海軍機関学校令
法令番号: 勅令第三十六號
公布年月日: 大正3年3月25日
法令の形式: 勅令
朕海軍機關學校條例改正ノ件ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正三年三月二十四日
內閣總理大臣 伯爵 山本權兵衞
海軍大臣 男爵 齋藤實
勅令第三十六號
海軍機關學校令
第一條 海軍機關學校ハ海軍機關官ト爲スヘキ生徒ヲ敎育シ海軍機關官ニ必要ノ學術ヲ敎授シ及海軍特修兵タルヘキ海軍下士卒ニ機關術其ノ他ノ技術工藝ヲ敎授シ且其ノ改良進步ヲ圖ル所トス
第二條 海軍機關學校ニ於テ海軍機關官ト爲スヘキ生徒ニ敎授スヘキ學科ハ機關術造船學兵器學及普通學トス
第三條 海軍機關學校ニ於ケル學生及練習生ノ敎育綱領ハ海軍大臣ノ認可ヲ經テ海軍敎育本部長之ヲ定ム
第四條 海軍機關學校ニ左ノ職員ヲ置ク
校長
副官
生徒科長
練習科長
敎官
監事
分隊長
軍醫長
主計長
前項ノ外軍醫及主計ヲ置ク
第五條 校長ハ海軍敎育本部長ニ隸シ軍紀風紀ヲ維持シ校務ヲ總理ス
第六條 校長事故アルトキハ部下首席機關官其ノ職務ヲ代理ス
第七條 副官ハ校長ノ命ヲ承ケ庶務ヲ掌理ス
第八條 生徒科長ハ校長ノ命ヲ承ケ生徒ノ敎務ヲ監理シ紀律ヲ維持ス
第九條 練習科長ハ校長ノ命ヲ承ケ學生及練習生ノ敎務ヲ監理シ紀律ヲ維持ス
第十條 敎官ハ校長ノ指定ニ依リ生徒科長又ハ練習科長ノ命ヲ承ケ各學科ノ敎授ヲ擔任シ且機關術其ノ他ノ技術工藝ノ硏究調査ニ關スルコトヲ掌ル
第十一條 監事ハ生徒科長ノ命ヲ承ケ生徒ノ紀律及體育ノ事ヲ擔任ス
第十二條 分隊長ハ練習科長ノ命ヲ承ケ隊員ノ紀律ヲ維持シ之ヲ董督訓練ス
第十三條 軍醫長ハ校長ノ命ヲ承ケ醫務及衞生ニ關スルコトヲ掌ル
第十四條 主計長ハ校長ノ命ヲ承ケ會計及給與ニ關スルコトヲ掌ル
第十五條 軍醫ハ軍醫長、主計ハ主計長ノ命ヲ承ケ服務ス
第十六條 海軍機關學校ニハ第四條ノ職員ノ外海軍兵曹長同相當官准士官下士卒又ハ判任文官ヲ置キ各上官ノ命ヲ承ケ服務セシム
第十七條 校長ハ部下ノ職員事故アリテ其ノ職務ヲ執ルコト能ハサルトキ又ハ缺員アルトキハ他ノ職員ヲシテ其ノ職務ヲ代理セシムルコトヲ得
第十八條 海軍機關學校生徒ハ年齡滿十六年以上滿二十年以下ニシテ海軍機關官タラムコトヲ志願スル者ニ就キ檢査ヲ行ヒ所要ノ人員ヲ採用ス
第十九條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ之ヲ生徒ニ採用セス
一 有妻ノ者
二 禁錮以上ノ刑ニ處セラレタル者
三 復權ヲ得サル家資分散者又ハ破產者
四 品行又ハ家庭不良ナルカ爲將來機關官タル體面ヲ保ツコト能ハスト認ムル者
第二十條 生徒ノ召募及檢査格例ハ每年海軍大臣之ヲ吿示ス
第二十一條 生徒ハ入校ノ日ヨリ海軍兵籍ニ編入ス
第二十二條 生徒ノ修業期間ハ三年四月トス但シ戰時又ハ事變ニ際シテハ之ヲ短縮スルコトヲ得
第二十三條 卒業試驗ニ及第シタル生徒ニハ卒業證書ヲ授與ス
第二十四條 生徒ハ情願ヲ以テ退校スルコトヲ得ス
第二十五條 生徒左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ之ヲ退校セシム
一 海軍機關官タルヘキ器量ニ乏シキ者
二 品行不良又ハ怠惰ニシテ訓戒ヲ加フルモ改悛セサル者
三 試驗ノ成績不良ニシテ卒業ノ目途ナキ者
四 傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ前途役務ニ堪ヘ難シト認ムル者
第二十六條 海軍機關學校ニ於テ修習スル機關官ヲ海軍機關學校學生ト稱シ海軍特修兵タルヘキ下士卒ヲ海軍機關學校練習生ト稱ス
第二十七條 海軍機關學校學生ハ之ヲ左ノ二種ニ區別ス
一 普通科學生
二 特修科學生
第二十八條 海軍機關學校學生ハ左ノ區別ニ從ヒ海軍大臣之ヲ命ス
一 普通科學生ハ海軍機關中尉又ハ海軍機關少尉候補生任命後二年以上ヲ經タル海軍機關少尉
二 特修科學生ハ海軍機關佐尉官ニシテ特ニ機關術其ノ他ノ學術ヲ修習セシムル必要アル者又ハ其ノ修習ヲ志願スル者
第二十九條 海軍機關學校學生卒業シタルトキハ之ニ修業證書ヲ授與ス
第三十條 校長ハ學生中不適當ト認ムル者アルトキハ之ヲ海軍敎育本部長ニ禀申シ海軍敎育本部長其ノ禀申ヲ至當ト認ムルトキハ之ヲ海軍大臣ニ具申シ海軍大臣之ニ退學ヲ命スルコトヲ得
第三十一條 海軍機關學校練習生ニ關スル事項ハ海軍大臣之ヲ定ム
第三十二條 校長ハ海軍敎育本部長ノ認可ヲ受ケ學生又ハ練習生ヲ軍艦海軍諸學校又ハ海軍工廠等ニ派遣シ修業セシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ派遣セラレタル學生又ハ練習生ハ其ノ修業ニ關シ當該艦長校長又ハ工廠長等ノ指揮ヲ受ク
第三十三條 海軍大臣ハ戰時又ハ事變ニ際シ必要ト認ムルトキハ學生ヲ退學セシムルコトヲ得
第三十四條 海軍大臣ハ海軍豫備員又ハ海軍豫備員志願者ヲシテ海軍機關學校ニ於テ必要ノ敎授又ハ敎育ヲ受ケシムルコトヲ得
第三十五條 海軍大臣ハ海軍機關學校ニ臨時講習科ヲ設ケ海軍佐尉官機關佐尉官兵曹長機關兵曹長船匠長上等兵曹上等機關兵曹船匠師又ハ下士卒ニ必要ノ講習ヲ爲サシムルコトヲ得
附 則
本令ハ大正三年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
海軍工機學校條例ハ之ヲ廢止ス
本令施行ノ際海軍工機學校普通科學生又ハ特修科學生タル者ハ之ヲ本令ノ普通科學生又ハ特修科學生トス
朕海軍機関学校条例改正ノ件ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正三年三月二十四日
内閣総理大臣 伯爵 山本権兵衛
海軍大臣 男爵 斎藤実
勅令第三十六号
海軍機関学校令
第一条 海軍機関学校ハ海軍機関官ト為スヘキ生徒ヲ教育シ海軍機関官ニ必要ノ学術ヲ教授シ及海軍特修兵タルヘキ海軍下士卒ニ機関術其ノ他ノ技術工芸ヲ教授シ且其ノ改良進歩ヲ図ル所トス
第二条 海軍機関学校ニ於テ海軍機関官ト為スヘキ生徒ニ教授スヘキ学科ハ機関術造船学兵器学及普通学トス
第三条 海軍機関学校ニ於ケル学生及練習生ノ教育綱領ハ海軍大臣ノ認可ヲ経テ海軍教育本部長之ヲ定ム
第四条 海軍機関学校ニ左ノ職員ヲ置ク
校長
副官
生徒科長
練習科長
教官
監事
分隊長
軍医長
主計長
前項ノ外軍医及主計ヲ置ク
第五条 校長ハ海軍教育本部長ニ隷シ軍紀風紀ヲ維持シ校務ヲ総理ス
第六条 校長事故アルトキハ部下首席機関官其ノ職務ヲ代理ス
第七条 副官ハ校長ノ命ヲ承ケ庶務ヲ掌理ス
第八条 生徒科長ハ校長ノ命ヲ承ケ生徒ノ教務ヲ監理シ紀律ヲ維持ス
第九条 練習科長ハ校長ノ命ヲ承ケ学生及練習生ノ教務ヲ監理シ紀律ヲ維持ス
第十条 教官ハ校長ノ指定ニ依リ生徒科長又ハ練習科長ノ命ヲ承ケ各学科ノ教授ヲ担任シ且機関術其ノ他ノ技術工芸ノ研究調査ニ関スルコトヲ掌ル
第十一条 監事ハ生徒科長ノ命ヲ承ケ生徒ノ紀律及体育ノ事ヲ担任ス
第十二条 分隊長ハ練習科長ノ命ヲ承ケ隊員ノ紀律ヲ維持シ之ヲ董督訓練ス
第十三条 軍医長ハ校長ノ命ヲ承ケ医務及衛生ニ関スルコトヲ掌ル
第十四条 主計長ハ校長ノ命ヲ承ケ会計及給与ニ関スルコトヲ掌ル
第十五条 軍医ハ軍医長、主計ハ主計長ノ命ヲ承ケ服務ス
第十六条 海軍機関学校ニハ第四条ノ職員ノ外海軍兵曹長同相当官准士官下士卒又ハ判任文官ヲ置キ各上官ノ命ヲ承ケ服務セシム
第十七条 校長ハ部下ノ職員事故アリテ其ノ職務ヲ執ルコト能ハサルトキ又ハ欠員アルトキハ他ノ職員ヲシテ其ノ職務ヲ代理セシムルコトヲ得
第十八条 海軍機関学校生徒ハ年齢満十六年以上満二十年以下ニシテ海軍機関官タラムコトヲ志願スル者ニ就キ検査ヲ行ヒ所要ノ人員ヲ採用ス
第十九条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ之ヲ生徒ニ採用セス
一 有妻ノ者
二 禁錮以上ノ刑ニ処セラレタル者
三 復権ヲ得サル家資分散者又ハ破産者
四 品行又ハ家庭不良ナルカ為将来機関官タル体面ヲ保ツコト能ハスト認ムル者
第二十条 生徒ノ召募及検査格例ハ毎年海軍大臣之ヲ告示ス
第二十一条 生徒ハ入校ノ日ヨリ海軍兵籍ニ編入ス
第二十二条 生徒ノ修業期間ハ三年四月トス但シ戦時又ハ事変ニ際シテハ之ヲ短縮スルコトヲ得
第二十三条 卒業試験ニ及第シタル生徒ニハ卒業証書ヲ授与ス
第二十四条 生徒ハ情願ヲ以テ退校スルコトヲ得ス
第二十五条 生徒左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ之ヲ退校セシム
一 海軍機関官タルヘキ器量ニ乏シキ者
二 品行不良又ハ怠惰ニシテ訓戒ヲ加フルモ改悛セサル者
三 試験ノ成績不良ニシテ卒業ノ目途ナキ者
四 傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ前途役務ニ堪ヘ難シト認ムル者
第二十六条 海軍機関学校ニ於テ修習スル機関官ヲ海軍機関学校学生ト称シ海軍特修兵タルヘキ下士卒ヲ海軍機関学校練習生ト称ス
第二十七条 海軍機関学校学生ハ之ヲ左ノ二種ニ区別ス
一 普通科学生
二 特修科学生
第二十八条 海軍機関学校学生ハ左ノ区別ニ従ヒ海軍大臣之ヲ命ス
一 普通科学生ハ海軍機関中尉又ハ海軍機関少尉候補生任命後二年以上ヲ経タル海軍機関少尉
二 特修科学生ハ海軍機関佐尉官ニシテ特ニ機関術其ノ他ノ学術ヲ修習セシムル必要アル者又ハ其ノ修習ヲ志願スル者
第二十九条 海軍機関学校学生卒業シタルトキハ之ニ修業証書ヲ授与ス
第三十条 校長ハ学生中不適当ト認ムル者アルトキハ之ヲ海軍教育本部長ニ禀申シ海軍教育本部長其ノ禀申ヲ至当ト認ムルトキハ之ヲ海軍大臣ニ具申シ海軍大臣之ニ退学ヲ命スルコトヲ得
第三十一条 海軍機関学校練習生ニ関スル事項ハ海軍大臣之ヲ定ム
第三十二条 校長ハ海軍教育本部長ノ認可ヲ受ケ学生又ハ練習生ヲ軍艦海軍諸学校又ハ海軍工廠等ニ派遣シ修業セシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ派遣セラレタル学生又ハ練習生ハ其ノ修業ニ関シ当該艦長校長又ハ工廠長等ノ指揮ヲ受ク
第三十三条 海軍大臣ハ戦時又ハ事変ニ際シ必要ト認ムルトキハ学生ヲ退学セシムルコトヲ得
第三十四条 海軍大臣ハ海軍予備員又ハ海軍予備員志願者ヲシテ海軍機関学校ニ於テ必要ノ教授又ハ教育ヲ受ケシムルコトヲ得
第三十五条 海軍大臣ハ海軍機関学校ニ臨時講習科ヲ設ケ海軍佐尉官機関佐尉官兵曹長機関兵曹長船匠長上等兵曹上等機関兵曹船匠師又ハ下士卒ニ必要ノ講習ヲ為サシムルコトヲ得
附 則
本令ハ大正三年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
海軍工機学校条例ハ之ヲ廃止ス
本令施行ノ際海軍工機学校普通科学生又ハ特修科学生タル者ハ之ヲ本令ノ普通科学生又ハ特修科学生トス