樺太町村制
法令番号: 勅令第八號
公布年月日: 大正11年1月23日
法令の形式: 勅令
朕樺太町村制ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
攝政名
大正十一年一月二十一日
內閣總理大臣 子爵 高橋是淸
勅令第八號
樺太町村制
第一章 總則
第一條 本令ハ大正十年法律第四十七號ニ依ル町村ニ之ヲ適用ス
第二條 町村ハ法令ノ範圍內ニ於テ左ノ事務ヲ處理ス
一 敎育ニ關スル事項
二 衞生ニ關スル事項
三 土木交通ニ關スル事項
四 產業ニ關スル事項
五 警防ニ關スル事項
六 戶口民籍ニ關スル事項
七 賑恤救濟ニ關スル事項
八 前各號ノ外町村ノ公共ニ關スル事項
第三條 町村ニ住所ヲ有スル者ハ其ノ町村住民トス
町村住民ハ本令ニ從ヒ町村ノ財產及營造物ヲ共用スル權利ヲ有シ町村ノ負擔ヲ分任スル義務ヲ負フ
第四條 町村ハ町村住民ノ權利義務、町村ノ事務、町村ノ財產及營造物ニ關シ町村規則ヲ設クルコトヲ得
町村規則ハ一定ノ公告式ニ依リ之ヲ公告スヘシ
第五條 町村ハ役場ノ位置ヲ定メ又ハ之ヲ變更セムトスルトキハ樺太廳支廳長ノ認可ヲ受クヘシ
第二章 町村吏員
第六條 町村ニ町村長ノ外收入役一人ヲ置ク樺太廳支廳長之ヲ任免ス
樺太廳長官ハ特別ノ事情アル町村ニハ助役一人ヲ置クコトヲ得助役ハ樺太廳支廳長之ヲ任免ス
町村長、助役及收入役ハ有給吏員トス但シ町村長及助役ハ名譽職ト爲スコトヲ得
樺太廳長官ハ特別ノ事情アル町村ニ於テハ町村長ヲシテ收入役ノ事務ヲ兼掌セシムルコトヲ得
第七條 町村長、助役及收入役ノ任期ハ四年トス
第八條 町村ハ處務便宜ノ爲町村規則ヲ以テ區ノ劃シ區長ヲ置クコトヲ得
區長ハ名譽職トス町村住民中ヨリ樺太廳支廳長之ヲ命ス
第九條 町村ハ樺太廳支廳長ノ認可ヲ受ケ臨時又ハ常設ノ委員ヲ置クコトヲ得
委員ハ名譽職トス町村住民中ヨリ町村長之ヲ選任ス
委員長ハ町村長又ハ其ノ委任ヲ受ケタル助役若ハ委員ヲ以テ之ニ充ツ
第十條 前數條ニ定ムルモノノ外町村ニ必要ノ有給吏員ヲ置ク町村長之ヲ任免ス
前項ノ吏員ノ職名及定員ハ樺太廳支廳長ノ認可ヲ受ケ町村長之ヲ定ム
第十一條 町村長ハ町村吏員ヲ指揮監督シ其ノ任免スル町村吏員ニ對シ懲戒ヲ行フコトヲ得其ノ懲戒處分ハ譴責及五圓以下ノ過怠金トス
第十二條 町村長其ノ他町村吏員ハ法令ノ定ムル所ニ依リ國及公共團體ノ事務ヲ掌ル
第十三條 町村長ハ樺太廳支廳長ノ認可ヲ受ケ其ノ事務ノ一部ヲ助役又ハ區長ニ分掌セシムルコトヲ得
町村長ハ町村吏員ヲシテ其ノ事務ノ一部ヲ臨時代理セシムルコトヲ得
第十四條 町村長故障アルトキハ助役ヲ置ク場合ニ於テハ助役、助役ヲ置カサル場合又ハ助役亦故障アル場合ニ於テハ第十條ノ吏員中上席ノ者之ヲ代理ス
第十五條 助役ハ町村長ノ事務ヲ補助ス
第十六條 收入役ハ町村ノ出納其ノ他ノ會計事務竝第十二條ノ事務ニ依ル國及公共團體ノ出納其ノ他ノ會計事務ヲ掌ル但シ法令中別段ノ規定アルモノハ此ノ限ニ在ラス
町村長ハ樺太廳支廳長ノ認可ヲ受ケ收入役故障アルトキ之ヲ代理スヘキ吏員ヲ定ムヘシ
第十七條 父子兄弟タルノ緣故アル者ハ同時ニ町村長、助役及收入役ノ職ニ在ルコトヲ得ス
第十八條 有給町村長、有給助役及收入役ハ樺太廳長官ノ許可ヲ受クルニ非サレハ他ノ有給ノ職務ヲ兼任シ又ハ營業其ノ他ノ報償アル業務ニ從事スルコトヲ得ス
第十九條 區長ハ町村長ノ命ヲ承ケ町村長ノ事務ニシテ區內ニ關スルモノヲ補助ス
第二十條 委員ハ町村長ノ指揮監督ヲ承ケ其ノ委託ニ依リ財產若ハ營造物ヲ管理シ又ハ町村ノ事務ヲ調査シ若ハ處辨ス
第二十一條 第十條ノ吏員ハ町村長ノ命ヲ承ケ事務ニ從事ス
第三章 町村評議會
第二十二條 町村評議員ノ定數左ノ如シ
一 人口千五百未滿ノ町村 八人
二 人口千五百以上五千未滿ノ町村 十二人
三 人口五千以上一萬未滿ノ町村 十八人
四 人口一萬以上ノ町村 二十四人
樺太廳長官ハ特別ノ事情アル町村ニ對シテハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ前項ノ定數ヲ增減スルコトヲ得
町村評議員ノ定數ハ其ノ町村ノ評議員全員ヲ命スルトキニ非サレハ之ヲ增減セス但シ前項ノ場合ハ此ノ限ニ在ラス
第二十三條 町村評議員ノ任期ハ三年トス但シ補闕評議員ノ任期ハ前任者ノ殘任期間トス
町村評議員ノ定數ニ異動ヲ生シタル爲新ニ命セラレタル評議員ハ他ノ評議員ノ任期滿了ノ日迄在任ス
第二十四條 町村評議會ノ諮問ニ付スヘキ事件左ノ如シ
一 町村規則ノ制定又ハ改廢ニ關スルコト
二 町村費ヲ以テ支辨スヘキ事業ニ關スルコト但シ第十二條ノ事務及法律勅令ニ規定アルモノハ此ノ限ニ在ラス
三 歲入出豫算ノ決定ニ關スルコト
四 法令ニ定ムルモノヲ除クノ外町村稅、使用料、手數料又ハ夫役現品ノ賦課徵收ニ關スルコト
五 不動產ノ管理、處分及取得ニ關スルコト
六 基本財產及積立金穀等ノ設置、管理及處分ニ關スルコト
七 歲入出豫算ヲ以テ定ムルモノヲ除クノ外新ナル義務ノ負擔又ハ權利ノ抛棄ニ關スルコト
八 財產及營造物ノ管理方法ヲ定ムルコト但シ法律勅令ニ規定アルモノハ此ノ限ニ在ラス
九 町村吏員ノ身元保證ニ關スルコト
十 役場ノ位置ノ決定又ハ變更ニ關スルコト
十一 町村ニ係ル訴願、訴訟及和解ニ關スルコト
十二 前各號ノ外町村長ノ必要ト認ムル事件
第二十五條 町村評議會ハ町村ノ公益ニ關スル事件ニ付意見書ヲ町村長ニ又ハ町村長ヲ經テ監督官廳ニ提出スルコトヲ得
第二十六條 町村評議會ハ監督官廳ノ諮問アルトキハ町村長ヲ經テ意見ヲ答申スヘシ
第二十七條 町村評議會ノ議長ハ町村評議員中ヨリ樺太廳支廳長之ヲ命ス
議長故障アルトキハ出席評議員中ニ於テ互選シタル者其ノ職務ヲ代理ス
第二十八條 町村長及其ノ委任又ハ囑託ヲ受ケタル者ハ會議ニ列席シ議事ニ參與スルコトヲ得但シ可否ニ數ニ加ハルコトヲ得ス
第二十九條 町村評議會ハ町村長之ヲ招集ス
町村長必要ト認ムルトキハ會期ヲ定メテ町村評議會ヲ招集スルコトヲ得
招集及會議ノ事件ハ開會ノ日ヨリ少クトモ三日前ニ之ヲ告知スヘシ但シ急施ヲ要スル場合ハ此ノ限ニ在ラス
町村評議會開會中急施ヲ要スル事件アルトキハ町村長ハ直ニ之ヲ其ノ會議ニ付スルコトヲ得三日前迄ニ告知ヲ爲シタル事件ニ付亦同シ
町村評議會ハ町村長之ヲ開閉ス
第三十條 町村評議會ハ評議員定數ノ半數以上出席スルニ非サレハ會議ヲ開クコトヲ得ス但シ第三十二條ノ除斥ノ爲半數ニ滿タサルトキ又ハ招集ニ應スルモ出席評議員定數ヲ闕キ議長ニ於テ出席ヲ催告シ仍半數ニ滿タサルトキハ此ノ限ニ在ラス
第三十一條 町村評議會ノ議事ハ過半數ヲ以テ決ス可否同數ナルトキハ議長ノ決スル所ニ依ル
第三十二條 評議員ハ自己又ハ父母、祖父母、妻、子孫、兄弟姉妹ノ一身上ニ關スル事件ニ付テハ其ノ議事ニ參與スルコトヲ得ス但シ町村評議會ノ同意ヲ得タルトキハ會議ニ出席シ發言スルコトヲ得
第三十三條 町村評議會ノ會議ハ之ヲ公開ス但シ議長其ノ意見ヲ以テ傍聽ヲ禁止スルトキハ此ノ限ニ在ラス
議長ハ前項ノ規定ニ拘ラス町村長ノ要求アルトキハ傍聽ヲ禁止スヘシ
第三十四條 議長ハ會議ヲ總理シ會議ノ順序ヲ定メ其ノ日ノ會議ヲ開閉シ議場ノ秩序ヲ保持ス
第三十五條 町村評議會ニ書記ヲ置ク町村吏員中ヨリ町村長之ヲ命ス
書記ハ議長ノ命ヲ承ケ庶務ニ從事ス
第三十六條 議長ハ書記ヲシテ會議錄ヲ調製シ會議ノ顚末及出席評議員ノ氏名ヲ記載セシムヘシ
會議錄ニハ議長及出席評議員二人以上之ニ署名スヘシ其ノ評議員ハ町村評議會ニ於テ之ヲ定ムヘシ
第三十七條 町村評議會ハ樺太廳支廳長ノ認可ヲ受ケ會議規則及傍聽人取締規則ヲ設クルコトヲ得
第三十八條 町村評議會ノ諮問ニ付スヘキ事件ニシテ輕易ナルモノハ町村評議會ヲ開カス町村長ニ於テ書面ヲ以テ町村評議員ノ意見ヲ徵スルコトヲ得
第三十一條ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第三十九條 町村長ハ町村評議會成立セス、招集ニ應セス若ハ意見ヲ開申セサルトキ又ハ町村評議會ヲ招集スルコト能ハサルトキ若ハ招集スルノ暇ナシト認ムルトキハ其ノ意見ヲ俟タスシテ直ニ處分ヲ爲スコトヲ得前條ノ規定ニ依リ書面ヲ以テ町村評議員ノ意見ヲ徵スル場合ニ於テ評議員定數ノ半數以上ノ意見答申ナキトキ亦同シ町村長ハ前項ノ規定ニ依リテ處分シタル事件ヲ次囘ノ會議ニ於テ町村評議會ニ報告スヘシ
第一項ノ規定ハ監督官廳カ町村評議會ノ意見ヲ徵シテ處分ヲ爲スヘキ場合ニ之ヲ準用ス
第四章 給料及給與
第四十條 有給町村長ノ給料額、旅費額及其ノ支給方法ハ樺太廳長官、有給助役及收入役ノ給料額、旅費額及其ノ支給方法ハ樺太廳支廳長、第十條ノ吏員ノ給料額、旅費額及其ノ支給方法ハ町村評議會ノ諮問ヲ經樺太廳支廳長ノ認可ヲ受ケ町村長之ヲ定ム
第四十一條 有給町村長其ノ他ノ有給吏員ニハ町村規則ノ定ムル所ニ依リ退隱料、退職給與金、遺族扶助料又ハ死亡給與金ヲ給スルコトヲ得
退隱料、退職給與金、遺族扶助料又ハ死亡給與金ノ給與ニ付關係者ニ於テ異議アルトキハ之ヲ町村長ニ申立ツルコトヲ得
前項ノ異議ハ町村長之ヲ決定ス其ノ決定ニ不服アルトキハ樺太廳支廳長ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アルトキハ樺太廳長官ニ訴願スルコトヲ得
前項ノ裁決ニ付テハ町村長ヨリモ訴願ヲ提起スルコトヲ得
第四十二條 名譽職町村長其ノ他ノ名譽職吏員及町村評議員ハ職務ノ爲要スル費用ノ辨償ヲ受クルコトヲ得
名譽職町村長其ノ他ノ名譽職吏員ニハ費用辨償ノ外勤務ニ相當スル報酬ヲ給スルコトヲ得
費用辨償額、報酬額及其ノ支給方法ハ町村評議會ノ諮問ヲ經樺太廳支廳長ノ認可ヲ得テ町村長之ヲ定ム
第四十三條 給料、旅費、退隱料、退職給與金、遺族扶助料、死亡給與金、費用辨償、報酬其ノ他ノ給與ハ町村ノ負擔トス但シ町村長ノ給料ハ國庫ノ支辨トス
第五章 町村ノ財務
第四十四條 收益ノ爲ニスル町村ノ財產ハ基本財產トシ之ヲ維持スヘシ
町村ハ特定ノ目的ノ爲基本財產ヲ設ケ又ハ金穀等ヲ積立ツルコトヲ得
樺太廳長官ハ必要ト認ムルトキハ額ヲ定メテ基本財產ノ蓄積ヲ命スルコトヲ得
第四十五條 町村ハ其ノ公益上必要アル場合ニ於テハ寄附又ハ補助ヲ爲スコトヲ得
第四十六條 第二條ノ事務ニ關スル費用及第十二條ノ事務ヲ執行スル爲必要ナル費用ハ之ヲ町村ノ負擔トス但シ法令ニ別段ノ規定アルモノハ此ノ限ニ在ラス
第四十七條 町村稅トシテ賦課スルコトヲ得ヘキモノ左ノ如シ
一 國稅ノ附加稅
二 特別稅
國稅ノ附加稅ハ均一ノ稅率ヲ以テ之ヲ徵收スヘシ但シ第七十三條ノ規定ニ依リ認可ヲ受ケタル場合ハ此ノ限ニ在ラス
特別稅ノ種類ハ樺太廳長官之ヲ定ム
第四十八條 三月以上町村內ニ滯在スル者ハ其ノ滯在ノ初ニ遡リ町村稅ヲ納ムル義務ヲ負フ
町村內ニ住所ヲ有セス又ハ三月以上滯在スルコトナシト雖町村內ニ於テ土地家屋物件ヲ所有シ使用シ若ハ占有シ、町村內ニ營業所ヲ設ケテ營業ヲ爲シ又ハ町村內ニ於テ特定ノ行爲ヲ爲ス者ハ其ノ土地家屋物件營業若ハ其ノ收入ニ對シ又ハ其ノ行爲ニ對シテ賦課スル町村稅ヲ納ムル義務ヲ負フ
第四十九條 納稅者ノ町村外ニ於テ所有シ使用シ占有スル土地家屋物件若ハ其ノ收入又ハ町村外ニ於テ營業所ヲ設ケタル營業若ハ其ノ收入ニ對シテハ町村稅ヲ賦課スルコトヲ得ス
第五十條 國又ハ公共團體ノ直接ノ公用ニ供スル土地家屋物件及營造物ニ對シテハ町村稅ヲ賦課スルコトヲ得ス但シ有料ニテ之ヲ使用セシムル者及使用收益者ニ對シテハ此ノ限ニ在ラス
國ノ事業又ハ行爲及國有ノ土地家屋物件ニ對シテハ國ニ町村稅ヲ賦課スルコトヲ得ス
神社寺院ノ用ニ供スル建物及其ノ境內地竝布敎所ノ用ニ供スル建物及其ノ構內地ニ對シテハ町村稅ヲ賦課スルコトヲ得ス但シ有料ニテ之ヲ使用セシムル者及住宅ヲ以テ布敎所ノ用ニ充ツル者ニ對シテハ此ノ限ニ在ラス
土人ノ營業又ハ行爲及土人所有ノ土地家屋物件ニ對シテハ土人ニ町村稅ヲ賦課スルコトヲ得ス
第五十一條 左ノ各號ノ一ニ該當スル所得ニ對シテハ町村稅ヲ賦課スルコトヲ得ス
一 軍人從軍中ノ俸給及手當
二 扶助料及傷痍疾病者ノ恩給又ハ退隱料
三 旅費、學資金及法定扶養料
四 郵便貯金、產業組合貯金及銀行貯蓄預金ノ利子
五 營利ノ事業ニ屬セサル一時ノ所得
六 乘馬ヲ有スル義務アル軍人カ政府ヨリ受クル馬糧、繫畜料及馬匹保續料
第五十二條 前三條ノ外町村稅ヲ賦課スルコトヲ得サルモノハ別ニ主務大臣ノ定ムル所ニ依ル
第五十三條 住所滯在數町村ニ涉ル者ノ收入ニシテ土地家屋物件又ハ營業所ヲ設ケタル營業ヨリ生スル收入ニ非サルモノニ對シ町村稅ヲ賦課スルトキハ其ノ收入ヲ各町村ニ平分シ其ノ一部ニノミ賦課スヘシ
數町村ニ涉リ營業所ヲ設ケ營業ヲ爲ス者ニシテ其ノ營業又ハ收入ニ對スル本稅ヲ分別シテ納メサルモノニ對シ附加稅ヲ賦課スルトキハ樺太廳長官ノ定ムル所ニ依リ其ノ本稅額ヲ各町村ニ分割シ其ノ一部ニノミ賦課スヘシ
第五十四條 數人ヲ利スル營造物ノ設置、維持其ノ他ノ必要ナル費用ハ其ノ關係者ニ負擔セシムルコトヲ得
町村一部ヲ利スル營造物ノ設置、維持其ノ他ノ必要ナル費用ハ其ノ部內ニ於テ町村稅ヲ納ムル義務アル者ニ負擔セシムルコトヲ得
前二項ノ場合ニ於テ營造物ヨリ生スル收入アルトキハ先ツ其ノ收入ヲ以テ其ノ費用ニ充ツヘシ前項ノ場合ニ於テ其ノ一部ノ收入アルトキ亦同シ
數人又ハ町村ノ一部ヲ利スル財產ニ付テハ前三項ノ例ニ依ル
第五十五條 數人又ハ町村ノ一部ニ對シ特ニ利益アル事件ニ關シテハ町村ハ不均一ノ賦課ヲ爲シ又ハ數人若ハ町村ノ一部ニ對シ賦課ヲ爲スコトヲ得
第五十六條 町村稅ノ賦課ニ關シ調査上必要アル場合ニ於テハ當該吏員ハ納稅義務者又ハ納稅義務アリト認ムル者ニ就キ日出ヨリ日沒迄ノ間營業者ニ付テハ仍其ノ營業時間內家宅若ハ營業所ニ臨檢シ又ハ帳簿物件ノ檢査ヲ爲スコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ當該吏員ハ其ノ身分ヲ證明スヘキ證票ヲ携帶スヘシ
第五十七條 町村稅ノ賦課徵收ニ關シテハ本令ニ規定アルモノノ外必要ナル事項ハ樺太廳長官之ヲ定ム
第五十八條 夫役又ハ現品ハ直接町村稅ヲ準率ト爲シ直接町村稅ヲ賦課セサル町村ニ於テハ直接國稅ヲ準率ト爲シ且之ヲ金額ニ算出シテ賦課スヘシ但シ第七十四條ノ規定ニ依リ認可ヲ受ケタル場合ハ此ノ限ニ在ラス
學藝、美術及手工ニ關スル勞務ニ付テハ夫役ヲ賦課スルコトヲ得ス
夫役ヲ賦課セラレタル者ハ本人自ラ之ニ當リ又ハ適當ノ代人ヲ出スコトヲ得
夫役又ハ現品ハ金錢ヲ以テ之ニ代フルコトヲ得
第一項及前項ノ規定ハ急迫ノ場合ニ賦課スル夫役ニ付テハ之ヲ適用セス
第五十九條 非常災害ノ爲必要アルトキハ町村ハ他人ノ土地ヲ一時使用シ又ハ其ノ土石竹木其ノ他ノ物品ヲ使用シ若ハ收用スルコトヲ得但シ其ノ損失ヲ補償スヘシ
前項ノ場合ニ於テ危險防止ノ爲必要アルトキハ町村長、警察官吏又ハ監督官廳ハ町村內ノ居住者ヲシテ防禦ニ從事セシムルコトヲ得
第一項但書ノ規定ニ依リ補償スヘキ金額ハ協議ニ依リ之ヲ定ム協議調ハサルトキハ鑑定人ノ意見ヲ徵シ樺太廳支廳長之ヲ決定ス決定ヲ受ケタル者其ノ決定ニ不服アルトキハ樺太廳長官ニ訴願スルコトヲ得
前項ノ決定ハ文書ヲ以テ之ヲ爲シ其ノ理由ヲ附シ之ヲ本人ニ交付スヘシ
第六十條 町村長ハ特別ノ事情アル者ニ對シ町村評議會ノ諮問ヲ經テ町村稅ヲ減免シ又ハ納稅ノ延期ヲ許スコトヲ得但シ當該年度內ノ納稅延期ニ付テハ町村評議會ノ諮問ヲ經ルコトヲ要セス
第六十一條 町村稅ノ賦課ヲ受ケタル者其ノ賦課ニ付違法又ハ錯誤アリト認ムルトキハ徵稅令書ノ交付ヲ受ケタル日ヨリ三月以內ニ町村長ニ異議ノ申立ヲ爲スコトヲ得
財產又ハ營造物ヲ使用スル權利ニ關シ異議アル者ハ之ヲ町村長ニ申立ツルコトヲ得
前二項ノ異議ハ町村長之ヲ決定ス其ノ決定ニ不服アルトキハ樺太廳支廳長ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アルトキハ樺太廳長官ニ訴願シ其ノ裁決又ハ第五項ノ裁決ニ不服アルトキハ主務大臣ニ訴願スルコトヲ得
第一項及前項ノ規定ハ使用料及手數料ノ徵收竝夫役現品ノ賦課ニ關シ之ヲ準用ス
前二項ノ規定ニ依ル裁決ニ付テハ町村長ヨリモ訴願ヲ提起スルコトヲ得
第六十二條 使用料、手數料及特別稅ニ關スル事項ハ町村規則ヲ以テ之ヲ規定スヘシ其ノ規則中ニハ十圓以下ノ過料ヲ科スル規定ヲ設クルコトヲ得
財產又ハ營造物ノ使用ニ關シテハ町村規則ヲ以テ十圓以下ノ過料ヲ科スル規定ヲ設クルコトヲ得
過料ノ處分ヲ受ケタル者其ノ處分ニ不服アルトキハ樺太廳支廳長ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アルトキハ樺太廳長官ニ訴願スルコトヲ得
前項ノ裁決ニ付テハ町村長ヨリモ訴願ヲ提起スルコトヲ得
第六十三條 町村稅、使用料、手數料、過料、過怠金其ノ他ノ町村ノ收入ヲ定期內ニ納メサル者アルトキハ町村長ハ期限ヲ指定シテ之ヲ督促スヘシ
夫役現品ノ賦課ヲ受ケタル者定期內ニ其ノ履行ヲ爲サス又ハ夫役現品ニ代フル金錢ヲ納メサルトキハ町村長ハ期限ヲ指定シテ之ヲ督促スヘシ急迫ノ場合ニ賦課シタル夫役ニ付テハ更ニ之ヲ金額ニ算出シ期限ヲ指定シテ其ノ納付ヲ命スヘシ
前二項ノ場合ニ於テハ町村規則ノ定ムル所ニ依リ手數料ヲ徵收スルコトヲ得
滯納者第一項又ハ第二項ノ督促又ハ命令ヲ受ケ其ノ指定ノ期限內ニ之ヲ完納セサルトキハ國稅徵收ノ例ニ依リ之ヲ處分スヘシ
第一項乃至第三項ノ徵收金ハ國稅ニ次テ先取特權ヲ有シ其ノ追徵、還付及時效ニ付テハ國稅ノ例ニ依ル
前三項ノ處分ヲ受ケタル者其ノ處分ニ不服アルトキハ樺太廳支廳長ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アルトキハ樺太廳長官ニ訴願スルコトヲ得
前項ノ裁決ニ付テハ町村長ヨリモ訴願ヲ提起スルコトヲ得
第四項ノ處分中差押物件ノ公賣ハ處分ノ確定ニ至ル迄執行ヲ停止ス
第六十四條 町村長ハ每會計年度歲入出豫算ヲ調製シ年度開始ノ一月前迄ニ町村評議會ノ諮問ヲ經ヘシ
町村ノ會計年度ハ政府ノ會計年度ニ依ル
町村長ハ町村評議會ノ諮問ヲ經テ旣定豫算ノ追加又ハ更正ヲ爲スコトヲ得
町村費ヲ以テ支辨スル事件ニシテ數年ヲ期シテ其ノ費用ヲ支出スヘキモノハ其ノ年期間各年度ノ支出額ヲ定メ繼續費ト爲スコトヲ得
町村ハ豫算外ノ支出又ハ豫算超過ノ支出ニ充ツル爲豫備費ヲ設クヘシ但シ特別會計ニハ之ヲ設ケサルコトヲ得
町村ハ町村規則ヲ以テ特別會計ヲ設クルコトヲ得
豫算ハ樺太廳支廳長ニ報告シ且其ノ要領ヲ告示スヘシ
第六十五條 町村長ハ豫算ノ謄本ヲ收入役ニ交付スヘシ
收入役ハ町村長又ハ監督官廳ノ命令アルニ非サレハ支拂ヲ爲スコトヲ得ス命令アルモ支出ノ豫算ナク且豫備費支出、費目流用其ノ他財務ニ關スル規定ニ依リ支出ヲ爲スコトヲ得サルトキ亦同シ
前二項ノ規定ハ收入役ノ事務ヲ兼掌スル町村長ニ之ヲ準用ス
第六十六條 町村ノ支拂金ニ關スル時效ニ付テハ政府ノ支拂金ノ例ニ依ル
第六十七條 町村ノ出納ハ隔月之ヲ檢査シ且每會計年度一囘以上臨時檢査ヲ爲スヘシ
檢査ハ町村長之ヲ爲シ臨時檢査ニハ町村評議會ニ於テ互選シタル評議員二人以上ノ立會ヲ要ス
第六十八條 町村ノ出納ハ翌年度七月三十一日ヲ以テ閉鎖ス
決算ハ出納閉鎖後一月以內ニ證書類ト共ニ收入役ヨリ之ヲ町村長ニ提出スヘシ町村長之ヲ審査シ意見ヲ附シテ樺太廳支廳長及次ノ通常豫算ヲ諮問スル會議迄ニ町村評議會ニ報告スヘシ但シ町村長ニ於テ收入役ノ事務ヲ兼掌シタルトキハ意見ヲ附スルコトヲ要セス
町村長ハ前項ノ報告ヲ爲シタル後直ニ其ノ要領ヲ告示スヘシ
第六十九條 豫算調製ノ式、費目流用其ノ他財務ニ關シ必要ナル規定ハ樺太廳長官之ヲ定ム
第六章 町村ノ監督
第七十條 町村ハ第一次ニ於テ樺太廳支廳長、第二次ニ於テ樺太廳長官、第三次ニ於テ主務大臣之ヲ監督ス
監督官廳ハ町村ノ監督上必要ナル命令ヲ發シ又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
監督官廳ハ町村ノ監督上必要アル場合ニ於テハ事務ノ報告ヲ爲サシメ、書類帳簿ヲ徵シ及實地ニ就キ事務ヲ視察シ又ハ出納ヲ檢閱スルコトヲ得
第七十一條 異議ノ申立又ハ訴願ノ提起ハ處分決定又ハ裁決アリタル日ヨリ三十日以內ニ之ヲ爲スヘシ但シ本令中別ニ期間ヲ定メタルモノハ此ノ限ニ在ラス
異議ノ申立ニ關スル期間ノ計算ニ付テハ訴願法ノ規定ニ依ル
異議ノ申立ハ期限經過後ニ於テモ宥恕スヘキ事由アリト認ムルトキハ仍之ヲ受理スルコトヲ得
異議ノ決定ハ文書ヲ以テ之ヲ爲シ其ノ理由ヲ附シ之ヲ申立人ニ交付スヘシ
異議ノ申立アルモ處分ノ執行ハ之ヲ停止セス但シ行政廳ハ其ノ職權ニ依リ又ハ關係者ノ請求ニ依リ必要ト認ムルトキハ之ヲ停止スルコトヲ得
第七十二條 町村ニ於テ法令ニ依リ負擔シ又ハ監督官廳ノ職權ニ依リ命スル費用ヲ豫算ニ載セサルトキハ樺太廳支廳長ハ理由ヲ示シテ其ノ費用ヲ豫算ニ加フルコトヲ得
樺太廳支廳長ハ町村ノ豫算中不適當ノ支出ト認ムルモノアルトキハ樺太廳長官ノ認可ヲ受ケ理由ヲ示シテ之ヲ削減スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ之ニ相當スル收入ヲ削減スヘシ
第七十三條 左ニ揭クル事件ハ樺太廳長官ノ認可ヲ受クヘシ
一 町村規則ヲ設ケ又ハ改廢スルコト
二 基本財產及積立金穀等ノ管理及處分ニ關スルコト
三 借入金ヲ爲シ竝借入ノ方法、利息ノ定率及償還方法ヲ定メ又ハ變更スルコト但シ年度內ノ收入ヲ以テ償還スヘキ一時ノ借入金ハ此ノ限ニ在ラス
四 特別稅ヲ新設シ增額シ又ハ變更スルコト
五 直接國稅二分ノ一ヲ超過スル附加稅ヲ賦課スルコト
六 間接國稅ノ附加稅ヲ賦課スルコト
七 均一ノ稅率ニ依ラスシテ國稅ノ附加稅ヲ賦課スルコト
八 使用料及手數料ヲ新設シ增額シ又ハ變更スルコト
九 學藝、美術又ハ歷史上貴重ナル物件ヲ處分シ又ハ之ニ大ナル變更ヲ加フルコト
第七十四條 左ニ揭クル事件ハ樺太廳支廳長ノ認可ヲ受クヘシ
一 寄附又ハ補助ヲ爲スコト
二 不動產ノ管理及處分ニ關スルコト
三 第五十四條第一項第二項及第四項ノ規定ニ依リ數人又ハ町村ノ一部ニ費用ヲ負擔セシムルコト
四 第五十五條ノ規定ニ依リ不均一ノ賦課ヲ爲シ又ハ數人若ハ町村ノ一部ニ對シ賦課ヲ爲スコト
五 第五十八條ノ準率ニ依ラスシテ夫役現品ヲ賦課スルコト但シ急迫ノ場合ニ賦課スル夫役ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
六 繼續費ヲ定メ又ハ變更スルコト
七 豫備費ノ支出ニ關スルコト
第七十五條 監督官廳ノ認可ヲ要スル事件ニ付テハ監督官廳ハ認可申請ノ趣旨ニ反セスト認ムル範圍內ニ於テ更正シテ認可ヲ與フルコトヲ得
第七十六條 監督官廳ハ其ノ認可ヲ要スル事件中輕易ナルモノハ其ノ認可ノ權限ヲ下級監督官廳ニ委任シ又ハ認可ヲ受ケシメサルコトヲ得
第七十七條 樺太廳長官又ハ樺太廳支廳長ハ町村長、助役、收入役、區長、委員其ノ他ノ町村吏員ニ對シ懲戒ヲ行フコトヲ得其ノ懲戒處分ハ譴責、三十圓以下ノ過怠金及解職トス但シ町村長、助役及收入役ニ對スル解職ハ主務大臣ノ定ムル所ニ依リ懲戒審査會ノ議決ヲ經テ樺太廳長官之ヲ行フ
樺太廳長官ハ町村長、助役及收入役ノ解職ヲ行ハムトスル前其ノ停職ヲ命スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ其ノ停職期間給料ヲ支給セス
第七十八條 町村吏員ノ服務規律、賠償責任、身元保證及事務引繼ニ關スル規定ハ樺太廳長官之ヲ定ム
前項ノ規定ニハ事務引繼ヲ拒ミタル者ニ對シ三十圓以下ノ過料ヲ科スル規定ヲ設クルコトヲ得
第七章 雜則
第七十九條 第二十二條ノ人口ハ樺太廳長官ノ定ムル所ニ依ル
第八十條 本令ニ於ケル直接稅及間接稅ノ種類ハ樺太廳長官之ヲ定ム
第八十一條 町村ノ廢置分合又ハ境界變更アリタル場合ニ於ケル町村ノ財產處分其ノ他ノ事務ニ付必要ナル事項ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ樺太廳長官之ヲ定ム
附 則
本令ハ大正十年法律第四十七號施行ノ日ヨリ之ヲ施行ス
本令施行ノ際必要ナル規定ハ樺太廳長官之ヲ定ム
朕樺太町村制ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
摂政名
大正十一年一月二十一日
内閣総理大臣 子爵 高橋是清
勅令第八号
樺太町村制
第一章 総則
第一条 本令ハ大正十年法律第四十七号ニ依ル町村ニ之ヲ適用ス
第二条 町村ハ法令ノ範囲内ニ於テ左ノ事務ヲ処理ス
一 教育ニ関スル事項
二 衛生ニ関スル事項
三 土木交通ニ関スル事項
四 産業ニ関スル事項
五 警防ニ関スル事項
六 戸口民籍ニ関スル事項
七 賑恤救済ニ関スル事項
八 前各号ノ外町村ノ公共ニ関スル事項
第三条 町村ニ住所ヲ有スル者ハ其ノ町村住民トス
町村住民ハ本令ニ従ヒ町村ノ財産及営造物ヲ共用スル権利ヲ有シ町村ノ負担ヲ分任スル義務ヲ負フ
第四条 町村ハ町村住民ノ権利義務、町村ノ事務、町村ノ財産及営造物ニ関シ町村規則ヲ設クルコトヲ得
町村規則ハ一定ノ公告式ニ依リ之ヲ公告スヘシ
第五条 町村ハ役場ノ位置ヲ定メ又ハ之ヲ変更セムトスルトキハ樺太庁支庁長ノ認可ヲ受クヘシ
第二章 町村吏員
第六条 町村ニ町村長ノ外収入役一人ヲ置ク樺太庁支庁長之ヲ任免ス
樺太庁長官ハ特別ノ事情アル町村ニハ助役一人ヲ置クコトヲ得助役ハ樺太庁支庁長之ヲ任免ス
町村長、助役及収入役ハ有給吏員トス但シ町村長及助役ハ名誉職ト為スコトヲ得
樺太庁長官ハ特別ノ事情アル町村ニ於テハ町村長ヲシテ収入役ノ事務ヲ兼掌セシムルコトヲ得
第七条 町村長、助役及収入役ノ任期ハ四年トス
第八条 町村ハ処務便宜ノ為町村規則ヲ以テ区ノ画シ区長ヲ置クコトヲ得
区長ハ名誉職トス町村住民中ヨリ樺太庁支庁長之ヲ命ス
第九条 町村ハ樺太庁支庁長ノ認可ヲ受ケ臨時又ハ常設ノ委員ヲ置クコトヲ得
委員ハ名誉職トス町村住民中ヨリ町村長之ヲ選任ス
委員長ハ町村長又ハ其ノ委任ヲ受ケタル助役若ハ委員ヲ以テ之ニ充ツ
第十条 前数条ニ定ムルモノノ外町村ニ必要ノ有給吏員ヲ置ク町村長之ヲ任免ス
前項ノ吏員ノ職名及定員ハ樺太庁支庁長ノ認可ヲ受ケ町村長之ヲ定ム
第十一条 町村長ハ町村吏員ヲ指揮監督シ其ノ任免スル町村吏員ニ対シ懲戒ヲ行フコトヲ得其ノ懲戒処分ハ譴責及五円以下ノ過怠金トス
第十二条 町村長其ノ他町村吏員ハ法令ノ定ムル所ニ依リ国及公共団体ノ事務ヲ掌ル
第十三条 町村長ハ樺太庁支庁長ノ認可ヲ受ケ其ノ事務ノ一部ヲ助役又ハ区長ニ分掌セシムルコトヲ得
町村長ハ町村吏員ヲシテ其ノ事務ノ一部ヲ臨時代理セシムルコトヲ得
第十四条 町村長故障アルトキハ助役ヲ置ク場合ニ於テハ助役、助役ヲ置カサル場合又ハ助役亦故障アル場合ニ於テハ第十条ノ吏員中上席ノ者之ヲ代理ス
第十五条 助役ハ町村長ノ事務ヲ補助ス
第十六条 収入役ハ町村ノ出納其ノ他ノ会計事務並第十二条ノ事務ニ依ル国及公共団体ノ出納其ノ他ノ会計事務ヲ掌ル但シ法令中別段ノ規定アルモノハ此ノ限ニ在ラス
町村長ハ樺太庁支庁長ノ認可ヲ受ケ収入役故障アルトキ之ヲ代理スヘキ吏員ヲ定ムヘシ
第十七条 父子兄弟タルノ縁故アル者ハ同時ニ町村長、助役及収入役ノ職ニ在ルコトヲ得ス
第十八条 有給町村長、有給助役及収入役ハ樺太庁長官ノ許可ヲ受クルニ非サレハ他ノ有給ノ職務ヲ兼任シ又ハ営業其ノ他ノ報償アル業務ニ従事スルコトヲ得ス
第十九条 区長ハ町村長ノ命ヲ承ケ町村長ノ事務ニシテ区内ニ関スルモノヲ補助ス
第二十条 委員ハ町村長ノ指揮監督ヲ承ケ其ノ委託ニ依リ財産若ハ営造物ヲ管理シ又ハ町村ノ事務ヲ調査シ若ハ処弁ス
第二十一条 第十条ノ吏員ハ町村長ノ命ヲ承ケ事務ニ従事ス
第三章 町村評議会
第二十二条 町村評議員ノ定数左ノ如シ
一 人口千五百未満ノ町村 八人
二 人口千五百以上五千未満ノ町村 十二人
三 人口五千以上一万未満ノ町村 十八人
四 人口一万以上ノ町村 二十四人
樺太庁長官ハ特別ノ事情アル町村ニ対シテハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ前項ノ定数ヲ増減スルコトヲ得
町村評議員ノ定数ハ其ノ町村ノ評議員全員ヲ命スルトキニ非サレハ之ヲ増減セス但シ前項ノ場合ハ此ノ限ニ在ラス
第二十三条 町村評議員ノ任期ハ三年トス但シ補闕評議員ノ任期ハ前任者ノ残任期間トス
町村評議員ノ定数ニ異動ヲ生シタル為新ニ命セラレタル評議員ハ他ノ評議員ノ任期満了ノ日迄在任ス
第二十四条 町村評議会ノ諮問ニ付スヘキ事件左ノ如シ
一 町村規則ノ制定又ハ改廃ニ関スルコト
二 町村費ヲ以テ支弁スヘキ事業ニ関スルコト但シ第十二条ノ事務及法律勅令ニ規定アルモノハ此ノ限ニ在ラス
三 歳入出予算ノ決定ニ関スルコト
四 法令ニ定ムルモノヲ除クノ外町村税、使用料、手数料又ハ夫役現品ノ賦課徴収ニ関スルコト
五 不動産ノ管理、処分及取得ニ関スルコト
六 基本財産及積立金穀等ノ設置、管理及処分ニ関スルコト
七 歳入出予算ヲ以テ定ムルモノヲ除クノ外新ナル義務ノ負担又ハ権利ノ抛棄ニ関スルコト
八 財産及営造物ノ管理方法ヲ定ムルコト但シ法律勅令ニ規定アルモノハ此ノ限ニ在ラス
九 町村吏員ノ身元保証ニ関スルコト
十 役場ノ位置ノ決定又ハ変更ニ関スルコト
十一 町村ニ係ル訴願、訴訟及和解ニ関スルコト
十二 前各号ノ外町村長ノ必要ト認ムル事件
第二十五条 町村評議会ハ町村ノ公益ニ関スル事件ニ付意見書ヲ町村長ニ又ハ町村長ヲ経テ監督官庁ニ提出スルコトヲ得
第二十六条 町村評議会ハ監督官庁ノ諮問アルトキハ町村長ヲ経テ意見ヲ答申スヘシ
第二十七条 町村評議会ノ議長ハ町村評議員中ヨリ樺太庁支庁長之ヲ命ス
議長故障アルトキハ出席評議員中ニ於テ互選シタル者其ノ職務ヲ代理ス
第二十八条 町村長及其ノ委任又ハ嘱託ヲ受ケタル者ハ会議ニ列席シ議事ニ参与スルコトヲ得但シ可否ニ数ニ加ハルコトヲ得ス
第二十九条 町村評議会ハ町村長之ヲ招集ス
町村長必要ト認ムルトキハ会期ヲ定メテ町村評議会ヲ招集スルコトヲ得
招集及会議ノ事件ハ開会ノ日ヨリ少クトモ三日前ニ之ヲ告知スヘシ但シ急施ヲ要スル場合ハ此ノ限ニ在ラス
町村評議会開会中急施ヲ要スル事件アルトキハ町村長ハ直ニ之ヲ其ノ会議ニ付スルコトヲ得三日前迄ニ告知ヲ為シタル事件ニ付亦同シ
町村評議会ハ町村長之ヲ開閉ス
第三十条 町村評議会ハ評議員定数ノ半数以上出席スルニ非サレハ会議ヲ開クコトヲ得ス但シ第三十二条ノ除斥ノ為半数ニ満タサルトキ又ハ招集ニ応スルモ出席評議員定数ヲ闕キ議長ニ於テ出席ヲ催告シ仍半数ニ満タサルトキハ此ノ限ニ在ラス
第三十一条 町村評議会ノ議事ハ過半数ヲ以テ決ス可否同数ナルトキハ議長ノ決スル所ニ依ル
第三十二条 評議員ハ自己又ハ父母、祖父母、妻、子孫、兄弟姉妹ノ一身上ニ関スル事件ニ付テハ其ノ議事ニ参与スルコトヲ得ス但シ町村評議会ノ同意ヲ得タルトキハ会議ニ出席シ発言スルコトヲ得
第三十三条 町村評議会ノ会議ハ之ヲ公開ス但シ議長其ノ意見ヲ以テ傍聴ヲ禁止スルトキハ此ノ限ニ在ラス
議長ハ前項ノ規定ニ拘ラス町村長ノ要求アルトキハ傍聴ヲ禁止スヘシ
第三十四条 議長ハ会議ヲ総理シ会議ノ順序ヲ定メ其ノ日ノ会議ヲ開閉シ議場ノ秩序ヲ保持ス
第三十五条 町村評議会ニ書記ヲ置ク町村吏員中ヨリ町村長之ヲ命ス
書記ハ議長ノ命ヲ承ケ庶務ニ従事ス
第三十六条 議長ハ書記ヲシテ会議録ヲ調製シ会議ノ顛末及出席評議員ノ氏名ヲ記載セシムヘシ
会議録ニハ議長及出席評議員二人以上之ニ署名スヘシ其ノ評議員ハ町村評議会ニ於テ之ヲ定ムヘシ
第三十七条 町村評議会ハ樺太庁支庁長ノ認可ヲ受ケ会議規則及傍聴人取締規則ヲ設クルコトヲ得
第三十八条 町村評議会ノ諮問ニ付スヘキ事件ニシテ軽易ナルモノハ町村評議会ヲ開カス町村長ニ於テ書面ヲ以テ町村評議員ノ意見ヲ徴スルコトヲ得
第三十一条ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第三十九条 町村長ハ町村評議会成立セス、招集ニ応セス若ハ意見ヲ開申セサルトキ又ハ町村評議会ヲ招集スルコト能ハサルトキ若ハ招集スルノ暇ナシト認ムルトキハ其ノ意見ヲ俟タスシテ直ニ処分ヲ為スコトヲ得前条ノ規定ニ依リ書面ヲ以テ町村評議員ノ意見ヲ徴スル場合ニ於テ評議員定数ノ半数以上ノ意見答申ナキトキ亦同シ町村長ハ前項ノ規定ニ依リテ処分シタル事件ヲ次回ノ会議ニ於テ町村評議会ニ報告スヘシ
第一項ノ規定ハ監督官庁カ町村評議会ノ意見ヲ徴シテ処分ヲ為スヘキ場合ニ之ヲ準用ス
第四章 給料及給与
第四十条 有給町村長ノ給料額、旅費額及其ノ支給方法ハ樺太庁長官、有給助役及収入役ノ給料額、旅費額及其ノ支給方法ハ樺太庁支庁長、第十条ノ吏員ノ給料額、旅費額及其ノ支給方法ハ町村評議会ノ諮問ヲ経樺太庁支庁長ノ認可ヲ受ケ町村長之ヲ定ム
第四十一条 有給町村長其ノ他ノ有給吏員ニハ町村規則ノ定ムル所ニ依リ退隠料、退職給与金、遺族扶助料又ハ死亡給与金ヲ給スルコトヲ得
退隠料、退職給与金、遺族扶助料又ハ死亡給与金ノ給与ニ付関係者ニ於テ異議アルトキハ之ヲ町村長ニ申立ツルコトヲ得
前項ノ異議ハ町村長之ヲ決定ス其ノ決定ニ不服アルトキハ樺太庁支庁長ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アルトキハ樺太庁長官ニ訴願スルコトヲ得
前項ノ裁決ニ付テハ町村長ヨリモ訴願ヲ提起スルコトヲ得
第四十二条 名誉職町村長其ノ他ノ名誉職吏員及町村評議員ハ職務ノ為要スル費用ノ弁償ヲ受クルコトヲ得
名誉職町村長其ノ他ノ名誉職吏員ニハ費用弁償ノ外勤務ニ相当スル報酬ヲ給スルコトヲ得
費用弁償額、報酬額及其ノ支給方法ハ町村評議会ノ諮問ヲ経樺太庁支庁長ノ認可ヲ得テ町村長之ヲ定ム
第四十三条 給料、旅費、退隠料、退職給与金、遺族扶助料、死亡給与金、費用弁償、報酬其ノ他ノ給与ハ町村ノ負担トス但シ町村長ノ給料ハ国庫ノ支弁トス
第五章 町村ノ財務
第四十四条 収益ノ為ニスル町村ノ財産ハ基本財産トシ之ヲ維持スヘシ
町村ハ特定ノ目的ノ為基本財産ヲ設ケ又ハ金穀等ヲ積立ツルコトヲ得
樺太庁長官ハ必要ト認ムルトキハ額ヲ定メテ基本財産ノ蓄積ヲ命スルコトヲ得
第四十五条 町村ハ其ノ公益上必要アル場合ニ於テハ寄附又ハ補助ヲ為スコトヲ得
第四十六条 第二条ノ事務ニ関スル費用及第十二条ノ事務ヲ執行スル為必要ナル費用ハ之ヲ町村ノ負担トス但シ法令ニ別段ノ規定アルモノハ此ノ限ニ在ラス
第四十七条 町村税トシテ賦課スルコトヲ得ヘキモノ左ノ如シ
一 国税ノ附加税
二 特別税
国税ノ附加税ハ均一ノ税率ヲ以テ之ヲ徴収スヘシ但シ第七十三条ノ規定ニ依リ認可ヲ受ケタル場合ハ此ノ限ニ在ラス
特別税ノ種類ハ樺太庁長官之ヲ定ム
第四十八条 三月以上町村内ニ滞在スル者ハ其ノ滞在ノ初ニ遡リ町村税ヲ納ムル義務ヲ負フ
町村内ニ住所ヲ有セス又ハ三月以上滞在スルコトナシト雖町村内ニ於テ土地家屋物件ヲ所有シ使用シ若ハ占有シ、町村内ニ営業所ヲ設ケテ営業ヲ為シ又ハ町村内ニ於テ特定ノ行為ヲ為ス者ハ其ノ土地家屋物件営業若ハ其ノ収入ニ対シ又ハ其ノ行為ニ対シテ賦課スル町村税ヲ納ムル義務ヲ負フ
第四十九条 納税者ノ町村外ニ於テ所有シ使用シ占有スル土地家屋物件若ハ其ノ収入又ハ町村外ニ於テ営業所ヲ設ケタル営業若ハ其ノ収入ニ対シテハ町村税ヲ賦課スルコトヲ得ス
第五十条 国又ハ公共団体ノ直接ノ公用ニ供スル土地家屋物件及営造物ニ対シテハ町村税ヲ賦課スルコトヲ得ス但シ有料ニテ之ヲ使用セシムル者及使用収益者ニ対シテハ此ノ限ニ在ラス
国ノ事業又ハ行為及国有ノ土地家屋物件ニ対シテハ国ニ町村税ヲ賦課スルコトヲ得ス
神社寺院ノ用ニ供スル建物及其ノ境内地並布教所ノ用ニ供スル建物及其ノ構内地ニ対シテハ町村税ヲ賦課スルコトヲ得ス但シ有料ニテ之ヲ使用セシムル者及住宅ヲ以テ布教所ノ用ニ充ツル者ニ対シテハ此ノ限ニ在ラス
土人ノ営業又ハ行為及土人所有ノ土地家屋物件ニ対シテハ土人ニ町村税ヲ賦課スルコトヲ得ス
第五十一条 左ノ各号ノ一ニ該当スル所得ニ対シテハ町村税ヲ賦課スルコトヲ得ス
一 軍人従軍中ノ俸給及手当
二 扶助料及傷痍疾病者ノ恩給又ハ退隠料
三 旅費、学資金及法定扶養料
四 郵便貯金、産業組合貯金及銀行貯蓄預金ノ利子
五 営利ノ事業ニ属セサル一時ノ所得
六 乗馬ヲ有スル義務アル軍人カ政府ヨリ受クル馬糧、繋畜料及馬匹保続料
第五十二条 前三条ノ外町村税ヲ賦課スルコトヲ得サルモノハ別ニ主務大臣ノ定ムル所ニ依ル
第五十三条 住所滞在数町村ニ渉ル者ノ収入ニシテ土地家屋物件又ハ営業所ヲ設ケタル営業ヨリ生スル収入ニ非サルモノニ対シ町村税ヲ賦課スルトキハ其ノ収入ヲ各町村ニ平分シ其ノ一部ニノミ賦課スヘシ
数町村ニ渉リ営業所ヲ設ケ営業ヲ為ス者ニシテ其ノ営業又ハ収入ニ対スル本税ヲ分別シテ納メサルモノニ対シ附加税ヲ賦課スルトキハ樺太庁長官ノ定ムル所ニ依リ其ノ本税額ヲ各町村ニ分割シ其ノ一部ニノミ賦課スヘシ
第五十四条 数人ヲ利スル営造物ノ設置、維持其ノ他ノ必要ナル費用ハ其ノ関係者ニ負担セシムルコトヲ得
町村一部ヲ利スル営造物ノ設置、維持其ノ他ノ必要ナル費用ハ其ノ部内ニ於テ町村税ヲ納ムル義務アル者ニ負担セシムルコトヲ得
前二項ノ場合ニ於テ営造物ヨリ生スル収入アルトキハ先ツ其ノ収入ヲ以テ其ノ費用ニ充ツヘシ前項ノ場合ニ於テ其ノ一部ノ収入アルトキ亦同シ
数人又ハ町村ノ一部ヲ利スル財産ニ付テハ前三項ノ例ニ依ル
第五十五条 数人又ハ町村ノ一部ニ対シ特ニ利益アル事件ニ関シテハ町村ハ不均一ノ賦課ヲ為シ又ハ数人若ハ町村ノ一部ニ対シ賦課ヲ為スコトヲ得
第五十六条 町村税ノ賦課ニ関シ調査上必要アル場合ニ於テハ当該吏員ハ納税義務者又ハ納税義務アリト認ムル者ニ就キ日出ヨリ日没迄ノ間営業者ニ付テハ仍其ノ営業時間内家宅若ハ営業所ニ臨検シ又ハ帳簿物件ノ検査ヲ為スコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ当該吏員ハ其ノ身分ヲ証明スヘキ証票ヲ携帯スヘシ
第五十七条 町村税ノ賦課徴収ニ関シテハ本令ニ規定アルモノノ外必要ナル事項ハ樺太庁長官之ヲ定ム
第五十八条 夫役又ハ現品ハ直接町村税ヲ準率ト為シ直接町村税ヲ賦課セサル町村ニ於テハ直接国税ヲ準率ト為シ且之ヲ金額ニ算出シテ賦課スヘシ但シ第七十四条ノ規定ニ依リ認可ヲ受ケタル場合ハ此ノ限ニ在ラス
学芸、美術及手工ニ関スル労務ニ付テハ夫役ヲ賦課スルコトヲ得ス
夫役ヲ賦課セラレタル者ハ本人自ラ之ニ当リ又ハ適当ノ代人ヲ出スコトヲ得
夫役又ハ現品ハ金銭ヲ以テ之ニ代フルコトヲ得
第一項及前項ノ規定ハ急迫ノ場合ニ賦課スル夫役ニ付テハ之ヲ適用セス
第五十九条 非常災害ノ為必要アルトキハ町村ハ他人ノ土地ヲ一時使用シ又ハ其ノ土石竹木其ノ他ノ物品ヲ使用シ若ハ収用スルコトヲ得但シ其ノ損失ヲ補償スヘシ
前項ノ場合ニ於テ危険防止ノ為必要アルトキハ町村長、警察官吏又ハ監督官庁ハ町村内ノ居住者ヲシテ防禦ニ従事セシムルコトヲ得
第一項但書ノ規定ニ依リ補償スヘキ金額ハ協議ニ依リ之ヲ定ム協議調ハサルトキハ鑑定人ノ意見ヲ徴シ樺太庁支庁長之ヲ決定ス決定ヲ受ケタル者其ノ決定ニ不服アルトキハ樺太庁長官ニ訴願スルコトヲ得
前項ノ決定ハ文書ヲ以テ之ヲ為シ其ノ理由ヲ附シ之ヲ本人ニ交付スヘシ
第六十条 町村長ハ特別ノ事情アル者ニ対シ町村評議会ノ諮問ヲ経テ町村税ヲ減免シ又ハ納税ノ延期ヲ許スコトヲ得但シ当該年度内ノ納税延期ニ付テハ町村評議会ノ諮問ヲ経ルコトヲ要セス
第六十一条 町村税ノ賦課ヲ受ケタル者其ノ賦課ニ付違法又ハ錯誤アリト認ムルトキハ徴税令書ノ交付ヲ受ケタル日ヨリ三月以内ニ町村長ニ異議ノ申立ヲ為スコトヲ得
財産又ハ営造物ヲ使用スル権利ニ関シ異議アル者ハ之ヲ町村長ニ申立ツルコトヲ得
前二項ノ異議ハ町村長之ヲ決定ス其ノ決定ニ不服アルトキハ樺太庁支庁長ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アルトキハ樺太庁長官ニ訴願シ其ノ裁決又ハ第五項ノ裁決ニ不服アルトキハ主務大臣ニ訴願スルコトヲ得
第一項及前項ノ規定ハ使用料及手数料ノ徴収並夫役現品ノ賦課ニ関シ之ヲ準用ス
前二項ノ規定ニ依ル裁決ニ付テハ町村長ヨリモ訴願ヲ提起スルコトヲ得
第六十二条 使用料、手数料及特別税ニ関スル事項ハ町村規則ヲ以テ之ヲ規定スヘシ其ノ規則中ニハ十円以下ノ過料ヲ科スル規定ヲ設クルコトヲ得
財産又ハ営造物ノ使用ニ関シテハ町村規則ヲ以テ十円以下ノ過料ヲ科スル規定ヲ設クルコトヲ得
過料ノ処分ヲ受ケタル者其ノ処分ニ不服アルトキハ樺太庁支庁長ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アルトキハ樺太庁長官ニ訴願スルコトヲ得
前項ノ裁決ニ付テハ町村長ヨリモ訴願ヲ提起スルコトヲ得
第六十三条 町村税、使用料、手数料、過料、過怠金其ノ他ノ町村ノ収入ヲ定期内ニ納メサル者アルトキハ町村長ハ期限ヲ指定シテ之ヲ督促スヘシ
夫役現品ノ賦課ヲ受ケタル者定期内ニ其ノ履行ヲ為サス又ハ夫役現品ニ代フル金銭ヲ納メサルトキハ町村長ハ期限ヲ指定シテ之ヲ督促スヘシ急迫ノ場合ニ賦課シタル夫役ニ付テハ更ニ之ヲ金額ニ算出シ期限ヲ指定シテ其ノ納付ヲ命スヘシ
前二項ノ場合ニ於テハ町村規則ノ定ムル所ニ依リ手数料ヲ徴収スルコトヲ得
滞納者第一項又ハ第二項ノ督促又ハ命令ヲ受ケ其ノ指定ノ期限内ニ之ヲ完納セサルトキハ国税徴収ノ例ニ依リ之ヲ処分スヘシ
第一項乃至第三項ノ徴収金ハ国税ニ次テ先取特権ヲ有シ其ノ追徴、還付及時効ニ付テハ国税ノ例ニ依ル
前三項ノ処分ヲ受ケタル者其ノ処分ニ不服アルトキハ樺太庁支庁長ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アルトキハ樺太庁長官ニ訴願スルコトヲ得
前項ノ裁決ニ付テハ町村長ヨリモ訴願ヲ提起スルコトヲ得
第四項ノ処分中差押物件ノ公売ハ処分ノ確定ニ至ル迄執行ヲ停止ス
第六十四条 町村長ハ毎会計年度歳入出予算ヲ調製シ年度開始ノ一月前迄ニ町村評議会ノ諮問ヲ経ヘシ
町村ノ会計年度ハ政府ノ会計年度ニ依ル
町村長ハ町村評議会ノ諮問ヲ経テ既定予算ノ追加又ハ更正ヲ為スコトヲ得
町村費ヲ以テ支弁スル事件ニシテ数年ヲ期シテ其ノ費用ヲ支出スヘキモノハ其ノ年期間各年度ノ支出額ヲ定メ継続費ト為スコトヲ得
町村ハ予算外ノ支出又ハ予算超過ノ支出ニ充ツル為予備費ヲ設クヘシ但シ特別会計ニハ之ヲ設ケサルコトヲ得
町村ハ町村規則ヲ以テ特別会計ヲ設クルコトヲ得
予算ハ樺太庁支庁長ニ報告シ且其ノ要領ヲ告示スヘシ
第六十五条 町村長ハ予算ノ謄本ヲ収入役ニ交付スヘシ
収入役ハ町村長又ハ監督官庁ノ命令アルニ非サレハ支払ヲ為スコトヲ得ス命令アルモ支出ノ予算ナク且予備費支出、費目流用其ノ他財務ニ関スル規定ニ依リ支出ヲ為スコトヲ得サルトキ亦同シ
前二項ノ規定ハ収入役ノ事務ヲ兼掌スル町村長ニ之ヲ準用ス
第六十六条 町村ノ支払金ニ関スル時効ニ付テハ政府ノ支払金ノ例ニ依ル
第六十七条 町村ノ出納ハ隔月之ヲ検査シ且毎会計年度一回以上臨時検査ヲ為スヘシ
検査ハ町村長之ヲ為シ臨時検査ニハ町村評議会ニ於テ互選シタル評議員二人以上ノ立会ヲ要ス
第六十八条 町村ノ出納ハ翌年度七月三十一日ヲ以テ閉鎖ス
決算ハ出納閉鎖後一月以内ニ証書類ト共ニ収入役ヨリ之ヲ町村長ニ提出スヘシ町村長之ヲ審査シ意見ヲ附シテ樺太庁支庁長及次ノ通常予算ヲ諮問スル会議迄ニ町村評議会ニ報告スヘシ但シ町村長ニ於テ収入役ノ事務ヲ兼掌シタルトキハ意見ヲ附スルコトヲ要セス
町村長ハ前項ノ報告ヲ為シタル後直ニ其ノ要領ヲ告示スヘシ
第六十九条 予算調製ノ式、費目流用其ノ他財務ニ関シ必要ナル規定ハ樺太庁長官之ヲ定ム
第六章 町村ノ監督
第七十条 町村ハ第一次ニ於テ樺太庁支庁長、第二次ニ於テ樺太庁長官、第三次ニ於テ主務大臣之ヲ監督ス
監督官庁ハ町村ノ監督上必要ナル命令ヲ発シ又ハ処分ヲ為スコトヲ得
監督官庁ハ町村ノ監督上必要アル場合ニ於テハ事務ノ報告ヲ為サシメ、書類帳簿ヲ徴シ及実地ニ就キ事務ヲ視察シ又ハ出納ヲ検閲スルコトヲ得
第七十一条 異議ノ申立又ハ訴願ノ提起ハ処分決定又ハ裁決アリタル日ヨリ三十日以内ニ之ヲ為スヘシ但シ本令中別ニ期間ヲ定メタルモノハ此ノ限ニ在ラス
異議ノ申立ニ関スル期間ノ計算ニ付テハ訴願法ノ規定ニ依ル
異議ノ申立ハ期限経過後ニ於テモ宥恕スヘキ事由アリト認ムルトキハ仍之ヲ受理スルコトヲ得
異議ノ決定ハ文書ヲ以テ之ヲ為シ其ノ理由ヲ附シ之ヲ申立人ニ交付スヘシ
異議ノ申立アルモ処分ノ執行ハ之ヲ停止セス但シ行政庁ハ其ノ職権ニ依リ又ハ関係者ノ請求ニ依リ必要ト認ムルトキハ之ヲ停止スルコトヲ得
第七十二条 町村ニ於テ法令ニ依リ負担シ又ハ監督官庁ノ職権ニ依リ命スル費用ヲ予算ニ載セサルトキハ樺太庁支庁長ハ理由ヲ示シテ其ノ費用ヲ予算ニ加フルコトヲ得
樺太庁支庁長ハ町村ノ予算中不適当ノ支出ト認ムルモノアルトキハ樺太庁長官ノ認可ヲ受ケ理由ヲ示シテ之ヲ削減スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ之ニ相当スル収入ヲ削減スヘシ
第七十三条 左ニ掲クル事件ハ樺太庁長官ノ認可ヲ受クヘシ
一 町村規則ヲ設ケ又ハ改廃スルコト
二 基本財産及積立金穀等ノ管理及処分ニ関スルコト
三 借入金ヲ為シ並借入ノ方法、利息ノ定率及償還方法ヲ定メ又ハ変更スルコト但シ年度内ノ収入ヲ以テ償還スヘキ一時ノ借入金ハ此ノ限ニ在ラス
四 特別税ヲ新設シ増額シ又ハ変更スルコト
五 直接国税二分ノ一ヲ超過スル附加税ヲ賦課スルコト
六 間接国税ノ附加税ヲ賦課スルコト
七 均一ノ税率ニ依ラスシテ国税ノ附加税ヲ賦課スルコト
八 使用料及手数料ヲ新設シ増額シ又ハ変更スルコト
九 学芸、美術又ハ歴史上貴重ナル物件ヲ処分シ又ハ之ニ大ナル変更ヲ加フルコト
第七十四条 左ニ掲クル事件ハ樺太庁支庁長ノ認可ヲ受クヘシ
一 寄附又ハ補助ヲ為スコト
二 不動産ノ管理及処分ニ関スルコト
三 第五十四条第一項第二項及第四項ノ規定ニ依リ数人又ハ町村ノ一部ニ費用ヲ負担セシムルコト
四 第五十五条ノ規定ニ依リ不均一ノ賦課ヲ為シ又ハ数人若ハ町村ノ一部ニ対シ賦課ヲ為スコト
五 第五十八条ノ準率ニ依ラスシテ夫役現品ヲ賦課スルコト但シ急迫ノ場合ニ賦課スル夫役ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
六 継続費ヲ定メ又ハ変更スルコト
七 予備費ノ支出ニ関スルコト
第七十五条 監督官庁ノ認可ヲ要スル事件ニ付テハ監督官庁ハ認可申請ノ趣旨ニ反セスト認ムル範囲内ニ於テ更正シテ認可ヲ与フルコトヲ得
第七十六条 監督官庁ハ其ノ認可ヲ要スル事件中軽易ナルモノハ其ノ認可ノ権限ヲ下級監督官庁ニ委任シ又ハ認可ヲ受ケシメサルコトヲ得
第七十七条 樺太庁長官又ハ樺太庁支庁長ハ町村長、助役、収入役、区長、委員其ノ他ノ町村吏員ニ対シ懲戒ヲ行フコトヲ得其ノ懲戒処分ハ譴責、三十円以下ノ過怠金及解職トス但シ町村長、助役及収入役ニ対スル解職ハ主務大臣ノ定ムル所ニ依リ懲戒審査会ノ議決ヲ経テ樺太庁長官之ヲ行フ
樺太庁長官ハ町村長、助役及収入役ノ解職ヲ行ハムトスル前其ノ停職ヲ命スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ其ノ停職期間給料ヲ支給セス
第七十八条 町村吏員ノ服務規律、賠償責任、身元保証及事務引継ニ関スル規定ハ樺太庁長官之ヲ定ム
前項ノ規定ニハ事務引継ヲ拒ミタル者ニ対シ三十円以下ノ過料ヲ科スル規定ヲ設クルコトヲ得
第七章 雑則
第七十九条 第二十二条ノ人口ハ樺太庁長官ノ定ムル所ニ依ル
第八十条 本令ニ於ケル直接税及間接税ノ種類ハ樺太庁長官之ヲ定ム
第八十一条 町村ノ廃置分合又ハ境界変更アリタル場合ニ於ケル町村ノ財産処分其ノ他ノ事務ニ付必要ナル事項ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ樺太庁長官之ヲ定ム
附 則
本令ハ大正十年法律第四十七号施行ノ日ヨリ之ヲ施行ス
本令施行ノ際必要ナル規定ハ樺太庁長官之ヲ定ム