陸軍治罪法及び海軍治罪法は明治20年代の制定以来、裁判の公正さと被告人の権利保護に課題があった。具体的には、事件審議が長官の命令に依存し、公訴提起執行機関がなく、審議非公開で、被告人の弁護人選任権がなく、裁判は長官の命令なしには宣告できず、上訴も認められていなかった。これらの問題に対応するため、大正3年に陸海軍共同調査委員会を設置し、諸外国の立法例を参考に改正案を策定した。改正の要点は、軍紀維持と軍の利益保護を前提としつつ、人権保護にも配慮し、裁判手続の公開制、弁護人選任制度の導入、上告制度の新設などを盛り込んだ。また、検察官制度を新設し、法務官の身分保障も規定した。
参照した発言:
第44回帝国議会 貴族院 陸軍軍法会議法案外十件特別委員会 第1号