エ二萬圓以下ノ金額ノ八割
同 二萬圓ヲ超エ五萬圓以下ノ金額ノ六割
同 五萬圓ヲ超エ十萬圓以下ノ金額ノ四割
同 十萬圓ヲ超ユル金額ノ二割
乙 住宅又ハ家財ノ損害甲ノ程度ニ達セサルモ其ノ損害著シキトキ
所得金額中一萬圓以下ノ金額(同居ノ戶主又ハ家族ノ分トノ合算額ニ依ル以下同シ)ノ五割
同 一萬圓ヲ超エ二萬圓以下ノ金額ノ三割
同 二萬圓ヲ超エ五萬圓以下ノ金額ノ二割
同 五萬圓ヲ超ユル金額ノ一割
丙 住宅又ハ家財ノ損害乙ノ程度ニ達セサルトキ
所得金額中一萬圓以下ノ金額(同居ノ戶主又ハ家族ノ分トノ合算額ニ依ル以下同シ)ノ二割
同 一萬圓ヲ超エ五萬圓以下ノ金額ノ一割
三 第一號又ハ前號ノ規定ノ適用ヲ受クル者所得稅法第十四條第一項第一號又ハ第六號ノ所得ニ付震災ノ影響ニ依リ收入ノ全部又ハ大部分ヲ得ルコト能ハサルニ至リタルトキハ當該所得ノ三分ノ一ニ相當スル金額
前項第二號ノ場合ニ於テ同居者一人每ノ控除金額ハ各其ノ所得金額ニ案分シテ之ヲ計算ス
震災被害者カ所得ノ基因タル自己所有ノ家屋ニ住居スル場合ニ於テハ其ノ選擇ニ依リ第一項第一號又ハ第二號ノ規定ヲ適用ス
同一人ニシテ山林ノ所得ト山林以外ノ所得トヲ有スル場合ニ於テハ前三項ノ規定ニ依ル控除ハ先ツ山林以外ノ所得ニ付之ヲ爲シ不足アルトキハ山林ノ所得ニ及フ
第四條 所得稅法第六十四條第一項ノ請求ヲ爲ス者ニ付テハ前條ノ規定ヲ適用セス
第五條 第三條ノ規定ニ依ル控除ヲ爲シ殘所得金額八百圓ニ滿タサルトキハ所得稅ヲ免除ス
所得稅法第二十條第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第六條 震災ニ因リ所得稅法第二十六條第一項ノ規定ニ依リ決定シタル大正十二年分第三種ノ所得金額ノ不明ト爲リタルモノニ付テハ政府ハ所得調査委員會ニ諮問シテ其ノ所得金額ヲ確定スヘシ
第七條 震災被害者ニシテ左ノ各號ノ一ニ該當スルモノノ大正十二年分營業稅第二期分ハ之ヲ免除ス
一 營業ノ用ニ供スル家屋其ノ他ノ築造物、船舶、機械、器具等ノ全部又ハ大部分カ震災ニ因リ滅失シ又ハ其ノ用ヲ爲ササルニ至リタルトキ
二 商品及原料品ノ全部又ハ大部分カ震災ニ因リ滅失シ又ハ其ノ用ヲ爲ササルニ至リタルトキ
前項ノ規定ハ各營業場每ニ之ヲ適用ス但シ營業稅法第十五條第二項ノ規定ニ依リ合算シテ營業稅ヲ課シタルモノニ付テハ各營業場ヲ通シテ之ヲ適用ス
第八條 前條ノ規定ニ依リ營業稅ノ免除ヲ受ケタル者ニ付テハ第一期分ニ相當スル稅額ヲ以テ營業稅法第二十九條ノ其ノ年分營業稅額ト看做ス
第九條 震災被害者ノ大正十二年分營業稅ニ付營業稅法第二十九條ノ規定ヲ適用スル場合ニ於テハ營業ノ用ニ供スル自己所有ノ家屋其ノ他ノ築造物、船舶、機械、器具等カ震災ニ因リ滅失又ハ毀損シタル損害ノ見積金額ヲ營業稅法施行規則第五十五條ノ經費ト看做ス
第十條 震災ニ因リ營業稅法第二十六條第一項ノ規定ニ依リ決定シタル大正十二年分營業稅課稅標準ノ不明ト爲リタルモノニ付テハ政府ハ營業稅調査委員會ニ諮問シテ其ノ課稅標準ヲ確定スヘシ
第十一條 第二條、第三條又ハ第七條ノ規定ニ依リ所得稅又ハ營業稅ノ免除又ハ輕減ヲ受ケムトスル者ハ被害ノ狀況及損害見積金額ヲ記載シタル申請書ヲ大正十三年一月三十一日迄ニ所轄稅務署ニ提出スヘシ
震災當時ニ於テ納稅地カ震災地ニ在リタル納稅者ニシテ被害ノ事實顯著ナルモノニ付テハ前項ノ申請ナキ場合ト雖政府ノ認ムル所ニ依リ所得稅又ハ營業稅ノ免除又ハ輕減ヲ爲スコトヲ得
第十二條 政府ハ第三條ノ規定ニ依ル控除ヲ爲シタルトキハ其ノ殘所得金額ヲ納稅義務者ニ通知スヘシ
第十三條 本令ニ依ル所得稅又ハ營業稅ノ免除又ハ輕減ニ關スル處分ニ對シ不服アルトキハ訴願又ハ行政訴訟ヲ爲スコトヲ得
第十四條 震災地ニ於テ納付スヘキ地租、所得稅(第二種所得稅ヲ除ク)、營業稅及相續稅ニシテ納付未濟ニ係ルモノ及大正十二年十月三十一日迄ニ納期限ノ到來スルモノニ付テハ其ノ徵收ヲ猶豫シ大正十二年十一月一日以後ニ於テ大藏大臣其ノ納期限ヲ定ム
震災地ニ於テ納付スヘキ地租、所得稅(第二種所得稅ヲ除ク)、營業稅及相續稅ニシテ大正十二年十一月一日以後ニ納期限ノ到來スルモノニ付テハ大藏大臣ノ定ムル所ニ依リ其ノ徵收ヲ猶豫ス
附 則
本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
朕大正十二年勅令第四百十号震災被害者ニ対スル租税ノ減免等ニ関スル件ノ施行ニ関スル件ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
摂政名
大正十二年九月三十日
内閣総理大臣 伯爵 山本権兵衛
大蔵大臣 井上準之助
勅令第四百三十三号
第一条 大正十二年勅令第四百十号第三条ノ規定ニ依リ震災地及震災被害者ヲ左ノ如ク定ム
一 震災地
東京府(西多摩郡及小笠原島ヲ除ク)
神奈川県
埼玉県(秩父郡、児玉郡及大里郡ヲ除ク)
千葉県 千葉市 千葉郡 市原郡 東葛飾郡 君津郡 安房郡
山梨県 中巨摩郡花輪村 東八代郡富士見村 南巨摩郡鰍沢町 南都留郡明見村中野村忍野村
静岡県 沼津市 田方郡 駿東郡 賀茂郡
二 震災被害者
大正十二年九月一日ノ震災(之ニ伴フ火災又ハ海嘯ヲ含ム以下同シ)ニ因リ損害ヲ受ケタル者
第二条 震災被害者中政府ノ決定シタル所得金額一万円以下(同居ノ戸主又ハ家族ノ分トノ合算額ニ依ル)ノ者ニシテ自己(同居ノ戸主又ハ家族ヲ含ム)ノ所有ニ係ル其ノ住宅又ハ家財ノ過半カ震災ニ因リ滅失シ又ハ其ノ用ヲ為ササルニ至リタルモノニ付テハ大正十二年分第三種ノ所得ニ対スル所得税ヲ免除ス
第三条 震災被害者ニシテ前条ニ該当セサルモノノ大正十二年分第三種ノ所得ニ付テハ政府ノ決定シタル所得金額中ヨリ左ノ金額ヲ控除シ其ノ残所得金額ニ付所得税法第二十三条ノ規定ヲ適用ス
一 所得税法第十四条第一項第六号ノ所得ノ基因タル自己所有ノ家屋其ノ他ノ築造物、船舶、機械、器具、商品、原料品等カ震災ニ因リ滅失又ハ毀損シタルトキハ其ノ損害見積金額
二 自己(同居ノ戸主又ハ家族ヲ含ム)ノ所有ニ係ル其ノ住宅又ハ家財カ震災ニ因リ滅失又ハ毀損シタルトキハ左ノ金額
甲 住宅又ハ家財ノ過半カ滅失シ又ハ其ノ用ヲ為ササルニ至リタルトキ
所得金額中一万円以下ノ金額(同居ノ戸主又ハ家族ノ分トノ合算額ニ依ル以下同シ)ノ全部
同 一万円ヲ超エ二万円以下ノ金額ノ八割
同 二万円ヲ超エ五万円以下ノ金額ノ六割
同 五万円ヲ超エ十万円以下ノ金額ノ四割
同 十万円ヲ超ユル金額ノ二割
乙 住宅又ハ家財ノ損害甲ノ程度ニ達セサルモ其ノ損害著シキトキ
所得金額中一万円以下ノ金額(同居ノ戸主又ハ家族ノ分トノ合算額ニ依ル以下同シ)ノ五割
同 一万円ヲ超エ二万円以下ノ金額ノ三割
同 二万円ヲ超エ五万円以下ノ金額ノ二割
同 五万円ヲ超ユル金額ノ一割
丙 住宅又ハ家財ノ損害乙ノ程度ニ達セサルトキ
所得金額中一万円以下ノ金額(同居ノ戸主又ハ家族ノ分トノ合算額ニ依ル以下同シ)ノ二割
同 一万円ヲ超エ五万円以下ノ金額ノ一割
三 第一号又ハ前号ノ規定ノ適用ヲ受クル者所得税法第十四条第一項第一号又ハ第六号ノ所得ニ付震災ノ影響ニ依リ収入ノ全部又ハ大部分ヲ得ルコト能ハサルニ至リタルトキハ当該所得ノ三分ノ一ニ相当スル金額
前項第二号ノ場合ニ於テ同居者一人毎ノ控除金額ハ各其ノ所得金額ニ案分シテ之ヲ計算ス
震災被害者カ所得ノ基因タル自己所有ノ家屋ニ住居スル場合ニ於テハ其ノ選択ニ依リ第一項第一号又ハ第二号ノ規定ヲ適用ス
同一人ニシテ山林ノ所得ト山林以外ノ所得トヲ有スル場合ニ於テハ前三項ノ規定ニ依ル控除ハ先ツ山林以外ノ所得ニ付之ヲ為シ不足アルトキハ山林ノ所得ニ及フ
第四条 所得税法第六十四条第一項ノ請求ヲ為ス者ニ付テハ前条ノ規定ヲ適用セス
第五条 第三条ノ規定ニ依ル控除ヲ為シ残所得金額八百円ニ満タサルトキハ所得税ヲ免除ス
所得税法第二十条第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第六条 震災ニ因リ所得税法第二十六条第一項ノ規定ニ依リ決定シタル大正十二年分第三種ノ所得金額ノ不明ト為リタルモノニ付テハ政府ハ所得調査委員会ニ諮問シテ其ノ所得金額ヲ確定スヘシ
第七条 震災被害者ニシテ左ノ各号ノ一ニ該当スルモノノ大正十二年分営業税第二期分ハ之ヲ免除ス
一 営業ノ用ニ供スル家屋其ノ他ノ築造物、船舶、機械、器具等ノ全部又ハ大部分カ震災ニ因リ滅失シ又ハ其ノ用ヲ為ササルニ至リタルトキ
二 商品及原料品ノ全部又ハ大部分カ震災ニ因リ滅失シ又ハ其ノ用ヲ為ササルニ至リタルトキ
前項ノ規定ハ各営業場毎ニ之ヲ適用ス但シ営業税法第十五条第二項ノ規定ニ依リ合算シテ営業税ヲ課シタルモノニ付テハ各営業場ヲ通シテ之ヲ適用ス
第八条 前条ノ規定ニ依リ営業税ノ免除ヲ受ケタル者ニ付テハ第一期分ニ相当スル税額ヲ以テ営業税法第二十九条ノ其ノ年分営業税額ト看做ス
第九条 震災被害者ノ大正十二年分営業税ニ付営業税法第二十九条ノ規定ヲ適用スル場合ニ於テハ営業ノ用ニ供スル自己所有ノ家屋其ノ他ノ築造物、船舶、機械、器具等カ震災ニ因リ滅失又ハ毀損シタル損害ノ見積金額ヲ営業税法施行規則第五十五条ノ経費ト看做ス
第十条 震災ニ因リ営業税法第二十六条第一項ノ規定ニ依リ決定シタル大正十二年分営業税課税標準ノ不明ト為リタルモノニ付テハ政府ハ営業税調査委員会ニ諮問シテ其ノ課税標準ヲ確定スヘシ
第十一条 第二条、第三条又ハ第七条ノ規定ニ依リ所得税又ハ営業税ノ免除又ハ軽減ヲ受ケムトスル者ハ被害ノ状況及損害見積金額ヲ記載シタル申請書ヲ大正十三年一月三十一日迄ニ所轄税務署ニ提出スヘシ
震災当時ニ於テ納税地カ震災地ニ在リタル納税者ニシテ被害ノ事実顕著ナルモノニ付テハ前項ノ申請ナキ場合ト雖政府ノ認ムル所ニ依リ所得税又ハ営業税ノ免除又ハ軽減ヲ為スコトヲ得
第十二条 政府ハ第三条ノ規定ニ依ル控除ヲ為シタルトキハ其ノ残所得金額ヲ納税義務者ニ通知スヘシ
第十三条 本令ニ依ル所得税又ハ営業税ノ免除又ハ軽減ニ関スル処分ニ対シ不服アルトキハ訴願又ハ行政訴訟ヲ為スコトヲ得
第十四条 震災地ニ於テ納付スヘキ地租、所得税(第二種所得税ヲ除ク)、営業税及相続税ニシテ納付未済ニ係ルモノ及大正十二年十月三十一日迄ニ納期限ノ到来スルモノニ付テハ其ノ徴収ヲ猶予シ大正十二年十一月一日以後ニ於テ大蔵大臣其ノ納期限ヲ定ム
震災地ニ於テ納付スヘキ地租、所得税(第二種所得税ヲ除ク)、営業税及相続税ニシテ大正十二年十一月一日以後ニ納期限ノ到来スルモノニ付テハ大蔵大臣ノ定ムル所ニ依リ其ノ徴収ヲ猶予ス
附 則
本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス